日本応用動物昆虫学会誌
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35 巻, 2 号
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  • 国本 佳範, 真梶 徳純, 天野 洋
    1991 年 35 巻 2 号 p. 103-108
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ミカンハダニの非休眠系統および休眠系統ならびにリンゴハダニを用いて交雑実験,交尾時間の測定を行い,雄の挿入器の形態を調べた。
    1) 休眠系ミカンハダニとリンゴハダニの間には交雑実験で生殖的隔離が認められた。しかし,生殖的隔離の原因が卵の受精前に生じるのかその後なのかについては明らかにできなかった。
    2) 2系統のミカンハダニとリンゴハダニの3系統相互間の正逆組合せで交尾時間を調べたところ,休眠系ミカンハダニを♂にした組合せを除いて交尾時間は大きな変化はなかった。休眠系ミカンハダニを♂にした組合せではその他の組合せに比べて交尾時間は著しく短くなった。そのなかでも休眠系ミカンハダニ自系内組合せが最も長く,非休眠系ミカンハダニ♀との組合せが最も短く,リンゴハダニ♂との組合せはそれらの中間であった。
    3) 2系統のミカンハダニとリンゴハダニの雄の挿入器は形態的にそれぞれ違いが認められた。休眠系ミカンハダニの挿入器は概観的にはリンゴハダニに類似していたが末端部が急に曲がっている点に特徴があり,同種とされる非休眠系ミカンハダニとは大きく異なっていた。
  • 3. 卵巣の相互交換移植
    河口 豊, 伴野 豊, 古賀 克己, 土井良 宏, 藤井 博
    1991 年 35 巻 2 号 p. 109-113
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    大卵遺伝子Geの形質発現過程において卵形の決定要因が,卵造成を行う卵巣自体に依存しているのか,または卵形成の行われる体内環境に支配されているのかを明らかにする目的で,幼虫終齢期の正常雌とGe雌との間で卵巣の片側相互交換移植を行い,手術雌個体の成虫化後に解剖して卵を取り出し,その特徴を調査した。
    1) Ge雌に正常卵巣を移植した場合,宿主卵巣からはGe卵,移植卵巣からは正常卵がそれぞれ形成された。
    2) 正常雌にGe卵巣を移植した場合,宿主卵巣からは正常卵,植移卵巣からはGe卵がそれぞれ形成された。
    3) いずれの場合も卵黄タンパク質成分は量的にみて正常卵では正常型,Ge卵ではGe型であった。
    4) 卵の形成は卵巣自身の遺伝子型によって決定されるものであり,体内環境の影響は受けないものと結論した。
  • 和氣坂 成一, 佃 律子, 中筋 房夫
    1991 年 35 巻 2 号 p. 115-122
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    コナガの野外個体群に対する天敵や降雨の影響を量的に評価するため,降雨の影響を除きすべての天敵を除去した区と,雨のみを防ぎ天敵を自由に働かせた区,地上はい廻性天敵を除去した区,天敵を自由に働かせた区の四つの実験区を設け,6, 9, 10月の三つの時期に生命表を作成した。また室内実験により人工散水が卵や幼虫の落下に及ぼす影響を調べた。さらに高温および寄主植物の違いがコナガの発育や増殖に及ぼす影響を調べた。結果は次のとおりである。
    1) 雨よけ全天敵除去区以外の区ではすべての世代でコナガは卵期と幼虫期合わせて85%以上が死亡したが,そのおもな部分は原因不明の消失であった。9月世代の幼虫期後半,蛹期および10月世代の蛹期には寄生蜂による寄生率が高かった。
    2) 卵,若齢幼虫の消失の大部分は降雨などによる落下であると思われた。
    3) 9月世代の高い寄生率に関与した寄生蜂はApanteles plutellae(幼虫),Diadromus subtilicornis, Tetrastichus sokolowskii(蛹)の3種であった。
    4) 30°C以上の高温はコナガに生理的悪影響を与えた。
    5) 寄主植物の違いは成虫の増殖形質に影響することが示された。野生アブラナ科植物のナズナは,アブラナ科作物よりコナガの発育と増殖にとって不適であった。
  • 中村 寛志, 杉山 隆史, 岡本 秀俊
    1991 年 35 巻 2 号 p. 123-129
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    スギ林内におけるスギカミキリ成虫の移動の実態と移動に影響を及ぼす要因を明らかにするため,バンドトラップを捕獲手段とした標識再捕獲法による調査および成虫の脱出孔の調査を1987年に行った。マークした成虫は240(雌108,雄132)個体であった。
    1) 前回と同じ木で再捕獲された割合は72.2%,また調査期間中同一木でのみ再捕獲された個体は27.9%もみられ移動性の低さを示した。また1987年までに形成された脱出孔が多い木では捕獲虫が少なかった。
    2) 林縁部で捕獲された個体では移動や消失の割合が高く,また調査時期が遅くなるほど移動する個体の割合が高くなった。
    3) 捕獲虫がきわめて少ない木や多い木では滞留個体の割合は低く,捕獲虫数がその中間の範囲では高くなった。また木あたりの脱出孔数が12個以上ある木では,滞留率は0%であった。
    4) 平均移動距離は13.94mで,雌の移動距離のほうが雄よりも長かった。またその頻度分布より近距離と長距離の移動が認められた。移動の方向については有意な傾向は認められなかった。
    5) 同一木における滞留日数は雌のほうが雄より短かった。また移動するたびに移動先の木での滞留日数が短くなる傾向がみられた。
    6) 以上の結果から本種成虫の移動に影響を及ぼす要因と移動行動の生態的意義について考察した。
  • I. 加害時期と被害の関係
    樋口 博也
    1991 年 35 巻 2 号 p. 131-135
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ダイズの異なる生育時期にハスモンヨトウの卵塊を接種し被害解析を行った。
    ダイズの生殖生長前期の開花期や莢伸長期に加害されると,莢数が減少することにより減収し,生育も抑制された。後期の莢伸長期や子実肥大期に加害されると粒の肥大が抑制されることにより減収することが明らかとなった。
  • 小山 健二, 三橋 淳
    1991 年 35 巻 2 号 p. 137-143
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ヒメトビウンカの幼虫発育に不可欠な無機塩の種類と濃度を明らかにした。マグネシウム,カリウム,リン酸はヒメトビウンカの幼虫発育に不可欠な無機塩であることが明らかになった。マグネシウム源としてMgCl2・6H2Oを用いた場合の最低有効濃度は6.25mg/100ml付近にあると推定された。カリウム源としてKClを用いた場合最低有効濃度は62.5mg/100ml付近であった。リン酸源としてH3PO4を用いた場合の最低有効濃度は15.625mg/100ml付近であった。
    リン酸カリウムとしては,KH2PO4のかわりにK2HPO4およびK3PO4を与えた場合,幼虫期間は3種の化合物の間で差はなかった。
    マグネシウム化合物としては,Mg(CH3COO)2・4H2O, MgBr2・6H2O, Mg3(C6H5O7)2・14H2O, Mg(OH)2, MgC6H10O6・3H2O, Mg(C18H35O2), MgSO4・7H2OおよびMg2Si3O8・5H2Oで幼虫から成虫まで発育した。
    カリウム化合物としては,リン酸カリウムのほかCH3COOK, KBr, K2CO3, KCl, C6H5K3O7・H2O, KH2C6H5O7, KHCO3, KHSO4, K2S2O7, K2SO4およびKNaC4H4O6・4H2Oで成虫まで発育した。
    リン化合物としては,NH4H2PO4, CaHPO4・2H2O, Ca3(PO4)2, H3PO4, HPO3, NaHPO4・2H2O, Na2HPO4およびNa3PO4・12H2Oで幼虫から成虫まで発育した。
  • V. 寄主選好性と有機リン剤抵抗性の関係
    西東 力
    1991 年 35 巻 2 号 p. 145-152
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ワタアブラムシの寄主選好性と有機リン剤抵抗性との関係を,本種のクローンや個体群を用いた寄主転換試験などにより検討した。
    1) ウリ科作物(メロンおよびキュウリ)由来のクローンをナス科作物(ナスおよびジャガイモ)に接種すると,元の寄主作物に接種した場合に比べて,接種した親虫の生存期間が著しく短くなり,産子数も大幅に減少した。また,産子された幼虫の発育や増殖も悪くなり,クローンを維持できなくなる場合が多かった。これと逆の組合せにおいても同様の傾向が認められた。
    以上の結果は接種源が有翅虫であっても無翅虫であっても同じであった。
    適合性の低かった植物でクローンの飼育を続けても,産子数が顕著に増えるといった傾向は認められなかった。
    2) イチゴ由来のクローンをナス科作物に接種すると,産子数が比較的多く,その後代の増殖も良好であった。しかし,ウリ科作物に接種した場合は,産子がほとんど行われなかった。一方,ウリ科作物とナス科作物由来のクローンはイチゴに対する産子数が比較的多く,その後の増殖も良好であった。
    3) クローンのアリエステラーゼ活性値は寄主植物が違ってもほとんど変動しなかった。
    4) メロンで採集した個体群をナスに接種すると,一時的な定着は起こっても,3か月以上生存できる個体はまったく検出されなかった。これと逆の組合せにおいても同様の現象が認められた。
    5) キュウリとナスを同一圃場に混植し,寄生個体のアリエステラーゼ活性を測定したところ,前者では高活性個体の,後者では低活性個体の検出頻度が高かった。
    6) オオイヌノフグリで胎生越冬したと思われる個体群のなかには,メロンとナスに対する選好性の異なる個体が混在していた。アリエステラーゼ活性はメロンを選好した個体で高く,ナスを選好した個体で低かった。
    7) 以上の結果から,ワタアブラムシにはウリ科作物あるいはナス科作物を選好する少なくても二つの系統が存在し,前者には有機リン剤抵抗性の高い個体が多く,後者にはそれの低い個体が多いことが推察された。両系統はバイオタイプが異なるものと考えられた。
  • 大谷 徹, 高藤 晃雄, 井上 雅央
    1991 年 35 巻 2 号 p. 153-159
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    露地栽培ナスに3種の合成ピレスロイド剤を定期的に散布し,カンザワハダニTetranychus kanzawai KISHIDA,およびその天敵2種,ケナガカブリダニAmblyseius longispinosus (EVANS)とOrius属のハナカメムシの発生消長を約5か月間調べ,有機リン剤区,殺ダニ剤区および無処理区と比較した。合成ピレスロイド剤のフェンバレレート,ペルメトリン区では3∼4回,フェンプロパトリン区では2∼3回のハダニの顕著な発生ピークがそれぞれ薬剤散布後約20日目に認められる例が多かった。とくに8月にみられたピークは1,000∼3,000匹/株に達し,無処理区の一部や他の薬剤処理区が低密度に推移したのに比べて顕著な違いがみられた。これらの合成ピレスロイド剤処理区では,調査期間を通じて天敵の発生密度が他の処理区と比べて明らかに低く,またハダニ個体数の増加に対応した天敵の増加は,フェンプロパトリン区のハナカメムシを除き,きわめて低く抑えられた。これらから,合成ピレスロイド剤による天敵の排除によってハダニ個体数の増加がもたらされていることが明らかであった。
  • 柴尾 学, 田中 福三郎, 佃 律子, 藤崎 憲治
    1991 年 35 巻 2 号 p. 161-163
    発行日: 1991/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    The overwintering sites and stages of Scirtothrips dorsalis HOOD were investigated both in a grape field and a greenhouse from November 1989 to April 1990 in Okayama. It is suggested that S. dorsalis adults migrate to the overwintering sites before the grape leaves die and fall in November. A few overwintering adults were collected from various sites including bark, litter and soil both in the greenhouse and the grape field throughout the winter.
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