日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
21 巻, 1 号
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目次
巻頭言
特集:専門職が創りだす未来志向の在宅ケア
研究
  • 堀口 和子, 岩田 昇, 小林 澄子, 鈴木 千枝
    原稿種別: 研究
    2017 年 21 巻 1 号 p. 36-43
    発行日: 2017年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,独居高齢者の在宅エンド・オブ・ライフに影響する要因を明らかにすることである.最期まで自宅ですごすことを希望した独居高齢者のうち,「自宅で最期を迎えた完遂群」(78 人,回収率59%)と「自宅療養を断念した断念群」(77 人,55%)を担当した訪問看護師を対象に自記式質問紙調査を実施した.独居高齢者が自宅で最期を迎えたいと希望した理由,自宅で最期を迎えることに対する別居家族の意向,両者の心構え,別居家族の支援などを2 群間で比較した.その結果,独居高齢者が「入院生活を拒否していた」,別居家族が「自宅で最期を迎えることを容認していた」「むしろ,自宅で最期を迎えることを希望していた」であり,独居高齢者の強い意思と,別居家族の独居高齢者への意思の尊重や受容が在宅エンド・オブ・ライフに影響していることが示唆された.

  • 滝 ゆず, 堀口 和子, 岩田 昇
    原稿種別: 研究
    2017 年 21 巻 1 号 p. 44-51
    発行日: 2017年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    介護と仕事の両立に関連する要因を明らかにすることを目的として,在宅高齢者の主介護者365 人を対象に自記式質問紙調査を実施した.回答が得られた236 人(回収率65%)を外での仕事を継続しているか否かによって,「介護と仕事の両立群」(N = 170)と「介護に専念した離職群」(N = 66)の2 群にわけた.要介護高齢者の状況,主介護者の属性・家庭の状況,主介護者の認知的介護評価・介護の対処方略,仕事関連の状況,介護保険サービス利用などを2 群間で比較した単変量解析の結果,離職群のほうが要介護高齢者の要介護度が高く,要介護者との意思疎通が悪く,介護頻度も多かった.多変量解析では,「着替え・入浴・医療的ケア」の介護頻度が多いこと,週あたりの勤務日数が多いことが離職に関連し,一方「歩行」の介護頻度が少ないこと,自営業や役員クラスで勤める等が介護と仕事の両立に関連していた.介護と仕事の両立は,介護量の軽減や柔軟な働き方により可能となるのではないかと考えられた.

  • 李 雪麗, 佐伯 和子, 青柳 道子
    原稿種別: 研究
    2017 年 21 巻 1 号 p. 52-60
    発行日: 2017年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,大都市における介護リーダーの職業性ストレスの実態およびその関連要因を明らかにすることである.7大都市にある介護老人福祉施設と小規模多機能型居宅介護事業所から245 か所を無作為に抽出し,それらの施設で働く介護リーダー661 人に対して無記名自記式質問紙による調査を行った.調査内容は,個人要因,職場環境要因,職場対人関係と職業性ストレスであった.分析はt 検定および一元配置分散分析を行った.141 人(有効回答率21.3%)を対象に分析を行った結果,介護リーダーの職業性ストレスは19.8±6.1 点で他の職種よりも高かった.ストレスには,施設種類,雇用形態,認知症の利用者割合,要介護4 以上の利用者割合,新人割合の職場環境要因が関連していたが,個人要因および職場対人関係はほとんど有意な関連を示さなかった.政策的な介護環境改善と介護リーダーの能力を高める取り組みの必要性が示唆された.

  • 大野 洋一
    原稿種別: 研究
    2017 年 21 巻 1 号 p. 61-66
    発行日: 2017年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    PD 患者に対する治療方法のひとつとして,音楽を用いた介入が多く報告されている.これまでの音楽聴音の有効性に関する報告では,ヘッドホンでの聴音や歌唱など音楽に集中した状況での効果が中心であった.在 宅生活ではADL の遂行など生活を営むために多くの時間が費やされるため,音楽聴音のみに長い時間をか けにくい状況がある.そこで本研究では,PD 患者に対する聞き流しによる音楽聴音の有効性を検討した.対 象者は在宅で生活しているPD 患者7 人とした.評価項目はSDS,PDQ-39,指タップテスト,日常活動量 とした.結果としてSDS,PDQ-39 の活動性,指タップテストの速度で有意な改善を認めた.また,日常活 動量でも改善傾向を認めた.本研究の結果より聞き流しによる音楽聴音においても有効性が示された.これは, 日常生活上でのBGM のように生活のなかにたいへん取り入れやすい治療方法になりえると考えられる.

  • 久保田 真美, 堀口 和子
    原稿種別: 研究
    2017 年 21 巻 1 号 p. 67-75
    発行日: 2017年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,認知症高齢者が独居生活の限界の時期を迎えるまでの過程を明らかにすることである.9人の介護支援専門員に半構造化インタビューを実施し,質的記述的に分析を行った.その結果,認知症高齢者は自ら【独居生活を希望】するが,【中核症状による生活の乱れ】や【体調管理の危機】が生じる.【介護サービスの導入困難】な状況でも【多職種の工夫と連携】により,【生活の改善】ができた.しかし,《道に迷ってひとりでは帰れなくなる》ことや《火事の危険性があるが予防困難な状況》など【生命の安全確保の危機】【不可解な行動に対する近隣の敬遠】が生じ,本人は【施設入所を拒否】するが【サービス提供者や家族の疲弊とあきらめ】によって施設入所に至っていた.今後,周囲との関係性も重視しながら,本人の安全確保に努めめていく支援が必要である.

  • 太田 尚子, 古川 照美, 笹森 佳子
    原稿種別: 研究
    2017 年 21 巻 1 号 p. 76-84
    発行日: 2017年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,高齢者と在宅保健師が地域活動を共に継続できている要因について明らかにすることである.研究対象者は,参加住民である高齢者14 人,在宅保健師6 人への半構造化面接による質的帰納的研究である.研究の結果,両者各9 カテゴリーが抽出された.参加住民のカテゴリーは「個人要因」「環境要因」「体制要因」に分類され,在宅保健師は,「在宅保健師の活動の場のとらえ方」「在宅保健師としてのかかわり・役割」に分類された.参加住民と在宅保健師と重複するカテゴリーが抽出されたことから,両者の関係は対等なパートナーシップであると考えられた.また,協働活動のなかで,個人のエンパワメントを高め合い,相互作用のプロセスを創成し,コミュニティの力を発揮できる条件や環境をつくることにより,住民主体の地域づくりへつながっていた.そこにコミュニティ・エンパワメントが成立し,それが原動力となって活動が継続していると考えられた.

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