日本応用動物昆虫学会誌
Online ISSN : 1347-6068
Print ISSN : 0021-4914
ISSN-L : 0021-4914
2 巻, 1 号
選択された号の論文の11件中1~11を表示しています
  • 弥富 喜三, 兼久 勝夫
    1958 年 2 巻 1 号 p. 1-10_4
    発行日: 1958/03/01
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ワモンゴキブリの体内におけるChEの分布をThCh法によって組織化学的に調べるとともに,その二,三の性質を検圧法によって定量的に検討した。
    ChEの活性度の最適pHは7.2∼8.0の間にあり,pH 6.0では活性度は約50%に低下する。Na2SO4の高濃度添加の影響も調べ,組織化学的方法で使用するpH 6.0, Na2SO4 25%, CuSO4 0.002M添加の反応液の条件下では,最適条件下のChEの活性度に比較して約1/5に低下することを知った。
    凍結切片の薄切を容易にするために固定液を使用する場合は,中性フォルマリン10%液2日間固定または純アセトン2時間固定が,ChEの活性度保持の上から良好であった。
    組織化学法はAThChとBuThChを用いてChEの特異性の検討を試み,断定するまでに至らなかったが,中枢神経,大型末梢神経および筋肉に分布するChEは特異的であり,消化管生殖器官に分布するChEは特異的のほかに非特異的性格をもつようである。
    神経組織の中では神経鞘やニューロンの表面にChEの分布が多く,ニューロンの走行に沿ってChEの存在が認められた。脳には多くのChEが存在するが,ChEをほとんど含まぬ細胞群も認められ,脳の領域によって作用の違うことがうかがわれる。
    血球はChE活性度を有しているが,その分布個所は判定できなかった。脂肪体,脈背管,気管,支持組織にはChEは分布していなかった。
  • II. 体重減少率と産卵に及ぼす影響
    北岡 茂男, 矢島 朝彦
    1958 年 2 巻 1 号 p. 11-16
    発行日: 1958/03/01
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1) ウシオマダニの飽血雌成ダニの背面に,種々の殺虫剤のacetone溶液を微量注射器を用いて滴下し,27.5°C, 100% R.H.における体重減少率と産卵に及ぼす影響を調べた。
    2) 体重減少率は,γ-BHC, parathionはそれぞれ約6μg/g, allethrin約100μg/g, TEPP約135μg/g以上の薬量で著しい増加を示すが,作用量をさらに上げると増加が認められなくなる。
    3) α-BHC, pp'-DDT, op'-DDTには体重減少率の増加作用はまったく認められなかった。4) 体重減少率の増加に伴ない,表皮の湿潤化および透明化,背腹筋などの収縮,体の弾力の消失,体の腹側への彎曲,表皮の特定部位における小水滴の分泌などの特有の中毒症状が現われる。
    5) 体重減少率の増加は殺虫剤の作用により,表皮を通じてわそらく真皮細胞の働きで水分が強制的に排出または分泌されるために起るものと考えられる。
    6) γ-BHC, parathionは体重減少率の増加が起る薬量で産卵を完全に阻害する。allethrinは約180μg/g, pp'-DDTは約500μg/gで産卵を50%抑制し,op'-DDT, α-BHCにも弱い産卵抑制効果がある。
    7) 産卵過程は殺虫剤に対し感受性が高く,吸血による発育が阻害されないような薬量でも産卵が抑制,または完全に阻害される。したがって完全にダニを致死せしめえなくても,その増殖を阻止し防除の目的を達することが可能である。
  • I. 温度の影響と休眠型式
    辻 英明
    1958 年 2 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 1958/03/01
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ノシメコクガの老熟幼虫の越冬に伴う発育休止を実験的に研究した。米ぬかを餌として実験条件下で飼育したノシメコクガの老熟幼虫は,温度条件により休止する場合としない場合があり,発育初期は高温,発育後期は中間的な温度で飼育すると終令において休止する。しかし4∼5令まで高温で飼育したものは中間温度に移されても,もう休止せずに蛹化するものが多くなる。
    休止個体は非休止個体と形態的にも生理的にも明らかに異なったものとなり,体型,体色,生体重,含水量,発育の進み方,耐寒性などにおいて両者は著しい差異を示す(第1表)。
    これによると,ノシメコクガの休止幼虫は高温では蛹化阻止が実際上存在しないが,中間温度以下では“休眠”とよく似た特徴を示す。発育休止のステージが定まっていること,体重,含水量の変化もまた休眠の一般的性質と一致する。このことから,ノシメコクガは単なる寒冷による発育の一時的休止ではない特別な型式の休眠を行うと考えられる。この型式の休眠を行う昆虫は他にもあるのではないだろうか。
  • 田村 市太郎, 山内 昭
    1958 年 2 巻 1 号 p. 24-32
    発行日: 1958/03/01
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1) この報文は新潟県高田地方におけるダイズ害虫ウコンノメイガSylepta ruralis SCOPOLIについて,防除を主眼とした各種生態場面の研究を記述した。
    2) 普通年における誘殺灯に対する成虫飛来は7月上旬から増加して中旬に最高を示し,下旬に向かって減少する。飛来成虫の性比は7月上旬には若干低位にあるようにみえるが下旬にかけて増加傾向となり,8月上旬には再び低下するようである。圃場での卵塊数消長は飛来成虫の消長とかなりよく一致している。
    3) 株当り卵塊数は7月7日調査では3以下であるが,11日には12までとなり,21日には24を数えるものをみる。1葉当り卵塊数は14までを数えるが,1卵塊が最も多く,2∼3卵塊がこれにつぐ。1卵塊内の卵数は1∼2卵が最も多い。
    4) 日別性比と卵塊数との間には1%有意水準においてγ=0.8144 (1953年)および5%有意水準においてγ=0.5392 (1954年)の相関をもち,日別性比をxとすればy=1.62x-83.15及びy=0.97x-52.95から圃場内の株当卵塊数が推察できる。日別誘殺数をxとした場合には1953年は1%有意水準においてγ=0.7834およびy=60.60-0.33xを算出できるが,1954年には全くこの関係がみられない。
    5) 卵期間は産卵最盛期卵では5日前後である。幼虫は6令を経過し,各令期間は雌ではそれぞれ平均2.6, 3.0, 2.0, 2.6, 3.2および4.4日,雄では3.3, 2.7, 2.0, 2.7, 3.2,および3.4日である。蛹期間は雌雄とも約9日とみられる。
    6) 卵塊数の品種間差異から供試品種を多卵塊数順位に群別すると,I.新4号,II.赤莢ほか3品種,III.出来過ほか5品種,IV.改良祇園坊と石原,V.霜被となるようであるがIIからIV間には年次変動もあって厳密なものとはいえないようである。また,卵塊数は開花期が産卵最盛期に当る品種に多く,さらに,葉数が多く,草高や立体指数の高位を示す品種に多い傾向がうかがえる。
    7) 7月中旬おにいて,暗箱をかぶせて5日間の遮光処理を行ったダイズ株は,曝露後4日間の産付卵塊数が,同期間における無処理株の半分に減少している。これは,光合成の低減によるダイズ体内の生化学的物質との関係における産卵感応の問題を示したものではあるまいか。
  • 内田 俊郎, 高橋 史樹
    1958 年 2 巻 1 号 p. 33-37
    発行日: 1958/03/01
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    The cowpea weevil, Callosobruchus quadrimaculatus, has two distinctly different forms in the adult stage, fly and non-fly forms, which are induced by the effect of population in the larval stage. These two forms are very like to the "phase" dimorphism observed in the locust and army worm. In the present paper, different densities of comparisons were made between these two phases in their body weight and the chemical constituents of their body.
    The body weight of adult weevil decreases with the lapse of adult life, but this decreasing tendency is different between these two phases and sexes. (ref. Fig. 1, fly female _??_, fly male _??_, non-fly female _??_, non-fly male _??_).
    The water content of the body takes an almost constant value throughout the life, but takes a different value in each phase (ref. Fig. 2. similar sign as in Fig. 1). Crude fat content shows a definite difference between these two phases. That of the fly phase is higher in both sexes. A clear difference can be found in the acid value and iodine value of the crude fat, while there is no definite difference in saponification value. From these data, we can imagine that the fly phase has a kind of diapause in the initial stage of adult life.
  • 湯嶋 健
    1958 年 2 巻 1 号 p. 38-42
    発行日: 1958/03/01
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ニカメイチュウおよびヨトウムシの産卵後時間以内の卵では,アセチルコリンが発見できず(CHINO & YUSHIMA, 1953),またアセチルコリン合成能もない(YUSHIMA, 1957)。本報告ではこの理由について究明した。
    すなわち,昆虫におけるアセチルコリンの合成には他の動物ですでに知られているように,coenzyme Aと,反応を完結させるCholine acetylaseの二つの酵素が絶対に必要である。ところが,産卵後24時間以内の卵にはcoenzyme Aは存在するのにcholine acetylaseはこの時期以後になって出現し,これに伴って同時にアセチルコリン合成能も生じてくることを確かめた。
    上記の事がらを根拠として,今までに見出されている昆虫卵の胚子発育に伴うアセチルコリンの消長(CHINO & YUSHIMA, 1953; CHINO, 1957; YUSHIMA, 1956, 1956a)を三つのタイプにわけ,それらの三つのタイプの現われる理由を図式的に示した。
  • 小泉 清明, 高橋 保雄
    1958 年 2 巻 1 号 p. 43-49
    発行日: 1958/03/01
    公開日: 2009/03/31
    ジャーナル フリー
    1) 物質の透過性に関して,ニカメイチュウ(おそらく多くの鱗翅目幼虫)の皮膚は,総括的にみて,硬皮部(sclerotized part)と膜状部(membranous part)に分けられる。頭部・胸腹部・胸肢などの各環節の皮膚は前者に属するが,これらの環節と環節とをつなぐ関節部(joint)は淡色で屈伸性に富み,いわゆる膜状部を形成する。幼虫の腹肢もこのような硬皮部と膜状部からできている。
    2) 皮膚のパラフィン切片を,ハイデンハインのヘマトキシリンやマロリーの方法で染めてみると,硬皮部の角皮には表角皮(epicuticle)・外角皮(exocuticle)・内角皮(endocuticle)の3部分が区別されるが,膜状部ではこのうち外角皮と称する部分が存在しない。しかしこの部分の内角皮は硬皮部よりもかえって厚い。
    3) 表角皮の性質にも硬皮部と膜状部に差異がみられる。すなわち蝋層の直下の層における硝酸銀還元顆粒の出現速度を比較すると,皮膚の物質通過制限の最大責任部位と考えられる蝋層(wax layer)には,膜状部では硬皮部よりも液体を容易に通過させるような性質が存在するし,またパラフィン切片に出現するパラフィン層(paraffin layer)とクチクリン層(cuticulin layer)のリピッドならびに蛋白に対する反応は硬皮部では膜状部より明らかに強い。
    4) 皮膚のいろいろの部分にBHCやホリドールの微滴を塗布し,幼虫の中毒死あるいはけいれん発現に至る時間をはかることによって,皮膚の部位による薬剤透過性の速度を比較して,次の順位のあることがわかった。
    気門=胸腹肢≧胴部節間膜≧尾肢>胴部環節本体
    すなわち気門を別にすれば,一般に膜状部またはそれに近接した部分では(肢の皮膚に塗ると薬剤は直ちに膜状部に拡散する),硬皮部にくらべて,薬剤の透入はいちじるしく速いことがわかる(尾脚は他の脚にくらべておそいがこの原因はよくわからない)。
    5) このように膜状部における薬剤透過性の大きいことは,その部分の角皮に外角皮を欠くこと,表角皮の性質に差異のあることが大きな原因になっているのではないかと思われる。
  • 深谷 昌次, 服部 伊楚子
    1958 年 2 巻 1 号 p. 50-52_2
    発行日: 1958/03/01
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ニカメイチュウの皮膚を傷つけたり,ある種の器官を移植することによって生じたプロセテリーについては既述したが,ヨトウガのいわゆる“活性化された前胸腺”を移植することにより,さらに進んだプロセテリーが得られたので記載を行った。すなわち,口器・触角は著しく硬化してそれぞれの形状・位置に異常を来たし,これらに関してはむしろ蛹に近い状態が見られた。また第8∼10腹環節は完全に硬化して尾鈎をそなえ,正常な蛹とほとんど差は認められなかった。
  • III. キビクビレアブラムシRhopalosiphum prunifoliaeにおける型決定の臨界期
    野田 一郎
    1958 年 2 巻 1 号 p. 53-58
    発行日: 1958/03/01
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    アブラムシにおける胎生雌の型決定には温度,光その他いろいろの要素が関係しているようであるが,ムギ類の害虫であるキビクビレアブラムシRhopalosiphum prunifoliaeの場合には高棲息密度と絶食が大きな影響力を持っている(野田,1954, 1956)。これら諸要素の作用と有翅型出現の関係を明らかにするためには,まず型決定の臨界期を明確にしておくことが先決問題である。本実験においては上述の2要素(高棲息密度と絶食)の作用を利用して,このアブラムシにおける前記臨界期と生翅の最盛期を明らかにすることができた。実験はすべて暗黒下定温25°Cで行った。その結果を要約すると次のとおりである。
    1) 有翅型は胎生された直後から生後38.5時間目(これは第1回脱皮直後から起算すると10時間目にあたる)以内の間に決定される。この臨界期を経過した後においては外部からの刺激の影響を受けることがない。
    2) 理論上の生翅の最盛期は生後21時間目である。すなわち幼虫第1令後半期の半ばごろである。
    3) 50%以上の幼虫が5時間の絶食によって有翅型に変り得る時期は,理論的には生後14.5時間目から生後27.5時間目までの間である。この時期は幼虫第1令の中期から後期に相当する。
    4) 絶食の有翅型出現に対する影響力は,高棲息密度のそれよりも一般に大きいようである。
    5) 同一の生育途上にある幼虫を絶食させた場合には,絶食期間の長いほど有翅型出現率が高くなる。
    6) しかるに生後15時間または20時間経過した幼虫を5時間絶食させた場合と,生直後の幼虫または生後5時間経過したものを15時間絶食させた場合とを比較すると,後者のほうがはるかに絶食時間が長いにもかかわらず,有翅型出現率はかえって低位である。これは生育初期に絶食の刺激を加えると,SHULL (1942)が暗示したように生翅に関係あるホルモンの分泌などに,変調をきたすためではないかと考えられる。
  • 室賀 政邦
    1958 年 2 巻 1 号 p. 59-61
    発行日: 1958/03/01
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1) 酵素反応液にドクガの毒針毛を加えて,反応処理を行い酵素による毒物の分解作用について調べた。
    2) pepsin, trypsinで反応させた場合には皮内反応が陽性を示し,毒性は消失しない。これに対しlipaseで反応させた場合には,酵素濃度5∼10mg/cc,反応時間60分,温度38°C処理で皮内反応は陰性を示し,毒性は消失したことが明らかである。
    3) trypsinとlipaseの等量混合液中で反応処理を行った場合は,lipase単用の場合と同じ結果を示し,lipase作用の変らないことがわかった。
    4) lipase反応液は,100°C 10分の熱湯処理で容易にその酵素作用を失う。
    5) 以上の結果から毒物の主体はlipaseによって分解される物質と考えられる。
  • 立川 哲三郎
    1958 年 2 巻 1 号 p. 61-62
    発行日: 1958/03/01
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
feedback
Top