日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
22 巻, 1 号
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目次
巻頭言
特集:在宅において「食べること」を支える
連載:在宅ケアの研究力を高める
原著
  • 大槻 奈緒子, 坂口 幸弘, 井出 浩, 三谷 貴子, 小西 かおる
    原稿種別: 原著
    2018 年 22 巻 1 号 p. 57-64
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    目的:本研究では,障害児の在宅療養における,1)家族介護者の休息状況,介護負担,睡眠障害,抑うつの実態を明らかにするとともに,2)休息状況が介護負担,睡眠障害,抑うつに及ぼす影響を検討する.

    方法:障害児の家族介護者465 人に対し質問票調査を実施し,226 人(48.6%)からの有効回答を分析対象とした.おもな調査項目は,Caregiving Consequence Inventory(CCI)の介護負担尺度,Pittsburgh Sleep Quality Index(PSQI),Patient Health Questionnaire(PHQ-9),家族介護者の休息状況である.

    結果:家族介護者の休息状況は,1 か月以内にゆっくり休息がとれたと回答した家族介護者が全体の52.1%,介護を始めてからずっと休息がとれていないと回答した家族介護者は20.2%であった.ロジスティック回帰分析の結果,家族介護者の睡眠障害と抑うつにはともに休息状況が関連していることが示された.

    結論:睡眠障害の決定因子として休息状況が,抑うつの決定因子として精神的負担感と休息状況,睡眠障害が認められた.これらより,家族介護者の健康維持には休息が不可欠であり,在宅療養支援におけるレスパイトケアの必要性が示唆された.

  • 和田 惠美子
    原稿種別: 原著
    2018 年 22 巻 1 号 p. 65-73
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,訪問介護に従事するホームヘルパー(以下,ヘルパー)からの情報発信の実態を知り,情報の発信を妨げている要因を明らかにすることである.常勤のヘルパー9 人に,半構成的面接法を行い,インタビューデータを質的統合法(KJ 法)に基づき分析した.その結果,217 のデータは最終6 枚のシンボルマークとして,【情報発信への責務の自覚】【生かされる情報発信の実際】【緊急時対応への決まり事】【情報発信の阻害要因への悩み】【経験知だけでない確信を要望】【多職種連携への期待】が抽出された.ヘルパーの情報発信の阻害要因は,問題発見が苦手なこと,医療への不安をもっていること,精神疾患の人への対応が困難なこと,ヘルパー間で観察項目の情報共有ができないこと,情報の言語化が苦手なことが挙げられた.対策として,訪問看護師が医療や被介護者へのかかわり方の知識を提供する,被介護者のケア時の観察項目の指標をつくる,事例検討会への参加を促すことが示唆された.

  • 生天目 禎子, 水野 敏子, 坂井 志麻
    原稿種別: 原著
    2018 年 22 巻 1 号 p. 74-81
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,ひとり暮らしの男性高齢者が配偶者と死別後に,食を通した交流に参加したきっかけと継続していくプロセスを明らかにすることである.高齢期に配偶者と死別し,ひとり暮らしになってから食を通した交流に参加している男性高齢者6 人を対象に,半構成的面接を実施した.修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて,質的に分析した.その結果,5 つのカテゴリーが生成された.配偶者と死別したひとり暮らしの男性高齢者は,死別悲嘆や家事など新たな生活への【立て直しの難しさ】を体験し,身近な人からの食を通した交流への参加の【誘いに乗ってみる】ことを通じ,【迷いと納得の繰り返し】のなか参加を続けることで,【食事と人の温もりによるいやし】により,悲嘆からの回復や生活を整えるための【ひとり暮らしを支える助け】を得ていた.人との交流が拡大することはひとりの生活を支える一助となるため,地域住民との交流を支援していく必要性が示唆された.

  • 横田 益美, 岡部 明子
    原稿種別: 原著
    2018 年 22 巻 1 号 p. 82-91
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,乳幼児期の重症心身障害児の在宅生活開始時から,家族の生活適応を判断するまでの,訪問看護師の家族への援助の過程を,訪問看護師の実践から明らかにすることである.児の在宅生活開始時から家族の生活適応を判断するまで,継続してケースを担当した経験を有する訪問看護師15 人に半構造化面接を行い,データを質的記述的に分析した.訪問看護師は児の在宅生活開始後の〈障害をもつ子のための家族〉に対してのていねいな関係構築により,家族の変化のために必要な母親の語りを引き出し,家族形成に取り組む過程への踏み出しを促していた.母親との関係構築後は家族と協働しながら変化の過程である〈揺れながら手探りでつながっていく家族〉を支え,さらに高まった家族の力を信じて見守るという働きかけへと変化させていた.訪問看護師は“自分たちなりの家族” になった家族の姿である〈“この子” と生きていく家族〉をとらえて生活適応の判断をしていた.

研究
  • 岡本 双美子, 平松 瑞子
    原稿種別: 研究
    2018 年 22 巻 1 号 p. 92-98
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,在宅終末期がん患者を看取る家族へのグリーフケアに関する訪問看護師の困難を明らかにすることである.対象は,在宅終末期がん患者とその家族へのケアを実践した経験のある訪問看護師の女性13 人であり,在宅終末期がん患者への看護の経験は10.8±5.6(4 〜20)年であった.質的記述的に分析を行った.在宅終末期がん患者を看取る家族へのグリーフケアに関する訪問看護師の困難として,【病状理解への支援方法の迷い】と【死の受容への支援のとまどい】【意思決定支援や家族間の調整への悩み】【家族の気持ちを聞けないジレンマ】【死別後の家族の気持ちを聞く方法へのとまどい】【死別後のケアの必要性の理解不足】【グリーフケアの評価が不明瞭】【死別後の家族を支える体制が不十分】,そして【看護師自身の辛さ】が抽出された.特有なものとして【家族の気持ちを聞けないジレンマ】が考えられた.

資料
  • 本村 美和, 中村 摩紀
    原稿種別: 資料
    2018 年 22 巻 1 号 p. 99-104
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,地域在住自立高齢者を対象に,誤嚥性肺炎予防をめざして,誤嚥性肺炎の関連要因といわれる栄養状態,歯磨き行動,および誤嚥性肺炎に関する認識とその性差について,実態を調査し検討することとした.対象は65 歳以上で自立した高齢者であり,方法は対象者1,000 人に対して郵送法自記式質問紙調査を実施した.回収は629 人(回収率62.9%)であった.内容は,属性,歯磨き行動や栄養状態,誤嚥性肺炎に関する認識であり,分析はχ2 検定およびMann–Whitney U 検定を用いた.分析の結果,歯磨きへの意欲(p <0.001),就寝前に歯磨きを忘れてしまうこと(p < 0.015),など男女間で有意差が認められ,歯磨きを忘れてしまう頻度は男性が女性よりも多かった.栄養状態や誤嚥性肺炎に関する認識については男女間で有意差は認められなかった.対象の性別も考慮しながら,高齢者に対する誤嚥性肺炎の予防行動に関するいっそうの健康教育を進めることの必要性が示唆された.

  • 河野 由美子, 桜井 志保美
    原稿種別: 資料
    2018 年 22 巻 1 号 p. 105-113
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    目的:認知症グループホーム(以下,認知症GH)の管理者の介護職員への人材育成に対する認識を明らかにする.

    研究方法:1 人約60 分の半構成面接による質的記述的研究.

    結果:対象者11 人.管理者経験年数1 〜21 年.管理者の介護職の人材育成に対する認識として【認知症高齢者と生活を共にする介護職としての基盤づくり】【認知症ケアに求められる知識・技術の習得】【小規模施設におけるチームの一員としての自覚と責任ある行動の育成】【認知症GH に従事する介護職に必要な人材活用とキャリアアップの整備】【小規模施設に従事する介護職として自己の成長を促す交流の促進】【認知症GH の管理者としての自覚と責任】の6 カテゴリーが抽出された.

    結論:管理職は,認知症高齢者の生活を支えること,認知症ケアの専門的知識・技術を習得すること,小規模集団としてチームで責任ある行動をすること等を介護職の人材育成として認識していた.

  • 榊原 一惠, 片平 伸子
    原稿種別: 資料
    2018 年 22 巻 1 号 p. 114-122
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    目的:家族による介護継続に関係する要因を明らかにし,これらを踏まえた支援を検討することを目的に文献調査を行った.

    方法:医中誌Web とCiNii Articles を用い,「介護継続」を検索語として文献を抽出した.文献をテーマ別に分類し,最も多かった介護継続意思に関する文献について要因との関連に焦点を当て,分析を行った.

    結果:介護継続意思とその関連要因は「介護者の主観」「介護者の属性」「被介護者の属性」「介護者と被介護者の関係」「社会的要因」の5 つのカテゴリーに分類された.

    考察:肯定的認識を高められること,介護者自身の健康面や介護時間や介護のペース配分がうまく管理できること,介護者と被介護者関係が良好であること,介護者が相談できる専門職がいることや利用できるサービスがあることなどが介護継続意思に関連しており,これらの要因を維持,促進することが介護継続につながると期待できる.

  • 小野 若菜子, 竹森 志穂, 江口 優子
    原稿種別: 資料
    2018 年 22 巻 1 号 p. 123-130
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    研究目的は,訪問看護におけるグリーフケアの実施上の課題を記述し,グリーフケアの提供方法を検討することであった.グリーフケアを提供している看護師13 人がグループインタビューに参加した.内容分析の結果,グリーフケアの提供における困難として,【死別後の生活が不安定な遺族への対応に苦慮する】【提供体制が整わず十分なグリーフケアができない】【グリーフケアを提供する看護師に負担がある】ということがあった.一方,グリーフケアの提供に向けた今後の課題には,【職場に合ったグリーフケアのアプローチを工夫する】【遺族をサポートする社会資源があるとよい】【グリーフケアを振り返る機会があるとよい】ということがあった.

    本研究結果からグリーフケア提供の困難の特徴が示され,在宅ケアチームの連携,心理に関する専門職の活用,および遺族間の交流等により,地域における遺族サポートの機能を高める必要性があると考えられた.

  • 日野 徳子
    原稿種別: 資料
    2018 年 22 巻 1 号 p. 131-141
    発行日: 2018年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究は,地域包括支援センターの職員が行う職務から業務遂行に関する潜在的な因子を探索し,今後の力量開発・育成に向けて示唆を得ることを目的とした.関東圏の地域包括支援センターに勤務する,看護職・社会福祉士・主任介護支援専門員の3 職種を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した.内容は属性,地域の特性に配慮した活動,介護予防事業への取り組み,地域住民の支援体制の構築,チームアプローチ,プライバシーの保護,専門性への意識とした.分析には因子分析を用いた.結果,「地域での生活継続を考えたつながり」「専門職としてのプライドと自己管理」「意欲向上・自己実現に向けた支援」「リスクマネジメント」「チームアプローチ・専門職としての協働」の5 因子が抽出された.包括職員に求められる職務は多岐にわたっており,職務遂行に必要な力量は「専門職としての力量」「人間的な資質に関する力量」が考えられ,これらの開発・育成とともに,3 職種が専門性を発揮できる環境の整備が示唆された.

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