日本応用動物昆虫学会誌
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5 巻, 4 号
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  • 宗林 正人
    1961 年 5 巻 4 号 p. 217-224
    発行日: 1961/12/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    マメアブラムシの口器,その付属腺および口針が植物組織内にそう入される状態などについて観察した。その結果の大要は次のとおりである。
    1) 下いんとうはキチン化して肥厚し,食物導管は細い。下いんとうの先半で左右の小あごと連なり,小あご針の食物管は食物導管と,まただ液管はだ液導管とそれぞれ連絡する。
    2) 吸液ポンプは,いん頭の先端部にあってよく発達し,外側は厚い皮膜でおおわれている。このポンプの横断面はほぼ五角形で,後方の四辺は肥厚したキチン板に包まれ,前面は薄い膜状を呈し,中央部に顕著な拡大筋が付着する。
    3) いん頭は吸液ポンプと食道との間の部分で,拡大筋があり,吸液ポンプとともに吸液の働きをする。
    4) だ腺は4対で,主腺,副腺,大あご腺および小あご腺の各1対である。だ液のうち粘性の高いものは,だ液しようを形成するものといわれ,大あご腺および小あご腺から排出され,水様液は主腺および副腺から排出されるものと推定される。
    5) 口針を植物組織内にそう入するときは,口ふん(下しん)は短縮される。口ふん第1節は反転し,その中に第2節が引き入れられて,体腔内に没入し,その基部は胸腹部神経球に達する。
    6) 口針が植物組織内を進入する経路は,植物の種類によって差異が見られた(第1表)。口針は機械組織をさけて遠まわりして進入するのが普通であるが,まれにこの組織の細胞間を通ることもある。口針の先端はほとんどし部にそう入され,木部にそう入されたり,皮膚柔組織中にそう入されることははなはだ少ない。導管にそう入されるときは,完全に木化したものよりも,木化不完全な導管にそう入されることが多い。
  • 本間 健平, 豊島 在寛, 降幡 広一
    1961 年 5 巻 4 号 p. 225-229
    発行日: 1961/12/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    東北農業試験場園芸部の果樹園では殺〓剤連用試験の際1958∼'60年にわたって,リンゴハダニに対するフェンカプトンの効力低下を認めた。このフェンカプトン連用区のリンゴハダニ(Ph個体群)を弘前市在府町の薬剤無散布樹のリンゴハダニ(M個体群)と室内殺虫試験により比較したところ,フェンカプトンの場合LC50がM個体群の95.35倍,ホリドール・エチルの場合4.45倍であり,濃度死亡率回帰直線の傾きもそれぞれ有意に異なっていた。以上の結果からほ場におけるフェンカプトンの効力低下はPh個体群の抵抗性増大によるものと考えられる。
    Ph個体群はフェンカプトンおよびホリドールに対して抵抗性を示したが,抵抗性の程度はフェンカプトンに対しては大きく,ホリドールに対しては小さい。また濃度死亡率回帰直線の傾きもフェンカプトンに対してはph個体群のほうが急傾斜であるが,ホリドールに対しては逆の関係である。
  • ふ化幼虫の複眼の外部形態について
    渡瀬 昭
    1961 年 5 巻 4 号 p. 230-234
    発行日: 1961/12/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    卵態越冬型の主要アブラムシ18種類につき,ふ化幼虫の複眼の構造について調査を行なった。その結果を要約すれば次のようである。
    1) 複眼の構造は3個眼のみより構成される原生複眼型,原生複眼とその上面触角よりに5∼62個の個眼を有する複眼(後生複眼)を持つ型および16∼40個の個眼を有する後生複眼よりなる3つの型になる。
    2) 原生複眼型の個眼は後個眼が最も大きく長径10∼14μ,前2個眼は長径8∼12μである。
    3) 原生複眼と後生複眼を有する型の原生個眼の長径は10∼20μ,後生個眼は5∼65個の個眼よりなり個眼の長径8∼12μである。
    4) 後生複眼よりなる型の個眼は16∼40個,その長径は8∼12μである。
  • 第1報 成虫の摂食活動に及ぼす温度の影響
    坂本 与市
    1961 年 5 巻 4 号 p. 235-238
    発行日: 1961/12/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    休眠前のツメクサタコゾウムシの摂食活動が温度によっていかに影響されるかについて実験を行なった。羽化直後の成虫を用い,休眠に入るまでの期間観察を続けた。温度は摂氏10°,15°,20°,25°,28°の5階級に分かち,毎日1回食餌植物を更新して,その摂食量を測定した結果から知りえた点は次のとおりである。
    1. 羽化から休眠までの摂食総量は,温度に関係なくおおむね一定である。
    2. 摂食期間は温度が高まるに伴って短縮する。したがって1日当たりの平均摂食量は温度が高いほど多い。
    3. 摂食活動の様相は,温度が高い場合は羽化後まもない期間にきわめて活発で,その後急に衰えるが,温度が低くなるにつれてその傾向は緩慢となる。
    4. 実験中の死虫は28°C区で50%に及び,25°C区,10°C区にも多少認められた。
    5. 以上のことから10°∼28°Cの温度は,本種の成虫活動適温範囲であり,10°Cは低温限界に,28°Cは高温限界に近く,摂食最適温度は15°Cから20°Cの間にあると推定される。
  • 1961 年 5 巻 4 号 p. 238
    発行日: 1961年
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
  • 高橋 史樹
    1961 年 5 巻 4 号 p. 239-244
    発行日: 1961/12/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    コナマダラメイガ実験個体群の個体数変動にとって食物の量は大きい役割を持っているが,その補給間隔は平衡状態の個体数調節作用に大きい影響を持っているかもしれない。それで恒温恒湿(30°C,約70%R.H.)の一定環境条件下において,食物補給間隔を10日(A,B),20日(C),40日(D)と違えた4個体群の成虫個体数とその成虫頭幅を長期間にわたつて調べ,それらの変動型と個体数調節機構との関係を検討した。
    AB個体群では約35日の周期の成虫個体数の大きい変動が見られた。D個体群では周期が40日となって食物の補給間隔と一致した。C個体群では初めは35日の周期を示したが途中から40日に変化した。このような変動の機構は米ぬかを媒介とした卵-幼虫-蛹のあいだの相互作用,特に直接的な作用(生活空間の取り合いと共食い)に基づいていると考えられる。すなわち米ぬかはrequisiteとしてよりも,相互作用の働く場としての意義を持っている。35日の周期は1世代の長さに相当し,変動の1つの山は1つの世代の羽化曲線を示しており,食物補給間隔を更に短くしてもなくならないと考えられる。また食物補給間隔を1世代の長さよりも長くすると個体間の相互作用の過程に変化が見られ食物の欠乏の時期ができるので,食物の補給間隔が個体数変動の周期を支配するようになる。
    30日ないし50日ごとの個体数変動の山が1つの世代の羽化曲線を示すものと考えて,世代ごとの個体数変動を見ると,D個体群では大きい変動を示すが,ほかの個体群ではほぼ一様な密度の平衡状態を示した。世代間の個体数関係はR曲線(reproduction curve)として表わせるが,AB個体群は飽和型に近いR曲線を持っているのに反し,C個体群は山型の曲線を示す。D個体群はC個体群よりも高い山型の曲線を示す傾向があるが,はっきりした曲線関係ではない。
  • 松本 義明
    1961 年 5 巻 4 号 p. 245-253
    発行日: 1961/12/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    現在(1961年3月)までに発表されたヤサイゾウムシの加害植物を総合し,植物の科別に分類整理を行なった。
    1) その結果は,全体で34科178種(または変種)以上,日本からは26科97種の植物が収録された。
    2) それらは,ほとんど双子葉植物に限られ,単子葉植物はユリ科以外には知られていない。
    3) この中で,種(または変種)数の多いものから順次あげれば,キク科が最も多く,次いでアブラナ科,セリ科,ナデシコ科,マメ科,タデ科,ナス科などの順である。
    4) これらの全加害植物から,実験だけによって摂食が知られていることの明らかなものを除いたもの(28科135種)についてみると,やはり,キク科が最も多く,アブラナ科,セリ科,以下,ナス科,マメ科,ナデシコ科などが多い。
    5) これを更に野生植物(19科66種),観賞植物(8科13種),作物(12科56種)に分ければ,野生植物ではキク科が最も多く,作物ではアブラナ科が首位にある。
    6) 日本における各加害作物の報告都府県数を比較すれば,アブラナ科が1位にあって,2位セリ科,3位ナス科,アカザ科4位キク科となる。
    7) このように各科別ごとの加害植物の数,また報告頻度数から言って,アブラナ科,キク科,セリ科,ナス科などが,ヤサイゾウムシの数ある加害植物のうちで重要な地低を占めている。またこれらの科には,実際に被害の大きい作物が含まれている。
  • コリンが成虫の産卵,卵のふ化などに及ぼす影響
    釜野 静也
    1961 年 5 巻 4 号 p. 254-259
    発行日: 1961/12/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    人工飼料を供しニカメイチュウの5世代にわたる無菌的累代飼育に成功したが,それらの結果を要約すると以下のようになった。
    1. 今までに使用していた人工飼料に10倍量のコリンクロライドを加えることにより,産下卵塊数,卵塊ふ化率を増加させることができた。
    2. 5世代にわたって飼育した飼料は,飼料B,Cの組成のものである。
    3. 2種類の飼料のどちらで飼ったものでも,幼虫の体重,蛹化率,産卵力は野外のものと変わらず,またその世代間にもほとんど差はなかった。
    4. 一方,雌の羽化率,卵塊ふ化率では野外のものよりもまだ劣っていた。
    5. 野外の雄と交配させることによりふ化卵塊率が高まったが,しかし,次世代になるとその影響は現われなかった。
    6. 不休眠条件下で,このような人工飼料によって飼育を続けるならば,年間に庄内型では10世代を,西国型においても6世代を飼育することが可能である。
  • 豊島 在寛, 本間 健平, 正木 進三
    1961 年 5 巻 4 号 p. 260-269
    発行日: 1961/12/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1959年および1960年の7月から9月にわたってリンゴ畑からモモシンクイガの被害果を採集し,自然に近い条件下において成長を終わって脱出してくる幼虫の休眠率の季節的変化のありさまを調べた。その結果休眠幼虫は7月末から現われ始め,そののち次第に数を増して8月半ばには成熟幼虫の半数に達し,同月末にはほとんど全部の幼虫が冬繭を作って休眠した。その後不休眠幼虫は現われなかった。
    このような休眠誘起の季節的消長を支配している要因を知るために室内で幼虫発育期の日長時間の影響を調べたところ,これまでにあまり知られていない光週期反応の型が観察された。すなわち21°Cにおいては藤崎産のモモシンクイガの幼虫は15∼18時間の日長によってのみ休眠しないでさなぎになることができる。この限られた範囲外では長短いずれの日長下においても幼虫は全部休眠する。
    休眠決定の条件としての日長効果を感受するのは幼虫期に限られているが,幼虫期の中では特に敏感な令期を認めることはできなかった。温度も休眠誘起に影響するが,休眠阻止の作用は30°C以上の高温でないと現われないので自然界においては日長が主要な作用要因であると考えられる。
    休眠を終わるためには5∼15°Cの温度に2∼3ヵ月接触することが必要である。20°C以上の高温や0°Cに近い低温はいずれも休眠完了に不適な条件であると思われる。
    以上の結果に基づいてモモシンクイガの1世代目の幼虫の休眠率の年次変動について考察し,またこの害虫が休眠性に関して地域的に分化している可能性があることを既存の知見に基づいて指摘した。
  • XXI. リンゴ園において採集されたクモ
    福島 正三
    1961 年 5 巻 4 号 p. 270-272
    発行日: 1961/12/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1959年8月より1960年8月までの1年間岐阜大学農場の幼木リンゴ園においてクモの採集を行ない,未同定種を含む10科27属36種を得た。この採集は薬剤散布樹よりも主として無散布樹において行なわれた。
  • 中園 和年, 一戸 稔
    1961 年 5 巻 4 号 p. 273-276
    発行日: 1961/12/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    1960年12月に,静岡県産のチャの根より分離したHemicriconemoides属の線虫をH. kanayaensis n. sp.と命名して記載する。本種は口しん(唇)部,節球の形態および雄虫が尾翼を欠除することに特徴があり,その近似種H. strictathecatus ESSER, 1960およびH. mangiferae SIDDIQ, 1961とも明らかに区別される。本邦における本種の分布は,静岡県のほかに,これまで佐賀県,宮崎県および三重県のそれぞれチャより確認している。
  • 岡本 秀俊
    1961 年 5 巻 4 号 p. 277-278
    発行日: 1961/12/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
  • 立花 観二
    1961 年 5 巻 4 号 p. 279-280
    発行日: 1961/12/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
  • 深見 順一, 中津 川勉, 石井 象二郎
    1961 年 5 巻 4 号 p. 281-282
    発行日: 1961/12/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    The penetration of α-, β- and γ-isomers of BHC through insect cuticle has been studied in order to find why only γ-isomer has a high insecticidal potency among the isomers. BHC-1-C14 isomers were topically applied on the male Amrican cockroaches Periplaneta americana, and radioactivities recovered from “outside” and “inside” were determined at 1.5, 6 and 24 hours after the treatment. The γ-isomer penetrates more easily than the other isomers, α- and β-isomers following in decreasing order. The rapid and easy penetration of the γ-isomer through the insect cuticle is believed to be an important factor for its insecticidal potency. It is considered, however, differeneces of certain biochemical changes among isomers which will be taken place after the penetration through insect cuticle are more importance to solve the mode of action of BHC isomers.
  • 林 幸之
    1961 年 5 巻 4 号 p. 282-283
    発行日: 1961/12/30
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
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