抵抗性および感受性系統のナミハダニ雌成虫に,
3H-ディコホルをマイクロシリンジで試験管内壁面処理し,
n-ヘキサン可溶部,クロロホルム可溶部,水可溶部,残渣の放射能を測定するとともに,TLCによって代謝物の同定を試みることにより,ナミハダニにおけるディコホル抵抗性の作用機構を検討した。
1) 1.5時間後の水可溶部と残渣の放射能活性の割合は,両系統とも低く,逆に,
n-ヘキサン可溶部およびクロロホルム可溶部の割合は高かったが,時間の経過とともに前二者の割合が高くなり,水可溶部の場合,感受性系統では24時間後の割合が1.5時間後に比べて5倍に,抵抗性系統では6倍になり,残渣の場合も処理6時間後まではかなり増加した。一方,
n-ヘキサン可溶部では,6時間後までは35∼44%を占めていたが,24時間後では11∼17%に減少し,またクロロホルム可溶部でも時間の経過に伴って減少した。
2)
n-ヘキサン可溶部および残渣では,両系統間でそれほど差がないが,クロロホルム可溶部および水可溶部ではかなり差が認められた。クロロホルム可溶部では感受性系統の放射能が抵抗性系統より約40∼60%高く,水可溶部では時間の経過に伴って抵抗性系統の放射能が感受性系統より大きくなった。
3)
n-ヘキサン可溶部(体表および体外残存部)からは,ディコホルを,クロロホルム可溶部からは,ディコホルと,DBHあるいはBhに近いRf値を持つ未知代謝物Aを,水可溶部からは,クロロホルム可溶部と異なる未知代謝物Bを検出した。
4) 以上の結果から,ナミハダニにおけるディコホル抵抗性の作用機構について考察した。
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