日本応用動物昆虫学会誌
Online ISSN : 1347-6068
Print ISSN : 0021-4914
ISSN-L : 0021-4914
26 巻, 4 号
選択された号の論文の18件中1~18を表示しています
  • 上遠野 冨士夫, 藤代 肇, 椎名 賢子, 藤家 梓
    1982 年 26 巻 4 号 p. 213-217
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    千葉県におけるニセナシサビダニの季節的発生消長を1979年と1980年に調査した。
    1) 越冬場所からの離脱は3月下旬から4月下旬まで確認され,そのピークは4月上旬であった。
    2) 徒長枝下位葉および果そう葉における本種の寄生個体数は年間を通して極めて少なかった。徒長枝上位葉における寄生個体数は5月上旬までは0に近い状態であったが,その後急激に増加し,6月下旬から7月上旬にピークに達した。7月中旬になると徒長枝上位葉上の個体数は急激に減少し,7月下旬にはほとんど寄生がみられなくなった。
    3) 徒長枝葉上における本種の寄生は,徒長枝が伸長し始める5月上旬には各葉位葉に散見されたが,下位葉が硬化し始める5月下旬以後は上位葉に集中した。しかし,下位葉でも新しく出現した二次伸長葉には多くの個体が寄生したとこから,本種の寄生は葉齢に強く影響されるようである。
    4) 本種は風によって成虫・若虫ともに分散した。分散個体数は葉上における個体数に比例して変化した。
    5) 葉上において本種の個体数が減少し始める7月中旬には,すでに多数のダニが越冬場所と考えられる芽の鱗片の基部や剥離した表皮のすきまなどにみられた。越冬虫はすべて第2雌で,徒長枝・短果枝・亜主枝において発見されたが,徒長枝下部に最も多かった。
  • 山本 孝〓, 石井 正義, 勝部 利弘, 宗林 正人
    1982 年 26 巻 4 号 p. 218-223
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1. 各種アブラムシを用いて,キュウリからキュウリへWMVの伝搬実験を行った結果,供試27種類のうち17種類がWMVを伝搬した。このうち,ダイズアブラムシ,ニワトコフクレアブラムシ,ヘクソカズラヒゲナガアブラムシ,ホップイボアブラムシ,バラミドリアブラムシ,ミカンクロアブラムシ,タイワンヒゲナガアブラムシ,ゴボウヒゲナガアブラムシの8種類が新たにWMVの媒介虫として確認された。また,ジャガイモヒゲナガアブラムシ,ムギクビレアブラムシが媒介虫として確認されたのは本邦では最初である。
    2. マメアブラムシ,ワタアブラムシ,モモアカアブラムシにより,キュウリとWMVの越冬植物と考えられるエンドウ,ソラマメ,ホウレンソウなどの冬作物との間でWMVの相互伝搬が認められた。また,エンドウヒゲナガアブラムシによりエンドウからキュウリへWMVの伝搬が認められた。
  • 富田 健夫, 蛯原 富男
    1982 年 26 巻 4 号 p. 224-227
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    HcGVを8種のりん翅目昆虫に経口接種した。その結果,接種後斃死したオビヒトリとクワゴマダラヒトリ幼虫磨砕液からはelectrosyneresis法により特異抗原が検出された。また,光学顕微鏡による病理組織学的観察でも脂肪細胞に組織変性像をみとめた。これらのことからHcGVはオビヒトリとクワゴマダラヒトリ幼虫に感染することが確認された。
    しかし,チャドクガ,モンシロドクガ,シロオビドクガ,セグロシャチホコ,クワノメイガおよび家蚕には感染性を示さなかった。
  • 古 徳祥, 伊藤 嘉昭
    1982 年 26 巻 4 号 p. 228-231
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    名古屋大学構内の大型アミ室で集団マーキングによって,ツマグロヨコバイの雌成虫の寿命を調べた。第1世代の平均寿命は羽化からマークまでの期間(平均約2日)を除き,高田産9∼11日,筑後産5∼8日であり,第2世代の平均寿命は高田産18∼35日,筑後産15∼17日であった。地域による差は見られなかった。最長記録は第2世代の84日であった。両世代の成虫は40∼50日間にわたり共存した。
  • 西東 力, 鈴木 誠
    1982 年 26 巻 4 号 p. 232-236
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1980∼1981年に静岡県伊豆地方でツバキシギゾウムシの生活史を調査した。成虫は5月下旬から7月下旬まで観察され,6月にツバキ種子内に産卵した。ふ化幼虫は種子を摂食し,約1ヵ月で4齢まで発育した。7月下旬から老熟幼虫は果実に穴をあけて脱出し,ツバキ樹下の土中で幼虫越冬した。
    本種は伊豆半島の東部と南部で多発生していた。
    幼虫は昆虫病原糸状菌Metarhizium anisopliaeおよびBeauveria tenellaに対して高い感受性を示した。土壌殺菌の有無は菌の病原性に影響を及ぼさず,いずれの菌も土中で増殖することが示唆された。以上のことから,これらの菌を土壌施用することによってツバキシギゾウムシの微生物的防除ができるものと考えられる。
  • 粥見 惇一, 河野 義明, 坂下 敏, 佐藤 安夫
    1982 年 26 巻 4 号 p. 237-241
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    カルタップ粒剤の育苗箱処理によって,イネミズゾウムシ幼虫の発生が抑制される過程を解析した。その結果,カルタップは成虫の死亡につながる程のイネ体濃度に達しない場合でも,成虫の行動の鈍化などの中毒症状を示し,摂食量の減少,卵巣発育の遅延,産卵の阻害が起こってイネに産まれる卵数が減り,さらにふ化した幼虫は比較的カルタップ濃度の高い根部を食害して死亡するため,顕著な幼虫数の低下が現れることが明らかになった。
  • 野里 和雄
    1982 年 26 巻 4 号 p. 242-248
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    珪酸質肥料(珪カル)施用下で育てた稲へ大きさの異なる幼虫集団を接種して,その生存率を調べた。第2世代において,幼虫集団の大きさに関係なく珪カルの効果が見られたが,第1世代と第3世代では幼虫集団が小さい場合だけにしか認められなかった。これらの結果を用いたシミュレーションで個体数の変動を推定して長期的な影響を評価したところ,年3回発生する地域では,施用の効果が見られなかったが,2化の地域では大きな効果が期待できることが示唆された。
  • 尾崎 幸三郎, 葛西 辰雄
    1982 年 26 巻 4 号 p. 249-255
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1967から1979年までの期間に鹿児島と香川県で採集したトビイロウンカの各種殺虫剤に対する致死薬量を検定し,また1968年には香川県の個体群についてAli-Eの活性の個体変異を調べ,この害虫における薬剤抵抗性の発達と野外個体群における抵抗性型を検討した。
    1967から1969年の時期,BHC,有機リン剤とカーバメート剤に対するLD50値は鹿児島県から採集した個体群より香川県の3ヵ所から採集した個体群で高く,また1968年に香川県の2ヵ所から採集した個体群にはAli-EのE-2泳動帯が中間または高活性の個体がそれぞれ12-22%と15-19%の割合でみられた。これらの結果から,トビイロウンカはこの時期にすでに薬剤抵抗性を発達しつつあったと考えられる。薬剤抵抗性の発達は,1967から1972年までの期間,非常に緩慢であったが,1975年以降,抵抗性レベルは大きく増大し,1979年に香川県の2ヵ所から採集した個体群はfenthion, fenitrothion, cyanofenphosとmalathionに20倍以上の高レベル抵抗性を,カーバメート剤にも5-18倍の抵抗性を示した。有機リン剤とカーバメート剤に複合抵抗性のトビイロウンカではpyrethrinsと有機リン系の殺菌剤(IBPとedifenphos)に対するLD50は感受性のLE系統とほぼ同等であった。
  • 箱型トラップの誘捕効率と風向き
    平野 千里
    1982 年 26 巻 4 号 p. 256-261
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ハスモンヨトウの誘捕に使用される箱型フェロモントラップの誘捕効率は,導入口を向ける方角によって異なる。その原因を明らかにするため,導入口数を変えた3種類のトラップを試作して誘捕実験を行った結果,導入口を風下方向に向けて置いた場合に多数の雄ガが捕獲されることがわかった。このことは最終的に,風向きの変化に応じて回転するトラップ台を用いた実験で証明された。実用的には,2つの導入口をもつ標準タイプの箱型トラップの場合,導入口を夜間の風方向と一致させてトラップ台上に置くことが,誘捕効率を高める上で望ましい。
  • 香西 修治, 若村 定男
    1982 年 26 巻 4 号 p. 262-265
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1. カブラヤガ合成性フェロモンをゴムキャップに保持させた場合に認められる捕獲効率の急激な低下は,ゴムキャプからの揮散量の急速な低下が原因であることを不した。
    2. ガラス毛細管誘引源は,断面積と毛細管内の液面と開口端までの長さを変えることにより揮散量を調節できることを示した。また,気温の上昇とともに揮散量が増加することを示した。
    3. カブラヤガのガラス毛細管誘引源は長期間安定な誘引源であることを示した。
  • 池尻 周二, 吉安 裕, 笹川 満廣
    1982 年 26 巻 4 号 p. 266-272
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    京都府城陽市のハナショウブ畑で,アヤメキバガの生態を観察するとともに実験室内でも飼育を試み,本種の生活史を明らかにした。
    成虫は年2回発生し,2週間内外の生存期間中に1日当たり10個内外の卵を計約100個産下する。幼虫は5齢を経過し,1∼3齢幼虫は葉内にもぐって食害するが,4・5齢幼虫は葉間に生息して葉全体を摂食する。蛹化前には食害葉から脱出して,別の葉内に蛹室を作って蛹化する。越冬態は幼虫(2∼4齢)である。
  • III. 南九州における周年経過
    瀬戸口 脩, 大内 義久
    1982 年 26 巻 4 号 p. 273-280
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    鹿児島県におけるヒメコガネの周年経過を明らかにするため,1977年から4年間,成虫の発生状況や幼虫の発育経過を調べた。
    ブラックライトによる成虫誘殺とダイズ,ラッカセイほ場における調査結果から,成虫の発生は5月下旬から9月までみられ,毎年,7月中∼下旬を境に2つのピーク時期に分かれることがわかった。
    幼虫は9∼10月中に3齢まで成長し,3齢で越冬するグループと2齢で越冬し,翌年3齢に成長するグループに大別でき,産卵時期の早晩が越冬齢期を決定づけていることが判明した。2齢幼虫の発育有効温量から推定すれば,7月中旬以前に産卵された個体群は3齢,9月下旬以降に産卵された個体群は2齢で越冬すると考えられた。
    3齢黄熟期で越冬した幼虫は6月上旬以前,2齢越冬虫は6月下旬以降に羽化するのに対し,3齢摂食ステージで越冬した幼虫は5月中旬から8月中旬の長期にわたり羽化した。また,大部分の2, 3齢越冬虫は明りょうな休眠はしないと推察され,当地方において成虫発生に2つのピークがみられる原因の1つに3齢末期で越冬している非休眠幼虫が成虫発生初期に羽化することが考えられた。
    本種の年間発生回数は1回であったが,例外的に1年間で生活史を完了しない個体が存在することも明らかになった。
  • 野口 洋子, 山口 邦友
    1982 年 26 巻 4 号 p. 281-287
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    カイコ,アメリカシロヒトリ,マツカレハの細胞質多角体病ウイルス(CPV)を供試し,5種類の鱗翅目昆虫(カイコ,ヒメシロモンドクガ,アメリカシロヒトリ,ヨトウガ,ハスモンヨトウ)に接種して,交差感染の難易と発病の程度について調査した。
    その結果,感染の難易にかなりの差があり,また交差感染成立後の発病程度には,a, 治ゆが起こる;b, 治ゆは起こらないがへい死を免れる;c, 顕著に発病し死亡する;の3つの場合があった。
    同一宿主昆虫でも発病の程度はウイルスの種類により異なった。すなわち,カイコCPVた交差感染した昆虫におて,顕著な治ゆ現象が認められた。アメリカシロヒトリCPVおよびマツカレハCPVに交差感染した昆虫では,へい死を免れる程度の発病が多かったが顕著な治ゆ現象は生じなかった。
  • 桑原 雅彦
    1982 年 26 巻 4 号 p. 288-293
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1 系統の有機リン剤感受性系統(S系統)と4系統の抵抗性系統(R系統)を供試し,3種のアシルチオコリン(ATCh, PrTCh, BuTCh)に対するアセチルコリンエステラーゼ(AChE)の基質特異性と,αおよびβ-ナフチルアセテート(NA)を水解するエステラーゼの理化学的性質を阻害剤や電気泳動法により検討した。
    S系統のAChE活性はR系統のそれより高い。S系統のAChE活性はPrTCh>ATCh>BuTChの順に低下するのに対し,R系統のAChE活性はATCh>PrTCh>BuTChの順に低下した。したがって両系統のAChEは,PrTChに対する活性に関して顕著な差異が認められ,これらの結果は,両系統のAChEの反応速度のパラメーターである最大速度(Vmax)やMichaelis定数(Km)からも支持された。
    α-NAおよびβ-NAの水解には薬剤感受性の異なる複数の非特異的エステラーゼが関与している。両基質のエステラーゼは,阻害剤に対する2分子反応速度定数(ki)や阻害物質定数(Ki),電気泳動による泳動帯が互に良く一致することから,両基質は同一か又は互に良く類似した基質特異性や理化学的性質を有するエステラーゼにより水解されているものと思われる。
  • 刑部 正博, 吉田 正義, 廿日出 正美
    1982 年 26 巻 4 号 p. 294-299
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ガスクロマトグラフィーを用いて,コガネムシ類の各ステージにおける呼吸量の測定と幼虫における皮膚呼吸の有無について検討した結果,以下のことが明らかとなった。
    1) オオサカスジコガネの卵のCO2呼出量は卵の発育に伴って上昇する傾向を示した。
    2) オオサカスジコガネとチビサクラコガネの幼虫期の単位体重当たりのCO2呼出量は1齢で最も多く,齢期が進むにつれて減少した。
    3) オオサカスジコガネとドウガネブイブイの越冬3齢幼虫で,気門を閉鎖したところ,CO2の呼出が認められ,皮膚呼吸の可能性が示唆された。
    4) 蛹期のCO2呼出量は蛹化後7∼9日目に最低となり,その後急増した。
    5) 成虫では,昼間活動性のものと夜間活動性のものとの間に,CO2呼出量で一定の関係が認められた。
  • 伊藤 清光
    1982 年 26 巻 4 号 p. 300-304
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ホソハリカメムシが水田へ移動する原因を餌植物選好性から検討した。
    1. イネの出穂と同時期,即ち7月中旬から9月に出穂するヒエ類およびメヒシバがホソハリカメムシの重要な餌植物であった。
    2. イネ,ヒメイヌビエおよびメヒシバの3種の穂のうち,ホソハリカメムシがイネを選好するか否かを網室内で試験した結果,特にイネを選好する傾向は認められなかった。
    3. ホソハリカメムシの餌としての好適期間はヒエ類,メヒシバなどの雑草のほうがイネより長いと考えられた。本種が水田に移動するのはイネが周辺の雑草よりも先に出穂する場合であり,8月以降,ヒエ類およびメヒシバが水田周辺のいたる所で出穂し,ホソハリカメムシがそれらの雑草に移動した後は水田への移動は少ないと考えられた。
  • 古 徳祥, 伊藤 嘉昭
    1982 年 26 巻 4 号 p. 305-306
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
  • 城所 隆, 藤崎 祐一郎, 高野 俊昭
    1982 年 26 巻 4 号 p. 306-308
    発行日: 1982/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    The damage caused by the smaller rice leaf miner was severe when rice was transplanted in early May or early June. When rice was transplanted between these periods, the miner caused very little damage. It is suggested that the relation between adult emergence and the time of rice transplanting was the main factor in the occurrence of the outbreaks of the insect.
feedback
Top