日本応用動物昆虫学会誌
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25 巻, 2 号
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  • II. 集団サイズと死亡率・死亡要因の関係について
    中村 寛志
    1981 年 25 巻 2 号 p. 63-70
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    集合性昆虫であるマツノキハバチについて,大発生をした地域(大芝)と比較的密度の低い地域(演習林B)について,卵期,幼虫期の生存率と死亡要因を調査し,key-factor法を使って集団サイズと死亡要因の関係を分析した。
    (1) 演習林Bでは1齢初期のクモ類による捕食,大芝では3齢期の病気によって高い死亡がみられた。
    (2) 孵化率は両地域とも80%以上であったが大芝の方が10%程低かった。また卵塊サイズと孵化率との間には明瞭な関係はみられなかった。
    (3) 幼虫集団サイズと死亡率との間には,両地域とも1976年には小集団では1齢期の死亡率が高く,150頭以上の大集団では低くなる傾向がみられたが,1977年ではこのような関係はみられなかった。
    (4) 幼虫の病気は1976年の大芝では,集団サイズが小さい程発育段階の早い時期に発生し,また集団内個体の死亡率も高くなった。
    (5) Key-factor分析法によると,演習林Bでは1齢期のクモ類による捕食,大芝では2齢以後の病気による死亡が,集団間の生存率に差を生じさせている主要因であった。
  • 石井 俊彦, 中村 和雄, 川崎 建次郎, 根本 久, 高橋 兼一, 久保田 篤男
    1981 年 25 巻 2 号 p. 71-76
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1. コナガの合成性フェロモンと処女雌の有効範囲を推定するため,マークを施した雄成虫をトラップからの距離を変えた数地点から放して,トラップで捕獲した。この結果をシミュレーション・モデルを用いて解析した結果,有効範囲の風下側最大長は,0.6∼0.9mと推定された。この値は,誘引源が合成性フェロモンであっても処女雌であっても異ならなかった。
    2. 有効範囲の中に入ったと推定される雄のうち,実際にどれだけがトラップに誘殺されたかを示すトラップの誘引率は,風速が大きくなると増加する傾向が見られた。しかし,その値は低く,最高でも約30%であった。
    3. フェロモン源からの距離を変えた数地点に雄を置き,その飛び立ちと風上飛翔を見たところ,フェロモン源から風下へ1∼2mの範囲で,これらの行動が促進されることが見られた。この反応を示す範囲は,マーク虫の放飼-捕獲から求めた有効範囲と一致するものと考えられた。
  • 杉本 渥
    1981 年 25 巻 2 号 p. 77-83
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    前報のイネ苗によるツマグロヨコバイ大量飼育法に検討を加え,次のことを認めた。すなわち,飼料とする苗は第1本葉抽出期のものが最適で,この生育度は親雌虫が産卵するのにも適する。飼料苗を7日ごとに更新した場合,幼虫の飼育には支障がないが,成虫期には苗の新旧による増殖能力の変動が起こる。飼料苗の更新回数を幼虫3齢期以降,7日ごとから3∼4日ごとに倍加すれば,飼育虫数が倍加できる。この飼料条件下で,高知産個体群では親雌虫に2日間産卵させた場合,15∼20倍の増殖率が得られた。飼育密度が高いほど新成虫の体重および産卵能力が低下するが,前報の飼育箱1個あたり最高4,000匹近い飼育が可能と認めた。
  • 松田 一寛
    1981 年 25 巻 2 号 p. 84-88
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    糖,アミノ酸:供試した糖,アミノ酸のうちコガタルリハムシに対し活性が認められたものは,しょ糖,D-フルクトース,D-グルコース,i-イノシトール,L-アスパラギン酸およびL-リジンであった。本種の寄主植物の一つであるエゾノギシギシにD-フルクトース,D-グルコース,L-アスパラギン酸,L-リジンが含まれていることが確認されており,これらの糖,アミノ酸が寄主植物摂食時の味覚刺激源の一つになっていると考えられる。
    ビタミン:供試したビタミン12種のうち,摂食を刺激したものはニコチン酸,p-アミノ安息香酸,アスコルビン酸の3種であった。本種の寄主植物中にはアスコルビン酸の存在が知られており,寄主植物摂食時の刺激源となっていると考えられる。
    ステリン・脂質および無機塩:供試した物質のいずれも摂食を刺激しないか,もしくは抑制的に働いた。コガタルリハムシに関する限り,これらの物質が味覚刺激源となっている可能性はないと考えられる。
    コガタルリハムシは,酸味を呈する有機酸に摂食を刺激されることが知られており,寄主であるタデ科植物中にも有機酸の存在が知られている。本種に対し摂食刺激活性を示したもののうち,ニコチン酸,p-アミノ安息香酸,アスコルビン酸,L-アスパラギン酸は酸味を呈する。本種が上記の物質に摂食を刺激されたのは,それぞれの物質の持つ酸味によるのではないかと思われる。この酸味を呈する物質に対する強い摂食反応が,本種の寄主特異性を決定する一要因であると考えられる。
  • 日比野 由敬
    1981 年 25 巻 2 号 p. 89-93
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1979年5月下旬から8月上旬まで,名古屋大学構内に100×130mの調査地を設置し,マークした個体の追跡によってセグロアシナガバチの採餌行動を観察した。
    創設期における女王の採餌距離は平均39.4mで,採餌場所はコロニー間で重なり合っていた。働きバチの採餌距離は平均48.2mで,同一コロニー内の働きバチ間でも採餌場所は重なり合っていた。以上のことから,コロニーレベルでは,コロニー間に採餌なわばりは存在せず,また,コロニー内の個体間で採餌場所が分割されることはないと考えられた。
    しかし個体レベルでは採餌行動に一定の規則性が認められた。残肉回収の必要のある大型の餌を狩った場合,ハチはその次の餌の探索で再び採餌成功場所の近くに飛来(再飛来)したが,小さな餌を狩った場合にはこうした行動は示さなかった。
    女王の探索時間は働きバチの探索時間より短い傾向があった。これには,創設期に見られる他巣女王による幼虫の盗み(共食い)や,アリのような天敵からの巣の防衛と緊急に必要な(水のような)資源の搬入の必要性が影響していると考えられた。
    以上の結果について,フタモンアシナガバチの観察結果との比較を行い,アシナガバチの採餌行動の特徴づけを試みた。
  • クロロフィリド-a-中腸たんぱく質複合体の形成
    内田 由子, 林屋 慶三
    1981 年 25 巻 2 号 p. 94-100
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    カイコ幼虫の消化液中に存在する赤色けい光たんぱく質(RFP)のin vitro生成反応の第二段階は,クロロフィリド-a (Ch-a)と中腸起源の1たんぱく質(MP)との2成分が光の関与を受けて,色素たんぱく質に変換されてRFPが生成されるという反応である。この既報の生成機構に更に,次の3点を加えた。
    1. Ch-aとMPとから,RFPが生成される反応には,光のほかに,酸素も関与している。
    2. 生成反応の第二段階は,さらに,二つの過程から成り立っている。第一過程では,Ch-aとMPとは,光と酸素の関与を受けることなく,Ch-a-MP複合体を形成する。次いで,第二過程では,形成された複合体に,光と酸素が関与して,Ch-aのポルフィリン環が開裂され,RFPが生成される。
    3. RFPの生成反応に関与する光の波長は,Ch-a-MP複合体の吸収極大波長とほぼ,一致した。
  • 河野 哲, 斎藤 哲夫, 宮田 正
    1981 年 25 巻 2 号 p. 101-107
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    抵抗性および感受性系統のナミハダニ雌成虫に,3H-ディコホルをマイクロシリンジで試験管内壁面処理し,n-ヘキサン可溶部,クロロホルム可溶部,水可溶部,残渣の放射能を測定するとともに,TLCによって代謝物の同定を試みることにより,ナミハダニにおけるディコホル抵抗性の作用機構を検討した。
    1) 1.5時間後の水可溶部と残渣の放射能活性の割合は,両系統とも低く,逆に,n-ヘキサン可溶部およびクロロホルム可溶部の割合は高かったが,時間の経過とともに前二者の割合が高くなり,水可溶部の場合,感受性系統では24時間後の割合が1.5時間後に比べて5倍に,抵抗性系統では6倍になり,残渣の場合も処理6時間後まではかなり増加した。一方,n-ヘキサン可溶部では,6時間後までは35∼44%を占めていたが,24時間後では11∼17%に減少し,またクロロホルム可溶部でも時間の経過に伴って減少した。
    2) n-ヘキサン可溶部および残渣では,両系統間でそれほど差がないが,クロロホルム可溶部および水可溶部ではかなり差が認められた。クロロホルム可溶部では感受性系統の放射能が抵抗性系統より約40∼60%高く,水可溶部では時間の経過に伴って抵抗性系統の放射能が感受性系統より大きくなった。
    3) n-ヘキサン可溶部(体表および体外残存部)からは,ディコホルを,クロロホルム可溶部からは,ディコホルと,DBHあるいはBhに近いRf値を持つ未知代謝物Aを,水可溶部からは,クロロホルム可溶部と異なる未知代謝物Bを検出した。
    4) 以上の結果から,ナミハダニにおけるディコホル抵抗性の作用機構について考察した。
  • 日長の変更が幼虫休眠の誘起に及ぼす影響
    本多 健一郎, 阿久津 喜作, 新井 茂
    1981 年 25 巻 2 号 p. 108-112
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    センノカミキリの老熟幼虫は,長日(14L:10D),短日(8L:16D)のいずれの日長条件でも休眠に入った。
    ふ化後5日目から55日目までのあいだに日長を短日から長日へ切り換えると,休眠が誘起されずに老熟幼虫期間が大幅に短縮し,成虫の羽化時期が斉一となった。卵のふ化から成虫の羽化までの期間は,ふ化後10日目もしくは30日目に長日への転換を行ったとき,最も短くなった。しかし,成虫の羽化率は転換をふ化後55日目に行ったときに最も高く,羽化も極めて斉一であった。
    ふ化後40日目に日長を,上とは逆に長日から短日へ切り換えると,休眠期間は日長を一定にしたときよりさらに長くなり,大部分の個体は休眠したままふ化後350日目まで蛹化しなかった。
    したがって,センノカミキリでは日長の長さそのものよりも日長の変化とその方向が,休眠の誘起に大きな影響をおよぼすと考えられた。
  • 後藤 哲雄, 真梶 徳純
    1981 年 25 巻 2 号 p. 113-118
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    日本の6ヵ所からナミハダニを採集し,これらの休眠性とマラソンに対する感受性を調査した。
    1. 札幌産を用い,温度を20°, 18°, 15°Cとし照明時間を13.5, 12, 10.5, 8hrとしてこれらの休眠誘起率に及ぼす影響を調査したところ,13.5hrでは15°Cであっても休眠しなかった。試験したいずれの温度条件でも照明時間の短縮に従って休眠率が高くなる傾向があった。
    2. 15°Cにおける各産地ハダニの臨界日長は,札幌産,盛岡産が12hr 50min,福島産12hr,市川産9hr 40minであった。福岡産,鹿児島産は試験した範囲(9.5hr∼13.0hr)では休眠しなかった。
    3. 松戸野外における休眠雌の出現時期は,札幌産,盛岡産,市川産が調査を開始した10月上旬産卵のものから約50%の休眠雌を生じたので,これよりやや早い時期と考えられた。鹿児島産は11月上旬産卵のものでも休眠雌は出現しなかった。
    4. 各産地のマラソンに対する感受性レベルは,LC50で札幌産44,盛岡産250,福島産148,市川産218,福岡産683,鹿児島産161ppmであった。マラソンに対する感受性の程度と休眠性との関係は判然としなかった。
  • 宮原 義雄
    1981 年 25 巻 2 号 p. 119-121
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
  • 田村 正人
    1981 年 25 巻 2 号 p. 121-123
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
  • 本間 健平, 秋山 安義
    1981 年 25 巻 2 号 p. 123-125
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
  • 小山 健二
    1981 年 25 巻 2 号 p. 125-126
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
  • 行成 正昭
    1981 年 25 巻 2 号 p. 127-129
    発行日: 1981/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    徳島県のナシ地帯周辺の多年性草本ヨモギ,低木カジイチゴに発生しているアトウスキハマキの寄生性昆虫を調べた結果,つぎのことが明らかになった。
    1. 合計13種の寄生性昆虫が得られた。これらのうち,ヒメバチ科は4種,コマユバチ科は3種,コバチ上科は3種,アリガタバチ科は1種,ヤドリバエ科は2種であった。
    2. 卵期にはTrichogramma dendrolimiの寄生率が高く,幼虫に対してはApanteles sp.の寄生が,各世代を通じて認められ,40%を越える寄生率を示した場合もあった。特定の地域ではMacrocentrus linearisが非常に高い寄生率を示した。
    3. 得られた寄生性昆虫はApanteles sp., Zenillia dolosaを除き,本県ナシ園で加害している他のハマキガ類にも寄生する種類で,それらの重要な寄生性天敵として活動するものが含まれていた。
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