[目的]都市在住の核家族第1子,1歳未満の子どもをもつ母親について,育児の蓄積的疲労の観点から,育児不安の状況とその要因を明らかにしたい.
[方法]調査対象は育児関連企業C社の都市圏在住の顧客モニターである.データ収集は,郵送調査法を実施した.牧野の蓄積的疲労兆候調査の特性に基づき作成された尺度から,不安あり群を抽出した.その不安内容をKJ法で分析した.
[結果および結論]育児不安あり群,不安なし群ともに,母親たちはさまざまな社会からの情報に敏感に反応していた,ジャーナリズムを賑わす原因不明の少年事件や見通しのきかない経済問題など育児に確証がもてない現状は,母親の不安材料になっていた.
不安あり群の母親は,次の4つの育児不安要因をもっていた.①育児に対する不完全感,②育児に確証がもてない,③信頼できる相談相手を探す術がない,④育児に追い込まれる.これらの要因が相互に関連しあい,閉鎖的な育児環境を築き上げていた.そのなかで母親は育児に追い込まれ,心的な危機状態にあった.そして,精神的,肉体的疲労が蓄積されると,虐待や育児ノイローゼによる不幸な事件を起こしても不思議ではない状況にあると思われる.
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