クスアナアキゾウムシによるシキミの被害発生条件を明らかにするために,四国地方の184か所の栽培地で被害本数率と栽培環境を調査し,被害発生要因を解析した。
高知県81%,愛媛県77%。,徳島県58%,香川県14%の栽培地で被害が確認された。被害地の分布密度は,四国西部・南部地域では高かったが,北東部地域では低かった。
栽培環境として,標高,斜面方位,植栽木の入手方法,栽培地の前作,周囲の森林の有無,栽培年数,雑草の繁茂状態,落葉・落枝の堆積状態,薬剤の散布頻度および他の作物との混植の有無の10項目を調査し,これらを説明変数とした重回帰分析を主に用いて解析した。被害本数率は,栽培年数が長くなるほど高くなり,また栽培地の周囲に森林がある場合には,ない場合に比べて高かった。さらに被害本数率は,雑草がある場合には,ない場合よりも,薬剤の散布頻度が年1回以下の場合には,年2回以上の場合よりも高かった。栽培年数は虫がクスアナアキゾウムシによるシキミの被害 15侵入する機会の多さおよび密度の増加と,周囲の森林の有無は侵入のしやすさと,雑草は産下卵の保護および成虫越冬場所としての効果と,薬剤の散布頻度は成虫に対する防除効果とそれぞれ関係があると考えられた。
これらのことから,特に被害地の分布密度が高い地域で本種による被害を軽減するためには,雑草の除去や薬剤散布などの圃場管理を徹底する必要があると考えられた。
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