日本応用動物昆虫学会誌
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11 巻, 3 号
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  • 原田 文雄, 森谷 清樹, 矢部 辰男
    1967 年 11 巻 3 号 p. 83-89
    発行日: 1967/09/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1966年,横浜市保土ケ谷区内の一豚豚舎でライト・トラップにより採集した野生コガタアカイエカを用い,吸血と産卵を中心にした生態観察ならびに実験を行なった。ただし実験の一部には当所で累代飼育中の406系を用いたが,両者を比較するのが主目的でなく,相補わせる形で実験を進めた。
    1) 7∼9月の野外採集個体1卵舟あたり平均卵数は207.2で,マウス給血の対照406系172.3より多い。ふ化率には有意差なく,どちらも94%であった。
    2) 吸血ごとの産卵を3回までくり返させた場合,各回の平均卵数は174.1, 148.9, 126.7で,約15%ずつ減少した。
    3) 飼育室(27°C, RH 80%)での栄養生殖サイクルは最高4回まで認められ,この間の生存日数は羽化後約25日であった(406系)。
    4) 406系の場合,雌成虫のマウス吸血活動は受精と無関係に行なわれ,吸血後も受精(交尾)がとくに促進されなかった。しかし,野外でトラップに捕集される雌成虫は経産・未経産または吸血・未吸血を問わず大部分が受精個体であった。
    5) 1966年4∼10月の自然集団の平均経産率(%)は,4月が16.2, 5月が10.6で4∼5月は低く,6∼8月はそれぞれ31.0, 35.4, 32.9でやや高く,9月は57.7, 10月は92.8で9月から10月にかけ急上昇し,とくに10月の集団は老化の程度が著しい。また,採集時の吸血個体では6∼8月間の経産率に有意差なく,平均32.7%であった。これから推定すると,シーズン中宿主を吸血した蚊の約1/3がウイルス伝播の可能性を持っていた。
    6) 経産個体の経産回数は3回まで認められた。そのうち1回だけのものがを95%占めていたが,考察の結果,実際には2回(または3回)産卵する個体もかなり多いと推定された。
    7) 以上の成績を考察した結果,越冬に入る個体は9月以降に生産され,その大部分はもはや畜舎に飛来せず越冬場所へ移動するが,日本の暖地では9∼10月の活動蚊(吸血または吸血経産)の一部もまた越冬を完了し,翌春まで生き残ることが推測された。
  • 奥谷 禎一
    1967 年 11 巻 3 号 p. 90-99
    発行日: 1967/09/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    Food-plants of the family Tenthredinidae so far known at present were listed herein, continued from the previous paper. The plants observed by the author or reliably recorded were given in scientific names, and the plants for new records were shown with an asterisk. The synonym concerring three species were newly arranged.
  • 石川 誠男, 平尾 常男
    1967 年 11 巻 3 号 p. 100-106
    発行日: 1967/09/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    カイコの小顋に分布する味覚細胞のDDT感受性について電気生理学的方法によって次のことを明らかにした。
    1) DDT自身はいずれの味覚細胞をも直接活性化しない。
    2) DDT前処理(5秒間接触)を行なっても味覚刺激を行なわなければインパルスの発生はなく,したがって異常は観察できないが,味覚刺激を行なうと次のような影響が観察された。i)比較的低濃度のDDT前処理では一定時間後,味覚細胞の感受性が異常に高まることがイノシトール受容細胞で記録された。ii)ある濃度以上のDDT前処理により味覚細胞の各味覚刺激物質に対する反応は特有な反復興奮波を呈し,連続した衝撃波(train of impulses)を生ずる。極端に高濃度の場合には反復興奮波を生じた後,インパルスの高さは極端に小さくなり,ついには反応は消失した。iii)いずれの場合にもDDTの影響が現われるまでにはDDT接触後2分前後の潜伏期の存在が記録された。iv)まれではあったが,DDT前処理によってスパイクの陰性後電位が増大したとみられるものが記録された。
    3) 同じ材料でも小顋に分布する味覚細胞の種類によって典型的な反復興奮波を生ずるに必要なDDT濃度は多少異なることが知られた。
    4) 温度は味覚細胞のDDT感受性に大きな影響を及ぼし,15°Cから30°Cまででは低温になるほど感受性は増大した。
    5) カイコの各種系統間で味覚細胞のDDT感受性をイノシトール受容細胞の興奮を用いて比較したが,それらの間にはあまり大きな差異はなく,それと各系統のLD50で表わされる感受性との間にはほとんど相関はみられなかった。
  • 平田 貞雄
    1967 年 11 巻 3 号 p. 107-113
    発行日: 1967/09/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    キャベツ株内でのモンシロチョウ,ヨトウガおよびタマナギンウワバの幼虫と蛹の葉位別分布を調べた。
    3種とも1, 2令虫は産卵部位に支配されて中位の葉の裏側に多かったが,その後の幼虫の分布は種によって次のように異なった。
    モンシロチョウ:3令虫から分布が次第に上位葉へ移り,また葉表に現われ,葉表在虫率は5令虫では約80%であった。蛹は下位葉の裏に分布した。以上のような葉位別分布は株当り幼虫密度によっては変化しなかった。
    ヨトウガ:3令虫から上位葉へ移る傾向が見られ,5令虫の一部と6令虫の大半は結球内にはいった。また1∼5令虫はほとんど常に葉裏に分布した。以上のような分布の求心的な変化は株当り密度が高いと促進された。蛹はキャベツ株内では見られなかった。
    タマナギンウワバ:多くのものは同じ葉の裏側で生活し,したがって令が進んだ幼虫ほど下位葉に多く分布した。蛹化もその場で行なわれるようであった。ただし4個体について生活場所を連日観察したところ,2個体は一時期に2, 3枚上の葉へ移動した。
    3種について,上述のような分布の様子はどの時期でも同じであった。また種間で影響し合うということはなさそうであった。
  • 杉本 毅
    1967 年 11 巻 3 号 p. 114-118
    発行日: 1967/09/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    一般にハモグリバエ類の幼虫の令期判定には咽喉骨格または気門の大きさが用いられてきた。本報告では令期判定の簡便化を目的としてキツネノボタンハモグリバエの幼虫を材料に,測定がかなり容易な幼虫の体長,潜孔の幅および糞の大きさを令期判定基準として採用することの妥当性を検討した。
    1) 上の3形質を各々単独の判定基準として用いると,糞の大きさは精度がきわめて悪く判定基準に採用できないが,幼虫の体長または潜孔の幅によって判定を行なったときには両形質とも各令期に判定を誤る危険率が20%以下となり,必ずしも判定基準として採用できないものではないようである。
    2) 上の3形質のうち二つを変量とする判別関数を求めて令期判定を試みた。その結果幼虫の体長と潜孔の幅を変量とする判別関数によって判定すると判定を誤る危険率はいずれの令期においても10%以下となり,これら2形質のうちいずれかを単独に用いたときよりもある程度低くなった。一方潜孔の幅と糞の大きさを変量としたときには2令期に20%余となり,前者を単独に用いたときに比べて危険率は殆んどかわらなかった。
    3) 以上のことから20%以下の判定を誤る危険率が許されるときには幼虫の体長または潜孔の幅を,10%以下に抑える必要のあるときにはそれら2形質を変量とする判別関数を用いれば幼虫の令期判定はある程度簡便化されよう。
  • 第5報 人工飼料の栄養条件と休眠幼虫の健康度
    釜野 静也, 湯嶋 健
    1967 年 11 巻 3 号 p. 119-124
    発行日: 1967/09/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    The larvae of the rice stem borer, Chilo suppressalis WALKER, were reared on several artificial diets of different compositions under diapause-inducing condition (25°C and 12hr photoperiod). After 60 days of aseptic rearing, the larvae were kept at 8°C for 60 days, then they were incubated at 25°C for pupation. When the larvae were reared on diets containing rice bran or rice germ seedlings, most of the larvae survived after low temperature treatment. On the other hand, if the larvae were reared on four other kinds of diets which lack in plant materials above-mentioned, 80% of larvae died during the course of low temperature treatment. The larval blood proteins are divided into three main protein bands by agar gel electrophoresis technique; that is, albumin and globulin bands moving to anode side and another globulin band moving to cathode side. Of these bands, the globulin band moving to cathode side was more clearly detected in the diapausing larvae which were reared on suitable diet than that of the larvae reared on unsuitable diet. Accordingly, the inspection of protein fractions of haemolymph by means of an electrophoresis technique seems to be very useful to approach nutritional studies in insects.
  • 坂井 道彦, 佐藤 安夫, 加藤 正幸
    1967 年 11 巻 3 号 p. 125-134
    発行日: 1967/09/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    Nereistoxin(イソメ毒)の一誘導体である1, 3-bis (carbamoylthio)-2-(N, N-dimethylamino) propaneとその塩酸塩(一般名カルタップ(cartap),商品名パダン®)の殺虫効力を試験して以下の成績をえた。
    1) 殺虫試験の結果,これら化合物はニカメイチュウ,モンシロチョウなどのりん翅目幼虫,ニジュウヤホシテントウ,アズキゾウムシ,ダイズアブラムシおよびツマグロヨコバイに相当高い殺虫力を有することがわかった。イエバエ成虫に注射した場合は殺虫力があるが,局所施用では効力がなかった。カンザワハダニに対する殺虫力は認められなかった。ハスモンヨトウとミツバチに対する殺虫力はやや低かった。
    2) ポット試験でニカメイチュウ食入幼虫に対してこれら化合物の0.025%以上を含む液,ならびに1%および2%粉剤は,高い殺虫力を示した。また,幼虫食入防止効力の持続性は,カルタップが化合物IIIよりすぐれている。カルタップの効力持続性はスミチオン,バイジットおよびエルサンより良好であったが,EPNよりやや劣った。
    3) 水稲に散布したカルタップの耐雨性は良好であり,また日光に対してもかなり安定であることが確かめられた。
    4) カルタップは水稲葉鞘外部から茎内に浸透して,食入中のニカメイチュウを殺すことが認められる。5) 国内数か所より採集したニカメイチュウのカルタップに対する感受性は,採集地間で差がないと思われる。
    6) カルタップ50%水溶剤1,000倍液の散布でミカンハモグリガの防除が可能であった。
    7) カルタップの哺乳動物および魚類に対する毒性は比較的低かった。
  • 加藤 正幸, 佐藤 安夫, 坂井 道彦
    1967 年 11 巻 3 号 p. 135-139
    発行日: 1967/09/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    カルタップとDCPA製剤との混合使用の可能性について殺虫力,殺草力および水稲に対する薬害などの点から検討した。カルタップとDCPAとの混合散布処理は,DCPAと有機リン系殺虫剤とを混合散布した場合に比べて水稲に対する薬害の少ない点ですぐれており,また混合散布してもニカメイチュウに対する殺虫効果およびヒエに対する除草効果は各薬剤単用区と同等の防除効果を発揮した。このようにカルタップが有機リン系殺虫剤と異なってDCPAの水稲に対する薬害作用を増大させないのは,in vitroでの実験でも判明したようにカルタップが水稲のDCPA分解酵素活性を全く阻害しないためと考えられる。
  • 加藤 勉
    1967 年 11 巻 3 号 p. 140-141
    発行日: 1967/09/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    寄生蜂の研究とその大量生産を目的として,ヒメムカシヨモギとアキノキリンソウによるCeroplastes属3種のカイガラムシの飼育試験を行なった。その結果,3種のカイガラムシはいずれも両種の植物上でよく生育し,大量飼育にこれらの植物を利用できることが明らかとなった。とくに,ヒメムカシヨモギにおける着生数は多く,また,着生効率は高かった。
    一方,両種の植物上に着生したルビーロウムシに対するルビーアカヤドリコバチ第1世代の寄生率はアキノキリンソウが52±8.86%で,ヒメムカシヨモギの27±13.91%より2倍近く高率であった。
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