日本応用動物昆虫学会誌
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19 巻, 1 号
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  • 浅山 哲, 川本 文彦
    1975 年 19 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    モンシロドクガ核多角体病ウイルスと他の核多角体病ウイルス(NPV)間における顕著な差は,被膜内nucleocapsid数に見られた。本ウイルスのnucleocapsid束は1∼39本より構成されており,最高ひん度は7本であった。1, 4, 10, 12, 16, 19, 21および24本のnucleocapsidを内蔵する被膜は,そのひん度分布において特徴的な小ピークを示した。6角形の輪郭を示すnucleocapsidの規則的配列が,多数のnucleocapsidを内蔵する被膜や無被膜nucleocapsid集団の横断面に観察された。nucleocapsidは桿状を呈しており,直径約40nm,長さ約350nmであった。3角形あるいは不規則ないびつ形を示す多角体の大きさは1∼3μであった。まれに2個の結合多角体が核内に観察された。
    NPV感染Trichoplusia niにのみ観察されているmembrane-like profileが,fibril構造に関連して宿主細胞内に認められた。本ウイルスの成熟過程において,多くのウイルス粒子がfibril構造塊と密接に平行して認められた。しかしながらウイルスは,fibril構造内にまったく認められなかった。核内増殖に類似する本ウイルスの増殖が,感染脂肪体細胞の細胞質に観察された。
  • 横井 進二, 小美野 禎司, 辻 英明
    1975 年 19 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ほ場での食毒剤の地表面散布を想定して,土(バーミュキュライト)を入れたシャーレ内に食草(ハクサイ葉片)と幼虫を入れ,その土の上にトリクロルフォン(有機リン酸エステル殺虫剤)を含有する食毒剤を(模擬的に)施用すると,ヨトウムシ類3種幼虫に対する防除効果が示された。その有効順位は若令∼中令期で,タマナヤガ>ハスモンヨトウ>ヨトウガ,老令期では,タマナヤガ=ハスモンヨトウ>ヨトウガであった。
    ほ場作物に対する殺虫剤の葉面散布を想定してトリクロルフォンまたはイソキサチオン乳剤希釈液にハクサイ葉片を浸漬し,風乾後幼虫を放つと両殺虫剤は,3種幼虫に高い食毒効果を示した。しかしこれら殺虫剤に対する3種幼虫の感受性の高さはタマナヤガ=ヨトウガ>ハスモンヨトウの順で,前記の食毒剤の模擬的な地表面施用の効力順位とは一致しなかった。当然,3種幼虫の行動の差が問題となる。前報(小美野ら,1973)で示された潜土性を示すようになるステージ(若さ)の順位,タマナヤガ>ヨトウガ>ハスモンヨトウも完全には一致しないが,タマナヤガに対する効力には関係があるとみられる。
    前記食毒剤から殺虫成分を除去して与え,ハクサイまたはギシギシの葉片を併置して,3種幼虫による摂食量をみると,食毒剤に対する選好性は,ハスモンヨトウ≥タマナヤガ>ヨトウガの順であった。これは前記の模擬施用の効力順位と完全には一致しないが,ヨトウガ幼虫に対する効力との関係をうかがわせるものである。
    一方,容器内に2個の葉片を離して置き,一方の葉片のみに幼虫を静止させると,元の葉片からの離れやすさは,タマナヤガ>ハスモンヨトウ≥ヨトウガの順位で,前記食毒剤の効力順位と関係が大きいと思われた。また,別の葉片に移る傾向はヨトウガ幼虫では極めて少なく,タマナヤガやハスモンヨトウでは移動がみられ,それは幼虫の密度に依存的であった。しかし前もって高密度飼育されたものでも,葉片に1頭のみつけられた実験では移動が起こり難く,1頭飼育されたものでも5頭で実験した場合,移動が起こりやすかった。従ってこの移動の主な原因は,それ以前の飼育密度よりも,その時点における他個体の存在によるものであると考えられる。
  • 青木 襄児, 片桐 一正, 串田 保
    1975 年 19 巻 1 号 p. 17-22
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    オオスジコガネ幼虫の糸状菌病による自然感染死体から菌を分離,培養し,菌種を同定した結果,Beauveria tenella, B. bassiana,およびSynnematium jonesii類縁種を見出した。ドウガネブイブイ,ナガチャコガネ,およびアカビロードコガネに対する接種実験の結果,前2菌の病原性を認めた。S. jonesii類縁種はS. jonesiiの記載にくらべてphialideが短かく,分生胞子の形がやや異なり,その大きさも小さかった。
    B. tenellaおよびB. bassianaがコガネムシ類に感染していることの報告は,わが国では最初と思われ,またSynnematium属菌がコガネムシ類から分離されたことの報告は世界で最初と思われる。
  • 立花 観二
    1975 年 19 巻 1 号 p. 23-28
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    すでに筆者は,これまで完全虫体のままでは,きわめて困難であった昆虫背脈管の脈動曲線の記録を,光電管(Photo-cell)を利用する方法によって,可能としているが,今回,Photo-cellの代りに硫化カドミウムセル(CdS-cell)を利用し,脈動曲線をさらに効率よく記録することに成功した。すなわち,ピックアップ部において,1辺にCdS-cellをそう入し,他の3辺に50K ohmの抵抗3こ(うち1こは可変抵抗)を用いるエレクトロ・ブリッジを形成した。背脈管の所定部位に一定光線を照射し,脈動による反射光線の強弱をCdS-cellで受光し,その電気抵抗の増減による電流の変化を増幅し,これをペン書きオッシログラフで記録したものが脈動曲線である。この方法によって,カイコなど数種の幼虫・蛹・成虫の背脈管脈動曲線の記録例を示し,これらの波形を考察したが,さらにCdS-cell利用法とPhoto-cell利用法との優劣を比較し,両者による曲線の特性にはほとんど差異はないが,前者は後者の14∼17倍の高感度をもつこと,ピックアップ部が小さく,電源乾電池の消耗が小さいなどの利点をもつことを明らかにした。
  • II. 1年間の調査からみた個体群動態の特質
    伊藤 嘉昭, 崎山 正美, 長田 勝
    1975 年 19 巻 1 号 p. 29-34
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    沖繩本島においてモンシロチョウの個体数は10月頃から冬にかけて増加し,12, 1月にやや減少したのち,3∼5月のあいだ増加を続け,6月ないし7月に激減する。この密度変化は死亡率の変化によって説明することが可能である。
    夏期の激減の原因は卵∼1齢幼虫初期の死亡率の上昇病気と捕食による幼虫期・蛹期の死亡率の上昇,および寄主植物の不足によると考えられる。
    日本本土におけるモンシロチョウの3大有力天敵のうち,アオムシコバチおよび顆粒病ウイルスは沖繩では発見されない。後者については,導入を考慮する必要がある。またアオムシサムライコマユバチは春から初夏にかけてしか発見されなかったが,これは夏期に高温障害ないし寄主不足によって個体数が激減し,回復までに半年以上を要するためだと考えられる。このため,毎秋の増殖放飼ないし夏の寄主の保証の方法を検討する必要がある。
  • 佐々木 正己
    1975 年 19 巻 1 号 p. 35-40
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    12時間明,12時間暗の光周期,恒温条件下で,ウリキンウワバの諸行動にみられる日周期性の有無位相と強度を調べた。その結果,孵化と幼虫の摂食行動には周期性が認められず,4令から最終令への脱皮には弱い,蛹化と羽化には比較的強い日周期性が観察された。蛹化と羽化の位相は逆の関係にあり,蛹化が暗期の終り付近に,羽化は明期の終りにそのピークを示した。
    成虫は顕著な3山型の夜間活動性を示した。雌雄共通の飛翔ピークが1日に2回,消灯後と点灯時にみられた。残るピークは消灯約7時間後に始まり,雌では3時間にわたって継続的に性フェロモンを放出,雄ではこれに同調して,しかし雌の性フェロモンの存在とは無関係に,1∼1.5時間の激しい飛翔ピークを示した。これらのリズムの生成は遺伝的に組み込まれたものである可能性が強い。
  • 竹内 秀治, 宮下 和喜
    1975 年 19 巻 1 号 p. 41-46
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ハスモンヨトウの交尾時における精胞の授受は,まず10分後における挿入器からの分泌物の分泌にはじまり,40分後頃からの精胞本体の侵入開始と精子の注入がこれにつづき,70分後頃には柄部末端を残して精胞はほとんど完成するが,それの交尾のう内への完全な送りこみはそれより若干後に起る,という経過をたどった。
    予察灯で誘殺された雌の中には1回以上5回までの交尾をくり返しているものが認められ,交尾のう内に発見された平均精胞数は1.7個であった。
    多数回交尾をしている雌の交尾のう内に存在する精胞は,先に入った精胞ほど柄部が強く湾曲し,先端開口部が輸精管入口より遠くはずれ,後から入ってくる精胞が正常な位置に定着できるような状態を作り出しており,複数回の交尾によってもたらされる精子が有効に利用されるような機構の存在が示唆された。
  • VI. アカイロマメゾウムシの幼虫の攻撃性
    梅谷 献二, 加藤 利之, 古茶 武男
    1975 年 19 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    アカイロマメゾウムシCallosobruchus analisは,同属の他種と似た産卵習性を持ち,1粒のアズキに複数の卵を産むにもかかわらず,生育を完了して羽化脱出するのは1個体に限られるという特異的な現象がある。実験の結果,1粒のアズキは量的には複数個体を生育させるのに十分であり,共存個体の死亡要因は同一の豆の内部における幼虫の激しい攻撃に起因すると推定するに至った。すなわち,成虫脱出後の豆を解体調査したところ,本種の主要食害部は,豆の中央域に限られていることが明らかとなり,それによって生じた空洞部またはその一偶にぬり固められた摂食物残渣塊の中から主として3齢または4齢(終齢)幼虫の死体が見出された。そして,これらの死亡個体の体表から,他個体の攻撃によると思われる咬傷痕が発見された。
    さらには,この攻撃性に加えて主要食害部が,同属の他種においては豆の周縁部に多いのとは対象的に,本種の場合は中央域に限られるため,幼虫生育の中∼後期に相互の幼虫が遭遇することとなり,最終的には1個体を残して他は咬み殺されると推定するに至った。
    1粒の豆から2個体の成虫が羽化したまれな例の場合は,すべて豆の中央域に2つの食害部があり,その間は摂食物残渣塊で完全に隔離されていることがわかった。結局,このような偶然の隔離がない場合は,発育期間のいずれかの時期に,最終的には1個体しか残り得ないと解されたが,幼虫の形態には大腮を含めて攻撃的行動を特別に想起させる特徴は見出せなかった。
    なお,本種に見られたこのような攻撃性は,他の多化性のマメゾウムシ類では,従来知られていない。
  • 青木 襄児, 柳瀬 久良子
    1975 年 19 巻 1 号 p. 54-56
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
  • 阿久津 喜作
    1975 年 19 巻 1 号 p. 57-58
    発行日: 1975/03/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
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