日本応用動物昆虫学会誌
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18 巻, 4 号
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  • I. 攻撃回数の分布
    塩見 正衛
    1974 年 18 巻 4 号 p. 159-165
    発行日: 1974/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1. 捕食性のカメムシPodisus maculiventrisは,被捕食者に針状の口をつきさして体液を吸い殺す。生きている被捕食者に対する攻撃は,必らずそれを殺す。またこのカメムシは死んだ被捕食者をも攻撃し,摂食する。
    2. このような性質をもつ捕食者が,より多くの被捕食者を殺すには,捕食者の集団は,集団としてどのような性質をもっておればよいかを知るため,極めて簡単な実験を行ない,それらからえられた知見にもとづいて,統計学的モデルを作った。このモデルは,捕食者数,被捕食者数,単位時間あたり攻撃回数および被捕食者の死亡数の間の関係を結びつけるものである。
    3. 作られたモデルは,捕食者および被捕食者が移動しないと仮定したときには,(1)攻撃回数が多い方が被捕食者の死亡数は高まるのは当然であるが,(2)それと同じ位あるいはそれ以上に,捕食者の攻撃回数(あるいは攻撃能力)が捕食者集団内で均一であることが被捕食者の死亡数を増加させるのに重要であることを示している。
  • 鈴木 芳人, 桐谷 圭治
    1974 年 18 巻 4 号 p. 166-170
    発行日: 1974/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    野外より採集したキクズキコモリグモ幼生を16時間照明,30°C恒温室内で飼育し,亜成体期と成体期の食物条件がクモの増殖におよぼす影響を調べた。
    1. ツマグロヨコバイ雌成虫を餌に用いた場合,亜成体期に日当り1頭以上捕食した個体は正常に発育した。しかし,0.5頭捕食した個体は発育が遅延し,産卵能力の低下した小形な成体となった。
    2. 成体の産卵前期間は日当り捕食数の増加により短縮され,4頭以上で最も短く9日であった。
    3. 日当り捕食数に対する日当り卵形成数の回帰からツマグロヨコバイ1頭を捕食する毎にクモは約3卵を形成することが示唆された。
    4. ツマグロヨコバイ単独の餌条件にくらべ,複数種の餌を与えたクモの産卵数は著しく増加した。
  • 高橋 巌, 桝井 昭夫
    1974 年 18 巻 4 号 p. 171-176
    発行日: 1974/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    15aの水田にダイアジノン3%粒剤を水面施用して,その有効成分の動態を化学的に追跡し,同時にニカメイガ幼虫の殺虫効果を生物学的に検討した。
    1) 10a当り94.5gの有効成分について施薬1日後の分配をみると,水中に66g,土壤中に38g水面上の空気中にガスとして24時間に3.6g,稲体中に0.6gであり,水中で最も多かった。水中濃度,蒸散ガスは1日後,稲体濃度は2日後に最高値を示した。
    2) 検出された全量は1日後で最も多く,4日後では降雨のためか急減し,15日後では施用量の2%が土壤に検出された。
    3) 水面からダイアジノンのガスとして蒸散する量は水中濃度と高い相関性があり,圃場で採取した量は室内試験によって求めた推定量とほぼ一致した。
    4) 稲体中の部位別濃度は内外部位間に大きな差があり,外側部位は水中ダイアジノンの葉鞘からの移行が大きいため高濃度になったものと考えられた。また,ニカメイガ幼虫の食入部位は水上外側葉鞘部に集中しておりこの部位の殺虫率と分析結果より,ほぼ完全に食入幼虫を殺虫しうる稲体濃度は0.3ppm以上と推定され,その期間は3kg/10aの施薬量の場合,施薬日前後4日の9日間と推定された。
    5) 蒸散ガスのみによるニカメイガ幼虫に対する殺虫効力は水面施用の場合,期待できないと思われた。
  • II. 生活史と発生消長
    植松 秀男
    1974 年 18 巻 4 号 p. 177-182
    発行日: 1974/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    マダラツヤコバチの生活史と宮崎,福岡における発生消長を調査した。
    1. 産下卵はstalk typeで卵本体は長楕円形で長さと幅はそれぞれ174μと62μであった。孵化直後の幼虫は4対の気門を有するが,老熟幼虫では気門は8対である。蛹ははじめ乳白色であるが発育が進むにつれて黒褐色となる。体長と幅はそれぞれ895μと435μであった。
    2. 20°C, 25°C, 30°Cで飼育した時の卵から成虫羽化までの雌の発育所要日数はそれぞれ34.2日,20.3日,14.8日であった。発育零点は12.7°Cで1世代に要する有効積算温度は259日度であった。
    3. 成虫は宮崎で4月中旬から11月末まで認められ年8世代,福岡では7世代を経過すると考えられた。
    4. 本種の卵はフタスジコバチの若令幼虫が寄生した生きたカイガラムシの体内にも産下されるが,11月に産下されたこれらの卵は冬期間にほとんど死亡するものと思われる。
  • 木村 滋
    1974 年 18 巻 4 号 p. 183-188
    発行日: 1974/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    カイコの4齢幼虫脱皮期における炭水化物の変動を多糖類の合成および分解との関連において追求した。
    1. 脱皮期間中の体壁のグリコーゲン量は新外皮形成開始時まで増加し,その後脱皮直後まで急減する。一方血液トレハロースの増減のパターンは,グリコーゲンと比較して,その増減の時期は異なっているが,傾向はほぼ一致している。血液グルコースおよびヘキソサミン量はこの期間中常に低く,一定である。
    2. 体壁のキチン量は新外皮形成開始12時間まで減少し,その後脱皮直後まで急増する。一方,体壁のヘキソサミン量は脱皮直前まで緩慢に増加する。体壁キチナーゼ活性は,脱皮期に入ると急増し,その期間中常に高い値を示した。この酵素活性の変動はキチン量の減少およびヘキソサミン量の増加と一致している。
    3. 14C-グルコースを投与し,その後の幼虫脱皮期間中の炭酸ガス,単糖類および多糖類の放射能を測定した結果,4齢の前半期にグリコーゲンとして蓄積された炭水化物は脱皮期の後期に,グリコーゲン→トレハロース→グルコース→炭酸ガスの経路を経て代謝されることが知られた。また,キチンの放射能が新外皮形成時に2倍になることから,旧外皮の分解産物よりもグリコーゲン由来のグルコースが新外皮形成に利用されるものと思考される。
  • 浅山 哲, 稲垣 育雄, 川本 文彦, 須藤 千春
    1974 年 18 巻 4 号 p. 189-197
    発行日: 1974/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ドクガおよびクスサンの核多角体病ウイルス(NPV)の成熟過程と感染に伴う特異構造の消長について電子顕微鏡観察を行った。ウイルスは初め核内の凝集クロマチン部位より点状粒子像として出現し,後に桿状を呈するnucleocapsidとなった。nucleocapsidは規則的に整列し次に核質中へ遊離した。この間クロマチンは消失し,新たに被膜体が形成され,遊離nucleocapsidはenvelopmentされた。envelopmentされるnucleocapsid数は,ドクガNPVでは1∼5本の範囲にあり,2本が最も多かったが,クスサンNPVでは1∼9本であり,3本前後が多かった。まれにnucleocapsidを内蔵しない被膜の多角体内編入も観察された。次に多角体形成が開始され,多角体の外周には多角体表層部の形成と同時に多角体膜が形成された。多角体膜と多角体表層部はいずれもアルカリ難溶性であった。
    また本病ウイルスの成熟過程中にクロマチン部分にはround dark spotの消長が見られ,核の内外にはfibril構造が観察された。多角体に連結するfibril構造には縞状の周期性構造もみられたが,この像は多角体蛋白の周期性構造とも異なっていた。鞘状膜構造はnucleocapsidの出現と同時期にクロマチン部より出現し,またクロマチン消失後に平行線状構造が出現する等の特異構造について考察した。
  • 於保 信彦, 山田 偉雄, 中沢 斉
    1974 年 18 巻 4 号 p. 198-199
    発行日: 1974/12/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
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