14C-尿素を熟蚕に注射し,その後排泄される糞,熟蚕尿および繭層,脱皮殻および蛹体への放射能の分配について,人工飼料育と桑葉の間で比較した。その結果,人工飼料育では糞と尿へそれぞれ30%以上が,繭層へ10%程度が排出され,脱皮殻および蛹体にはそれぞれ0.5%と20%程度検出され,注射した放射能の99%が回収された。一方,桑葉育では糞,尿への排泄が0.5%以下,繭層に1%程度,蛹体への留存も1%以下で,全回収率は2.5%程度であった。
また5齢4日後,熟蚕,吐糸完了時,化蛹2日後,10日後および成虫に
14C-尿素を注射し,呼出
14CO
2を測定した。桑葉育では注射2時間後における累積呼出
14CO
2量は5齢4日後では注射量の5%,熟蚕時は9%,吐糸完了時以降はほぼ100%であった。一方,人工飼料育では5齢4日後では雌では0.6%,雄では2%であったが,熟蚕期以降の
14CO
2の呼出はほとんどみられなかった。
以上の実験結果から,桑葉育では吐糸中にウレアーゼ活性が高まるのに,人工飼料育では逆に低下することが明らかになった。
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