〔要旨〕【はじめに】腸管損傷を伴う腸間膜損傷に対しては,その診断・治療に苦慮することは少ないが,腸間膜単独損傷に関しては,手術やinterventional radiologyを含めたその治療方針の決定に関し一定の見解はない。【目的】川崎医科大学附属病院(以下,当院)での治療経験から,腸間膜単独損傷に対する手術適応を検討する。【対象と方法】2008年1月~2019年12月に鈍的腸間膜損傷と診断され,当院に入院した患者66例のうち,腸管を含むほかの腹腔内臓器合併損傷を認めない31例を腸間膜単独損傷と定義し検討した。【結果】腸間膜単独損傷において,computed tomography(CT)検査での腹水の有無や腹膜刺激症状の有無は開腹手術の適応と関係せず,出血性ショックや造影剤漏出所見,focused assessment with sonography for trauma(FAST)陽性であることが開腹手術と関係性が高かった。術前造影CT検査における日本外傷学会臓器損傷分類(外傷分類)のⅡb型損傷6例全例およびⅡa型損傷7症例のうち2症例(28.6%)に対し開腹手術が行われた。【結論】術前診断で外傷分類Ⅰa型損傷の場合は全例non-operative management(NOM)可能で,Ⅱb型損傷の場合は全例開腹手術となった。Ⅱa型損傷の中に開腹手術が必要となる症例があるため手術を検討,あるいは緊急手術が可能な環境で経過観察すべきと考えられた。
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