日本応用動物昆虫学会誌
Online ISSN : 1347-6068
Print ISSN : 0021-4914
ISSN-L : 0021-4914
27 巻, 3 号
選択された号の論文の13件中1~13を表示しています
  • 井口 民夫, 山田 政枝, 中村 晃三, 新保 博
    1983 年 27 巻 3 号 p. 171-175
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    14C-尿素を熟蚕に注射し,その後排泄される糞,熟蚕尿および繭層,脱皮殻および蛹体への放射能の分配について,人工飼料育と桑葉の間で比較した。その結果,人工飼料育では糞と尿へそれぞれ30%以上が,繭層へ10%程度が排出され,脱皮殻および蛹体にはそれぞれ0.5%と20%程度検出され,注射した放射能の99%が回収された。一方,桑葉育では糞,尿への排泄が0.5%以下,繭層に1%程度,蛹体への留存も1%以下で,全回収率は2.5%程度であった。
    また5齢4日後,熟蚕,吐糸完了時,化蛹2日後,10日後および成虫に14C-尿素を注射し,呼出14CO2を測定した。桑葉育では注射2時間後における累積呼出14CO2量は5齢4日後では注射量の5%,熟蚕時は9%,吐糸完了時以降はほぼ100%であった。一方,人工飼料育では5齢4日後では雌では0.6%,雄では2%であったが,熟蚕期以降の14CO2の呼出はほとんどみられなかった。
    以上の実験結果から,桑葉育では吐糸中にウレアーゼ活性が高まるのに,人工飼料育では逆に低下することが明らかになった。
  • II. 3H-ベンゾメートの表皮透過性と代謝
    辰己 勲, 斎藤 哲夫, 宮田 正, 加藤 夏樹, 添田 吉則
    1983 年 27 巻 3 号 p. 176-182
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    皮膚透過性および代謝実験を進める上で放射性のベンゾメートを用いるため,3-chloro-2, 6-dihydroxybenzoic acidを原料としトリチウム化剤として3H-ジメチル硫酸を用い,4反応行程で3H-ベンゾメートの合成を行った。得られた3H-ベンゾメートの収量は57.7mgでその比放射能は1.09m Ci/mmolであった。
    ミカンハダニ5系統を3H-ベンゾメート200ppm浸漬した場合,処理24時間後で興津抵抗性系統では17%しか体内侵入しなかったのに対し,静岡抵抗性,福岡抵抗性系統ではそれぞれ41, 49%,静岡感受性,福岡感受性系統ではそれぞれ60, 66%が体内侵入した。興津抵抗性系統では体内侵入の少なさが抵抗性機構の一つ要因と考えられた。
    ミカンハダニ5系統を3H-ベンゾメート200ppm液に浸漬し,処理24時間後に各系統の代謝物を比較した。各系統ともに約60∼75%が3H-ベンゾメートのまま体表および体内に分解されずに存在していた。おもな代謝物はethyl 3-chloro-2, 6-dimethoxybenzohydroxamateであった。各系統間に代謝に関して大きな差はみられないことより,代謝の違いがミカンハダニのベンゾメート抵抗性機構の要因ではないことが示唆された。
  • 松井 正春, 伊藤 清光, 岡田 斉夫, 岸本 良一
    1983 年 27 巻 3 号 p. 183-188
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    イネズミゾウムシ越冬あけ成虫および新成虫の飛翔個体では,飛翔筋はすべて太く発達しており,幅はそれぞれ189±13μmおよび188±15μm (x±S.D.)であり,その分布範囲はともに156∼216μmであった。越冬あけ成虫の飛翔個体の卵巣は,やや発達し始めているもの(I′∼II)が多かった。
    越冬あけ成虫の越冬地ササ上および水田イネ上の個体の飛翔筋は,それぞれ発達および衰退過程にあり,飛翔個体のそれよりも細いものが多かった。卵巣は前者では未発達(I)かわずかに発達したもの(I′)が多く,後者では発達して蔵卵したもの(III)が多かった。蔵卵個体の飛翔活動性は著しく低下していた。
    新成虫の飛翔筋は,羽化直後は未発達だが,水田内で急速に発達した。越冬地の落葉下の個体の飛翔筋は衰退して細いものが多かった。新成虫の卵巣はいずれも未発達であった。
    以上の結果から,本種成虫の飛翔活動性は飛翔筋の発達程度と密接に関係しており,野外では飛翔筋が一定以上の太さ(epipleural muscleの場合ではおおむね156μm)以上に発達すると活発な飛翔活動を示すようになると推定される。
  • 1983 年 27 巻 3 号 p. 188
    発行日: 1983年
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
  • 阿久津 喜作, 窪木 幹夫
    1983 年 27 巻 3 号 p. 189-196
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    センノカミキリの配偶行動について,野外および室内の観察と実験を行い,以下のことを明らかにし,考察した。
    1) 配偶行動は雄の徘徊,雄の雌発見,雌への接近,捕捉,マウント,licking,交尾の順に進行する。
    2) 雄の徘徊は雌と出会う唯一の行動的手段である。
    3) 雄は長時間雌にマウントし,なだめ行動をとりながら多回数交尾を行う。交尾時間は20秒から10分の間で,その頻度分布は2山型になった。
    4) 雌は羽化6日後に,雄は10日後にすべての個体が交尾可能となった。
    5) 雄は雌の占有をめぐり,激しい闘争を行う。
    6) センノカミキリの多回数交尾と,それをめぐる雄同士の競争を精子競争説によって考察した。
  • 川上 裕司
    1983 年 27 巻 3 号 p. 197-202
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1) グンバイムシ科幼虫の性による外部形態の差とその発現時期を明らかにするために,9種の幼虫を材料として,走査電子顕微鏡を用いて観察を行った。その結果,性による外部形態の差は第8,第9腹板に認められ,それは4齢期に発現することが明らかになった。
    2) 雌:第4齢幼虫;第8腹板中央部の後縁が後方に円く突出し,第9腹板正中線上に微小な穴が並んでいる。また,体壁の下には,産卵管が分化する。第5齢幼虫;第9腹板中央部の膨らみの側縁はV字状を呈し,第9腹板後縁中央にW字状の微小突起(rudimentary gonapophyses)が突出する。また,体壁の下に分化した産卵管は,棒状から鋸歯状へと変化する。
    3) 雄:第4齢幼虫;第8腹板の後縁は後方に突出せず,第9腹板後縁付近の正中線上に微小な穴を有する。また,体壁の下には,交尾鉤が分化する。第5齢幼虫;第9腹板中央部の膨らみの側縁はU字状を呈し,第9腹板後縁付近の正中線上に4齢のものよりやや大きい穴を有する。この周囲には,3∼11個の微小疣状突起が突出する。また,体壁の下に分化した交尾鉤は,棒状から鉤状へと変化する。
    4) 体長・腹部幅は,雌が雄よりも若干大きいことが明らかになった。
  • 斎藤 隆, 川本 均, 桐谷 圭治
    1983 年 27 巻 3 号 p. 203-210
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1) ダイズを加害する食葉性害虫を想定して,切葉がダイズの生育および収量に与える影響を,切葉時期,切葉程度を変えて調査した。これらの結果をもとに被害許容水準および要防除密度を設定する方法を検討した。
    2) 切葉時期が早いほど葉面積の回復が大きくなる傾向がみられたが,子実肥大初期以降の切葉では葉面積の回復はほとんどみられなかった。
    3) 切葉が減収をもたらすおもな要因は,着莢数の減少と子実肥大の抑制である。切葉時期によって減収率は変動し,莢伸長初期,子実肥大初期の切葉が最大の減収をもたらした。
    4) 切葉時期と収量,切葉率と収量の関係を切葉時期別に表わすことによって,ある一定の減収率をもたらす切葉率を時期ごとに求めることができた。
    5) ハスモンヨトウの既存のデータを用いて,EILおよびCTの設定を試みた。
  • I. イネの生育ならびに収量に及ぼす成虫放飼密度の影響
    都築 仁, 浅山 哲, 大石 一史, 上林 譲
    1983 年 27 巻 3 号 p. 211-218
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1) 1976年に愛知県に初発生したイネミズゾウムシの被害を解析するために,成虫の放飼密度を変えてイネの生育および収量に及ぼす影響を,おもに5月植えの早植栽培水稲で検討した。
    2) 成虫によるイネ葉身の食害程度は放飼成虫密度に比例して増大し,移植直後から成虫の加害をうけた場合にはなはだしかった。
    3) 成虫の葉身食害と幼虫の根部食害により,イネの生育は抑制と遅延が見られ,とくに茎数の減少が顕著で,移植5週間後ごろに無放飼区との差が最大となった。
    4) 成幼虫加害による収量への影響は顕著であり,成虫株当り1頭以上の放飼で10%以上の減収がみられた。しかし,4月植えの早期栽培水稲では加害開始が遅れるため減収程度は軽微であった。
    5) 減収の主要因は穂数の減少であったが,被害のはなはだしい場合には登熟歩合,玄米1,000粒重の低下もみられた。
  • 瀬戸口 脩
    1983 年 27 巻 3 号 p. 219-223
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    鹿児島県大隅地方においてはモモアカアブラムシおよびニセダイコンアブラムシは主として胎生の世代をくり返して越冬する。両種の発生消長を明らかにするため,1978年から約3年間黄色水盤への有翅虫の飛び込み数や連続栽培したナタネ,ダイコンほ場での発生量調査を行った。その結果,モモアカアブラムシは4∼6月と11∼2月に発生のピークがあり,春のピークのほうが大きいこと,ニセダイコンアブラムシは4∼5月に小さな発生のピークがみられる年もあるが,10∼2月に発生量が多いことが確かめられた。また,両種とも夏季の低密度期が3・4か月にわたるため,当地方の年間の発生様相を知る上で,とくに越夏の生態について調査する必要があると考えられた。
  • 森本 信生, 高藤 晃雄
    1983 年 27 巻 3 号 p. 224-228
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ナシに寄生するミカンハダニの休眠・非休眠性個体群の分布境界線近くとされる岡山県南部において,互いに近接しているが発生パターンの異なる二つのナシ園の個体群と一つのミカン寄生個体群についてそれらの休眠性と食性を比較した。その結果は以下に要約される。
    1) 二つのナシ園からの個体群を累代飼育し,15°C・8Lで休眠誘起を試みたが,百枝月産個体群からはほとんど休眠卵が生まれ,西隆寺産個体群からは非休眠卵が生まれた。また,ミカンに発生する牛窓産個体群は非休眠卵のみを産んだ。
    2) 休眠性個体群はナシ葉では正常に発育と産卵ができたが,ミカン葉ではほとんど成虫まで発育できなかった。これに対し,非休眠性個体群はナシ・ミカンいずれでも発育と産卵ができた。
    3) 個体群増殖力は,ナシを与えた場合非休眠性個体群(西隆寺産・牛窓産)のほうが,休眠性個体群(百枝月産)よりもはるかに高かった。また,ミカンを与えた場合,休眠性個体群のそれよりもやや高かった。
    4) ナシ・ミカンのいずれで発育した場合でも,また休眠・非休眠個体群いずれにおいても,ナシ葉のほうがミカン葉よりも強い選択性を示した。
    5) ナシ寄生の非休眠性個体群(西隆寺産)とミカン寄生の個体群の光周反応・食性はきわめて類似していた。
  • 都築 仁, 浅山 哲
    1983 年 27 巻 3 号 p. 229-231
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    Diflubenzuron, 1 (4-chlorophenyl)-3-(2, 6-difluorobenzoyl) urea, showed good control efficacy on larvae of the rice water weevil, although leaf injury due to adults was not affected. Attempts were made to clarify the mechanism of insecticidal action of diflubenzuron against the rice water weevil. The number of eggs oviposited and the hatch-ability of eggs were determined when adults were fed on rice seedlings treated with diflubenzuron. It was concluded that control efficacy by diflubenzuron was caused by the inhibition of hatching of eggs.
  • 野田 博明, 石井 卓爾
    1983 年 27 巻 3 号 p. 231-233
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    The stink bugs were released on the rice plants of different ripening stages and on harvested hulled rices. The brownish color ring which characterizes some of peckey rices seems to be formed by the rice itself.
  • 柴田 昭雄, 斎藤 哲夫, 宮田 正
    1983 年 27 巻 3 号 p. 233-236
    発行日: 1983/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    The susceptibity of the adult of rice water weevil to some synthetic pyrethroids and carbosulfan was tested. Among the insecticides tested, cyphenothrin, permethrin, cypermethrin, fenvalerate and carbosulfan were more effective than NK-8116, S-5436, phenothrin and fenpropathrin. The replacement of chlorines and cyano groups in the molecules of phenoxy benzyl esters boosted their toxicities to the rice water weevil.
feedback
Top