日本応用動物昆虫学会誌
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25 巻, 4 号
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  • 野里 和雄
    1981 年 25 巻 4 号 p. 213-218
    発行日: 1981/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    越冬世代成虫の羽化消長,産卵数,産卵過程および産下卵の孵化率を自然温度下の室内で調べた。また,交尾後の雌成虫約80頭について,種々の夜間照明期間下で産卵を抑制して,その後の産卵習性を正常な個体と同様に調べた。調査した産卵習性と田植日との関係をモデル化し,第1世代孵化幼虫数を推定した。その結果,田植日が羽化最盛日より遅れてくると急激に孵化幼虫数が減少することを示した。すなわち,田植日が5∼7日遅れるとその数は50%, 12∼15日遅れると10%まで減少する。
  • 本藤 勝
    1981 年 25 巻 4 号 p. 219-228
    発行日: 1981/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    三重県南部地方に産するクワゴマダラヒトリについて,死亡要因の種類,卵塊の空間分布,卵期と幼虫期における集団サイズと生存率の関係を検討した。
    (1) 本種の卵塊は,産卵樹であるカラスノサンショウに対して数卵塊単位で集中的に産付されていた。
    (2) 卵塊集団は,卵期,1齢期を中心にall or none的に死亡し,この大きな原因は多種類のアリ類による捕食であった。
    (3) 卵期の捕食の傾向を検討すると,捕食は卵塊単位に作用し,卵塊卵粒数と卵粒捕食率の間には一定の関係はなかった。しかし1本当たり産付卵塊数と卵塊・卵粒捕食率の関係では,産付卵塊数の上昇につれ捕食率が低下する傾向を示した。
    (4) ふ化した幼虫集団のサイズと生存率の関係をみると,集団サイズの減少につれ,生存率は顕著に減少し,特に小集団は1齢期に全滅する割合が高かった。
    (5) 調査地域では,卵期,1齢期の比較的無防備な時期に捕食者による強度の死亡要因が作用しており,産卵樹に対する卵塊の集中分布は,この死亡要因の作用を軽減するのに役立っていると考えられた。
  • 添盛 浩, 仲盛 広明
    1981 年 25 巻 4 号 p. 229-235
    発行日: 1981/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    沖縄県農業試験場八重山支場のウリミバエ大量増殖施設において,1975年5月から大量に累代増殖され,久米島における不妊虫放飼法による根絶実験に使用された系統を,1979年12月より新系統と入れ替えた。また約13世代にわたり大量に累代増殖した「新系統」,約60∼61世代にわたり大量に累代増殖した「旧系統」および約0∼1世代の「野生系統」について,羽化後日齢による産卵経過と成虫寿命および交尾経過などを飼育箱(30×30×45cm)で比較調査した。
    1. 新系統導入は,(1)大量増殖の基となる個体群の育成(0∼3世代),(2)大量増殖以後早期産卵のための淘汰(4∼7世代)および(3)旧系統との入れ替え(8∼9世代)の順序で行った。また野生虫を導入してから旧系統との入れ替えまでは約1年間であった。
    2. 新系統および旧系統を野生系統と,羽化後日齢による産卵経過について比較すると,新系統および旧系統は野生系統より産卵前期間が短く,産卵量も多い。
    3. 新系統,旧系統および野生系統の成虫寿命について比較すると,野生系統が長く,新系統,旧系統の順に短くなる傾向を示した。
    4. 新系統,旧系統および野生虫について羽化後日齢による交尾経過を比較調査すると,新系統と旧系統はともに野生虫に比べ羽化後早くから交尾をはじめ,また交尾する個体の割合も高い。
    5. 以上の結果から新系統育成においては増殖効率を高めることと同時に,質的劣化を最小限に止めるような飼育法の開発をはかる必要があると示唆された。
  • 安田 壮平
    1981 年 25 巻 4 号 p. 236-243
    発行日: 1981/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    (1) クワシロカイガラムシの天敵昆虫として,新たにトビコバチ科2種,ツヤコバチ科1種,タマバエ科2種,テントウムシ科7種を記録した。そのうちタマバエ科のDentifibula sp.とLestadiplosis sp. Bの両種は本邦未記録のもので,それぞれ幼虫が本種の幼虫および雄蛹・雌成虫を捕食することが認められた。
    (2) 寄生蜂のAphytis sp.,ベルレーゼコバチ,チビトビコバチは,東北から九州地方に至る広い地域に分布していた。そのうちAphytis sp.は九州および四国地方に比較的多くみられ,ベルレーゼコバチは全国的に,しかもほぼ均一に分布するなど,種によって寄生量の地域差が認められた。
    (3) 東北地方におけるクワシロカイガラムシの天敵昆虫の発生について,寄生蜂ではキイロクワカイガラヤドリバチ>ベルレーゼコバチ>Prospaltella sp.>チビトビコバチの順位に,捕食性昆虫ではCybocephallu nipponicus ENDRODY-YOUNGA>クロテントウ>ハレヤヒメテントウ>ヒメアカボシテントウの順位に認められた。
    (4) 桑園内における寄生蜂(Aphytis sp.,ベルレーゼコバチ)の生息密度は,桑園の中心部で高く,外辺部では低いことが判明した。
  • 氏家 武
    1981 年 25 巻 4 号 p. 244-248
    発行日: 1981/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    四国において新しくリンゴ加害の確認されたナナカマドキンモンホソガのうち,高松の個体群に雌の多くなる異常性比現象が発見されたが,これは次のような性質をもっていた。
    1. この異常性比は雄をまったく,あるいはまれにしか産まない雌が混在するために起こるものであることが明らかになった。
    2. この性質は雌を通じて娘に遺伝するが,ときに突然,正常に回復することが示された。
    3. 以上の2点は細胞質遺伝をするショウジョウバエ類やテントウムシのSRに類似した。
    4. しかし異常性比形質をもった雌の産む卵数は正常のそれと変りなかったが,この結果飼育個体群では世代が進むにつれて雌の比率が増加し,この点でSRと異なっていた。
  • 加藤 義臣, 勝 康雄, 坂手 栄
    1981 年 25 巻 4 号 p. 249-252
    発行日: 1981/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ヤママユガの配偶行動と産卵の様子を30°C-24°Cの室温条件下において観察した。
    雌は羽化当夜からコーリング行動をとった。コーリングの時刻は日の入りから日の出に及んだ。本種のコーリングは,ポリフェムス蚕の場合と異なり,寄主植物葉なしの条件下でも活発にみとめられた。
    興奮した雄は腹側から雌の腹部に掴みかかり,交尾を行った。雌は羽化後3日間を通して高い交尾活性を示したが,雄の交尾活性は羽化後1日目のみに高かった。
    羽化当夜に交尾した雌では産卵活性の高まりに2日間を要したが,1日目またはそれ以後に交尾した雌では産卵活性の高まりはその後の1日間で十分であった。このことから,産卵活性の高まりには交尾のみならず,雌の日齢に連関した何らかの内的要因も関与していることが示唆された。
  • 昆野 安彦, 本田 洋, 松本 義明
    1981 年 25 巻 4 号 p. 253-258
    発行日: 1981/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    モモノゴマダラノメイガの2系,果実系とマツ科系との間の生殖隔離について室内実験を行った。
    1) コーリングは果実系では,羽化の翌日の夜,1日齢から2日齢にかけてコーリング個体数が増加し,3日齢から10日齢の間は,消灯後6.5時間乃至7.5時間に80%以上の個体にコーリングが起こりピークが認められたのに対し,マツ科系ではコーリング個体が前者に比べ,はるかに少なく,特別なピークも認められなかった。
    2) 交尾については,両系とも1日齢から行われるようになり,果実系では2∼3日齢に集中し,マツ科系では2日齢に集中していた。またマツ科系の方が果実系よりも交尾のピークが平均1.5時間早く出現した。
    3) 両系の処女雌を誘引源としたトラップへの各系の雄の誘引飛来を調べたところ,雄は同系の雌にはもちろん,他系の雌にもよく誘引され,両系の処女雌のフェロモンの構成成分には共通な部分があると考えられた。
    4) しかし,同一のケージに両系の雌雄を収容して,交尾させたところ,両系とも正確に各系の配偶者と交尾し,互いに正しい配偶者を識別する何らかの機構があると考えられた。またこの場合,交尾のピークは一方の系だけのときに比べ,両系とも1.5時間(マツ科系),2時間(果実系)おくれた。
    5) 以上の実験観察から,モモノゴマダラノメイが果実系,マツ科系には明瞭な生殖隔離機構が存在すると結論された。
  • 野口 浩
    1981 年 25 巻 4 号 p. 259-264
    発行日: 1981/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1) チャノコカクモンハマキの雄は雌よりも20%多く,また雄は生存中復数回交尾を積極的に行ない,受精能力も羽化後8∼9日間は充分ある。一方雌は1回の交尾で充分受精卵を産下できた。産下した卵塊のふ化率が低下してくると雌は再交尾を行うが,再交尾によって産卵量,ふ化率が回復する傾向は認められなかった。なお未交尾雌の寿命は交尾雌より短かかった。
    2) 雌の交尾回数と精胞数を調査した結果,約10%程度の確率で1回の交尾で2個の精胞が入ることが明らかになった。雌の交尾回数と精胞数はほぼ一致するが精胞数が多くなると,交尾回数との誤差が大きくなる。
    3) 本種の雌雄は1週間以上交尾を抑制すると産卵量が減少し,ふ化率も著じるしく低下した。またその後正常な雌雄と交尾を行なってもふ化率は回復せず,その影響は特に雌が受けた。
  • 若村 定男, 氣賀澤 和男, 遠藤 亘紀, 松浦 博一, 腰原 達雄, 富岡 暢, 根本 久, 北内 義弘
    1981 年 25 巻 4 号 p. 265-271
    発行日: 1981/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1. カブラヤガの合成性フェロモントラップは,従来の予察灯の1.3∼32倍の数の雄成虫を捕獲でき,より明瞭な捕獲消長が得られた。
    2. 合成性フェロモントラップによる捕獲消長は予察灯による捕獲消長と必ずしも良好な対応関係にあるとは限らなかった。
    3. 合成性フェロモントラップの捕獲率には,4∼5月と10月に高く,8月には低下する傾向が認められた。
    4. カブラヤガの合成性フェロモントラップは,発生予察のためのサンプリング手段として効率が高く,その有用性が確認された。今後,捕獲数と野外密度との関係を明らかにする必要がある。
  • 発生調査のためのトラップ設置場所について
    平野 千里
    1981 年 25 巻 4 号 p. 272-275
    発行日: 1981/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ハスモンヨトウの発生状況調査に性フェロモントラップを利用する場合,トラップをどのような立地条件に設置すればよいかを知る目的で試験を行った。見通しのよい大面積の畑と水田,灌木に囲まれた小面積の畑,および木立ちの下の4ヵ所にそれぞれトラップを置き,誘殺虫数を記録した結果,見通しのよい畑および水田では誘殺虫数が多く,日々の変動が小さく,さらに季節的消長も野外個体数の動向をかなり正確に反映しているように判断された。これに反し,灌木に囲まれた畑や木立ちの下では,誘殺虫数が少なく,日々の変動が大きく,また季節的消長も野外個体数の動きを必ずしも正確に反映していないようであった。その1因はこのような場所がハスモンヨトウの正常な生活空間でないことにあると考えられる。
  • 古 徳祥, 伊藤 嘉昭
    1981 年 25 巻 4 号 p. 276-279
    発行日: 1981/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    北陸地方と東海・西日本地方のツマグロヨコバイは発生状態その他に大きな違いがある。この違いが遺伝的な違いによるのか,環境条件の違いによるのかを解明する研究の一環として,両地域間で虫の分布型に違いがあるかどうかを,筆者らが1979年と1980年に両地域の個体数調査で得たデータおよび久野(1968),法橋(1972),嘉藤・若松(1978)らのデータを用いて*m-m回帰分析法で解析してみた。検討の結果,ツマグロヨコバイの分布型は,両地域とも,軽度の集中分布の傾向を示し,地域間の差は見られなかった。
  • 寒川 一成, 佐藤 昭夫
    1981 年 25 巻 4 号 p. 280-285
    発行日: 1981/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ツマグロヨコバイ地方個体群の,対稲品種反応を比較調査し,バイオタイプ的変異の存在を明らかにした。
    1. 上越および筑後個体群は,IR 24, IR 28, IR 32,および関東PL 3号に対して,それぞれ非選好性および選好性を示した。これらの品種上での,両個体群の幼虫発育も有意に相違した。また,IR 24上で,後者は前者よりも,多量のニンヒドリン陽性甘露を排出した。
    2. 上越・筑後交雑F1個体群幼虫は,IR 24に対し非選好性を示し,同品種上での羽化率も極めて低かった。F2個体群のIR 24に対する選好性,および同品種上での羽化率は,両親個体群のほぼ中間であった。
    3. 九州,四国南部,および南紀に分布する,鹿児島,筑後,海南,伊野,白浜,および尾鷲個体群は,IR 24上でも発育増殖し,個体群が維持された。ただし,伊野,白浜,および尾鷲個体群の,IR 24上での,第1および第2世代幼虫の死亡率は高かった。一方,北陸各地,出雲,湖北,鴨島,および堺個体群は,IR 24に対する寄生性を欠いており,同品種上で累代飼育できなかった。
  • 2. Milbemycinsで室内淘汰したナミハダニの性質
    山本 慎二郎, 西田 〓
    1981 年 25 巻 4 号 p. 286-291
    発行日: 1981/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ナミハダニ卵に対するmilbemycins褐色油状物質(BOM)による室内淘汰実験で,成虫に対してLC50で100∼170倍,卵に対して約10倍強い抵抗性個体群(MR系)が得られた。しかし鉢植インゲンにおける防除試験では起源を同じくする感受性(札幌S系)ハダニに対する薬量の約4倍量のBOM乳剤で防除できた。
    交配実験の結果は抵抗性の遺伝様式が常染色体に遺伝子をもつ不完全優性(中間型)遺伝の場合と一致した。
    札幌S系とMR系の1:1混合飼育では,1ヵ月後の検定で抵抗性個体比率が増加していたが,それ以後9ヵ月間は変化がみられなかった。
    電気泳動によるβ-naphtylacetate加水分解酵素のチモグラムパターンはMR系で変化が認められた。
    MR系ハダニの虫体ホモジネートとBOMを混合し24時間インキュベートした場合,札幌S系ハダニ比べBOMを不活性化する能力が強かった。
  • 伊賀 幹夫
    1981 年 25 巻 4 号 p. 292-294
    発行日: 1981/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
  • 野淵 輝
    1981 年 25 巻 4 号 p. 294-296
    発行日: 1981/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    Poecilips cardamomi (SCHAUFUSS) has been recorded for the first time in Japan (Honshû, Shikoku, and Kyûshû) and Taiwan as a pest of chestnut, acorn of Quercus serrata, crown of strawberry, stem of Cyathea spinulosa, and below bark of pine. The morphological characteristics enabling to differentiate this species from P. graniceps (EICHHOFF) are listed in Table 1. Picture of the adults and nests, and a description of the adult in Japanese are included.
  • 大熊 千代子, 岸本 良一
    1981 年 25 巻 4 号 p. 296-298
    発行日: 1981/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    A total of 105 spiders were collected during the periods of July 13-16, 1979 and June 26 to July 6, 1980, in the central part of the East China Sea. A weather boat, Keifumaru, was located at 126°E and 31°N, about 400km offshore from the mainland. Three air borne tow nets 1m in diameter were set on the main mast, at a height of about 18m above the sea level, and emptied every three hours. All the spiders collected were alive and at the 2nd or 3rd instar stage. The majority of the spiders collected (101 out of 105) were identified as belonging to the Tetragnatha genus, the rest belong to Theridiidae, Erigonidae and Linphiidae families and addition to one injured individual. Ability of long distance dispersal of spiderlings of Tetragnatha was strongly suggested.
  • 芦田 栄徳
    1981 年 25 巻 4 号 p. 299-300
    発行日: 1981/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    Gastrophysa atrocyanea is a univoltine beetle which enters diapause at the adult stage. Storage at 5°C for at least 4 months or application of JH was necessary for ending the diapause. Sperm was not found in the prediapause period and even after 6 months' storage at 5°C throughout the total diapause period. A minimum of 3 months' exposure to 25°C was required for the sperm to form.
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