本研究では、重度下肢障害の子どもを持つ母親と3回のカウンセリングセッションの経過及び、終了後4週間後に実施したクライアントの評価インタビューを検討した。3回で、母親の主訴(1.激しい兄弟喧嘩への強い不安感、2.具体的対処法について)は解消した。そして、子ども達への新たな想いをクライアント自身が実感することができた。本事例のカウンセリングの経過について、Gendlinの「体験過程の推進」から考察した。カウンセリングは、第1回は、現在の直面する心配から心理的距離をとることができた(Gendlinの言う「クリアリング・ア・スペース」)。第2回はクライアント自身のフェルトセンスの形成とそれに触れることであった。第3回では、長男の気持ちを察してやることに気づき、重度障害を持っている次男の「予想外のたくましさ」を発見することができた。カウンセリング終了後に行った「クライアントによる評価インタビュー」からは、カウンセラーの体験的傾聴が効果的であったことが語られた。カウンセリング事例とクライアントの評価インタビューを検討することで、「体験過程の推進」を確認する事ができた。本事例では、フォーカシング指向カウンセリングは母親カウンセリングの方法として有効であることが示された。
加えて、児童発達支援センターにおける保護者支援では、専門職相互の連携(「信頼関係の引き継ぎ」と「安心できる時間と空間の設定」)が重要であった。
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