15aの水田にダイアジノン3%粒剤を水面施用して,その有効成分の動態を化学的に追跡し,同時にニカメイガ幼虫の殺虫効果を生物学的に検討した。
1) 10a当り94.5gの有効成分について施薬1日後の分配をみると,水中に66g,土壤中に38g水面上の空気中にガスとして24時間に3.6g,稲体中に0.6gであり,水中で最も多かった。水中濃度,蒸散ガスは1日後,稲体濃度は2日後に最高値を示した。
2) 検出された全量は1日後で最も多く,4日後では降雨のためか急減し,15日後では施用量の2%が土壤に検出された。
3) 水面からダイアジノンのガスとして蒸散する量は水中濃度と高い相関性があり,圃場で採取した量は室内試験によって求めた推定量とほぼ一致した。
4) 稲体中の部位別濃度は内外部位間に大きな差があり,外側部位は水中ダイアジノンの葉鞘からの移行が大きいため高濃度になったものと考えられた。また,ニカメイガ幼虫の食入部位は水上外側葉鞘部に集中しておりこの部位の殺虫率と分析結果より,ほぼ完全に食入幼虫を殺虫しうる稲体濃度は0.3ppm以上と推定され,その期間は3kg/10aの施薬量の場合,施薬日前後4日の9日間と推定された。
5) 蒸散ガスのみによるニカメイガ幼虫に対する殺虫効力は水面施用の場合,期待できないと思われた。
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