日本応用動物昆虫学会誌
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6 巻, 4 号
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  • 野村 健一, 正田 一美, 沢崎 靖夫
    1962 年 6 巻 4 号 p. 257-266
    発行日: 1962/12/20
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ミカン・リンゴを対象にメチルジメトン(メタシストックス50%乳剤,改良メタシストックス25%乳剤)の樹皮塗布(原液)による薬害を検討し,次の知見を得た。
    1. ミカンとリンゴでは,明らかにミカンのほうが薬害発生の可能性が大きい。これは外観からも,また樹皮組織切片の検鏡からも確められた。なおこのような相違を示す理由についても,植物組織学的見地から論及し,表皮・表層両組織の剥離の難易および形成層の生死が重要要因となることを示唆した。
    2. 薬害は有効成分に起因するようで,メチルジメトンP=O体もP=S体もほぼ同程度の強い薬害作用をあらわす。溶剤および乳化剤はほとんど問題はないらしい。メタシストックスと改良メタシストックスとでは,後者のほうが薬害の懸念が少ないが,これは有効成分%が低いためと考えられる。
    3. 薬害の要因として塗布量を考える場合には,樹皮単位面積当たりの塗布量(単位塗布量)を重要視すべきである。改良メタシストックスの原液塗布の場合には,0.6cc/100cm2程度の引き伸ばし塗布を行なえばミカンでも薬害は著しく緩和される。1cc/100cm2以上になれば,かなり危険性が増大する。
    4. 高温・多照・過湿は薬害を誘発しやすいが,特に高温は注意を要する。この高温条件は,それが塗布直後に作用する場合に一層影響が大きいらしい。
    5. 薬害防止(軽減)の方向としては,メタシストックスより改良メタシストックスを使用すること,また単位塗布量・環境条件についても考慮し,これら各項の組合わせ効果を考えるべきであろう。なお有効成分%を低めた塗布専用製剤の創製も1案と考えられる。
  • 鮫島 徳造, 永井 清文
    1962 年 6 巻 4 号 p. 267-273
    発行日: 1962/12/20
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    最近,発生の著しい黄萎病の伝染とツマグロヨコバイの生態との関係について調査した結果を記述した。
    1) ツマグロヨコバイの越冬世代の第3∼5令幼虫は2月中旬∼3月初旬より羽化を始めて4月初めにはほとんどが成虫態となった。この成虫は5月中旬より急激に減少したが,5月末まで生存する個体もあった。
    2) すくい取りによる春季の生息密度と予察燈誘殺虫数の消長とは一致しない。すくい取りで幼虫の密度が最少となる4月上中旬は越冬虫の羽化終期に当たるように思われる。
    3) 冬期より盛夏期までの虫の経過を系統飼育により検した結果,第1世代は幼虫が4月上旬より発生し,5月中旬から羽化を始めて,7月上旬まで生存した。第2世代成虫は7月上旬より8月中旬のあいだに,また第3世代は引き続き重なり合って発生する。
    4) 虫の発生経過とイネの作季との関係は,早期水稲では越冬世代と第1世代の加害が多く,収穫期に第2世代の成幼虫が増加する。普通水稲は越冬成虫,晩期水稲は第1世代成虫の生存末期に播種される。
    5) 越冬虫によってウイルスを伝染された早期水稲は70日間の潜伏期を経て6月末に発病した。また,この病稲よりウイルスを獲得した虫の体内潜伏期間は21∼28日間であった。したがってこの期の虫が媒介能力をうる時期はおおむね7月下旬となる。
    6) 4月初旬および7月下旬の成虫は若干の保毒虫率を示したが,5月中下旬の幼虫および6月中旬より7月中旬までの成虫,すなわち第1世代および第2世代初期と考えられる虫は全く保毒していなかった。
    7) 早期水稲における黄萎病の感染時期は4月中旬から5月中旬まで続き,その後は無感染となり,7月下旬に再び伝染がなされている。再度の感染による早期水稲は立毛中に発病せず刈株の再生稲に病徴が現われるようである。
    8) 春季に野外のスズメノテッポウについて黄萎病感染の有無を検したがいずれも陰性に終った。
    9) 黄萎病ウイルスは虫の越冬世代が主体となってイネに第1次伝染し,第2世代以降がおもにこの早期発病稲より保毒して以後の発生源となっているものと思われる。
  • ほ場における昆虫群集の研究 第27報
    福島 正三, 近藤 和信
    1962 年 6 巻 4 号 p. 274-280
    発行日: 1962/12/20
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    前報(福島,1961)に引き続き果樹園における捕食虫の摂食能力を調べた。すなわちオナホシテントウとテントウムシ成虫は1日1頭平均38頭前後,ヒメカメノコテントウは18頭前後,ハナグモ雌は約15頭,同雄は12頭前後のナシアブラムシを捕食し,ヤホシヒメグモは1日1頭平均0.56頭の有しリンゴコブアブラムシを,1.28頭の同種無し虫を捕食した。
    またマラソンはアブラムシ類に対すると同様捕食虫にも有害に作用し,ヒ酸鉛およびグリオディンでは捕食虫に対する影響が少ない。なお実験中,ハナグモは他よりもマラソンに対して耐えかたが強い傾向を示した。
  • 石井 象二郎, 平野 千里, 岩田 康子, 中沢 雅典, 宮川 寿之
    1962 年 6 巻 4 号 p. 281-288
    発行日: 1962/12/20
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ニカメイガ幼虫を人工飼料で飼育する際イネあるいはイネの水抽出物を加えると,幼虫の成育,成虫の羽化がよく行なわれるが,もし過剰の水抽出物を加えると,かえって幼虫の成育が阻害される。したがってイネには幼虫の成育を阻害する物質が含まれていると考え,その物質の抽出を行なった。阻害物質はイネの水抽出物のエーテル抽出物に強く現われる。エーテル抽出物を塩基性,中性,酸性,フェノール性物質に分画すると,各分画に分かれ,特に中性,塩基性に強い傾向がある。酸性分画をシリカゲルのカラムクロマトグラフで分け,安息香酸,サリチル酸を見いだした。更に大量のイネから抽出を行ない,これらの物質を分離し確認した。
    安息香酸とサリチル酸はニカメイガ幼虫に対して成育を阻害する作用があるが,最初に期待したほどの阻害力は示さなかった。またこれらの酸は,抗ばい剤として知られているので,イモチ病菌,イネゴマハガレ病菌の胞子発芽阻害作用を調べた結果,強い胞子発芽阻害力を示した。
  • 石原 保
    1962 年 6 巻 4 号 p. 289-292
    発行日: 1962/12/20
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    ナシ,クワ,チャ,種々の漿果類,サトウキビなどを加害する多食性の害虫として,本邦でよく知られているツマグロオオヨコバイは,これまでBothrogonia ferruginea (FABRICIUS)の学名が用いられ,本州以南東洋熱帯地方,更にアフリカにかけて広い分布をする種とされてきた。
    今回,日本産と台湾産の標本を研究したところ,いずれもそれとは縁の近くない別種で,日本産のものは新種とすべきものであり,台湾産のものも日本産にきわめて近縁ではあるが,明らかに別種であることがわかった。したがってBothrogonia ferruginea (FABRICIUS)は日本列島には分布せず,日本産にはBothrogonia japonica ISHIHARA,台湾産には,色彩の異常な個体をタイプスペシメンとしたものであるが,Bothrogonia formosana (MATSUMURA)を当てるべきことを明らかにした。なお,和名は,日本産にはツマグロオオヨコバイをこれまでどおり用いるべきであるが,台湾産には原記載に示されているホソツマグロオオヨコバイより,種小名に準拠してタイワンツマグロオオヨコバイと呼ぶほうが妥当と思い改称した。
  • 山崎 輝男, 楢橋 敏夫
    1962 年 6 巻 4 号 p. 293-297
    発行日: 1962/12/20
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
    DDTに対する抵抗力の異なったNAIDM系,CSMA系,DKM系の3系統のイエバエについて,これらの神経感受性を比較した。神経感受性は露出した胸部神経索にDDTリンゲル液を作用させ,その刺激作用を脚からの活動電位誘導によって調べ,50%の個体に影響の現われるDDTの限界濃度を比較検討した。その結果,DDTに対する抵抗力と神経感受性の間は密接な相関が認められ,DDTに抵抗力の最も弱いNAIDM系統は神経感受性が最も高く,DDT抵抗力の最も強いDKM系統は神経感受性は最も低く,両系統の中間の抵抗力を示すCSMA系は中間の神経感受性を示した。その結果,イエバエの神経のDDT感受性はDDT抵抗性の一つの大きな要因となっていることが結論された。
  • 深谷 昌次
    1962 年 6 巻 4 号 p. 298
    発行日: 1962/12/20
    公開日: 2009/02/12
    ジャーナル フリー
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