日本応用動物昆虫学会誌
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18 巻, 2 号
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  • 竹田 真木生
    1974 年 18 巻 2 号 p. 43-51
    発行日: 1974/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    トビイロウンカの配偶行動を観察し,その行動解析と交尾に関する若干の実験を行なった。
    (1) 雄の接近に先だつ成熟雌の腹部上下微振動は,雄の存在による視覚刺激によって起こる。雄による雌の認識は視覚刺激が重要であると思われるが,その程度はあまり厳密なものではなかった。
    未成熟雌個体は既交尾個体でみられたような交尾拒否行動をとらず,イネ苗上を移動して雄からのがれた。
    (2) 両翅型の雄に両翅型の雌を選択させる組合わせを作ると,どちらの場合も短翅型の雌がよく選好された。これは短翅型の雌がイネ苗により多くとどまることによると思われた。
    (3) 雌の羽化から交尾に至るまでの期間は短翅型で2∼4日,長翅型で3∼7日であった。雄では1日以内にかなりの個体が成熟を完了していた。
    雄の交尾能力は短翅型と長翅型で明らかな違いがなかった。観察期間中の最高交尾回数は1日6回,全生存期間を通して21回であった。
  • 樹皮下穿孔虫キイロコキクイムシの不妊化線量および羽化阻止線量について
    吉田 忠晴, 深見 順一, 福永 一夫, 松山 晃
    1974 年 18 巻 2 号 p. 52-58
    発行日: 1974/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    マツ類の樹皮下穿孔虫であるキイロコキクイムシをアカマツ試験木を用いて飼育,各発育段階の60Coγ線に対する放射線感受性を測定した。
    その結果は次のように要約される。(1)放射線の不活性化作用に対する各発育段階の感受性は,他の昆虫と同様に卵>幼虫>蛹>成虫の順に強い。(2)すべての交配組合せを通じて,成虫照射での完全不妊化線量は15 krad程度であった。(3)羽化阻止線量は5日目卵では5 krad, 3令幼虫では7 krad,蛹では12 krad以上であった。(4) 3令幼虫の不妊化線量は6 krad,蛹では8∼9 kradであった。
  • III. 初期幼虫密度の生存におよぼす影響
    西垣 定治郎
    1974 年 18 巻 2 号 p. 59-64
    発行日: 1974/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ドウガネブイブイのふ化直後の幼虫の密度を変え,屋外の植木鉢中でほとんど全幼虫期間にわたって飼育を行なった。その間,定期的に幼虫の個体数の変化を調査した。その結果,初期幼虫密度がその後の幼虫の生存に大きな影響をあたえることが明らかになった。
    すなわち,幼虫生存率の経時的変化を見ると,初期密度の低い区では直線状にゆるやかに低下し,実験終了時にも高い生存率を維持していたのに対し,高密度区では実験の初期に急激な生存率の低下が見られ,最終的な値も非常に低かった。
    幼虫密度も同様の変化を示したが,実験終了時にはいずれの密度区もほぼ一定の密度に収れんする傾向が認められたことから,幼虫生存限界密度が存在するように思われた。さらに最終時の幼虫密度を最大にする最適初期密度の存在も推測された。
    このような生存率,密度の低下を引き起こした最大の死亡要因は幼虫初期にみられる密度依存性の強いものであって,具体的には幼虫間の共食いによるものと考えられた。
  • I. 冬世代および春世代
    長田 勝, 伊藤 嘉昭
    1974 年 18 巻 2 号 p. 65-72
    発行日: 1974/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    近年琉球列島に侵入したモンシロチョウPieris rapae crucivoraの沖繩本島における冬から春にかけての生命表を作製した。
    生存曲線の型は,東京付近の春の世代について得られたものと基本的におなじであったが,1齢幼虫期の死亡率はやや高く,いっぽう,微粒子病ウイルスが見られず,アオムシサムライコマユバチがほとんど発生しないこと,およびアオムシコバチが見られないことのため,5齢幼虫・蛹期の死亡率は低かった。全体として世代死亡率は低く,冬から春にかけてのモンシロチョウの増加を良く説明できた。
    マーキング法によって成虫の生存および死亡を調査したところ,成虫の平均寿命は2月に1.6日,3月に2.9日であった。
  • 永田 徹, 守谷 茂雄
    1974 年 18 巻 2 号 p. 73-80
    発行日: 1974/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1. BHCのトビイロウンカに対する効力低下問題に関連して,BHC感受性の世代間変動を調査した。佐賀県伊万里市の慣行防除田では初期飛来虫(第2回成虫)に比べ,第4回ないし第5回成虫は感受性が著しく低下し,LD50で14∼19倍の差異に達する現象が1969∼70年にわたって観察された。
    しかし,無防除田または防除回数のきわめて少ない水田ではこのような変動は認められなかったことから,薬剤の陶汰作用によって,抵抗性個体群が急速に形成されたものと推定された。また,初期飛来時にみられた感受性の復元には,トビイロウンカの長距離移動による個体群の更新が関与していると考察した。
    2. BHC感受性の世代間差異は,10世代以上の室内飼育によっても維持された。またディルドリンではこの世代間差異はBHCより大きく,フェニトロチオンでも6∼7倍の差異がみられた。DDT,カルバリルでは差異はみられなかった。
    3. 初期飛来のさいにえられたBHC感受性系統に対する温度条件,日長,はね型などの影響を検討したが,いずれもBHC感受性を低下させる傾向は認められなかった。
    4. 薬剤の吸収速度と感受性差異との関係を知るため,BHC感受性,抵抗性系統におけるBHCとディルドリンの吸収速度を比較したが,差異は認められなかった。
  • 水島 俊一, 山田 英一
    1974 年 18 巻 2 号 p. 81-88
    発行日: 1974/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    北海道のほぼ中央部に位置する長沼地方の農耕地および周辺におけるネズミ類の種類構成と食性を調べ,それらの生態的地位などを考察した。
    1. 1969∼1972年の4年間にわたり水田,畑および周辺非農耕地にて毎年3回の捕殺および生捕り調査を行ない,捕殺個体については胃内容物を分析して食性をみた。
    2. 北海道に生息する4属8種のネズミ類のうち6種が捕獲された。捕獲数の合計はエゾヤチネズミ,カラフトアカネズミ,ドブネズミ,ハツカネズミ,ヒメネズミ,エゾアカネズミの順になっている。
    3. ドブネズミとハツカネズミの食性は似ており,イネを中心に作物も好食する。しかし前者は水田,排水溝や休耕田に多く,後者はカボチャ,エンバクなどの畑に集まり両者の行動範囲は重なっていない。
    4. エゾアカネズミとヒメネズミは本来森林性のネズミであり,農耕地へは一時的に侵入したものと思われ捕獲数も少ない。食性にも大きな差はなく動物質や若干の作物を含む植物の種実が主体である。
    5. カラフトアカネズミは全道的な分布や生態にまだ不明の点が多い。農耕地で捕獲される割合が多く,食性は動物質とともに,イネやエンバクなどの作物の摂取が多い。本州のアカネズミと似た生態的地位にあると考えられる。
    6. エゾヤチネズミは森林や草原はもとより農耕地とその周辺にも数多く分布しているが,農耕地での捕獲割合は他種にくらべて低い。Microtus属のいない北海道でハタネズミと似た生態的地位を占めていると考えられる。
  • 桑原 雅彦
    1974 年 18 巻 2 号 p. 89-93
    発行日: 1974/06/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    屋外の網室内で継代飼育したヒシモンヨコバイの第2, 3回成虫を用いて,口針挿入や歩行,飛しょう等の活動の日周期性について調査した。
    ヒシモンヨコバイ成虫は第2回成虫期には夜明け前後と夕刻から夜半前にかけての2回に口針挿入や歩行,飛しょう等の活動が認められる薄明時(たそがれ時)活動型で,双峰型の日周期性を示した。約1,000ルックス以下の明るさで活動がみられ,飛しょう行動は約1ルックスから200ルックスの比較的狭い範囲で行なわれた。夕刻から夜半前にかけての諸活動は明け方のそれよりも活発で,早朝では,低温により活動が抑制されているものと思われる。
    第3回成虫期には朝,夕の低温による活動の抑制により,夕刻または日中に活動が認められる単峰型の日周期性が観察された。
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