日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
24 巻, 1 号
選択された号の論文の17件中1~17を表示しています
目次
巻頭言
特集1:海外における在宅ケア
特集2:新型コロナウイルス感染症(COVID-19)における実践現場での対応
研究
  • 西口 周, 米澤 麻子, 矢野 美佳, 白澤 政和
    原稿種別: 研究
    2020 年 24 巻 1 号 p. 57-64
    発行日: 2020年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,ケアマネジャーを対象としたフォーカスグループインタビューを実施し,ケアプラン作成とその関連業務における人工知能(artificial intelligence;AI)活用による業務支援可能性を検討することとした.対象者は十分な経験を有するケアマネジャー15 人とし,ケアプラン作成業務内容についてのAI による支援可能性およびAI ではなくケアマネジャーが担うべき役割についての120 分間のグループインタビューを1 回5 人ずつ実施した.インタビュー内容の質的分析の結果,ケアプラン作成業務で必要とされる機能のうち,知識・情報等の補完やパターン化したニーズ分析・目標,状態の将来予測等に対する支援ニーズが抽出された.このようなAI が優位性を発揮できる機能を生かしながらAI がケアマネジャーを支援することで,ケアマネジャーは利用者等との関係性構築や利用者の意欲の引き出し,意思決定支援等の対人援助業務に注力する形でのAI の活用ニーズが明らかとなった.

  • 戸塚 恵子, 上谷 いつ子
    原稿種別: 研究
    2020 年 24 巻 1 号 p. 65-73
    発行日: 2020年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,病院看護師の在宅に向けた退院支援の現状と課題を明らかにすることである.地域中核病院の看護師を対象に質問紙調査を実施した結果,退院支援のための情報収集,日常生活動作に関連した自立への支援について実施の割合は高かったが,カンファレンスの開催,他職種との連携など,在宅療養に向けての計画的かつ具体的な支援については実施の割合が低かった.また,退院支援に関する診療報酬,社会福祉制度や地域の社会資源等についての知識不足が明らかになった.今後は,アセスメント力を強化し,退院支援に必要な社会福祉制度や地域の社会資源等の知識を向上させるための事例検討会や研修企画などの充実が課題である.さらに,看護師の約4 割が退院支援に困難を感じていたことから,退院支援に関する看護の標準化,困ったときに気軽に相談できるシステムの充実,看護師間および他職種との連携の円滑化等,病院全体の体制づくりが課題である.

  • 鈴木 真智子
    原稿種別: 研究
    2020 年 24 巻 1 号 p. 74-80
    発行日: 2020年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    現代では,核家族化や個人の価値観の変化により家族の介護力は低下している.本研究は,がん末期患者を在宅介護する若い世代の家族の体験を明らかにすることを目的とした.在宅介護を経て看取りを行った若い世代の家族5 人を対象に半構造化個別面接を実施し質的記述的に分析を行った.分析の結果,若い世代の家族の体験として,〈介護により変化した生活に奮闘〉〈状態悪化に伴い増大する疲労〉〈療養先決定の模索〉〈医療に対する不満と不信〉〈死を身近にした辛さ〉〈介護生活の支え〉〈サポートに対する躊躇〉〈看取りに向けた仕事の調整〉〈共にすごす時間の意味〉〈死別後への備え〉が抽出された.若い世代の家族は,介護と生活の両立のなかで,療養先や仕事の休暇取得など決断に迫られ,介護サービスや周囲のサポートを素直に受け取れない状況を抱えながらも,大切な家族の最期と向き合い奮闘していた.

  • 柴田 りさ, 堀口 和子, 鈴木 千枝
    原稿種別: 研究
    2020 年 24 巻 1 号 p. 81-90
    発行日: 2020年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,配偶者と死別した独居高齢者がどのような状況のときにどのようなソーシャルサポートを受けながら,悲嘆の適応過程をたどるのかを明らかにすることである.配偶者と死別後おおむね1 〜 3 年経過した独居高齢者9 人に半構造化面接調査を行い,質的記述的に分析した.その結果,ソーシャルサポートに着目した独居高齢者の悲嘆の適応過程は,「家族などごく身近な他者から日常生活のサポートを受けることで何とか生活が営める」「友人や同じ境遇の他者と互いの苦悩体験を共有することで現状から脱しようと試みる」「さまざまな他者から独居生活を支えられることによって安心してすごせる」の3 段階に分かれた.1 段階では〖親身なかかわり〗,3 段階では〖生き方を尊重したかかわり〗〖ひとり暮らしを支えるようなかかわり〗〖安心してすごせるようなかかわり〗,全段階を通して〖孤独を感じさせない機会の提供〗など,悲嘆の状況に応じたソーシャルサポートが示唆された.

  • 蘭 直美, 川島 和代
    原稿種別: 研究
    2020 年 24 巻 1 号 p. 91-101
    発行日: 2020年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    目的:定期巡回・随時対応型訪問介護を利用している在宅要介護高齢者の栄養状態の実態と関連要因を明らかにし,低栄養の課題検討に向けて考察する.

    研究方法:自宅に訪問し,調査項目の聞き取り,観察,測定をした.

    結果:対象者23 人は,簡易栄養状態評価MNAⓇ-SF によると,約91%が「低栄養」または「低栄養のおそれあり」であった.MNAⓇ-SF と有意な相関を認めた項目は,要介護度(p=0.01),BI(p<0.01),NMスケール(p<0.01),VI(p<0.01)であった.低栄養の課題として,21.7%が定期的に体重測定をしていない,下腿周囲長31㎝以下が56.6%おり,音節交互反復運動や反復唾液嚥下テストの結果から,口腔機能低下や嚥下筋のサルコペニアの可能性,約35%が口腔衛生に問題があった.

    結論:摂食嚥下領域の評価・訓練および栄養面のサポートを行う専門職を交えた支援の必要性が示唆された.

  • 大野 洋一
    原稿種別: 研究
    2020 年 24 巻 1 号 p. 102-106
    発行日: 2020年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    パーキンソン病患者は非運動症状に起因する排泄障害を有している.排泄動作は自尊心にかかわる重要な動作であり,また介助負担の高い動作でもある.本研究では在宅生活をしているパーキンソン病患者を対象に排泄に関係している動作の困難感に対するアンケート調査を実施した.対象は全国パーキンソン病友の会群馬県支部に入会している患者とし,アンケート項目は排泄動作に関連する12 項目の動作に対する困難感とした.また,回答は患者の動きやすいとき(ON)と動きづらいとき(OFF)に分けた.解析はHoehn・Yahrの重症度分類(H&Y)により1 & 2,3,4 の3 グループに分けて行った.結果としてH&Y の1 & 2 では困難感を感じていなかった.3 と4 では多くの項目で困難感を認めた.ON とOFF の困難感の比較ではH&Y 3 で最も多くの項目で有意にOFF に高い困難感を示した.本研究の結果は医療従事者や家族による介助を検討する際に有益な情報になり得ると考えている.

資料
  • 工藤 朋子, 高岩 奈津美
    原稿種別: 資料
    2020 年 24 巻 1 号 p. 107-114
    発行日: 2020年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    目的:市区町村における訪問看護情報提供書の活用実態を明らかにする.

    方法:全国1,747 市区町村(2018 年5 月1 日現在)のうち960 市区町村を対象に,質問紙調査を行った(有効回答数229).調査内容は受け取り・活用状況,活用程度・必要性の認識で,分析はχ2 検定を行った.

    結果:受け取り件数(2018 年4 月)は平均31.2±93.3,情報を受けて訪問指導,健康相談などを実施していた.活用程度の認識は「よく・ときどき活用している」35.3%,必要性の認識は「あまり・ほとんど必要ない」50.2%であった.文書がなくても連携できている一方で,自治体でかかわりのない人の活用が不明,記載内容が画一化しているなど双方の課題が見いだされた.

    結論:約3 割の市区町村が活用していると認識していた.保健福祉サービスとの有機的な連携を強化していくためには,訪問看護情報提供書の本来の目的,意義をお互いに理解する必要がある.

feedback
Top