日本応用動物昆虫学会誌
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30 巻, 4 号
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  • 駒井 古実
    1986 年 30 巻 4 号 p. 219-224
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ツマクロテンヒメハマキPetrova monopunctata OKUは従来害虫としてはあまり注目されてこなかったが,北海道において針葉樹の球果・新梢の重要害虫であることがわかった。この種の成虫・幼虫・蛹の形態を記載するとともに,生活史の概要を明らかにした。ソ連邦沿海地方から記載されたPetrova pini KUZNETZOV, 1969はP. monopunctata OKU, 1968の新参シノニムであるとみなした。成虫は年1回,5月初旬から6月中旬にかけて出現する。幼虫はモミ属,トウヒ属,マツ属,カラマツ属の球果・新梢に潜入する。8月に加害部位中に白色の繭を作り,その中で蛹化する。越冬は蛹態で行われる。北海道ではツマクロテンヒメハマキ以外に針葉樹の球果・新梢を加害する小蛾類は11種記録されている。被害調査時に問題となる幼虫の識別点を,形態の調査ができなかった2種を除いた10種について明らかにした。
  • 鷲塚 靖, 楠美 明男, 日巻 茂美
    1986 年 30 巻 4 号 p. 225-232
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    台湾省,高雄県澄清湖,屏東県墾丁公園,台東県桃源村と大分県南海部郡上浦町の低地森林生態系(標高300m以下)で,リン,窒素,カリウム,カルシウム,マグネシウム,ナトリウムとBHCの分布を調査した。検体は土壌(A, H層),落葉落枝層(L層),植物,昆虫類,土壌動物などであった。そのおもな結果はつぎのとおりである。
    1) A層のリン,カリウム,マグネシウムの含量とH層のリン,カリウムの含量は大分県が台湾より高かった。L層のカルシウムの含量は台湾が大分県より高かった。
    2) シダ類,草本類,樹木類のリンの含量と樹木類の窒素の含量は台湾が大分県より高かった。
    3) 台湾の昆虫類に含まれる6元素の含量はすべて大分県のそれより高かった。
    4) A, H, L層,植物のBHCの含量は大分県が台湾より高かった。
    5) リン,窒素,カルシウムの移動と分布の調査を通じて,これらの移動は台湾(墾丁公園)が大分県より活発であると思われる。
    6) 台湾と大分県におけるBHCの移動を通じての特色は異なるものと思われる。
  • 金児 靖二
    1986 年 30 巻 4 号 p. 233-238
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ゴキブリの歩行活動を記録するため,回転輪形式のアクトグラフを製作した。回転輪として塩化ビニール製のカップ容器を使用したもの(カップ型)と,細い木製のフレームに高密度ポリエチレンの網を張った回転かごを使用したもの(かご型),の二型式を組み立てた。いずれも3∼4か月にわたって活動を連続的に記録することができた。カップ型は信頼性について,また記録中に昆虫に損傷を与えないという安全性について,若干問題があったが,ゴキブリの偶発的な体動や,摂水,摂餌に伴う軽微な動きをひろうことなく,明瞭に歩行活動を記録することができた。一方かご型はノイズは少し増えたが,信頼性,安全性の点ではきわめて優れていた。
    これらの二つの型の装置で25°Cにおける自由継続リズムの,恒暗下での周期τDDと恒明下(90∼110lx)での周期τLLを求めたところ,クロゴキブリではτDD=23時間38分,τLL=24時間19分,ワモンゴキブリではτDD=23時間59分,τLL=24時間12分であった。リズムの周期に関しては,ワモンゴキブリのほうが個体差が少なかった。またクロゴキブリにはLD条件下で複相のリズムを示す個体が多かった。
  • 金子 順一
    1986 年 30 巻 4 号 p. 239-246
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    モモノゴマダラノメイガのコーリングは,15L-9Dの光周条件からDD(赤色微光)条件に移すと自由継続し,その周期τは17, 22, 27°Cの間では温度補償されていて,その温度係数Q10は1.06であった。
    15L-9Dでのコーリング時刻φrは,17, 22, 27°Cの間では高温ほど遅れ,17°Cと27°Cとでは約4時間の違いが見られた。
    温度サイクルおよび各種の温度ステップの実験から,コーリング時刻決定には,暗期の温度および暗期開始時の温度変化だけでなく,明期の温度条件も関与していた。その際,温度は,φrに対して,コーリング個体数,継続時間を減少させると小さく,増加させると大きくなるように作用した。
    暗期開始時刻を1回だけ3時間(17°C)または6時間(17°C, 27°C)早める実験を17, 27°Cの2温度条件下で行ったところ,コーリング時刻は,17°Cではほぼ早められた時間だけ早まったが,27°Cではその約1/2であった。このことから低温(17°C)で高温(27°C)より早く終了する明期の過程PLがあると考えられ,サーカディアン・リズムがもつ周期τの温度補償性との関連について考察してそのモデルを示し,既存のモデルと比較した。
  • 志賀 正和
    1986 年 30 巻 4 号 p. 247-253
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ミカンコミバエの雄除去法による根絶防除の初期段階において,モニタートラップによる捕獲虫数の分布様式は防除効果を評価するための情報として有用である。局地的に防除効果が不十分な場所が生じ,当初の計画では根絶に至らなかった地域では,雄除去法適用開始後のトラップ捕獲虫の分布集中度Iδや密度-集合度係数βの値が雄除去法適用開始前の値に比べて顕著に上昇した。この分布様式の変化は,雄除去法適用開始後まもなく現われ,同法適用初期に速やかに問題点を摘出することを可能にしうる。このためには,Iδの変化を逐次追跡する方法や,雄除去法適用前の平均こみあい度-平均値の回帰直線上に同法適用開始後の値を順次プロットして回帰直線からのはずれの有無と程度を見る方法が実用的である。また,以上の結果は,害虫の根絶防除における害虫の空間的な分布様式の重要性を示唆するものである。
  • 中野 勇樹, 玉木 佳男, 杉江 元
    1986 年 30 巻 4 号 p. 254-259
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ヒメコガネの合成性フェロモンによる野外誘殺試験により,以下の結果を得た。
    1) 合成性フェロモンmethyl (Z)-5-tetradecenoateのdispenserへの使用量はプラスチックカプセルを使用した場合は10.0mgで誘殺効力がほぼ上限に達した。この場合,初期の誘殺力は大きいが,短期間で効力が激減する。それに反し,ゴムセプタムのdispenserは合成性フェロモンの使用量30.0mgで誘殺効力は最大であり,またその効力は長期にわたって安定していた。
    2) 幾何異性体methyl (E)-5-tetradecenoateは,それ単独では誘引性はなく,またZ体への混入も,誘引性にそれほど影響を与えなかった。
    3) フェロモントラップは草地の場合,地上1mの高さで最も誘殺数が多かった。
    4) フェロモントラップの誘引性はブラックライトトラップのそれと比較し,ヒメコガネの発生の初期と終期に高く,発生盛期には低かった。
    5) 合成性フェロモンを10∼30mg以上含んだプラスチックカプセルおよびゴムセプタムの誘引力は,処女雌のそれを上まわることが示された。
  • 中野 勇樹, 玉木 佳男
    1986 年 30 巻 4 号 p. 260-267
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    合成性フェロモントラップを利用したヒメコガネの発生生態調査から,以下の結果を得た。
    1) フェロモントラップとライトトラップによりヒメコガネ雄成虫の発生消長を比較したところ,発生ピークの時期は両者でほぼ一致した。
    2) フェロモントラップ,処女雌トラップおよびライトトラップへの時刻別誘殺消長は,いずれの場合も日没後30∼60分に誘殺ピークがあった。フェロモントラップには日没前に若干の誘殺があり,また,交尾時間帯後にも少数の誘殺があった。しかし,処女雌トラップには日没時近くにしか誘殺がなかった。
    3) 風通しの良い場所に設置したフェロモントラップは,風通しの悪い場所に設置したトラップにくらべ有意に多くのヒメコガネ雄成虫を誘殺した。また,ヒメコガネ成虫の寄主植物である作物の畑に設置したフェロモントラップは,他の場所に設置したものにくらべ,有意に多くヒメコガネ雄成虫を誘殺した。
    4) 標識再捕の結果,フェロモントラップは,全試験を平均して放飼虫の38.6%を再捕した。また,1晩最高1,630m移動したフェロモントラップに誘殺された雄成虫がいたが,ほとんどの個体が,500m以内のトラップで誘殺された。再捕率の対数値(Y)と放飼点からトラップまでの距離の対数値(X)の間に,logY=9.3068-1.4229logXの関係式が算出された。
    5) 網室内試験の結果,ブラックライトに誘引される雄成虫は,性フェロモンに誘引される雄にくらべ,平均して3∼4日若く,性的に未成熟な個体が多いことが示された。また,フェロモントラップと雌成虫の間には競合が起こり,雌成虫の密度が高まるほど,フェロモントラップへの誘殺数は減少した。
  • 性フェロモンの存在と単離
    氏家 武, 若公 正義, 奥 俊夫, 本間 健平, 川崎 建次郎, 玉木 佳男, 杉江 元
    1986 年 30 巻 4 号 p. 268-271
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    キンモンホソガの性フェロモンを室内と野外条件下で生物検定する方法を確立し,それを用いて性フェロモンの存在を確認した。さらに,性フェロモン成分の単離をフロリシルカラムクロマトグラフィー,硝酸銀-シリカゲルカラムクロマトグラフィー,ガスクロマトグラフィーにより行った。その結果,キンモンホソガの性フェロモンは2成分から成ることが明らかとなった。第1成分は10-テトラデセニルアセタートで,第2の成分は二重結合位置の一つが10位であるテトラデカジエニルアセタートであると推定された。
  • 松田 一寛, 佐藤 利郎
    1986 年 30 巻 4 号 p. 272-276
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1) イチゴハムシの生育・産卵にイチゴモットルおよびイチゴマイルドイエローエッジウイルス重複感染オランダイチゴ葉がどのような影響を与えるか調べた。
    2) 重複感染葉摂食イチゴハムシの産卵数は非感染葉摂食と比べかなり低かった。しかし,幼虫・蛹の生育期間,死亡率は両葉で差がなかった。
    3) 重複および非感染葉の葉硬度は前者が高かった。しかし,両葉に対するイチゴハムシの摂食量には差がなかった。
    4) 重複および非感染葉の窒素および炭素成分のうち,可溶性窒素は前者で約半量に低下していた。しかし,全窒素,全炭素,還元糖には両葉で差がなかった。
    5) 可溶性窒素が窒素肥料施用ウイルス非感染イチゴ葉の約半量に低下した窒素肥料無施用ウイルス非感染イチゴ葉を摂食したイチゴハムシの産卵数は大幅に低下した。
    6) 以上の結果から,重複感染イチゴ葉摂食でイチゴハムシの産卵数が低下したのは,おもにウイルス重複感染に伴う可溶性窒素の低下によると考えられた。
  • 浜 弘司
    1986 年 30 巻 4 号 p. 277-284
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    各地域個体群の各種薬剤に対する感受性を4齢幼虫を用いた局所施用法によって検定し,次の結果を得た。
    1) 感受性系統(日農系)に対する殺虫力はピレスロイドが最強で,次いでcyanofenphos, dimethylvinphos, methidathionなどの有機リン剤であった。有機リン剤の殺虫力は薬剤間で違いが大きかった。methomyl, cartap, thiocyclam, DDTは中程度の殺虫力であった。
    2) ピレスロイド感受性は,那覇個体群で若干低かったほかは高かった。cartapとthiocyclamに対する感受性低下が認められたが,その程度は10倍以下であった。
    3) 31個体群の有機リン剤とmethomylに対する抵抗性レベルは個体群間で著しく異なったが,抵抗性発達の程度から供試個体群は五つに類別された。各グループの抵抗性パターンは互いに類似しcyanofenphos, prothiofos, cyanophos, isoxathionには高度の抵抗性を示したが,dimethylvinphos, methidathion, profenofosに対する抵抗性比は低かった。
    4) 有機リン剤抵抗性発達程度は北海道で低く,九州南部,沖縄で高かった。その間の地域ではさまざまであったが,中程度の抵抗性は北海道を除く各地で確認された。
    5) 有機リン剤抵抗性レベルの年次変動は同一地域で季節的に同じ頃採集した個体群間では小さかった。一方,札幌,嬬恋(群馬),横田(島根)では抵抗性レベルの季節的変動がみられ,春∼初夏に低く,秋に高まった。
  • 真梶 徳純, 岡部 貴美子, 天野 洋
    1986 年 30 巻 4 号 p. 285-289
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ラッキョウおよびニラの主要産地からネダニ類を採集し,発生している種を確かめるとともに,それらについてジメトエートとエチルチオメトンに対する感受性の程度を調査した。
    1) ネダニ類としてはロビンネダニ(Rhizoglyphus robini CLAPARÉDE)とゴミコナダニの一種(Caloglyphus sp.)が確認され,ネダニ(R. echinopus (FUMOUZE et ROBIN))は採集されなかった。
    2) 多くの場合ロビンネダニあるいはゴミコナダニの一種のどちらかが優占して発生していたが,両種が混棲している場合も認められた。
    3) 各産地のロビンネダニのジメトエートに対する感受性の程度はエチルチオメトンのそれと平行的に変化し,産地間の抵抗性比で2∼9の幅があった。
    4) ゴミコナダニはジメトエートに対して感受性は低く,産地間の感受性の変動も小さく,抵抗性比で1∼3の幅であった。これに対し,エチルチオメトンに対する感受性は高く,産地間の感受性の変動は大きく,抵抗性比で3∼25の幅があった。
  • I. 有機リン剤に対する抵抗性
    桑原 雅彦
    1986 年 30 巻 4 号 p. 290-295
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    沖縄,鹿児島,高知,福井,千葉の5県7か所から採集したラッキョウ,ニラ,フリージア,ユリに寄生するネダニの有機リン剤に対する感受性を検定し,抵抗性の実態および薬剤の化学構造と抵抗性の関係を明らかにした。
    1) 千葉系統を除く各系統のネダニは広範な有機リン剤に対して抵抗性を発達させており,従来から使用されてきたdisulfoton, dimethoate, fenitrothionによる防除効果はほとんど期待できないと判断された。
    2) 千葉系統を除く各系統の薬剤感受性スペクトルには類似性が認められた。これは限定された数種類の有機リン剤を長期間使用してきたことに原因があると思われ,また各系統に共通した主要な抵抗性機構が関与していることが示唆された。
    3) 抵抗性の発達程度が低い薬剤は,phosphorothionate型でヘテロ環および環状化合物とのエステル,phosphorothiolothionate型およびphosphorothiolate型でヘテロ環で置換されたチオアルコールおよび非対称型化合物とのエステル,phenylphosphonothionate型および一部のphosphate型の化合物に限定された。このなかでpyrimiphos-methyl, chlorpyrifos-methyl, chlorpyrifos, salithion, methidathion, phosmet, azinphos-methyl, prothiophosおよびTIA-230は抵抗性ネダニに対して有効な薬剤であると考えられた。
  • 上林 義幸, 宮田 正, 斎藤 哲夫
    1986 年 30 巻 4 号 p. 296-297
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    Differences in susceptibility of four strains of the bulb mite were recognized against four insecticides except oxamyl. In W, G and L stains, development of considerably high resistance to dimethoate, thiometon and disulfoton was observed, however resistance to prothiophos was found to be low. Oxamyl was most toxic to all strains. Resistance to prothiophos and thiometon in resistant strains as considered to be cross resistance with disulfoton.
  • 板垣 紀夫, 小山 健二
    1986 年 30 巻 4 号 p. 298-300
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    A predacious mite, Amblyseius eharai AMITAI et SWIRSKI, was reared on artificial diets (MED-1, 4 and modifications) with a well defined chemical composition. In the experiments in which Amblyseius eharai was fed on these synthetic diets, the developmental period was longer and the rate of adult emergence was higher than in the individuals fed on mite eggs.
  • 柳沼 勝彦, 高木 一夫
    1986 年 30 巻 4 号 p. 300-301
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
  • 高須 啓志, 広瀬 義躬
    1986 年 30 巻 4 号 p. 302-304
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    Ooencyrtus nezarae produced a large number of progeny on eggs of Megacopta punctissimum and Homoeocerus unipunctatus on Kudzu-vine, Pueraria lobata, in various localities of Fukuoka Prefecture from June to July in 1985. Thus, the community of this wild plant is considered to be an important breeding site of O. nezarae before it attacks eggs of several species of bugs in soybean fields from July to October.
  • 田中 福三郎, 近藤 章, 逸見 尚
    1986 年 30 巻 4 号 p. 305-307
    発行日: 1986/11/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    フタテンヒメヨコバイについて,黄色粘着トラップの成虫に対する誘引性を明らかにし,透明フィルムを利用した調査の簡便法を示した。さらに,黄色粘着トラップを用いてブドウ栽培の露地とガラス室で誘殺消長をみたところ,少なくとも露地での誘殺消長は,発生消長に関するこれまでの知見と矛盾しなかった。
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