日本応用動物昆虫学会誌
Online ISSN : 1347-6068
Print ISSN : 0021-4914
ISSN-L : 0021-4914
57 巻, 4 号
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
総説
原著
  • 本田 善之, 清水 佐知子, 半田 信司, 笠井 敦, 天野 洋
    原稿種別: 原著
    2013 年 57 巻 4 号 p. 235-242
    発行日: 2013/11/25
    公開日: 2014/05/01
    ジャーナル フリー
    ホウレンソウ産地では,施設栽培下におけるホウレンソウケナガコナダニ(Tyrophagus similis Volgin;以下コナダニと略)の被害が近年拡大し,安定的な生産に支障をきたしている.本種はなたね油かすや乾燥酵母を餌として好むが,実際の土壌中での発生要因には不明な点が多い.本稿ではハウス土壌表面に発生する藻類に注目し,コナダニの定着性や定着条件についての観察から,本種の発生生態に関して若干の知見が得られたのでここに報告する.土壌を構成する主要な有機物に分けてコナダニ定着数を調べた結果,藻類に有意に多く定着が認められた.この現象が単に藻類が含む水分だけによるものではないことは,水分を保持した濾紙と藻類との比較試験で確認された.また,藻が繁茂した土壌では,藻を除去した土壌に比べ,コナダニの密度が大幅に増加することが確認された.コナダニは藻類の種類によって定着性が異なり,ボトリディオプシスやプロトシフォンなど粒状の藻類を好み,糸状のクレブソルミジウムではやや嗜好性が劣ると考えられた.また,湿度条件を変えた環境では,高湿度条件でのみコナダニの藻への定着が多かった.ハウスにおける藻類へのコナダニの定着は,湿度95% RH以上の高湿度になる降雨や灌水後の夜間から早朝にかけてと考えられた.ハウス土壌で発生する藻類はコナダニの餌として作用し増殖源となるため,土壌に発生する藻類を制御することで,コナダニによる被害を抑制できる可能性が示唆された.
  • 小長谷 達郎, 渡辺 守
    原稿種別: 原著
    2013 年 57 巻 4 号 p. 243-248
    発行日: 2013/11/25
    公開日: 2014/05/01
    ジャーナル フリー
    キタキチョウの夏型雄は,羽化後数日間の交尾活性が低いと報告されてきた.室内飼育をして羽化させた様々な日齢の未交尾雄と未交尾雌をケージ内で交尾させ,交尾終了後に雌を解剖して,注入されていた精包の重量,有核精子の数,無核精子の数を調べた.また,雄を解剖し,体内に残存していた精子の数を調べた.羽化翌日の雄は40頭中1頭しか交尾しなかった.交尾した雄は0.47 mgの精包と,7本の有核精子束,47,000本の無核精子を注入していた.精包重量と保有精子数は,雄の日齢とともに増加したが,上限が認められた.モデルをあてはめたところ,それらの上限は,精包重量で2.0 mg,有核精子束数で107本,無核精子数で650,000本と計算された.上限に達するまでには,約14日間を要した.有核精子束と無核精子は保有数に対して常に一定の割合で注入されていたので,14日齢までの雄なら,老齢の個体ほどより大きな精包とたくさんの精子を生産・注入できるといえる.若齢雄の交尾活性が低いのは,充分な量の精包や精子を生産し,精子競争で有利になるまで待つ戦略であると考えられた.
  • 小山田 浩一, 村井 保
    原稿種別: 原著
    2013 年 57 巻 4 号 p. 249-256
    発行日: 2013/11/25
    公開日: 2014/05/01
    ジャーナル フリー
    高濃度二酸化炭素(60%)くん蒸処理のナミハダニ雌成虫および卵(産下後24時間以内および産下後48~72時間以内)に対する殺虫効果,定植直前のイチゴ苗(品種:とちおとめ,普通夜冷処理苗)の外観および花芽形成に及ぼす影響,イチゴ栽培ほ場での実証試験による防除効果の検討を行った.その結果,ナミハダニ雌成虫に対して処理温度25℃では20時間,処理温度30℃および35℃では16時間で補正死虫率が100%に達した.産下後24時間以内卵に対して処理温度25℃では20時間でも補正死虫率は100%に達しなかったが,処理温度30℃および35℃では12時間で100%に達した.また,産下後48~72時間以内の卵に対して処理温度25℃では20時間でも補正死虫率は100%に達しなかったが,処理温度30℃および35℃では16時間で100%に達した.また,定植直前のイチゴ苗に二酸化炭素処理の有無,処理温度30℃および35℃,処理時間12時間および24時間の条件を組み合わせて処理したところ,すべての区で処理後の枯れなどの障害,定植後のイチゴの頂花房開花に対する影響は認められなかった.圃場における実証試験では,無処理区に比較してナミハダニの発生が大幅に抑制され,高い防除効果が認められた.以上の結果から,イチゴ栽培におけるナミハダニ防除技術として定植直前の高濃度二酸化炭素(60%)くん蒸処理は有望と考えられた.
テクニカルノート
その他の記事
feedback
Top