Japanese Journal of Acute Care Surgery
Online ISSN : 2436-102X
10 巻, 1 号
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特集1:内臓動脈瘤,動脈解離の診断と治療
  • 須藤 広誠, 岡野 圭一, 大島 稔, 安藤 恭久, 松川 浩之, 長尾 美奈, 馮 東萍, 近藤 彰宏, 上村 淳, 浅野 栄介, 岸野 ...
    原稿種別: 原著
    2020 年 10 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 2021/02/27
    公開日: 2021/03/02
    ジャーナル フリー

    〔要旨〕【背景】膵切除術後に生じる仮性動脈瘤の対策は今なお重要な課題である。【方法】2011年4月〜2019年3月に香川大学医学部附属病院消化器外科で行われた膵頭十二指腸切除196例と膵体尾部切除72例の計268例を対象とし仮性動脈瘤に対する治療成績を検討した。【結果】仮性動脈瘤は8例(3.0%)に認め,動脈塞栓が7例に施行され,6例で塞栓可能であった。大量出血は開腹止血を要した2例(0.7%)で,うち1例(0.4%)が死亡した。発見契機は術後1週間のdynamic CT検査3例,予兆出血3例,消化管出血1例,出血性ショック1例で,同定までの期間は7〜71日(中央値18日)。5例は術後3日目のドレーン排液培養で菌検出を認め,7例は同定時に腹腔内ドレーンが留置されていた。【結語】膵切除術後1週間のdynamic CT検査は仮性動脈瘤検索に有用で,術後早期から感染を伴う症例は仮性動脈瘤発生のハイリスク症例である。

  • 置塩 裕子, 上田 健太郎, 那須 亨, 川嶋 秀治, 國立 晃成, 加藤 正哉
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 10 巻 1 号 p. 6-11
    発行日: 2021/02/27
    公開日: 2021/03/02
    ジャーナル フリー

    〔要旨〕【症例1】55歳女性。下膵十二指腸動脈(inferior pancreaticoduodenal artery;IPDA)の経カテーテル動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization;TAE)後に腹部コンパートメント症候群(abdominal compartment syndrome;ACS)となり開腹減圧を行ったが活動性出血は認めなかった。しかし,再開腹時に小腸間膜からの活動性出血と非閉塞性腸管虚血(non-occlusive mesenteric ischemia;NOMI)を認め,縫合止血・腸切除を行ったが,NOMIの進行により第2病日に死亡した。【症例2】53歳男性。中結腸動脈(middle colic artery;MCA)分枝のTAE後にACSとなり開腹減圧を行い,横行結腸間膜からの活動性出血に対し,縫合止血・腸切除を行った。第2病日に閉腹,第14病日に自宅退院した。【考察】TAE後にACSが疑われた場合に,緊急開腹減圧を躊躇すべきではないが,再出血が起こる可能性を常に念頭に置き,止血確認をすべきである。

  • 谷野 雄亮, 本間 宙, 鈴木 彰二, 織田 順, 中野 浩
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 10 巻 1 号 p. 12-16
    発行日: 2021/02/27
    公開日: 2021/03/02
    ジャーナル フリー

    〔要旨〕正中弓状靱帯症候群が誘因で後腹膜出血を発症し,interventional radiology(IVR)と開腹手術を施行後に,生死を分けた症例を経験したので報告する。【症例1】67歳,男性。IVR止血後に,腸管壊死に対して開腹手術を施行し軽快転院した。【症例2】53歳,女性。IVRで止血できず,開腹手術移行後に再度IVRで止血。広範十二指腸壊死をきたし永眠された。【考察】生死を分けた点として,止血へ至る時間差と腹腔内出血併発有無が考えられた。IVR先行で診断・治療を行うことが多いが,治療限界を見極める必要があった。【結語】一手技にこだわらず,状況に応じて別手技に移行して早期止血を目指すことが重要と考える。

特集2:単独外傷性腸間膜損傷の診断と治療
  • 萩原 一樹, 井上 潤一, 宮﨑 善史, 松本 学, 柳沢 政彦, 笹本 将継, 釘宮 愛子, 河西 浩人, 岩瀬 弘明, 岩瀬 史明
    原稿種別: 原著
    2020 年 10 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2021/02/27
    公開日: 2021/03/02
    ジャーナル フリー

    〔要旨〕【緒言】単独腸間膜損傷の診断や治療には腸管損傷の合併有無が大きく影響する。山梨県立中央病院高度救命救急センター(以下,当施設)における腸間膜損傷症例から治療戦略を検討した。【対象と方法】2008年1月〜2019年3月に当施設へ搬送された,来院時のCT検査で遊離ガスを認めず来院時単独腸間膜損傷と診断した37例を対象に後方視的に検討した。【結果】全例鈍的外傷で、最終的に32例に開腹手術を行い,腸管損傷は17例(45.9%)に合併した。CT所見と腸管損傷合併有無について比較したが,有意差のある項目は認めなかった。手術例における腸間膜損傷単独群でも7例(46.6%)に腸管虚血を理由とし腸管切除を行った。当初非手術治療を選択し手術に移行したのは8例あり,うち腸管損傷は5例に認めた。【結論】腸間膜損傷の診断にCT検査は有用だが、腸管損傷合併の否定は困難である。腸間膜損傷での外科的処置を要する割合は高く,開腹手術が原則である。

  • 松田 真輝, 今本 俊郎, 橋本 昌幸, 田中 はるか, 大河原 健人, 澤野 誠
    原稿種別: 原著
    2020 年 10 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2021/02/27
    公開日: 2021/03/02
    ジャーナル フリー

    〔要旨〕【背景】腸管損傷を伴わない単独腸間膜損傷は外科的修復術が原則である。一方IVR(interventional radiology)を含めたNOM(non-operative management)も報告されているが,その適応についての一般的な見解はない。【方法】過去5年間で治療介入した単独腸間膜損傷16例を対象として,自験例のCT所見と術中所見を比較検討し,単独腸間膜損傷の治療戦略を検討した。【結果】治療方法は開腹下修復術が8例,鏡視下修復術が7例(3例が開腹移行),IVRが1例であった。CT所見と術中所見とを比較すると,①出血様式,②腸管虚血の合併,③損傷部の範囲と程度,についての読影は困難であり,単独腸間膜損傷では術前CT検査と実際の術中所見との間に乖離が多かった。【結論】単独腸間膜損傷の治療原則は開腹術であり,十分な観察が必要である。腹腔鏡手術では虚血の範囲を誤認するリスクがあり,IVRも止血不十分となるリスクがあるため,慎重な適応が求められる。

  • 上野 太輔, 椎野 泰和, 岡根 尭弘, 稲吉 祐樹, 山田 祥子, 高橋 治郎, 木下 公久, 宮本 聡美, 井上 貴博
    原稿種別: 原著
    2021 年 10 巻 1 号 p. 73-78
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/05/20
    ジャーナル フリー

    〔要旨〕【はじめに】腸管損傷を伴う腸間膜損傷に対しては,その診断・治療に苦慮することは少ないが,腸間膜単独損傷に関しては,手術やinterventional radiologyを含めたその治療方針の決定に関し一定の見解はない。【目的】川崎医科大学附属病院(以下,当院)での治療経験から,腸間膜単独損傷に対する手術適応を検討する。【対象と方法】2008年1月~2019年12月に鈍的腸間膜損傷と診断され,当院に入院した患者66例のうち,腸管を含むほかの腹腔内臓器合併損傷を認めない31例を腸間膜単独損傷と定義し検討した。【結果】腸間膜単独損傷において,computed tomography(CT)検査での腹水の有無や腹膜刺激症状の有無は開腹手術の適応と関係せず,出血性ショックや造影剤漏出所見,focused assessment with sonography for trauma(FAST)陽性であることが開腹手術と関係性が高かった。術前造影CT検査における日本外傷学会臓器損傷分類(外傷分類)のⅡb型損傷6例全例およびⅡa型損傷7症例のうち2症例(28.6%)に対し開腹手術が行われた。【結論】術前診断で外傷分類Ⅰa型損傷の場合は全例non-operative management(NOM)可能で,Ⅱb型損傷の場合は全例開腹手術となった。Ⅱa型損傷の中に開腹手術が必要となる症例があるため手術を検討,あるいは緊急手術が可能な環境で経過観察すべきと考えられた。

原著
  • 三宅 亮, 村田 厚夫, 松田 知也, 古城 都, 徳田 隼人, 奥川 郁
    原稿種別: 原著
    2020 年 10 巻 1 号 p. 28-32
    発行日: 2021/02/27
    公開日: 2021/03/02
    ジャーナル フリー

    〔要旨〕【目的】Abdominal emergency general surgery(AEGS)の予後とフレイルの関連性の検討。【方法】フレイルの 定義は,高血圧,虚血性心疾患,担癌状態,Alb 値<3.0g/dL,障害高齢者の日常生活自立度≧A1,認知症高齢者の日常生活自立度≧Ⅱa のうち1 つ以上該当とした。健和会大手町病院の3 年間の65 歳以上のAEGS 症例を対象とし,Frailty 群(F 群)とNon-Frailty 群(NF 群)の比較予後検討,Frailty 該当数と予後の検討を行った。【結果】F 群(151 例)・NF 群(27 例)の比較では,術後合併症59.6%・29.6%(p<0.01),術後28 日死亡率10.6%・0%(NS),1 年生存率70%・100%であった(p<0.01)。Frailty 該当数3 以上で1 年生存率60.8%,0 〜2 で84.2%であった(p<0.01)。【結論】AEGS 症例の予後とフレイルの関連性が示唆された。

  • 寺住 恵子, 森 毅, 佐々木 妙子, 堀 耕太, 山永 成美, 林田 和之, 横溝 博
    原稿種別: 原著
    2020 年 10 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 2021/02/27
    公開日: 2021/03/02
    ジャーナル フリー

    〔要旨〕【目的】特発性血気胸に対するドレナージ挿入後の出血性ショックについて調査する。【方法】2014 〜2018 年に来 院した9 例の特発性血気胸について,輸血要否,治療選択,ドレナージ後の出血性ショックをカルテより後方視的に調査した。【結果】8 例に胸腔ドレナージを施行し,挿入後3 例が出血性ショックとなった。2 例に緊急手術,1 例に輸血を継続した。 エアリーク持続や出血増加で他3 例が後日手術を要した。手術時間は平均83 分で,入院期間中央値は手術例7 日(4 〜11 日),非手術例9.5 日(6 〜11 日),ドレナージ期間中央値は手術例4 日(2 〜8 日),非手術例9 日(5 〜9 日)であった。【考察】胸腔鏡下手術による止血は比較的容易で,早期手術を検討すべきである。胸腔ドレーン留置後に出血が助長される症例があり,注意深い経過観察が必要である。【結論】特発性血気胸に対し胸腔ドレーンを挿入する際は循環動態の注意深いモニターを要す。

  • 伊藤 裕介
    原稿種別: 原著
    2020 年 10 巻 1 号 p. 38-43
    発行日: 2021/02/27
    公開日: 2021/03/02
    ジャーナル フリー

    〔要旨〕循環動態の安定した腹部外傷に対するnon-operative management(NOM)は成功率も高く標準的な治療となりつ つある。大阪府済生会千里病院では2011 年4 月よりNOM プロトコールを作成し,統一した管理を行っている。その有用性と問題点を検討した。2013 年1 月〜2018 年3 月までにNOM にて治療した腹部外傷126 例を検討した。ベッド上安静は3(2 〜4)日,経口摂取開始は3(3 〜4)日,NOM 完遂率は96%であった。仮性動脈瘤は13.5%に認め,11.1%に追加の血管内治療を要した。合併症は深部静脈血栓症が3.2%,肺炎が7.9%であった。死亡例は認めず,退院後の遅発性出血も認めなかった。プロトコール遵守率は19.8%であり,画像評価の基準を変え,プロトコールを改訂した。NOM プロトコールの使用は,診療の質の均一化をもたらし,医療の質の向上につながり,有用であると考える。

症例報告
  • 永川 寛徳, 宮崎 健介, 須藤 隆一郎, 中嶋 朔生, 竹内 由利子, 西原 聡志, 藤井 美緒, 山下 修, 藤井 雅和, 金田 好和, ...
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 10 巻 1 号 p. 44-47
    発行日: 2021/02/27
    公開日: 2021/03/02
    ジャーナル フリー

    〔要旨〕複数回の手術歴や腹膜透析などにより癒着・炎症性被膜を腸管に生じ,腸閉塞をきたす症候群を被囊性腹膜硬化症 (encapsulating peritoneal sclerosis;EPS)という。山口県立総合医療センターにて小腸切除吻合を要した症例22 例中,腸管内容漏出をきたした3例ともが被囊性腹膜硬化症を背景にもつものであり,1例で小腸縫合不全,1例で小腸損傷,1例で双方合併による腸管内容漏出をきたした。すべてドレナージによる保存的治療で治癒を得た。被囊性腹膜硬化症における小腸切除吻合は,文献的にも縫合不全・腸管損傷のリスクが高く,癒着剝離を最小限に抑えることが肝要である。術後の腸管内容漏出に対しては保存的治療が有効であり,術中にはそれを念頭に置いたドレナージチューブの留置が推奨されるべきと考える。

  • 明石 卓, 卯津羅 雅彦
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 10 巻 1 号 p. 48-53
    発行日: 2021/02/27
    公開日: 2021/03/02
    ジャーナル フリー

    〔要旨〕胃蜂窩織炎は急速に進行する可能性のある死亡率の高い疾患である。しかしながらその診断は身体所見や画像所見, 内視鏡所見などから臨床的に診断するしかなく,確定診断となる組織所見を待たずして治療介入をしなくてはならないことがほとんどである。今回,東京慈恵会医科大学附属柏病院で経験した6例の胃蜂窩織炎の症例から,胃蜂窩織炎の治療方針・術式を検討した。診断に関しては早期治療介入目的で,すべて臨床的に胃蜂窩織炎と診断した。6例の経験からは,治療方針や術式の決定にはvital sign や病変の局在を重視した。抗菌薬治療を選択する場合は,vital sign が安定し,かつ局所病変であることが条件である。それ以外はすべて手術治療が望ましいと考えられた。また術式決定の際にも,vital sign や病変の局在を考慮することが有用であると考えられた。

  • 岡村 国茂, 角谷 昌俊, 佐川 憲明, 富山 光広, 平野 聡
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 10 巻 1 号 p. 54-58
    発行日: 2021/02/27
    公開日: 2021/03/02
    ジャーナル フリー

    〔要旨〕症例は62歳,女性。8年前に交通事故による恥骨骨折に対して保存的治療を受けていた。左胸部違和感と嘔気を主 訴に前医でCT検査にて左胸腔への胃の脱出を認め,左横隔膜ヘルニア嵌頓が疑われたため,江別市立病院へ紹介となった。 腹膜刺激症状はなく,全身状態も安定していたため,翌日に手術の予定とした。腹腔鏡下に嵌頓した胃および肝外側区の一部を腹腔内へ整復し,ヘルニア門は非吸収糸で縫合閉鎖後,メッシュを用いて補強した。最終的に遅発性外傷性左横隔膜ヘルニア嵌頓の診断となった。術後は合併症なく経過し,第12 病日に退院された。比較的容易に整復することができ,嵌頓臓器の評価も確実に行える観点から腹腔鏡手術は有効な手段の一つと考えられた。

  • 髙田 直和, 窪田 忠夫, 深井 翔太, 坂本 貴志, 小倉 礼那, 城野 晃一, 神谷 紀之
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 10 巻 1 号 p. 59-63
    発行日: 2021/02/27
    公開日: 2021/03/02
    ジャーナル フリー

    〔要旨〕84歳の男性が間欠的な左側腹部痛と食欲不振を主訴に受診した。1週間前に転倒して同部位を打撲していた。腹部 造影CT 検査で肋間ヘルニア嵌頓が疑われた。腹腔鏡下手術を行うと,第10肋間に空腸が嵌頓して,嵌頓整復の際に腸管損傷による汚染を認めたため損傷部を体外で縫合閉鎖したうえで,ヘルニア門は大網充填で修復した。外傷性肋間ヘルニアに対する腹腔鏡下手術の報告例は少ないが,腸液による感染が危惧される場合においてはメッシュを使用しにくい。今回,腹腔鏡下大網充填術により良好な結果を得たが,メッシュの使用に制限がある際の有用なオプションと考えられる。なお,外傷性肋間ヘルニア嵌頓に対する術式としては本症例が初回報告である。

  • 長尾 美奈, 佐野 貴範, 前田 典克, 森 誠治, 岡田 節雄
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 10 巻 1 号 p. 64-68
    発行日: 2021/02/27
    公開日: 2021/03/02
    ジャーナル フリー

    〔要旨〕症例は99歳,男性。3日前からの腹痛・嘔吐を主訴に近医を受診し腸閉塞の診断で坂出市立病院へ紹介となった。 CT検査では右腹部にwhirl signを,左腹部に拡張した腸管を認めた。画像上捻転部位の同定は困難であったが絞扼性腸閉塞の診断で緊急手術を施行した。うっ血して著明に拡張した腸管の捻れを解除すると,捻転していたのは回腸末端から上行結腸であり,後腹膜への固定不良を認めた。血流障害による遅発性の穿孔や再発を危惧し,結腸右半切除術を行った。術後 19日目に退院した。上行結腸軸捻転症の発症頻度は,結腸軸捻転症のうち5.9%とまれで術前診断も困難とされるが,絞扼から腸管壊死や穿孔を起こすと重症化するため,迅速で適切な対応が必要であると考えられた。

  • 水野 真夏, 犬飼 公一, 茅田 洋之, 天野 浩司, 藥師寺 秀明, 中村 純寿, 向井 信貴, 常俊 雄介, 晋山 直樹, 臼井 章浩, ...
    原稿種別: 症例報告
    2020 年 10 巻 1 号 p. 69-72
    発行日: 2021/02/27
    公開日: 2021/03/02
    ジャーナル フリー

    〔要旨〕症例は既往に糖尿病がある79歳の男性。持続する発熱と腹痛を主訴に堺市立総合医療センターを受診した。腹部造 影CT検査で肝外側区の辺縁に早期濃染を伴う多房性の腫瘤を認め,肝膿瘍穿孔に伴う汎発性腹膜炎と診断し緊急腹腔鏡下洗浄ドレナージを行った。術後は抗菌薬にて治療を行い,残存肝膿瘍に対して経皮経肝的にドレナージを行った。経過は良好で合併症なく退院した。肝膿瘍の穿孔は死亡率が高く緊急の治療を要する。腹腔鏡手術は低侵襲だが腹腔内圧の上昇が菌血症のリスクとなるとの報告がある。肝膿瘍による汎発性腹膜炎においては初回手術では気腹時間を最小限に抑えた腹腔鏡下のダメージコントール手術を行い,生体侵襲を最小限に抑えることにより良好な転帰を得る可能性があると思われた。

  • 田邉 三思, 蔀 由貴, 佐藤 博, 長澤 由依子, 末松 俊洋, 荒巻 政憲
    2021 年 10 巻 1 号 p. 79-83
    発行日: 2021年
    公開日: 2021/06/05
    ジャーナル フリー

    症例は38歳,男性。アルコール性重症急性膵炎で入院した。治療後も発熱,腹痛が持続し,第12病日のCT検査で胃壁,十二指腸,横行結腸壁の壊死と,周囲への液体貯留を認めた。急性期の開腹手術を避けるため,経皮的ドレナージを先行した。その後,下腹部に感染を伴った被包化壊死を形成したが,第47病日に追加で経皮的ドレナージを行った。全身状態と局所の安定化を待ち,ネクロセクトミーおよび壊死腸管の切除,再建目的で第96病日に手術とし,膵全摘術,胃全摘術(Roux-en Y吻合),胆管空腸吻合術,人工肛門造設術,空腸瘻造設術を行った。術後合併症なく,術後44日で独歩退院した。

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