日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
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目次
巻頭言
特別寄稿
特集 ケアにおける意思決定とアドバンス・ケア・プランニング(ACP)
総説
  • 内田 和宏, 易 肖和, 加瀬 裕子
    原稿種別: 総説
    2024 年 28 巻 1 号 p. 38-50
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/27
    ジャーナル フリー

    【目的】本研究は,在宅認知症高齢者に生じる行動心理症状(BPSD)にあわせて,専門職が家族介護者に理解を促し,対応できるように介入することは,在宅認知症高齢者や家族介護者にとって有用か,システマティックレビューにより評価する.

    【方法】系統的レビューを行った.適格基準は,①ランダム化比較試験②介入対象者が在宅認知症高齢者の家族介護者である③介入内容に専門職が家族介護者に対応策について理解を促し,行動マネジメントができるようになることを含む,とした.

    【結果】採択研究は8研究であった.専門職の介入は,家族介護者の介護負担感/抑うつ/well-being/介護スキル/生活の質,本人のBPSDの改善に有効であった.

    【結論】在宅認知症高齢者に生じるBPSDにあわせて,専門職が家族介護者に理解を促し,対応できるように介入することは,在宅認知症高齢者に有用であるが,エビデンスは限定的であった.

原著
  • 金子 美千代, 丹羽 さよ子, 春田 陽子, 益満 智美
    原稿種別: 原著
    2024 年 28 巻 1 号 p. 51-61
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/27
    ジャーナル フリー

    本研究は,文科省の補助事業である“地域での暮らしを最期まで支える看護職の育成”プログラムの一環として実施した島嶼フィールワークの有効性を検討することを目的とした.

    プログラムを履修した臨床経験のある看護師48名の実習終了後のレポートを対象とし,学びに関する内容を質的帰納的に分析した.

    履修生は,【保健医療福祉の条件の不利性を感じさせない心豊かな暮らし】【独自の文化が創出した地域で共存するためのコミュニティ】といった島嶼独自の環境に身を置くことで【その人らしさを形づくる尊厳ある暮らし】【自身の既有の知識や体験では測れない対象の生活への理解と尊重】を認識し【対象を生活者として捉えることの重要性】【その人らしい暮らしを地域全体で支える連携・協働の重要性】といった新たなスキーマ化を図り【看護職としてのアイデンティティの再考】に至っていた. つまり,島嶼フィールドワークは,全人的看護の学び直しに有用であることが示唆された.

  • 三浦 剛, 河野 あゆみ
    原稿種別: 原著
    2024 年 28 巻 1 号 p. 62-71
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/27
    ジャーナル フリー

    本研究では,高齢者の新規要支援認定時の介護サービス利用について最も費用効果的な介護サービスの利用パターンを特定する.介護・医療保険請求データにより,2012年度に新規要支援認定を受けた65歳以上の高齢者1,567人を5年間追跡した.介護保険請求データより,新規要支援認定を受けた後1年以内の介護サービス利用パターンを「低利用型」,「介護予防通所介護型」,「介護予防訪問介護型」,「混合利用型」の4つに分類した.次に,医療保険請求データから障害調整生命年(DALYs)を推計し,費用効果分析を行った.「介護予防通所介護型」の5年経過後の平均DALYsは1.97年,5年間の介護保険支出総額に対する費用効果受入確率は774万円超で0.49以上であった.新規要支援認定時の介護予防通所介護型のサービス利用は,高齢者のDALYsを少ない費用で抑制できることが示された.

研究報告
  • 平川 善大, 織井 優貴子
    原稿種別: 研究報告
    2024 年 28 巻 1 号 p. 72-81
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/27
    ジャーナル フリー

    [目的]訪問看護ステーションにおけるシミュレーション教育プログラムを構築するため,ステーション管理者のシミュレーションでの教育ニードを明らかにし,教育プログラム開催の可能性を調査すること.[方法]B地域A財団在宅看護センターのステーション管理者7名を対象に,『学習ニードアセスメントツール』,『教育ニードアセスメントツール』(ともに訪問看護師用)を参考に,90分程度のオンラインインタビューを実施し,計量テキスト分析の手法(KH Coder3)で分析した.[結果]総抽出語数は28,160語であった.共起ネットワーク図で11の語群に分類され,それぞれ【基本的な知識・技術】,【フィジカルアセスメント】,【他(多)職種との連携・連絡】,【コミュニケーション】などのラベルとして教育ニードが示された.[考察]共起ネットワークで示された教育ニードのラベルから,状況設定型や他職種連携型のシミュレーションなどと適合性が高く,現地巡回型の教育プログラムとするなどにより開催の可能性が高まることが示唆された.

  • 渡辺 忍
    原稿種別: 研究報告
    2024 年 28 巻 1 号 p. 82-91
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/27
    ジャーナル フリー

    訪問入浴介護では重度者が多く利用し,同行する看護職は業務として入浴の可否判断を求められるが,訪問入浴に関する教育機会は少なく,業務にあたる際の不安が大きい.今回,訪問入浴における医療的ケアの実態,訪問入浴介護時の看護職の不安と教育ニーズを明らかにすることを目的にアンケート調査を実施した.

    その結果,訪問入浴介護では褥瘡の処置や薬剤の投与等の医療的ケアが多く行われていた.そのような中,従事する過半数の看護職が不安を感じており,フィジカルアセスメントやリスク対応等の教育が必要との考えが多かった.また,看護職の不安の有無と知識(p<0.001)・技術(p<0.011), 教育機会の必要性の認識(p<0.016)との間で関連が認められた.このことから,訪問入浴に関する知識と技術の習得が不安を軽減させる可能性が示唆された.今後は訪問入浴介護での看護職の役割をふまえた教育プログラムの策定が必要である.

  • 井上 高博, 江 啓発, 馬場 保子, 石川 美智
    原稿種別: 研究報告
    2024 年 28 巻 1 号 p. 92-102
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/09/27
    ジャーナル フリー

    目的:離島に暮らす虚弱高齢者において,交流人数が多い人々と少ない人々との人付き合いに対する認識の違いを明らかにし,介護予防活動を考察する.

    方法:虚弱高齢者へのアンケート調査回答者94名で用いた日本語版Lubben社会的ネットワーク尺度短縮版(0−30点)の結果から,20点以上者4名(交流多群)と11点以下者7名(交流少群)を抽出して半構成的インタビューを行った.

    結果:交流多群では【親しい交流者と関わる喜び】,【交流者とお互い様の心遣い】,【交流者への感謝】を抽出した.交流少群では【衰退する地域で暮らす寂しさと危機感】,【他者との相互理解の困難さ】,【他者への感謝】を抽出した.

    考察:交流多群と交流少群で人付き合いの認識は対立したものの,他者への感謝は共通していた.介護予防活動においては,孤独から孤立へと移行しないように交流人口を増やすことが求められる.

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