健康相談活動は、保健室の機能や養護教諭の職の特質を生かして行うが、それらについての研究は期待されるところが大きい。本研究においては、保健室の機能に注目し、中でも、どこの学校の保健室にもある「毛布(以下タオルケットも同じ)」に焦点を当て、「毛布に包まれる体験」を取り上げ、研究を進めることとした。目的は、健康相談活動の研修で養護教諭が子ども役となって「毛布に包まれる体験」をすることで、子ども役となった養護教諭が「毛布で包まれる」ことを、どのように受け止めたかを明らかにするとともに、健康相談活動の実践において「毛布で子どもを包む」有効性を見いだすことである。
研究の対象と方法は、養護教諭が子ども役となって回答した「毛布に包まれる体験」での自由記述調査の計量分析である。また、実際に子どもにこの体験を生かし、毛布に包まれたときの気持ちを子どもにインタビューした選択式質問紙調査である。
その結果、子ども役となった養護教諭は、「毛布で子どもを包む」ことを、毛布独自の機能に加え、養護教諭の対応が子ども役に直接的に影響を与え、子ども役にとって心地よいものとして受け止めていることがわかった。さらに、「毛布で包まれる」ことにより、心も体も安楽に導かれ(子どもの安楽)、人のぬくもり(養護教諭)を感じ、学校にも安心できる家庭により近い特別な空間(保健室)があるということを受け止めていた。一方、毛布活用の有効性は、「養護教諭が毛布で子どもをすっぽり包む」ことにあり、子どもを安楽に導くと同時に心理的安定をもたらすことによって、子どもの心を積極的な方向に向かわせ、教育者として発育・発達を促しているという機能を発揮させることを可能にする働きがあると考えられた。子ども役となった養護教諭の「毛布に包まれる体験」の記述分析と、「実際の子どもが毛布に包まれたときの気持ち」は同様の方向性であると考えられたが、本研究を深めるために、今後は得られた知見をもとに子どもを対象とした検証研究を行う予定である。
抄録全体を表示