日本応用動物昆虫学会誌
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41 巻, 1 号
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  • 望月 雅俊
    1997 年 41 巻 1 号 p. 1-5
    発行日: 1997/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    合ピレ剤・有機リン剤・カーバメイト剤抵抗性ケナガカブリダニ(Hiranuma-1系統)に対して,合ピレ剤permethrinによる室内での連続的淘汰を10回行い,合ピレ剤抵抗性の発達程度を調査した。また淘汰終了後も累代飼育を継続し,薬剤抵抗性の安定性について調査した。
    Permethrin 20%水和剤(400ppm)による6回の淘汰により生存率は平均で35.3%から61.6%に次第に上昇した。本種のpermethrin感受性は剤型により異なり,乳剤では水和剤よりも高い死亡率が示される。そこで淘汰条件をpermethrin 20%乳剤(50ppm)に変更してさらに4回の淘汰を行ったところ,生存率は8.7%から31.6%に上昇した。これら10回の淘汰で得られたSEL10系統のLC50値(522.6ppm)は淘汰前の約2.0倍にとどまり,抵抗性の顕著な上昇は見られなかったが,permethrin水和剤の実用濃度(100∼200ppm)を大きく上回った。薬剤無接触条件下でSEL10系統の累代飼育を継続すると,permethrin抵抗性は20か月間,また,methidathion, methomyl抵抗性も調査期間を通じ比較的安定して維持された。しかし,20か月以上の長期間の薬剤無接触条件下ではpermethrin感受性が明らかに回復したことから,抵抗性の維持が今後の課題として残された。
  • 井上 大成, 宮田 弘明, 堺 俊彰, 井上 功盟, 大久保 政利, 西村 知記, 若山 学, 高橋 昌隆
    1997 年 41 巻 1 号 p. 7-15
    発行日: 1997/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    クスアナアキゾウムシによるシキミの被害発生条件を明らかにするために,四国地方の184か所の栽培地で被害本数率と栽培環境を調査し,被害発生要因を解析した。
    高知県81%,愛媛県77%。,徳島県58%,香川県14%の栽培地で被害が確認された。被害地の分布密度は,四国西部・南部地域では高かったが,北東部地域では低かった。
    栽培環境として,標高,斜面方位,植栽木の入手方法,栽培地の前作,周囲の森林の有無,栽培年数,雑草の繁茂状態,落葉・落枝の堆積状態,薬剤の散布頻度および他の作物との混植の有無の10項目を調査し,これらを説明変数とした重回帰分析を主に用いて解析した。被害本数率は,栽培年数が長くなるほど高くなり,また栽培地の周囲に森林がある場合には,ない場合に比べて高かった。さらに被害本数率は,雑草がある場合には,ない場合よりも,薬剤の散布頻度が年1回以下の場合には,年2回以上の場合よりも高かった。栽培年数は虫がクスアナアキゾウムシによるシキミの被害 15侵入する機会の多さおよび密度の増加と,周囲の森林の有無は侵入のしやすさと,雑草は産下卵の保護および成虫越冬場所としての効果と,薬剤の散布頻度は成虫に対する防除効果とそれぞれ関係があると考えられた。
    これらのことから,特に被害地の分布密度が高い地域で本種による被害を軽減するためには,雑草の除去や薬剤散布などの圃場管理を徹底する必要があると考えられた。
  • 末永 博, 田中 章
    1997 年 41 巻 1 号 p. 17-25
    発行日: 1997/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    エンドウほ場におけるシロイチモジヨトウの発生消長を,鹿児島県山川町において1992年と1993年に調査した。さらに,同町内の成虫発生消長を,湿式のフェロモントラップ(9個)を用いて1992年8月下旬から1994年3月下旬まで調べた。
    1) 8月中旬に播種したほ場では,草丈が10cm前後になった頃から幼虫が発生し始め,15∼25cmの頃にピーク(1992年は30∼100頭/100株,1993年は9頭/100株)に達した。幼虫の発生は約2週間ほどで終息し,その後11月頃までは100株当たり2∼3頭以下の低密度で推移した。播種時期や地域が異なっても,幼虫の発生はやはり草丈が10∼20cmの時期にピークに達した。
    2) ピーク時の幼虫発生量は,8月中旬に播種したほ場で最も多く,8月下旬に播種したほ場では2分の1以下に減少した。さらに播種時期が遅くなる(10月上旬)と,100株当たり1頭前後以下の少発生となった。
    3) 以上のような幼虫発生パターンから,本種の防除には,寒冷紗を生育初期に被覆すること,および8月下旬以降に播種することが有効であることが示唆された。
    4) 1993年には,ほぼすべてのトラップに共通して,4月下旬,9月下旬∼10月上旬,11月中∼下旬の3つの誘殺ピークが認められた。さらに,6月下旬から8月中旬の間にトラップによって2∼3個の誘殺ピークが認められ,年に5∼6世代経過しているようであった。9月下旬∼10月上旬と11月中∼下旬のピークは1992年のほぼ同じ時期にもみられた。
  • 遠藤 正造
    1997 年 41 巻 1 号 p. 27-31
    発行日: 1997/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1. 局所施用法によりコブノメイガの薬剤感受性を成虫と幼虫で比較した。カルタップの成虫に対するLD50値(μg/g)は幼虫のそれに比べて小さかった。しかし,モノクロトホス,アセフェートでは逆に,成虫に対するLD50値は幼虫の10倍以上あった。
    2. モノクロトホス,アセフェートの虫体内における残存薬剤量は成虫の方が幼虫に比べ多かった。アセフェートを施用した場合,幼虫体内にはアセフェートの加水分解物であるメタミドホスが主に検出されたのに対して,成虫体内ではほとんどがアセフェートのままであった。しかし,虫体ホモジネートでは逆に幼虫の場合より成虫でメタミドホスの生成割合が高かった。メタミドホスを局所施用した場合は,虫体内の薬剤の残存割合は成虫と幼虫で大きな違いはなかった。
    3. AChEのモノクロトホス,メタミドホス感受性は成虫と幼虫でほとんど差がなかった。
    以上のことから成・幼虫のアセフェートやモノクロトホス感受性が異なる要因として,成虫では局所施用された薬剤の一部がそのまま組織の一部に蓄積されるのではないかと考えられた。
  • 森下 正彦
    1997 年 41 巻 1 号 p. 33-38
    発行日: 1997/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    和歌山県中部の野菜栽培地域では,ナミハダニ(黄緑型)の発生は夏期,圃場周辺の雑草および灌木で全く認められず,地域内に点在して栽培されている露地ギクで発生が多くみられ,それが周辺のエンドウ圃場での発生源であると考えられる。キクでのナミハダニの発生は,切り花栽培期間と穂木養成期間を含めほぼ周年見られた。ナミハダニはキクで発育・産卵が可能であったが,カンザワハダニの生存・増殖は極めて悪く,このことがキクに近いエンドウ圃場でナミハダニが優占する原因と考えられた。
  • 津田 勝男, 中島 信彦, 山中 正博, 大平 喜男, 河原 畑勇
    1997 年 41 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 1997/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    チャバネアオカメムシの室内飼育個体群よりウイルス病の病徴を呈する死亡個体を見出し,ウイルス様病原体を分離して,その特性を明らかにした。
    1) 病原体は,チャバネアオカメムシに経口接種することにより病原性を有し,同様の病徴を発現させた。また,再接種による継代を反復しても病原性を維持した。
    2) 病原体は,0.22μmのフィルターを通過し,テトラサイクリンの影響を受けなかった。
    3) ショ糖勾配遠心によりバンディングした精製物には,直径約30nmの球状粒子の存在が確認され,病原性を有することが確認された。
    以上のことから,病原体はウイルスである可能性が高いと考えられた。
  • 堤 隆文, 山中 正博
    1997 年 41 巻 1 号 p. 45-49
    発行日: 1997/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    昆虫病原性糸状菌B. brongniartiiを培養した不織布シートから飛散した分生子による菌の伝播およびその殺虫効果についてイチジクのキボシカミキリ成虫を用いて検討した。
    イチジク樹に設置した不織布シートから水平方向に50cm離して7日間隔離飼育したキボシカミキリ成虫はすべて感染死し,飛散分生子によって菌が伝播することが明らかとなった。また,イチジク樹に施用した不織布シートの下方30∼50cmから採集した葉と接触させた成虫も低率ながら感染死し,飛散した分生子が葉に付着した場合も成虫の感染に有効にはたらくことが明らかになった。
    紙トレイで日除けをつけた不織布シートを樹上に吊り下げて施用したイチジク圃場から10∼31日目に採集したキボシカミキリ成虫の死亡率は総死亡率57∼91%,純死亡率29∼36%であった。シートを主幹部に巻き付けて施用した圃場の結果(堤・山中,1996)と比べると純死亡率は低かったが総死亡率は大差なかった。また,不織布シートを吊り下げて施用することにより,主幹部に施用した場合シート上の菌を摂食することがあるナメクジ類,ウスカワマイマイおよびオカダンゴムシによる被害を回避することができた。
    圃場に施用した不織布シート上の生存分生子数は施用後55日目においても107/cm2のオーダーを維持しており,シートを主幹部に巻き付けて施用した場合に比べて生存分生子数の減少が少なく,感染力維持期間が長くなる可能性が見いだされた。
  • 國本 佳範, 井上 雅央
    1997 年 41 巻 1 号 p. 51-54
    発行日: 1997/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    薬剤散布時の感水紙の付着指標と殺虫効果の関係を,室内およびナス圃場で殺ダニ剤を使って調査した結果,圃場では感水紙の付着指標から殺虫効果をほぼ判断できると考えられた。
    感受性ナミハダニとフェンピロキシメート乳剤1,000倍液を用いた室内実験では付着指標1, 2で死虫率はほぼ0%であったが,指標7以上で死虫率100%となり,全体的には指数的に増加した。色素液を用いて感水紙の付着指標と付着量の関係を調べたところ,付着量は指数的に増加した。
    カンザワハダニに対するテブフェンピラド乳剤1,000倍液での圃場試験では,指標5以上で死虫率70%以上であった。この組み合わせの場合は指標5以上が通常十分な薬液付着の目安となると考えられた。
  • 安田 慶次, 高江洲 和子, 上原 勝江
    1997 年 41 巻 1 号 p. 55-58
    発行日: 1997/02/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    Beauveria bassiana infected Cylas formicarius irrespective of temperature between 15 and 31°C. No infection was observed at relative humidities of less than 43%. The median tolerance limit for conidia density per cm2 was 2.2×109 (male) and 3.7×109 (female).
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