日本応用動物昆虫学会誌
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42 巻, 2 号
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  • 太田 泉, 松田 一寛, 松本 義明
    1998 年 42 巻 2 号 p. 45-49
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    イチゴハムシの寄主選択機構を解明する一環として,寄主のタデ科植物中に含まれるQuercetin配糖体に注目して以下の三つの試験を行った.
    1. Quercetin配糖体のAvicularin, Hyperoside, Isoquercitrin, Peltatoside, Quercitrin, Rutinに対するイチゴハムシの摂食反応をろ紙法により調べた結果,イチゴハムシはPeltatosideを除いた5種類のQuercetin配糖体によって摂食を刺激された.
    2. タデ科植物11種それぞれに対するイチゴハムシの摂食量を調べた.イチゴハムシはソバを最も多く摂食し,ついでギシギシ,スイバ,ミチヤナギ,エゾノギシギシ,イヌタデ,ミゾソバ,イタドリ,オオイタドリ,ヒメスイバ,イシミカワの順となった.
    3. 2.の摂食試験で用いたタデ科植物11種について,Quercetin配糖体に関する成分分析を行った.ソバ,ギシギシ,スイバ,ミチヤナギ,エゾノギシギシ,イヌタデ,ミゾソバ,イタドリ,オオイタドリの9種には,Avicularin, Peltatosideを除く4種類のQuercetin配糖体Hyperoside, Isoquercitrin, Quercitrin, Rutinの含有が示唆された.しかし,イチゴハムシの摂食量が最も少なかったヒメスイバおよびイシミカワには,摂食刺激物質である5種類のQuercetin配糖体はいずれも検出されなかった.
    以上から,タデ科植物中のQuercetin配糖体は,イチゴハムシのタデ科植物に対する寄主選択行動において,摂食行動を誘導・刺激する重要な物質の一つとして作用していると結論される.
  • I. 室内における病原性の検討と野外防除試験
    増田 俊雄
    1998 年 42 巻 2 号 p. 51-58
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    コナガの微生物的防除に利用するため,分離源の異なるB. bassiana 5菌株の病原性を比較したところ,コナガから分離されたMG-Bb-1株が最も強く,本菌株について,より詳しい試験を実施した.
    MG-Bb-1株はコナガ各齢期の幼虫に対し強い病原性を示したが,1齢幼虫に対しては他の齢期に比較して病原力がやや低かった.本菌株は卵に対してもわずかに病原性を示したが,蛹に対する病原性ははほとんど認められなかった.
    湿度条件を変えてコナガ幼虫に対する接種試験を行ったところ,76%以上の湿度で80%以上の死亡率が得られたが,52%では著しく死亡率が低下した.
    本菌の感染に好適な7月初旬に行ったほ場での防除試験では,コナガ幼虫の密度がきわめて低く抑えられた.しかし,同時に発生したモンシロチョウ幼虫に対しては防除効果が劣った.本菌株はコナガの防除素材として有望であるものと考えられた.
  • 白井 良和, 田中 寛, 宮園 稔, 久野 英二
    1998 年 42 巻 2 号 p. 59-64
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    大阪府岸和田市神於町のハウス栽培のクレソンから採集した抵抗性個体群に対して薬剤無淘汰で感受性を回復させた感受性個体群KS,ならびにKSに対してBT剤で淘汰して高度な抵抗性を発達させた抵抗性個体群KRを作出し,両者を25°C, 16L:8Dの条件下で人工飼料,ダイコンの子葉,クレソンの3種類の餌により飼育した.BT剤(トアロー®水和剤CT)に対するLC50値は,KSが1.14ppm, KRが25,200ppmであった.KRはKSに比べ,孵化率が低く,孵化から羽化までの期間が長く,同期間の生存率が低く,成虫の生存期間が短く,産卵数が少なかった.岸和田個体群ではBT抵抗性と適応度がトレードオフの関係にあり,特に抵抗性個体の孵化から羽化までの発育期間が長いため,実験室内でBT剤に対する感受性が回復しやすいと考えられた.
  • 朱 道弘, 安藤 喜一
    1998 年 42 巻 2 号 p. 65-69
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    イナゴ属のハネナガイナゴ,タイワンハネナガイナゴおよびコバネイナゴの単為生殖について調査した.3種共に未受精卵の大部分は発生を開始したが,孵化率はハネナガイナゴ17.8%,タイワンハネナガイナゴ10.4%,コバネイナゴ5.4%であった.孵化幼虫数に対する羽化率はハネナガイナゴ9.7%,タイワンハネナガイナゴ6.3%,コバネイナゴ1.4%であった.単為生殖によって生じた個体はすべて雌のみであった.単為生殖による卵の発生開始率,孵化率,羽化率はハネナガイナゴが一番高く,次いでタイワンハネナガイナゴとなり,コバネイナゴは最も低率であった.単為生殖胚細胞の染色体数を調べた結果,3種すべて24本で倍数性産雌単為生殖を行うことが明らかになった.
  • 高橋 文雄, 井上 雅央, 高藤 晃雄
    1998 年 42 巻 2 号 p. 71-76
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    チリカブリダニは背丈の高い木本性寄主には定着がよくないといわれてきた.そこで施設栽培ブドウ園(巨峰,10a)の下草にチリカブリダニを放飼することにより,下草で越冬後の増殖を開始したカンザワハダニ個体群を防除し,栽培期間を通じてブドウ葉上のカンザワハダニを被害許容密度以下に管理する試験を行った.
    1995年5月下旬と6月中旬の2回に分けて放飼したチリカブリダニ合計8,000個体は,下草(ハコベ,ノゲシ,エノコログサなど)で発生していたカンザワハダニをほぼ食い尽くした(7月初旬).その結果,放飼園においては,ブドウ葉上のカンザワハダニ密度を7月を通じ,無放飼園の1/10程度に抑制できた.なお,この間,下草で繁殖したチリカブリダニ個体群の一部が餌を求めて樹上へ移動した.
    園内のチリカブリダニ個体群が8月初めに餌不足で絶滅した後,再びカンザワハダニが放飼園で増殖したが,低密度(<平均1.73♀♀/葉)であったため,収穫まで薬剤防除を行わずに済んだ.
  • 中尾 史郎, 養父 志乃夫
    1998 年 42 巻 2 号 p. 77-83
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    クロゲハナアザミウマの異なる地域個体群間,および生殖様式の異なる個体群間に行動学的な生殖的隔離機構が存在しているか否かを室内実験によって確認して,個体群間の遺伝子移入の可能性について検討した.さらに,産雌性単為生殖を行う稚内個体群,および産雄性単為生殖を行う異なる7地域個体群のエステラーゼザイモグラムを比較し,個体群間の化学的差異を明らかにした.
    1) 産雄性単為生殖を行う異なる地域個体群の雌雄間には交尾が成立した.
    2) 産雄性単為生殖個体群の雄は産雌性単為生殖個体群の雌に交尾を試みたが,雌はこれを拒絶し,交尾は成立しなかった.
    3) 産雄性単為生殖個体群雌のエステラーゼパターンは高い変異性を示したが,産雌性単為生殖個体群雌のエステラーゼパターンに変異はなかった.
    4) エステラーゼパターンによって,生殖様式の異なる個体群は完全に識別できた.
    5) これらの結果から,生殖様式の異なる個体群をそれぞれ命名法上の種とすべきであると考えた.
  • 永井 一哉, 広瀬 義躬, 高木 正見, 仲島 義貴, 平松 高明
    1998 年 42 巻 2 号 p. 85-87
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    Nymphs and adults of Orius tantillus (Motschulsky), a predator of Thrips palmi Karny, were reared on three different prey: (1) live adults and nymphs of Tyrophagus putrescentiae (Schrank), (2) frozen eggs of Ephestia kuehniella Zeller, and (3) live 2nd-instar larvae of T. palmi. The survival rate and development time of the predator nymphs and the survivorship and egg production of the predator adults were compared among these three types of prey. Frozen eggs of E. kuehniella were found to be a suitable alternative prey for O. tantillus.
  • 山田 慎, 本多 健一郎
    1998 年 42 巻 2 号 p. 88-90
    発行日: 1998/05/25
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    北海道十勝支庁芽室町産のエンドウヒゲナガアブラムシ(十勝系統)の無翅成虫を15±1°C, 16L:8Dの室内条件下でしょ糖濃度とpHが異なる人工飼料上で育て,生存率,寿命,産子数を調査した.
    1) 生存率,寿命,産子数の値はいずれもしょ糖濃度45g/100ml, pH 8.3のとき最大値となった.飼料に移してから10日目の無翅成虫の生存率は75.0%,平均寿命は17.8±2.0日となり,ソラマメ芽出し上での生存率85.7%,寿命20.5±1.7日と有意差がなかった.平均産子数は32.0±2.4個体でソラマメ芽出し上での値の45.3%であった.
    2) 十勝系統ではAkey and Beck (1972)の示した値と異なるしょ糖濃度,pH値が生存率,寿命,産子数に関する最適値となり,アブラムシの系統間でこれらの最適値が異なることがわかった.
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