日本応用動物昆虫学会誌
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29 巻, 3 号
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  • 小川 義雄, 中須賀 孝正, 笹川 滿廣
    1985 年 29 巻 3 号 p. 193-197
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    貯蔵ショウガの根茎を食害し,腐敗を伴う被害を与えるクロバネキノコバエは,ヒトトゲクロバネキノコバエPsilosciara flammulinae SASAKAWAとショウガクロバネキノコバエPhytosciara zingiberis SASAKAWAの2種で,後者は新種である。
    ショウガクロバネキノコバエによるショウガ根茎の被害の進行状況を観察したほか,長崎県内における被害発生の実態ならびに室内飼育による本種の生態を調査した。その結果,貯蔵庫内での被害発生は,ショウガの収穫と同時に,根茎への食入幼虫あるいは産下卵の付着した根茎の搬入に起因していると考えられた。
    成虫はショウガの茎葉基部や根茎表面に産卵する。幼虫はまず根茎の茎葉切断部や萌芽部の組織の柔らかい部分を食害する。その後,次第に根茎内部に食入してゆき,ついには繊維質だけが残ったスポンジ状の根茎となり,雑菌の侵入を伴ったばあいには根茎の腐敗を伴う。
    灰色かび病菌を培養したPDA培地による飼育での卵・幼虫・蛹期の有効積算温度はそれぞれ72.1, 135.6, 62.5日度であった。
    貯蔵庫内ではショウガ収穫後約1か月経った12月上旬から成虫の発生がみられ,1月上旬に第1回目の発生ピークが,つづいて2月中に第2回目のピークがみられたのちは3月下旬まで多発した。したがって貯蔵期間中に2∼3世代経過するようで,世代を経るにつれて被害が激増した。
  • III. 休眠誘起に対する光周反応の地理的変異
    氏家 武
    1985 年 29 巻 3 号 p. 198-202
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    旭川(43°40′N),須坂(36°40′N),浜松(34°34′N)新見(34°59′N),および甘木(33°26′N)産のキンモンホソガを用いて,休眠誘起に対する光周反応の地理的変異を調べた。
    1) 臨界日長は緯度が高いほど長くなり,甘木:12.5時間,浜松:12.5時間強,須坂:13時間,旭川:14時間であった。既知の盛岡(13.5時間)を加えて,緯度差3.5度に対して約30分の割合で変化した。
    2) 標高約400mの新見個体群の臨界日長は約13時間で,同緯度で平地の浜松より約30分長く,気温的に類似する須坂のそれとほぼ等しかった。臨界日長が標高によっても変化することが示された。
    3) 臨界日長への到達日は,旭川:8月27日,須坂:9月14日,浜松:9月20日,新見:9月13日,および甘木:9月27日と推定された。
    4) 須坂個体群において,日長が臨界点に達する以前に有脚幼虫以上のステージになっていたものは大部分非休眠蛹に,無脚幼虫以下のステージのものの約70%は休眠蛹になった。この指標は休眠の判定に使用可能であるが,盛岡個体群に比較して日長感受性の個体変異の幅の広いことが示唆された。
    5) 臨界日長および年平均気温から,旭川および甘木での年間世代数は,それぞれ3世代および6∼7世代と推定された。また甘木の場合,世代数は一定しているのではなく,気温の年次変動に応じて変動している可能性が指摘された。
  • 河内 俊英
    1985 年 29 巻 3 号 p. 203-209
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    3種の食〓性テントウムシ,ナナホシ,ヒメカメノコおよびクロヘリヒメの増殖能力を明らかにするために,産卵数,卵塊サイズ,孵化率などを調査し,以下の結果を得た。
    1) 世代当り総産卵数の平均値はナナホシが1,660卵と最も多く,次いでヒメカメノコの1,481卵であり,クロヘリヒメのそれは110卵と前2種の約1/10にすぎなかった。
    2) 平均的な卵塊のサイズはナナホシが約30卵,ヒメカメノコは約9卵であった。クロヘリヒメは卵粒産卵性であるのに対して,ナナホシとヒメカメノコは卵塊産卵を行う。
    3) 純増殖率(R0)は,ナナホシが最も高く,次いでヒメカメノコ,クロヘリヒメの順であった。ことにクロヘリヒメのそれはナナホシの1/4以下であった。一方内的自然増加率(r)はクロヘリヒメが最も高く,ナナホシが低かった。
    4) 3種の孵化率は,産卵終了直前以外では産卵した成虫の日齢にあまり関係がなく,40∼60%であったが,クロヘリヒメでは孵化率がいくぶん高い傾向があった。
    5) ナナホシとヒメカメノコでは,卵塊当り未孵化卵が常に一定の割合で含まれ,これらの未孵化卵は孵化した幼虫の卵食の対象となっていると考えられる。
  • 沼沢 健一, 小林 四郎
    1985 年 29 巻 3 号 p. 210-215
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    山形県鶴岡市の水田で,1974年から2年間マダラカタビロアメンボ個体群密度の季節的推移と食性について調査し,次の結果を得た。
    1) 越冬個体は大部分が水田のあぜ際に生息し,1回目の増殖もこの区域でのみ起こった。6月下旬以後水田全体で増殖が始まり,両年ともに密度は8月に最高となり1975年は121頭/m2に達した。収穫後生息個体は再びあぜ際に偏在した。
    2) 年間世代数は3世代以上で,越冬態は成虫と推定された。
    3) 野外における機能の反応は多くの節足動物と同じく,餌密度の増加とともに捕食率が単純に減少するタイプであった。
    4) 食性は広食性であったが餌の捕食はランダムではなく,ユスリカ類を中心とする直縫類に対し高い餌選択性を示した。この選択性には餌に対する好みより取りやすさが強く影響していると推定された。
  • 仲盛 広明, 添盛 浩
    1985 年 29 巻 3 号 p. 216-222
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    キュールアトラップとカボチャの切片を誘引源とするカボチャトラップを用いてウリミバエ誘殺数の時間的およびトラップ設置環境による空間的変動を調査し,以下の結果を得た。
    1) キュールアトラップにおける誘殺は日の出とともに始まり,全誘殺虫数の80%が午前中に回収された。
    2) カボチャトラップにおける誘殺は日の出後,1∼2時間を経過してから始まり,日没まで続いた。9月の日中の経時変化は午前と午後にピークのある2山型を示したが,11月と12月にはそれが崩れる傾向があった。
    3) キュールアトラップはニガウリ畑,中間地点,林のいずれの場所においてもほぼ同数の誘殺が認められたのに対して,カボチャトラップではニガウリ畑,中間地点,林の順に誘殺数が減少し,12月の調査では林での誘殺は認められなかった。
    4) カボチャトラップでの1日1トラップ当りの雄誘殺数はキュールアトラップよりも多く,カボチャトラップでは,さらに,雄とほぼ同等の雌が誘引された。
    5) カボチャトラップに誘殺された大部分の雌は未成熟であった。
    6) 一般的に,成熟雌の飛来は雌成虫の誘殺が始まる時刻よりも遅れ,1日のうち午後または夕方に成熟雌個体がふえる傾向にあった。
    7) カボチャトラップに誘殺された雌率はニガウリ畑と中間地点において高く,林では低かった。
  • 本保 義浩, 中村 浩二
    1985 年 29 巻 3 号 p. 223-229
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1981年6月初旬から7月中旬にかけて金沢市湯涌でヤマグワMorus bombycisにつくヒメツノカメムシElasmucha putoni SCOTTの雌成虫の卵および幼虫保護習性について調査した。卵を守っていた雌成虫82匹とその卵塊に個体識別マークをつけて2∼7日に1回のセンサスをした。
    1) 卵を守っていた雌成虫57匹のうち,卵がふ化する以前,幼虫が1齢のうちに消失したのはどちらも6頭ずつ(10.5%)にすぎず,45頭(78.9%)は幼虫が2齢になっても幼虫とともにいた。雌成虫の保護行動は幼虫が2齢以上になると弱まった。
    2) 人為的に雌成虫を卵塊から取り除いた場合(17例)には2齢幼虫になるまでに初期卵数の74.3%が消失したが,雌成虫が2齢まで保護しつづけた場合(45例)には25.3%が消失しただけであった。この差は雌成虫が除去されることによりアリなどの天敵による卵(とおそらく1齢幼虫)への捕食による死亡と1齢幼虫の分散(これも死亡につながる)の増大が原因であった。
    3) 雌成虫が除去された卵塊では1, 2齢幼虫の消失は,all or none的におこり,雌が保護しつづけた場合には少数ずつランダムな死亡がおこった。
    4) 何らかの原因で自分のうんだ卵塊(または幼虫)からはなれた雌成虫は他の卵塊(または幼虫)に入れかわって守ることがあった。
  • 和田 節, 小林 正弘
    1985 年 29 巻 3 号 p. 230-235
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    コブノメイガの種の特性を明らかにし,密度推定法を確立する目的で,水田における各発育ステージの空間的分布を*m-m回帰分析法によって解析した。
    1) 若齢幼虫は弱い集中分布の傾向を示したが,齢期の進展に伴い,この傾向が弱まり,終齢幼虫,蛹では,個体を単位にランダムに分布するボアソン分布に近づいた。
    2) 成虫の分布は,区画法では一見ランダムにみえたが,各区画の水田内での位置に注目すると,場所的な偏りがあることがわかった。
    3) 得られた分布データから,密度推定のための必要標本数や逐次抽出法を提示し,さらに,実際場面での本種の効率的な調査法を提言した。
  • 藤倉 由利子, 関島 安隆
    1985 年 29 巻 3 号 p. 236-241
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    本実験は,Bacillus thuringiensis subsp. thuringiensisの加熱処理菌体が,ヒト補体系のalternative pathwayを活性化するかどうかを明らかにするために行った。
    B.t. subsp. thuringiensisの加熱処理菌体をヒト血清に加えて37°C, 30分間作用させた。菌体を除去した血清について,補体のヒツジ赤血球に対する溶血性総補体価CH50を求めた。同時に,処理血清中のC3, C4補体成分のSFU活性を,intermediate cellを使って測定した。
    その結果,この菌体は,ヒト血清中における補体のCH50を86.4%以上低下させることがわかった。またこの菌体は,ヒト血清中のC3のSFU活性の86.3%を消費したが,C4の消費は22.8にすぎなかった。
    免疫電気泳動法において,処理血清中におけるC3のβ1Cからβ1Aへの変換が観察された。またC3を活性化するB因子は,BからBaとBbに変換した。
    これらの実験結果は,Bacillus thuringiensis subsp. thuringiensisの加熱処理菌体が,ヒト血清中の補体系の主としてalternative pathwayを活性化することができることを示している。
  • 中北 宏, 林 徹, 青木 章平, 川嶋 浩二
    1985 年 29 巻 3 号 p. 242-246
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ホスフィン(PH3)に感受性を異にする2系統のコクヌストモドキの放射線に対する耐性の違いを,成虫の殺虫線量,卵,幼虫,蛹の変態阻止線量,成虫の不妊化線量について比較検討し以下の結果を得た。
    1) 成虫期ではPH3-抵抗性系統のほうが感受性系よりも放射線耐性が強く完全殺虫には200 Gyの線量を必要とした。また,4週目におけるLD50は,抵抗性系で215 Gy,感受性系で123 Gyであった。
    2) 蛹および幼虫期の照射は,両齢期ともに羽化数の点でPH3-抵抗性系のほうに有意の耐性がみられた。
    3) 卵期は,系統間に孵化,羽化ともに有意の差異はなく,両系統とも,初期卵で50 Gy,後期卵で75 Gyの線量で羽化は阻止された。
    4) 成虫の不妊化に要する線量の比較では,照射雌と非照射雄の組合せで抵抗性系に耐性がみられ,完全不妊化には抵抗性系で125 Gyであり,感受性系で100 Gyの線量を必要とした。
  • 関 宏夫
    1985 年 29 巻 3 号 p. 247-250
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    遺伝的に固定したカイコの4眠蚕幼虫にイミダゾール系殺菌剤1-[N-(4-chloro-2-trifluoromethylphenyl)-propoxyacetimidoyl]-imidazoleを投与することにより容易に3眠蚕が得られることから,その投与時期と3眠蚕の発生様相について検討した。
    その結果,2齢幼虫への投与効果はみられないが,3齢および4齢幼虫で高い効果がみられ,その効果は,齢の後半で少なく,齢の前半で高く起蚕当日(1日目)∼2日目の投与で100%の3眠蚕発生がみられた。
  • 平井 一男, 宮原 義雄, 佐藤 正彦, 藤村 建彦, 吉田 惇
    1985 年 29 巻 3 号 p. 250-253
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    Pseudaletia separata occurred in high-larval densities, 32-180 larvae/m2 along the northwesterly part of the Japan Sea coastal areas during the mid-July in 1984 resulting in considerable losses to pasture and wheat. The percentage of parasitism on the larvae, collected from the wheat field at Oogata in Akita, by hymenopterous insects was low, 1.4%. But 42.5% of the larvae died from diseases except viruses. Moths captured in a molasses bait trap suggested that there were two waves of moth immigrations carried by cyclonic winds on June 10 and 17-18. Possible sources of the migratory populations were discussed.
  • 柴田 叡弌
    1985 年 29 巻 3 号 p. 253-256
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
  • 岩花 秀典, 近野 俊幸, 佐藤 力郎
    1985 年 29 巻 3 号 p. 256-258
    発行日: 1985/08/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
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