日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
9 巻, 2 号
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目次
論壇
原著
  • 福井 貞亮
    原稿種別: 原著
    2005 年9 巻2 号 p. 7-14
    発行日: 2005年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究では,要援護在宅高齢者本人が感じる,日常家事と金銭管理の困りごとに関連する要因を,個人要因および環境要因から明らかにした.デイサービス利用高齢者を対象とし,質問紙を用いた面接調査を実施した.調査期間は2003年12月~2004年3月末日までであり,177名から回答を得た.「日常家事」と「金銭管理」の困りごとをそれぞれに従属変数とし,第1段階として個人要因(基本動作能力,健康度自己評価,認知症度,うつ傾向)を,第2段階として環境要因(同居者の有無,主介護者の有無,人間関係の良好さ,家屋内段差箇所)を投入する階層的重回帰分析から関連要因を明らかにした.その結果,日常家事の困りごとは,個人要因として健康状態への認識やうつ傾向について,環境要因として同居者の存在や,家屋内の段差について把握することの必要性が示された.また,金銭管理の困りごとは,環境的な要因よりも,健康状態への認識や認知症の症状という個人要因について把握しておくことの必要性が示された.これらの点について留意しながらアセスメントを行うことで,高齢者と介護支援専門員とが,日常家事や金銭管理についての課題を共有することができ,円滑な支援関係が築かれると考えられる.

  • 畑 智恵美
    原稿種別: 原著
    2005 年9 巻2 号 p. 15-22
    発行日: 2005年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究は,ケアマネジャーの全体的職務満足度に関連のある要因を明確化することを目的としている.全国の在宅介護支援センター相談員(ケアマネジャー)1,000名を対象に自記式質問紙を用いた郵送調査を行い,400名より回答を得た.全体的職務満足度を従属変数として,基本属性(7変数),職場環境関連要因(10変数),職場の全体的人間関係(1変数),職務をとおしての人間関係(3変数),職務意識要因(2変数:仕事条件満足度,職務関与意欲)の計23変数を独立変数として重回帰分析を行った.その結果,職場の全体的人間関係,仕事条件満足度,職務関与意欲,職種(2変数)の5変数が,全体的職務満足度に有意な影響要因となった.とくに,職務関与意欲は全体的職務満足度に対してもっとも強い影響を及ぼしている要因であつた.職務関与意欲とは,ケアマネジャーという職業に積極的にかかわっていこうという姿勢を示すものであり,このような意欲を支え,向上させていくようなサポート体制の充実が職務に対する満足度を向上させ,ひいては,利用者に対するケアマネジメントの質を向上させると期待される.

研究
  • 小田 美紀子, 落合 のり子, 齋藤 茂子
    原稿種別: 研究
    2005 年9 巻2 号 p. 23-30
    発行日: 2005年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究は,保健師基礎教育に有効な家庭訪問事例を明らかにすること,また,事例の類型化とその教育方法について検討することを目的とした.学生が受け持った61事例の家庭訪問記録の自己点検・自己評価結果を基に,学生の学びに影響すると考えられる事例の状況を分析した.その結果,The Identified Patients(IP)のライフステージは,家庭訪問実習の学びに影響しないこと,保健師基礎教育に有効な家庭訪問事例は,家族が同居しており,IPの介護度4以下の世帯であることが明らかになった.また,学生の学びが得ることが困難であった事例は,独居の事例,IPの介護度が高い事例,家族関係に歪みがある事例,問題解決が困難な事例であった.事例の類型別に教育方法を検討することが必要であることが明らかになった.

  • 大越 扶貴, 星野 純子, 野川 とも江
    原稿種別: 研究
    2005 年9 巻2 号 p. 31-37
    発行日: 2005年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究では,現行の介護予防事業が,必ずしも地域の実情や住民ニーズに合った形で展開していないことから,住民と関係専門職等との共同の手がかりとして,介護予防に対する住民ニーズを明らかにすることを目的とした.介護予防を実施したいというニーズをもつB地区の町内会で中心的活動をになう11名に半構造化インタビューを行った.分析はKJ法を用いた.住民理解の前提には,関係専門職の事前準備・日ごろの実践活動の蓄積があった.住民のニーズは「介護予防の連続性」を中核とし「元気の下地づくり」「気楽に集える場」「身近な所で支える」であった.これらは現実の暮らしのなかから導き出され,1人の人間の加齢過程,個人から地域までという連続性をもつものであった.一方で住民は,介護予防を町づくりや地域ケアとのつながりのなかでとらえていた.

    今後は,計画・実践までの経過を追いながら共同のあり方を検討していくことが課題である.

  • 森田 久美子, 島内 節, 奥富 幸至, 北園 明江
    原稿種別: 研究
    2005 年9 巻2 号 p. 38-46
    発行日: 2005年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究では,在宅要介護高齢者の自立度・健康状態および主介護者介護力のアウトカムを利用者の自立状態および認知症(痴呆)の程度によって評価した.対象はA県内の介護保険サービス利用者329名.ケアマネジャーが担当事例を3時点でアセスメントし,アウトカムを測定した.結果,移動に障害が出ると,続いて上半身・下半身の更衣に障害がでやすいことが明らかになった.痴呆度が重い群が軽い群に比べて2か月後では,「ADL」「IADL」「精神能力」「症状」,6か月後では「介護力」も含めた項目で1.9~8.2倍,アウトカム悪化の危険度が高くなった.以上より,外出頻度を増やし,障害発生後もバランスや筋力を維持するリハビリテーション等を実施していく,痴呆度が重い場合,上・下半身の更衣や排泄,食事などのADL項目や,尿失禁などに焦点をあてたケアが重要であることが示唆された.

  • 清水 由美子, 杉澤 秀博
    原稿種別: 研究
    2005 年9 巻2 号 p. 47-55
    発行日: 2005年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,大学病院のリハビリテーション病棟を退院後在宅で生活している高齢者を対象に,ソーシャルサポートが自己効力感に与える影響を分析することである.

    分析対象は75名である.自己効力感に対する提供者別のサポート(「同居家族」「別居子・親族」「友人・近隣」「保健医療福祉の専門家」それぞれからの受領サポート)の直接および緩衝効果について分析した結果,以下の知見を得た.

    直接効果については,いずれのサポートも自己効力感に対して有意な効果をもっていなかった.緩衝効果については,別居子・親族のサポートが自己効力感に対して有意な効果をもっており,身体的自立度が高い群ではサポートの多寡による差は小さかったものの,身体的自立度の低い群では別居子・親族からのサポートが多い人で自己効力感が高く,身体的自立度の低下による自己効力感の弱化をサポートが防ぐ効果があることが示された.

  • 千葉 由美, 岡本 玲子
    原稿種別: 研究
    2005 年9 巻2 号 p. 56-67
    発行日: 2005年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究は,急性期病院における看護師のケアマネジメントプロセスの質評価(QCM-P),自律性(NAS),および職務満足度(MJS)の関係とそれらの関連要因を分析し,退院調整における看護師のあり方を検討するために実施した.

    【方法】対象者はS病院の全看護師110名で自記式質問紙調査を行った.分析対象者は58名であった.調査内容は基本属性,QCM-P,NAS,MJSで,分析はQCM-P,NAS,MJSの各因子,合計平均得点と職位とはt検定.病棟・学歴とは一元配置分散分析,勤務年数とはPearsonの相関係数を実施した.さらに,QCM-PとNASは各項目と職位についてt検定を実施した.QCM-P,NASとMJSはPearsonの相関係数を求めた.

    【結果】①QCM-Pの合計得点はNASの合計得点と有意に相関し(r=.456),QCM-Pの各因子,合計得点は管理職のほうがスタッフよりも有意に高かった,②病棟看護師のNASの各因子,合計得点は,職位で有意差がみられ,経験年数と相関していた.③QCM-PとMJSの得点は相関がみられなかった.ただし,NASの合計得点とMJSの「職業的地位」と相関していた.

    【考察】:病棟の看護師が実施するケアマネジメントプロセスの質評価(QCM-P)と看護師の実践能力である自律性(NAS)は関連がみられた.そしてNASは測定用具として,利便性が高いことが示唆された.

資料
  • 田村 須賀子
    原稿種別: 資料
    2005 年9 巻2 号 p. 68-75
    発行日: 2005年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    家庭訪問援助の特質のうち,優先度を判断するという看護援助の特徴を示す.熟練保健師が行った家庭訪問援助9事例に対して,看護職の意図と行為を調べた.看護職の行為は「第三者が観察できる看護職の行為」と「言動に表れないため第三者からは把握できないであろう看護職の行為」に分けて記述し,それらの行為を方向づける意図とともにその内容を分析した.

    その結果,優先度を判断していくという看護援助の特徴には,①対象の援助ニーズを看護職が判断することにより援助提供方法を決める,②対象者・その家族との人間関係・信頼関係の形成・確立・維持することを優先する,といった特徴があり,さらに優先することは対象者・その家族に話したいように話してもらうこと・考えてもらうこと,対象者・その家族のいまおかれている状況,方針・決定・認識・価値観であった.また家庭訪問援助の特質を明確にするためには,看護職の意図を記述し.第三者からは把握できない看護援助の側面をも把握することが必要であると考えられた.

  • 城戸ロ 親史, 水島 ゆかり, 前田 修子, 中山 栄純, 滝内 隆子, 浅見 美千江
    原稿種別: 資料
    2005 年9 巻2 号 p. 76-82
    発行日: 2005年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究では,感染管理の課題を検討することを目的に,在宅における感染管理を必要とするケアの実施状況を調査した.標準予防策の考え方と,ケァに必要な感染防護技術を組み合わせて作成した調査用紙を用いて,訪問看護ステーションに勤務する看護師20名を対象に,ケアに必要な感染防護技術の実施状況を参加観察した.その結果.感染防護技術の実施状況は,看護ケア項目ごとに違いがあった.①看護師は,Standard Precautionsの考え方に基づき.ケアを提供する必要があること.②感染防護用品を十分に使用できるような環境を整えていく必要があること,③感染防護用品を不適切に廃棄することが感染を広げることを理解し,ケアを提供する必要があること,④看護技術の維持・向上のため,現任教育の実施が必要であること,⑤在宅の場に応じた物品を工夫し,適切にケアを実施する必要があることの5つの感染管理を必要とするケアの課題が明らかとなった.

  • 佐久間 志保子, 佐々木 宰, 工藤 綾子
    原稿種別: 資料
    2005 年9 巻2 号 p. 83-92
    発行日: 2005年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    本研究は介護保険サービス利用者および家族に対し,サービスの利用状況や満足状況を明らかにすることを目的とした.調査対象は利用者およびその家族21名である.調査方法は半構造面接法によるインタビューを実施した.データは調査者3名で読み返し,逐語録を作成し意味ある内容から文脈を反映するようにコードを抽出した.抽出したコードを同じ内容により,分類,整理し,カテゴリーとしラベルをつけた、さらに信頼性・妥当性を高めるために,何回かの分析を繰り返した.再分析では調査者1名を加え行った.その結果,サービス提供者,サービス内容,介護支援専門員,介護保険制度に対する満足・不満足を明らかにすることができた.今後の課題として利用者のニードを尊重するとともに,家族への配慮,リハビリ内容の検討や,介護支援専門員には利用者の潜在的なニーズを的確にとらえ、ケアプランを作成することが求められる.

  • 前田 修子, 滝内 隆子, 水島 ゆかり
    原稿種別: 資料
    2005 年9 巻2 号 p. 93-99
    発行日: 2005年
    公開日: 2025/04/10
    ジャーナル フリー

    在宅医療に携わる医師および看護師を対象に,在宅で口腔・鼻腔内吸引を実施するうえでどのような医療・衛生材料が必要であるととらえ,それらのなかでなにを医療機関が在宅療養者に供給したほうがよいととらえているのか,また,両職種におけるそのとらえ方の相違の有無について比較することを目的に郵送による質問紙調査を行った.その結果,【必要な物品】ととらえていた者の割合は,口腔・鼻腔内吸引の実施に必要と判断した物品は7割以上,保管容器類は約6~7割,手洗い物品は約5~6割,使い捨て手袋を除く感染防護用具は約2~4割であり,両職種とも13物品すべて10割に満たなかった.【医療機関より供給したほうがよい物品】ととらえていた者の割合は,口腔・鼻腔内吸引の実施に必要と判断した物品は6割以上,保管容器類や感染防護用具は約3~5割,手洗い物品は約1割であった.看護師は,家庭内で代用できる可能性のある物品に関して【医療機関より供給したほうがよい物品】ととらえていた者の割合が医師よりも低かった.これらの結果より,感染管理が実践できる医療・衛生材料を確保するためには,まず医師・看護師に対する必要な医療・衛生材料の周知徹底ならびにその供給に関するシステムづくり等早急な対策の必要性が示唆された.

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