日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
23 巻, 1 号
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目次
巻頭言
特集:海外における在宅ケア
連載:在宅ケアの研究力を高める
原著
  • 沢口 恵, 山路 野百合, 大田 えりか, 田村 正徳
    原稿種別: 原著
    2019 年 23 巻 1 号 p. 47-53
    発行日: 2019年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    医療的ケアを必要としている小児(以下,医療的ケア児)の数や医療的ケアの内容を明らかにすることで,医療的ケア児に必要な支援について示唆を得るため,訪問看護事業所4,972 か所にFAX によるアンケート調査を行った.返信数は2,023 か所(回収率40.7%)であり,小児の訪問看護を実施している事業所数は882 か所(43.6%)であった.小児の訪問看護利用者数は4,272 人で,0 ~ 6 歳未満が55.1%,6 〜18 歳未満が44.9%であった.訪問看護利用者数を都道府県別にみると,神奈川県,東京都,愛知県の順で多かった.訪問看護利用者のうち医療的ケア児は72.4%であり,うち運動機能が座位までの小児は88.9%,歩行可能な小児は11.1%であった.医療的ケアを必要としない小児は27.6%であった.医療的ケアの内容は,経管栄養,吸引,気管切開の順で多く,その他では機械による排痰ケア,浣腸,人工肛門管理があった.医療的ケア児への支援として地域や学校との間での健康に関する情報共有といった連携が求められる.

  • 橋本 通子, 藤原 政嘉, 西田 真寿美
    原稿種別: 原著
    2019 年 23 巻 1 号 p. 54-62
    発行日: 2019年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    目的:地域在住の前期および後期高齢者の食生活リテラシーや食に関する地域活動,栄養士への期待が,食行動に及ぼす影響について明らかにする.

    方法:1970 年代に整備された大規模住宅団地に居住する65 歳以上の高齢者274 人を対象として質問紙調査を行った.食行動の測定にはFood Frequency Questionnaire Based on Food Groups(FFQg 4.0)から11 項目を用いた.

    結果:食行動に影響する要因は前期および後期ともに食生活リテラシーの高さであった.前期高齢者では家族内に要介護者がいることが食行動を低下させ,逆に町内の食事会への参加は食行動を高めていた.後期高齢者では栄養士と共に料理教室等を企画し取り組むことへの期待の強さが関連していた.

    結論:地域高齢者の食支援には高齢者と共に栄養士が活動することで食生活リテラシーを高め,食行動の改善につながることが示唆された.

  • 松村 剛志, 新野 直明
    原稿種別: 原著
    2019 年 23 巻 1 号 p. 63-73
    発行日: 2019年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    研究の目的は,パーキンソン病患者の視点から,重症度の進行に対応したホームエクササイズの継続要因を探索することである.対象者は,Hoehn-Yahr Stage Ⅱ〜Ⅳの在宅パーキンソン病患者13 人であった.半構造的インタビュー後に,Steps for Coding and Theorization を用いて,ホームエクササイズの継続を促進または阻害する要因を探索した.この結果,21 個の促進要因と9 個の阻害要因が抽出され,それぞれはStageⅡ〜Ⅳの全過程にて抽出された要因と,進行過程の自立レベルにて抽出された要因,さらに介助レベルにて抽出された要因に分類できた.健常高齢者の運動習慣構築や要支援・要介護者の家庭運動に影響する要因との比較から,【患者自身のパーキンソン病に関する理解】と【セルフケアと運動を組み合わせて実施すること】,および介助が必要となった場合の【体の動きの良いときを選んで実施すること】が本研究対象者に特異的な促進要因であることが示された.

  • 岩田 尚子, 諏訪 さゆり
    原稿種別: 原著
    2019 年 23 巻 1 号 p. 74-82
    発行日: 2019年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    外来化学療法を受ける高齢がん患者が訪問看護を導入する意義を明らかにするため,外来看護師13 人,訪問看護師10 人へ個別に半構造化面接を行い,得られた逐語録の質的内容分析を行った.高齢がん患者が訪問看護を導入する意義は,「初回の外来化学療法を開始するまでの時期」では【病院だけでなく地域でも支援を受ける体制ができる】,「外来化学療法を継続する時期」では【症状悪化の予防や対処行動の相談が自宅でも可能になり,治療と生活を継続しやすくなる】【家族が困難に対処しながら生活を継続していけるような支援を受けることができる】など,「外来化学療法の継続が困難になる時期」では【自身が決断した最期のすごし方に向けた準備ができる】【自身を看取る家族への支援を受けることができる】などであった.高齢がん患者の訪問看護導入は,高齢がん患者が自ら治療や療養場所を決断できることや家族に対するグリーフケアに資する.

研究
  • 柳原 清子, 原田 魁成, 寒河江 雅彦, 齊藤 実祥
    原稿種別: 研究
    2019 年 23 巻 1 号 p. 83-90
    発行日: 2019年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究は北陸地方の小規模市の要介護世帯全数調査から,地域包括ケアシステム下での家族介護者の介護および離職・転職を,家族レジリエンスの視点で分析したものである.家族レジリエンスと介護離職・転職は,家計管理の視点で,また介護は日常生活維持力や家族の信念,家族の協力や協調,コミュニケーションから分析した.対象の家族介護者は574 人(回収率39.9%)で,平均年齢は66.7 歳±10.7 であり,69.5%が同居であった.就労しているのは半数でそのうち,就労の変化は59 人(22.0%)が経験し,その収入変化は元の収入の4 割という落ち込みであった.一方家族レジリエンスの「日常生活」の維持はなされ,サポートは友人知人より家族親族からのサポートを受けていた.家族の信念は,「苦労の人生の自負」や「困難と戦う姿勢」をもつ一方で,家族内の「ユーモアな会話」や「意見を戦わす姿勢」は低かった.地方の介護している家族レジリエンスは,家族内での解決および主介護者の引き受け型介護で,総じて内向きで耐え型であった.

  • 菊池 有紀, 薬袋 淳子
    原稿種別: 研究
    2019 年 23 巻 1 号 p. 91-96
    発行日: 2019年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,自宅や施設でさまざまな機能低下により,要介護認定を受けている高齢者(以下,高齢者)が,インクルーシブデザイン手法による衣服制作のプロセスに参加することによる,精神的健康の主観的健康感,認知機能,うつ傾向に与える影響を明らかにすることとした.高齢者40 人(男性8 人,女性32 人)が,インクルーシブデザイン手法による衣服制作のプロセスに参加し,参加前後の主観的健康感,認知機能(MMSE),うつ傾向(GDS)について比較した.前後の比較では,主観的健康感「とても健康である」「まあまあ健康である」の「健康群」は,介入前9 人(22.5%)から介入後26 人(65.0%)と有意に増加し(p <0.01),GDS 得点は6.7±3.4 から5.3±3.5 に低下傾向(p = 0.05)がみられた.高齢者がインクルーシブデザイン手法による衣服制作のプロセスに参加することで,高齢者の主観的健康感を高め,うつ傾向を軽減する可能性が示唆され,精神面の支えとなることが示唆された

資料
  • 大和 章浩, 金谷 志子, 田中 陽子, 河野 あゆみ
    原稿種別: 資料
    2019 年 23 巻 1 号 p. 97-105
    発行日: 2019年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    目的:本研究は看護系大学の4 年生の学生を対象とし訪問看護への進路志向と訪問看護への関心やイメージ,実習体験との関連を明らかにすることを目的とした.

    研究方法:看護系大学4 年生の377 人に無記名自記式質問紙調査を実施した.調査項目は,研究対象者の概要,訪問看護への進路志向,訪問看護実習の体験,訪問看護に対するイメージ,就職活動の状況である.分析は,訪問看護の就職希望の有無を従属変数とした多重ロジスティック回帰分析を実施した.

    結果:回答者数は324 人,有効回答数314 人(有効回答率83.3%)であった.多重ロジスティック回帰分析の結果,訪問看護への進路志向に影響する要因は,実習前の訪問看護への関心(OR = 2.7,95% CI:1.37〜5.28),実習後の訪問看護への関心(OR = 16.9,95% CI:8.30 〜34.49)であった.

    考察:看護系大学4 年生の訪問看護への進路志向には訪問看護実習前の訪問看護への関心の高さと実習後の訪問看護への関心の高まりが関連していた.

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