捕食者ナミテントウ幼虫を種々のシャーレあたり餌(マメアブラムシ)密度で飼育し,その結果から,発育過程にあるナミテントウ幼虫が餌アブラムシの密度調節に役だち得るか否かを知ろうとした。
1. 各令における1個体1日あたり捕食数(
x)は,餌密度(
w)の増加に応じて飽和曲線を描いて増加した。
2. 各令における生存期間(
y)は,捕食数が成長可能な最小捕食数以下の時は捕食数の増加に応じて増加すると推測され,それ以上の時は増加に応じて始めは急激に後には緩やかに減少した。
3. 各令から次令になった時の生存率(
Z)は,餌密度の増加に応じてS字型曲線を描いて増加した。
4. 各令による捕食率
Pは,餌密度の増加に応じて始め増加し,ある密度で最高になった後に低下し続ける可能性が高いと推測された。したがって,また,ある餌密度の範囲内ではその調節に役だち得る可能性が高いとも推測された。
Pnw%={(
x×
y)/(
w×
ln)}×100ここでx: 1日1個体あたり捕食数,
y:生存期間,
w:餌密度,
n:令数,
ln:
n令の平均最長生存期間。
5. 各令がその前令の過程の連続としてあらわれる場合の各令による捕食率
Qは,餌密度の増加に応じて始め増加し,ある密度で最高になった後に低下し続けた。したがって,ある餌密度の範囲内ではその調節に役だち得る。
Qnw%={(
x×
y×
Zn-1)/(
w×
ln)}×100ここで
Zn-1: (
n-1)令から
n令になった時の生存率。
6. 全幼虫期による捕食率
Rは,餌密度の増加に応じて始め増加し,ある密度で最高となった後に低下し続けた。したがって,ある餌密度の範囲内ではその調節に役だち得る。
Rw%={100
4Σ
n=1(
x×
y×
Zn)/(
w×
L)}ここで
Zn:卵から
n令になった時の生存率,
L:幼虫の平均最長生存期間。
7. これらの結果から,発育過程にあるナミテントウ幼虫の捕食は,ある餌密度の範囲内ではその調節に役だつ可能性があるといえる。しかしどの場合でも,捕食率が比較的に高い餌密度では,捕食者は飢えており,捕食者の発育,増殖にとっては比較的に悪い餌密度であった。
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