日本応用動物昆虫学会誌
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37 巻, 2 号
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  • III. 休眠誘導の光周反応
    丸山 威, 真梶 徳純
    1993 年 37 巻 2 号 p. 45-51
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ツゲノメイガGlyphodes perspectalis (WALKER)の生活史を解明するため,休眠誘導の光周反応を調査した。
    1) 宮城,東京・千葉,高知,福岡の4産地より採集した個体群の休眠光周反応はいずれも長日型を示し,それらの20°Cにおける臨界日長は宮城産と福岡産が14h 20min東京・千葉産が13h 50min,高知産が13h 40minとなり,地理的変異がみられた。
    2) 東京・千葉個体群の雌成虫別に得た次世代幼虫の休眠光周反応を調べたところ,反応型には個体変異が認められず,いずれも典型的な長日型となった。しかし,それらの臨界日長にはかなり大きい変異がみられた(N=40)。
    3) 休眠光周反応の臨界日長は温度によって変動し,15∼25°Cの範囲での恒温条件では高温となるに従って臨界日長は短くなった。また,明期を25°C,暗期を15°Cにした場合,その光周反応の臨界日長は明期の温度である25°C恒温条件での値に近似していた。
    4) クサツゲ,セイヨウツゲ,チョウセンヒメツゲの3種類の餌植物を集団と個体別の2通りの生育密度で飼育し,それらの休眠光周反応を求めた。それらのほとんどは類似した長日型反応を示したが,チョウセンヒメツゲを与えて集団で飼育した場合のみ日長条件に関係なく常に高い割合で休眠が誘導された。
    5) 休眠誘導の光周感受期は孵化から休眠誘導直前までの幼虫期にあり,特にその期間の後半に当る3齢幼虫期の感受性が高かった。
    6) 発育速度,休眠光周反応の臨界日長,光周感受期および各産地の平均気温と日長時間より作成した光温図から,本種は地域によって年2∼4化となることが推定された。また,東京・千葉個体群の発生時期および発生回数の推定値は,野外での観測値とほぼ一致していた。
  • 藤家 梓, 横山 とも子, 藤方 正浩, 澤田 正明, 長谷川 誠
    1993 年 37 巻 2 号 p. 53-60
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    畑作物(落花生,サツマイモ等)や芝草の大害虫であるドウガネブイブイに対するS. kushidaiの殺虫性と増殖力,感染態幼虫(JIII)の水中・土壌中での生存および生存に及ぼす化学農薬・太陽光・Metarhizium anisopliaeの影響を調査した。JIIIは,ドウガネブイブイの1, 2齢幼虫より3齢幼虫に高い殺虫性を示した。ドウガネブイブイの3齢幼虫体内でS. kushidaiはよく増殖し,幼虫1頭あたり平均で29,890頭のJIIIが分離された。JIIIの増殖数は,幼虫の体重が重いほど多かった。懸濁液中でのJIIIの生存率は15°Cで最も高く,3か月後でも50%以上であった。しかし,4, 10, 20,および25°Cでは1か月後に生存率は50%以下になり,4°Cでは10%以下となった。JIIIを接種して15°Cで保存した土壌中では3齢幼虫に対するJIIIの殺虫性が6か月間高く保たれた。JIIIを接種した野外の落化生圃場でも高い殺虫性が8か月間保たれたが,冬を越すと殺虫性は低下した。殺虫剤(ダイアジノン,MPP)はJIIIの生存率を著しく減少させたが,殺菌剤(チオファネートメチル)や除草剤(CAT,グリホサート)のJIIIへの影響は小さかった。JIIIを太陽光へ20分以上暴露すると,生存率は低下した。M. anisopliaeは,JIIIの生存率へ影響を与えなかった。
  • 金子 順一
    1993 年 37 巻 2 号 p. 61-67
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1. 札幌市羊ヶ丘の北海道農業試験場内のキャベツ圃場で,キンウワバ個体の発生消長調査を1991年6月14日から12月4日まで毎週1回行った。また,ガンマキンウワバとタマナギンウワバの性フェロモントラップによる捕獲個体数を同年5月1日から11月30日まで,毎日調査した。
    2. キャベツ圃場から得られたキンウワバは,タマナギンウワバ,ガンマキンウワバとごく少数のイラクサギンウワバの3種であった。タマナギンウワバが春先から夏にかけて個体数が多く,9月以降減少するのに対し,ガンマキンウワバは,夏から秋にかけて増加し,9月以降12月4日まで25株当り5頭程度の個体数が維持されていた。
    3. ガンマキンウワバのトラップ捕獲個体数は,タマナギンウワバのそれと比較して格段に多かった。ガンマキンウワバが広い面積にわたり多数個体が生息しているのに対し,タマナギンウワバは,キャベツ圃場など限られた場所で密度が高いと推定された。
  • 国本 佳範, 真梶 徳純, 天野 洋
    1993 年 37 巻 2 号 p. 69-73
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ミカンハダニのイヌツゲでの発生消長とイヌツゲから隣接するナシ園への侵入の様子および侵入後のナシ園での消長を調査した。
    1) イヌツゲでのミカンハダニの発生消長は春に大きなピークを持ち,その後は低レベルで推移した。
    2) イヌツゲでのミカンハダニ雌成虫は5月中,下旬に分散により個体数が減少した。分散個体の一部はナシ園に定着するが,その距離は数m程度と考えられた。
    3) ナシ園に侵入したミカンハダニは,夏まで侵入箇所付近で個体数を維持した後,個体数が増加し,周囲へと広がっていく。このため,初期に多くの個体が侵入した発生源近くでは夏と秋に発生ピークを持ち,ナシ園侵入後に増殖し,それが分散していった場合には秋に高密度となることがわかった。
  • 下田 武志, 真梶 徳純, 天野 洋
    1993 年 37 巻 2 号 p. 75-82
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    クズに生息するヒメハダニカブリケシハネカクシOligota kashmirica benefica(以下,O.k. benefica)の生態に関する基礎的資料を得るため,クズでのハダニおよびO.k. beneficaの発生消長を調査するとともに,発育や産卵に及ぼすハダニ捕食数の影響を調査した。
    1) クズにおけるO.k. beneficaの出現は,ハダニが発生する時期に限定された。本種の個体数ピークは6月と10月にそれぞれ形成されたが,それらはハダニの個体数ピークが形成された時期とほぼ一致した。
    2) クズで優占した捕食性昆虫と捕食性ダニは,それぞれO.k. beneficaならびにケナガカブリダニであった。
    3) 幼虫の発育や成虫の産卵には多くのハダニを餌として必要とすることが室内調査により判明した。また,ここで採用した室内飼育条件では,蛹の生存率は卵期や幼虫期のそれと比較して低く,室内飼育の際の障害になることがわかった。
    4) 以上の結果から,クズに生息するO.k. beneficaの発生はハダニの発生密度に強く影響を受けていること,それは本種が発育や産卵のために多くのハダニを必要とするためであることが判明した。
  • 第3報 ナスとキュウリに寄生する個体群の寄主選好性と有機リン剤感受性
    細田 昭男, 浜 弘司, 鈴木 健, 安藤 幸夫
    1993 年 37 巻 2 号 p. 83-90
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1988∼1990年に広島県立農業技術センター(東広島市八本松町)内にアブラムシ類が移出・入のできない小型ハウスを組み立て,ナズナ,オオイヌノフグリとムクゲの3種の冬寄主植物上で越冬したワタアブラムシ個体群のナスとキュウリの夏寄主植物に対する選好性と各寄主植物上で増殖した個体群のフェニトロチオンに対する感受性を検討した。
    1) ナズナ,オオイヌノフグリなどの冬寄主植物で越冬した個体群の中には,ナスを選好するタイプとキュウリを選好するタイプが存在し,地域や年次によって,一つのタイプが優占する場合と,二つのタイプが混在する場合が認められた。
    2) ナスとキュウリに寄生した個体群をそれぞれナズナとオオイヌノフグリ上で越冬させると,翌春にはナス由来の個体群はナスを,キュウリ由来の個体群はキュウリを選好した。
    3) 卵越冬すると考えられている越冬寄主植物のムクゲに寄生した個体群も,春にはナス由来の個体群はナスに,キュウリ由来の個体群はキュウリに選好性を示した。
    4) ナス由来とキュウリ由来の個体群をそれぞれナズナ,オオイヌノフグリとムクゲの冬寄主植物で越冬させ,翌春ナスとキュウリ上で増殖した個体群のフェニトロチオンに対する感受性は,ナス個体群では高くキュウリ個体群は低く,両個体群間で薬剤感受性は異なった。
    5) 以上の結果から,ワタアブラムシの中にはナスとキュウリをそれぞれ選好するタイプが存在し,越冬寄主植物上では二つのタイプが混在していても,春∼秋の間もそれぞれの寄主選好性は維持されることが示唆された。そして,このことがナス科とウリ科作物寄生個体群の有機リン剤感受性の差異を維持している大きな要因と考えられた。
  • 4. 大卵の卵殻表面構造
    河口 豊, 伴野 豊, 古賀 克己, 土井良 宏, 藤井 博
    1993 年 37 巻 2 号 p. 91-95
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    カイコ大卵突然変異(Ge)の卵殻表面構造を微分干渉位相差顕微鏡により正常卵との比較観察を行った。
    1) Ge卵の前極部,後極部,背面と腹面部にそれぞれ部域特異構造が正常卵と同様に観察され,正常卵との間には大きな差異は認められなかった。
    2) 卵側面部においても正常卵と同じように網目状構造が観察された。しかし,個々の区画の大きさが正常卵のそれよりも小さかった。換言すれば包卵皮膜の卵殻タンパク質を分泌する細胞表面の面積が正常卵のそれよりも小さくなっていた。
    3) Ge卵は包卵皮膜細胞の卵殻タンパク質分泌表面が小さい反面,包卵皮膜の細胞数を増加させることにより卵形を大きくしていると推察された。
  • 永井 一哉, 小山 健二
    1993 年 37 巻 2 号 p. 97-98
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
  • 稲泉 三丸, 高橋 滋
    1993 年 37 巻 2 号 p. 98-101
    発行日: 1993/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    Factors influencing egg mortality in Aphis gossypii hibernating on Hibiscus syriacus L. were examined. Observations on 380 hibernating eggs in the field showed that 42% hatched successfully next spring and that 87% and 6% of egg mortality were due to atrophy and falling from the branches, respectively. Egg atrophy occurred in the field from December to February. Oviparous females isolated without males in the laboratory often laid unfertilized eggs in early November. Fertilized eggs turned glossy black 7 days after oviposition, but unfertilized ones turned dark yellow or transparent except at the central part and atrophied 6 weeks later. Few of the eggs laid by mated oviparous females died of atrophy within 6 weeks after oviposition. These results suggest that egg atrophy in the field is caused by a considerable number of unfertilized eggs in hibernating eggs.
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