多数の4-(フェニルアゾ)フェノール系化合物から,
in vitroにおいて強い殺ユリミミズ作用を示す23種の化合物を選抜した。これら化合物について,泥中の棲息孔内に棲息するエラミミズ,ゴトウイトミミズ,ウイリーイトミミズ,およびヤマトシタミミズに対する致死効果を検討した結果,一般式において,R
1がハロゲンまたはニトロ基,R
2, R
3がハロゲンまたはハロゲンとニトロ基である5化合物が,供試したすべてのミミズに強力な効果を示した。
これら5化合物は,他の作合物よりもミミズに対する忌避性が弱かった。またこれら化合物は,ミミズに対し速効的効果を示した。これら5化合物を含めたアゾフェノール化合物の,土壌吸着性と致死効果に相関は認められなかった。
つぎにこれら5化合物のうち,ミミズに強力作用を示し,かつ合成が容易なP-99(ユリミン®),2, 6-ジブロモ4-(4-ニトロフェニルアゾ)フェノールを選び,殺ミミズ効果におよぼす種々の因子について検討した。
P-99の致死効果は土壌のpHが低下すると減少したが,これは低いpHにおいてP-99の溶解度が低下するためであった。ミミズに対し十分な殺虫効果が期待できるpHは,5.3以上であった。なお土壌温度は致死効果にさしたる影響を示さなかった。
エラミミズの自発運動に対するP-99の最小影響濃度は0.4ppmで,復帰法による場合は4ppm, 5分間の浸漬で著しい影響を与えることが認められた。P-99の溶液に浸漬されたミミズは,激しい強直性の収縮と痙攣様のらせん運動に続いて,麻痺が起こり,最後に虫体の尾側の部分が脱落し斃死した。
シマミミズ筋標本を用いた実験において,P-99は最初は興奮的影響を示し,ついで麻痺した。またP-99で侵襲を受けたミミズの病理組織学的所見では,まず体表組織が崩壊し,内部の筋肉層,神経組織,消化管などにも障害が認められた。シマミミズ筋ホモジネートの組織呼吸に対し,P-99はPCP-Naと同程度の強い阻害作用を示した。
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