日本応用動物昆虫学会誌
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35 巻, 1 号
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  • 金児 靖二, 井野 正興, 新倉 多久磨
    1991 年 35 巻 1 号 p. 1-6
    発行日: 1991/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    昆虫の活動の記録装置としてのイベントレコーダはトラブルが多く,また定量的な記録には不向きである。われわれはこれにかわるものとして,パーソナルコンピュータによるデータ収集,処理システムを開発した。
    16台のアクトグラフ(台数は容易に拡張可能)からの信号を,カウンタICによりカウントし,パラレルI/Oポートを介してパソコンに入力した。計数値はフロッピーディスクに収納し,同時にモニターテレビやプリンタ,X-Yプロッタにオン・ラインで出力し,アクトグラムを自動的に描画した。また別設のパソコンで保存用のアクトグラムの作成や種々のデータ解析が行えるようにした。本システムは長期間にわたり,連続的,自動的にデータ収集ができ,信頼性もきわめて高かった。また種々のデータ処理能力をそなえる点でも従来のイベントレコーダによる記録システムをはるかにしのぐ性能をもっていることが確認された。
  • 金子 順一, 喜多 孝一, 丹野 皓三
    1991 年 35 巻 1 号 p. 7-11
    発行日: 1991/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ダイコンの発芽種子で飼育したコナガの蛹を5°Cで予冷すると過冷却点(SCP)の高い個体が増加すること,無菌飼育をした個体ではこの現象がみられないこと,などの結果からその原因が消化管内の氷核活性細菌であろうという推定を既報で行っていた。この推定を確かめるため,蛹体内から氷核活性細菌の分離を試みた。
    1) 高いSCPを示した5頭のコナガ蛹体内から719の細菌菌株を分離し,それらの氷核活性(INA)を調査したところ,1頭から分離した3菌株が活性を示した。他の4個体からはINAをもった細菌は検出されなかった。
    2) 分離された細菌3菌株のINAは,5°Cの予冷(1∼7日間)を行ったときに現れ,予冷のない場合にはほとんどみられなかった。この結果は,予冷によってSCPの高いコナガ蛹個体が増加するという前報の結果と符合している。
    3) 分離された細菌3菌株は,淡黄色,半透明,円形,表面に光沢のあるコロニーを形成,運動性があり,オキシダーゼ活性陰性などの性質をもったグラム陰性の桿菌で,Erwinia属菌であると考えられた。
  • 松岡 茂, 中村 和雄
    1991 年 35 巻 1 号 p. 13-22
    発行日: 1991/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ダイズのハト害が収量に与える影響を明らかにするため,生育期間の異なる2品種のダイズを使い子葉の切除実験を行った。また,被害解析と被害程度のデータからハト害を受けたダイズの収量予測を行った。
    1) ダイズの生長に対する子葉切除の影響は,切除した子葉の枚数が多いほど,また切除する時期が早いほど大きかった。
    2) 子葉切除の影響は,生育初期にとくに大きいが,生長とともにその遅れは回復していった。しかし,生育期間の短い早生品種では,初期生育の遅れが回復しないうちに収穫期をむかえることがあった。
    3) 子葉切除の影響は,分枝数,節数,葉数などでは小さく,生育途中で対照区の測定値との間に統計学的有意差がみられなくなった。しかし,草丈や生重量への影響は大きく生育後期まで生長の遅れが顕著であった。
    4) 収量への影響では,生育期間の短い品種で大きく,それが長い品種ではそれほど大きくなかった。
    5) ハト害を受けたダイズ(エンレイ)の収量は,加害時期が出芽直後から子葉展開中まででは,被害がない場合の26∼53%,子葉が展開した直後では73%,本葉展開中以降では99%と推定された。したがって,ダイズのハト害の要防除期間は播種後から本葉展開までといえる。
  • I. 温室への侵入経路と発生消長
    栗山 和直, 真梶 徳純, 天野 洋
    1991 年 35 巻 1 号 p. 23-29
    発行日: 1991/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    温室栽培の鉢物ハイドランジアにおけるチャノキイロアザミウマの発生生態について明らかにするため,侵入時期とその経路,および発生消長について調査した。
    1) 栽培温室へのチャノキイロアザミウマの侵入は苗搬入時に苗とともに越冬個体が持ち込まれるものがおもなものであった。これらの持込み個体は頂芽内で越冬中の個体が大半を占め,それらは成虫・蛹・前蛹・老熟幼虫であった。
    2) 温室の前作であるシクラメン等の花卉類への寄生もその密度によっては重要な発生源となる。しかし,野外から温室への飛翔による侵入はなかった。
    3) 苗搬入時に持ち込まれた世代は出荷までに温室内で2世代を経過した。成虫は主に未展開葉に寄生し,そこに産卵する。寄主の生育とともに,産卵時の未展開葉は孵化時には展開葉となり,幼虫はそのままその葉上に寄生するので,寄生部位はハイドランジアの生育に伴って変化した。
    4) 性比は0.67∼1.0の間にあり,持込み成虫では1.0に近く,第1世代成虫では雄の割合がわずかに増加した。
    5) 以上の結果から,苗搬入前の防除がその後の発生を抑えるのに重要と考えられる。
  • III. 核多角体病ウイルスの産生する2種類の感染性粒子,nonoccluded virusおよびoccluded virusの交差中和試験による血清学的比較
    津田 勝男, 水城 英一, 河原 畑勇, 鮎沢 啓夫
    1991 年 35 巻 1 号 p. 31-37
    発行日: 1991/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    産生細胞の異なるB. mori NPVおよびX. c-nigrum NPVのNOV間で交差中和試験を行った。S. frugiperda細胞で産生されたNOV (TC)より調製された抗X. c-nigrum NPV NOV (TC)血清は,S.P.C. Bm 36細胞およびB. mori感染幼虫で産生されたB. mori NPVのNOVを同種抗原と同様に中和した。また,S.P.C. Bm 36細胞で産生されたNOV (TC)より調製された抗B. mori NPV NOV (TC)血清はS.P.C. Bm 36細胞およびS. frugiperda細胞で増殖させたX. c-nigrum NPVのいずれのNOVも同種抗原と同様に中和し,B. mori NPVの感染幼虫体液中NOV (IH)も同様に中和した。さらに,感染幼虫体液中NOV (IH)より調製された抗B. mori NPV NOV (IH)血清も同様に各NOVを中和した。これらのことより,類縁関係が遠いと考えられていたこれらのNPVのNOVには,培養細胞への感染に関与する共通抗原が存在することが認められたが,この共通抗原が産生細胞由来である可能性は低いと考えられた。
    また,従来困難とされていたNPVのOVによるプラック形成に成功し,B. mori NPVのOVと各NPVのNOV間で交差中和試験を行った。B. mori NPVの抗OV血清は,同種抗原を強力に中和したが,NOVに対する中和作用はまったく見られなかった。しかし,抗B. mori NPVの抗NOV血清は,NOV (TC)およびNOV (IH)ともわずかにOVを中和し,B. mori NPVのNOVには,OVの感染に関与する抗原と共通の抗原がわずかながら存在していることが示唆された。一方,抗X. c-nigrum NPV NOV血清は,B. mori NPVのOVを中和しなかった。これらのことより,B. mori NPVのOVとX. c-nigrum NPVのNOVの間には,感染に関与する共通抗原が存在しないことが示唆された。
  • I. 各発育段階における低温の影響
    松浦 博一, 内藤 篤, 菊地 淳志
    1991 年 35 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 1991/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    2段階の温度が一定の周期で切りかわる変温条件と恒温条件でハスモンヨトウを飼育し,低温条件下における各発育段階の長期生存能力を調査した。
    1) 発育零点以下の低温に毎日一定時間遭遇する条件のもとで,3か月以上の長期にわたって生存できるのは蛹と幼虫だけであった。
    2) 蛹は,発育零点以下の低温に2か月間さらされると,すべて増殖不能な羽化不全の個体となり,羽化障害の程度は蛹化日齢の進んだ個体で大きかった。
    3) 幼虫は,羽化障害が発生する低温下でも3か月以上の長期生存が可能であり,その後の加温飼育においても正常に発育した。
    4) 幼虫には,低温順化に伴う耐寒性の向上が認められなかった。
    5) 低温条件下における若∼中齢幼虫の生存期間は,老齢幼虫のそれより長い傾向にあり,若齢幼虫のほうが越冬にやや有利と思われた。
  • II. 虫体凍結温度と低温致死温度
    松浦 博一, 内藤 篤
    1991 年 35 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 1991/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ハスモンヨトウの中∼老齢幼虫と蛹を0°C以下に冷却し,虫体凍結温度と低温致死温度を調査した。
    1) 過冷却点は幼虫では-8°C前後で,齢期による顕著な差違はなかった。蛹は過冷却点が-16°C前後のグループと-9°C前後のグループに分かれた。後者は前者より蛹齢が5∼6日若かった。
    2) 冷却時間の長さと幼虫の虫体凍結の関係については,0°Cでは48時間でも凍結しなかったが,-5°Cでは36時間で,-10°Cではわずか2時間で全個体が凍結した。凍結した個体はすべて死亡し,耐凍性はみられなかった。
    3) 冷却時間の長さが蛹化に及ぼす影響については,-5°Cの場合,3時間では蛹化に異常はみられなかったが,24時間では半数が,36時間では全個体が蛹化できずに死亡した。-10°Cの場合,2時間の冷却で全個体が蛹化できずに死亡した。-5°Cは本種の生存を左右する重要な低温であった。
    4) 蛹は幼虫に比べて凍結しがたく,-5°Cに48時間さらしても8割以上の個体が凍結しなかった。しかし,これらの個体は加温飼育の途中ですべて死亡し,回復不能な低温障害を被った。
    5) 湿った土や湿らせた濾紙上に置いた幼虫は,低温冷却に伴う植氷により,風乾土や乾いた濾紙上に置いた幼虫に比べて虫体凍結する個体が多かった。
  • 井上 晃一, 芦原 亘, 刑部 正博, 浜村 徹三
    1991 年 35 巻 1 号 p. 49-56
    発行日: 1991/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    果樹試験場安芸津支場内のカンキツ園の周辺にある防風樹イヌマキとスギで天敵相を6年間調査,また,中国,四国,九州地方のカンキツ園周辺の防風樹を樹種別に捕食性ダニ相について調べた。
    1) イヌマキではテントウムシ科8種,キムネタマキスイ科1種,ハネカクシ科2種,クサカゲロウ科1種,カブリダニ科3種ナガヒシダニ科1種,ハモリダニ科1種とクモ類が認められた。スギではテントウムシ科3種,カブリダニ科2種で,これらの構成種はイヌマキの場合より少なかったが,その他の科については両樹種間で差異がなかった。
    2) 両樹種ともケボソナガヒシダニが全体の個体数の60∼70%と最も多く,ついでクモ類であった。そのほかに,イヌマキではカブリダニ科,おもにニセラーゴカブリダニとケナガカブリダニが全個体数の約5%,テントウムシ科が約3%,スギではハネカクシ科の2種ヒメハダニカブリケシハネカクシとハダニカブリケシハネカクシが6%を占めた。
    3) 防風樹の捕食性ダニ相は,樹種によってかなり異なり,とくにイヌマキでは多くの種が認められたが,優占種はニセラーゴカブリダニとケボソナガヒシダニであった。
    4) 以上の結果,果樹園周辺の防風樹における天敵昆虫・捕食性ダニの構成種は,樹種により異なり,また,果樹との共通種が多かった。
  • 阿部 芳彦, 小山 健二
    1991 年 35 巻 1 号 p. 57-63
    発行日: 1991/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ヒメトビウンカ,セジロウンカおよびトビイロウンカに対して捕食・寄生性を示すクロハラカマバチの発生形態および産卵特性について観察した。発生初期に一対のローブが胚先端部に形成され,これが寄主体腔内へ伸長して胚へ栄養を供給しているように考えられた。胚は約8日かけて寄主体外に突出するまで発育し,突出後脱皮して完全な幼虫体が形成された。クロハラカマバチの成虫は捕食対象としたヒメトビウンカ幼虫にも産卵し,捕食後産卵済の死体を放棄すると考えられた。クロハラカマバチはセジロウンカ幼虫を捕食するが,産卵は認められなかった。トビイロウンカ幼虫には産卵が認められたが,産下卵は寄主の生体防御反応により包囲されて死滅すると考察された。しかし,発生過程の進行はヒメトビウンカに産下された卵より顕著に早く,生体防御反応に対する対抗反応のように考えられた。
  • III. 越冬に必要な環境条件に関する実験的考察
    松浦 博一, 内藤 篤, 菊地 淳志
    1991 年 35 巻 1 号 p. 65-69
    発行日: 1991/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    発育零点以下の低温に毎日一定時間遭遇する変温条件下でハスモンヨトウの3∼4齢幼虫を飼育し,越冬を想定した3か月以上の長期生存が可能となる諸条件を調査した。
    1) 低温条件下で幼虫が3か月以上の長期にわたって生存するためには,所定量の発育有効温量と食物摂取が不可欠であった。この間に幼虫はゆっくりと次の齢期に発育したが,個体による発育差が大きく,その間の脱皮回数は1回から3回のものまで認められた。
    2) 0°C以下の低温に毎日一定時間遭遇する変温条件の下で幼虫が3か月以上の長期にわたって生存するには,1日当り0.9日度以上の発育有効温量が必要であり,1日に占める0°C以下の継続時間が長くなるほどより多くの発育有効温量を必要とした。
    3) 幼虫の生存期間に及ぼす0°C以下の低温の影響は,その低温にさらす時間によって異なった。1日5時間以内のときは0°Cも-2°Cも同程度であったが,10時間では-2°Cの影響が0°Cより明らか大きくなり,幼虫の生存期間が短縮した。
    4) 幼虫を毎日2時間ずつ-5°Cにさらし,残りの時間を15°Cで飼育しても,生存期間は40日あまりであり,-5°Cは越冬に不適な限界低温と考えられた。1日2時間ずつ-7°Cにさらした場合,生存期間はさらに短く最長でも2週間程度であった。
  • 高田 肇
    1991 年 35 巻 1 号 p. 71-76
    発行日: 1991/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ヌルデシロアブラムシの虫えいの発育と有翅虫の虫えいからの脱出について,京都の山地および圃場のヌルデで調査し,次の結果を得た。
    1) 虫えいは5月中旬から6月上旬に形成され,10月中旬から11月初めに裂開した。3個の虫えいについて,最大長・幅・高を定期的に測定した。その値から求めた「表面積指数」は,虫えい形成後9月初めまで指数的に上昇し,その後増加率はやや低下したが,9月末まで上昇をつづけた。10月にはいると発育は停止した。幹母(虫えい内第一世代)は6月下旬に,第二世代無翅胎生雌は7月末にそれぞれ産子を開始し,最終世代の有翅胎生雌は9月中旬に3齢幼虫になった。8月中に少なくとも1世代は経過すると思われるので,虫えい内では4世代を経ると考えられる。
    2) 10月に調査した15個の虫えいは,最少1,343匹,最多8,438匹の有翅虫を包含していた。観察した2個の虫えいから,有翅虫はそれぞれ11日,13日間にわたって脱出した。脱出は9∼17時に見られた。時間別脱出虫数は調査した6日のうち5日については,12∼13時をピークとする一山型の消長を示した。
  • 吉井 幸子
    1991 年 35 巻 1 号 p. 77-79
    発行日: 1991/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    Mating behavior of Euproctis similis (FUESSLY) was observed under both laboratory and field conditions. Mating started 2 to 5hr after the lights were off and continued for 156min in the laboratory (23°C, 16L-8D), whereas it began 0.5 to 3hr after sunset and continued for 162min in the field. The maximum mating rates were recorded with 3 to 4 day-old moths.
  • 西東 力
    1991 年 35 巻 1 号 p. 80-81
    発行日: 1991/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
  • 清水 勇
    1991 年 35 巻 1 号 p. 83-91
    発行日: 1991/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
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