日本応用動物昆虫学会誌
Online ISSN : 1347-6068
Print ISSN : 0021-4914
ISSN-L : 0021-4914
14 巻, 1 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 岸野 賢一
    1970 年14 巻1 号 p. 1-11
    発行日: 1970/03/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    わが国において,ニカメイチュウの発生時期や発生回数が地域によって異なる原因を解明しようとして,産地の異なる材料を用いて越冬世代の後休眠期発育,休眠の誘起,夏世代の幼虫発育について実験を行なった。
    1. 越冬世代虫の後休眠期発育は地域によって差がみられ,北緯36°∼40°にかけて発育の速い地帯があり,その南北両側に発育のおそい地域がある。
    2. 後休眠期発育は,1, 2回発生地帯とも,北のものほど速いという勾配変異がみられるが,発生の境界地域で勾配変異の逆転がみられ,この変異は連続的と考えられる。
    3. 越冬世代蛹期間にも地域性がみられ,4群に類別できた。
    4. 休眠誘起の臨界日長は原産地の緯度と高い相関関係があり,緯度にしたがった勾配変異が認められた。この値は南のものほど低く,発生回数や生態型とはあまり関係がないようである。
    5. 非休眠条件では幼虫発育にも地域差が認められた。この地域的変異は,後休眠期発育にみられた勾配変異と同じ傾向を示した。
  • 加藤 勉
    1970 年14 巻1 号 p. 12-18
    発行日: 1970/03/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1. 1966∼1967年に山口県大島郡の2地点において,ミカントゲコナジラミの年間の発生経過についての調査を行なった。
    2. その結果,橘町油良では,1966年には3世代を経過して第3世代の3令幼虫∼蛹で越冬し,1967年においては4世代を経過して第4世代の卵∼初期幼虫を主に,一部は第3世代の蛹で越冬した。東和町地家室では,1966年には4世代を経過して第4世代の卵∼初期幼虫で越冬し,また,1967年にはその経過は不明であった。
    3. 山口県大島郡においては本虫の年間の発生経過が3世代と4世代の間を地域的にも年次的にも微妙に流動しており,各世代の発生時期に差異がある。
    4. 日本のカンキツ栽培地帯における本虫の越冬令期は,第3世代の3令幼虫から第4世代の3令幼虫に至るまで温度傾斜にしたがって広く分布し,特に,両世代にわたって流動的な中間地帯においては,年次的にそれが本虫の越冬に不利な比率で構成される場合があり,地域個体群の急速な密度低下の原因になっている。
  • 村松 義司, 杉野 多万司, 中村 和雄
    1970 年14 巻1 号 p. 19-24
    発行日: 1970/03/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    6月上旬,田植前の休閑田でツマグロヨコバイの5令幼虫,雌成虫,雄成虫の個体数をマーキング法により推定し,すくいとり法およびサクションキャッチャーによる個体数調査法の効率を検討した。またマーク虫を使ってツマグロヨコバイの移動の様相を調べた。その結果,
    1) 6月8日の休閑田の調査ほ場におけるツマグロヨコバイの成虫個体数は,マーキング法によって1m2あたり約32匹と推定された。
    2) すくいとり法は雌成虫にくらべて雄成虫を多くすくいとる傾向がみられるが,成虫全体の捕獲効率は約10%前後で,比較的安定していることがうかがわれた。
    3) 5令幼虫の場合,すくいとり法の捕獲効率は成虫にくらべて低く,マーキング法による5令幼虫の個体数推定はさらに検討を要する。
    4) サクションキャッチャーによる個体数調査法は,すくいとり法にくらべて5令幼虫を高い率で捕獲し,幼虫の調査に適していることが示された。また,成虫の雌雄による捕獲効率のちがいは,すくいとり法の場合ほど大きな差はみられなかった。
    5) この時期のほ場外へのツマグロヨコバイの移動は,概して少なかった。
  • 奥谷 禎一
    1970 年14 巻1 号 p. 25-28
    発行日: 1970/03/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    After the publication of the previous papers in 1967, the author became aware of many synonyms or misidentified species through his studies at the British Museum and U.S. National Museum in 1967-68, and also gave some new records. The species in the first chapter should be deleted from the former papers as it has now become clear that they were misidentified and recognized as undescribed species. The synonyms were arranged in the second chapter, and in the third chapter the author enumerated new records of some reared sawflies and their food-plants.
  • 稲泉 三丸
    1970 年14 巻1 号 p. 29-38
    発行日: 1970/03/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    従来,わが国のワタアブラムシは卵態でクサギ,ムラサキシキブ,ムクゲに越冬することが知られていたが,筆者は胎生雌越冬もすることを確かめた。また,クサギ,ムラサキシキブに卵を産むアブラムシはワタアブラムシとは異なる,ほかのAphisの1種であることをつきとめた。
    さらに,卵越冬する植物として,アカネ,ツルウメモドキ,クロウメモドキを,胎生雌越冬する植物として,オオイヌノフグリ,タチイヌノグリ,イヌノフグリ,ナズナ,タチアオイ,キク,イチゴ,オオバコなどを記載した。
    また,野外について,これらの冬寄主上に春はじめて有翅虫の羽化する時期と,中間寄主へはじめて有翅虫の飛来する時期とを調査し,その結果からワタアブラムシの冬から夏にかけての伝播の経路を推察した。
    そのほか,世界各地のワタアブラムシの越冬法についての知見をもとにして,卵および胎生雌越冬と気候,地理との関係を論じた。
  • 西野 敏勝, 大串 龍一, 小野 公夫
    1970 年14 巻1 号 p. 39-43
    発行日: 1970/03/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    コアオハナムグリの最適防除時刻を決めるため,カンキツの花にたいするこの虫の訪花活動の日周変化を観察した。
    カンキツの花上のコアオハナムグリは,晴天の日の10時∼12時に最も多い。夜間は一部の個体を除いてカンキツ園外に去る。雨天の日は訪花活動はほとんど見られない。ミツバチの訪花活動もこれとよく似ているが,小雨の日は訪花が見られる。ヒメヒラタケシキスイは昼夜ともカンキツ花中にいる。雨天の日も訪花数は減らない。
    コアオハナムグリは,温州ミカンでは16時をすぎると大半が園外に去るが,ブンタンでは花や小枝にとまって夜をすごすものがかなり残る。これは,この虫の品種に対する選好性と関係しているように思われる。
    訪花するのは雌が多いが,夜間を花ですごす個体は雄が多かった。
    雨天のさい訪花を阻害する要因として気温,地表温度,照度などを検討したがいずれも晴天と雨天でとくに注意すべき差がなく,雨そのものが飛来活動を阻害するものと思われる。
feedback
Top