日本健康相談活動学会誌
Online ISSN : 2436-1038
Print ISSN : 1882-3807
2 巻, 1 号
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論文
  • ―養護教諭の「毛布(タオルケット)に包まれる体験」から―
    大沼 久美子, 三木 とみ子, 力丸 真智子, 永井 大樹
    2007 年 2 巻 1 号 p. 27-37
    発行日: 2007/02/18
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

     健康相談活動は、保健室の機能や養護教諭の職の特質を生かして行うが、それらについての研究は期待されるところが大きい。本研究においては、保健室の機能に注目し、中でも、どこの学校の保健室にもある「毛布(以下タオルケットも同じ)」に焦点を当て、「毛布に包まれる体験」を取り上げ、研究を進めることとした。目的は、健康相談活動の研修で養護教諭が子ども役となって「毛布に包まれる体験」をすることで、子ども役となった養護教諭が「毛布で包まれる」ことを、どのように受け止めたかを明らかにするとともに、健康相談活動の実践において「毛布で子どもを包む」有効性を見いだすことである。

     研究の対象と方法は、養護教諭が子ども役となって回答した「毛布に包まれる体験」での自由記述調査の計量分析である。また、実際に子どもにこの体験を生かし、毛布に包まれたときの気持ちを子どもにインタビューした選択式質問紙調査である。

     その結果、子ども役となった養護教諭は、「毛布で子どもを包む」ことを、毛布独自の機能に加え、養護教諭の対応が子ども役に直接的に影響を与え、子ども役にとって心地よいものとして受け止めていることがわかった。さらに、「毛布で包まれる」ことにより、心も体も安楽に導かれ(子どもの安楽)、人のぬくもり(養護教諭)を感じ、学校にも安心できる家庭により近い特別な空間(保健室)があるということを受け止めていた。一方、毛布活用の有効性は、「養護教諭が毛布で子どもをすっぽり包む」ことにあり、子どもを安楽に導くと同時に心理的安定をもたらすことによって、子どもの心を積極的な方向に向かわせ、教育者として発育・発達を促しているという機能を発揮させることを可能にする働きがあると考えられた。子ども役となった養護教諭の「毛布に包まれる体験」の記述分析と、「実際の子どもが毛布に包まれたときの気持ち」は同様の方向性であると考えられたが、本研究を深めるために、今後は得られた知見をもとに子どもを対象とした検証研究を行う予定である。

  • ―ケースメソッドを用いた健康相談活動の展開―
    竹鼻 ゆかり, 岡田 加奈子, 鎌塚 優子
    2007 年 2 巻 1 号 p. 38-49
    発行日: 2007/02/18
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

     保健室登校をした中学生A子に対して養護教諭が行った健康相談活動のケースを作成しケースメソッドを行った。本研究の目的は、ケースの論点(養護教諭・教諭として検討・討論すべき問題点)や、養護教諭が問題解決を行うために必要な視点や情報、問題点への対応策を明らかにすること、ならびに健康相談活動の力量形成のためのケースメソッドの方法を検討することである。

     分析対象としたデータは、健康相談活動をテーマとしたケースメソッドに参加した受講者17名(養護教諭、保健体育等の教諭、大学院養護教育専攻)の受講中の逐語録と感想である。実施にあたっては、研究者の一人がチューターを務めた。受講者は、事前に与えられた課題を元に、論点と問題解決のために考えうる目標と対応策を中心としてケースメソッドを展開した。終了後には感想を求めた。結果の分析は、録音から逐語的にまとめた文脈を作成し、その中で問題解決に必要な視点や情報の分析、問題点への対応策であると考えられるものを抽出した。

     ケースメソッドを用いた健康相談活動のケースの検討により、養護教諭の問題解決のために必要な視点や情報の分析、問題点への対応策が、具体的に検討できるとともに、参加者にとって問題解決の視点のみならず、ディスカッションの仕方やケースの多様な視点が得られることが明らかとなった。今回得られた結果を元にケースを加筆修正すること、チューターの進め方をトレーニングすることにより、養護教諭の実践力を高めるケースメソッドの活用の可能性が示された。

  • 本田 優子, 河野 亜希
    2007 年 2 巻 1 号 p. 50-58
    発行日: 2007/02/18
    公開日: 2021/12/03
    ジャーナル フリー

     養護教諭が行なう健康相談活動の力量を評価するために、自己評価票を作成し、その自己評価票を用いた質問紙郵送調査を行なった。

     自己評価票は、文献研究および現職養護教諭によるブレーンストーミングと面接調査の段階を踏んで作成された。

     養護教諭の経験が長い人は、人間性に関する自己評価が高かった。一方で、組織活動の評価は低かった。また、児童・生徒一人ひとりへの対応に関する評価は、中学校で低かった。それらの理由は、関係者の理解や協力不足および対応時間の不足のためと考えられた。事例のまとめや他者から評価を受ける機会が少なかったことは、改善すべきと考えられる。

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