ツゲノメイガ
Glyphodes perspectalis (WALKER)の生活史を解明するため,休眠誘導の光周反応を調査した。
1) 宮城,東京・千葉,高知,福岡の4産地より採集した個体群の休眠光周反応はいずれも長日型を示し,それらの20°Cにおける臨界日長は宮城産と福岡産が14h 20min東京・千葉産が13h 50min,高知産が13h 40minとなり,地理的変異がみられた。
2) 東京・千葉個体群の雌成虫別に得た次世代幼虫の休眠光周反応を調べたところ,反応型には個体変異が認められず,いずれも典型的な長日型となった。しかし,それらの臨界日長にはかなり大きい変異がみられた(
N=40)。
3) 休眠光周反応の臨界日長は温度によって変動し,15∼25°Cの範囲での恒温条件では高温となるに従って臨界日長は短くなった。また,明期を25°C,暗期を15°Cにした場合,その光周反応の臨界日長は明期の温度である25°C恒温条件での値に近似していた。
4) クサツゲ,セイヨウツゲ,チョウセンヒメツゲの3種類の餌植物を集団と個体別の2通りの生育密度で飼育し,それらの休眠光周反応を求めた。それらのほとんどは類似した長日型反応を示したが,チョウセンヒメツゲを与えて集団で飼育した場合のみ日長条件に関係なく常に高い割合で休眠が誘導された。
5) 休眠誘導の光周感受期は孵化から休眠誘導直前までの幼虫期にあり,特にその期間の後半に当る3齢幼虫期の感受性が高かった。
6) 発育速度,休眠光周反応の臨界日長,光周感受期および各産地の平均気温と日長時間より作成した光温図から,本種は地域によって年2∼4化となることが推定された。また,東京・千葉個体群の発生時期および発生回数の推定値は,野外での観測値とほぼ一致していた。
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