日本ヒューマンケア科学会誌
Online ISSN : 2436-0309
Print ISSN : 1882-6962
12 巻, 2 号
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原著
  • ―就職4か月と12か月の比較―
    秋庭 由佳
    原稿種別: 原著
    2019 年 12 巻 2 号 p. 1-11
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

     就職4か月と12か月の新人看護師の看護実践能力を看護実践能力自己評価尺度CNCSSを用いて比較し、その看護実践能力と属性及び承認の認識との関連を明らかにすることを目的とした。500床以上の49病院に勤務する看護師1858名を対象に、無記名自記式質問紙調査を実施し、就職4か月は484部(26.0%)、就職12か月は288部(15.5%)の有効回答を分析した。看護実践能力のうち、倫理的実践、リスクマネジメント、基本的責務、援助的人間関係、継続学習は、就職4か月から高く、看護基礎教育時点から培われ、臨床においても早期に形成される能力と考えられた。質の改善は、就職4か月では低い能力で、12か月時の伸びも低調であり、1年目では伸びの少ない能力だった。継続学習は、13コンピテンスのうち唯一就職4か月と12か月の有意差がなく、実践経験を積むことによる影響が認められない能力だった。新人看護師の看護実践能力の形成には職場からの承認が必要であり、特に就職初期に周囲からの承認を認識できることが重要であることが示唆された。

研究報告
  • 岡田 敦史, 行場 次朗
    原稿種別: 研究報告
    2019 年 12 巻 2 号 p. 12-19
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

     心身症と深く結びつくアレキシサイミア傾向に影響を及ぼす個人特性(身体感覚増幅傾向とフォーカシング的態度)について検討した。アレキシサイミアとは、感情の同定困難(DIF)、感情の伝達困難(DDF)と外的志向(EOT)の3因子からなる特性をもち、心身症と結びつきやすく、その上、洞察的心理療法への適応困難性もあると指摘されている。身体感覚増幅傾向とは、自覚する身体感覚を有害で支障のあるものとみなす傾向であり、アレキシサイミアとの関連が強いことが明らかにされている。一方、フォーカシング的態度とは、自身の内側の体験に対して優しく、丁寧に触れる独特の態度であり、精神的健康とは正の相関が明らかにされている。本研究では、大学生130名を対象として、トロント・アレキシサイミアスケール(TAS-20)、身体感覚増幅尺度(SSAS)、体験過程尊重尺度(FMS-18)を実施した。重回帰分析を行った結果、SSASはTAS-20に強い正の影響を及ぼした。一方で、FMS-18は強い負の影響を及ぼした。このことは、自身が感知する感覚・身体イメージに対して、否定的な自覚態度と、優しく友好的な肯定的自覚態度によって、アレキシサイミア傾向の強弱が影響を受けることがわかった。これらの知見により、心理療法(例:フォーカシング指向心理療法)などの支援により、自己の感覚・身体イメージに肯定的に気づくことを習得することで、アレキシサイミア傾向が改善される可能性が推察された。

  • ―テキストマイニングによるSST参加者の感想内容の分析―
    熊谷 芳子, 石田 賢哉, 沖 律郎, 船橋 忠勝, 花田 隆浩, 廣川 俊互, 船木 昭夫
    原稿種別: 研究報告
    2019 年 12 巻 2 号 p. 20-26
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

     SST(社会生活技能訓練)は社会生活での対人スキルを学ぶ基本的な指導方法として、刑務所等の矯正施設において積極的に行なわれてきている。平成25年から青森刑務所では釈放前指導としてSSTをとりいれてきた。そこで、本研究では、SSTに参加した受刑者(参加者)が、SSTをどのように評価したかを検証したい。SST参加者のアンケート調査のSSTに対する感想の自由記述からテキストマイニングによる分析を行った。参加者はSSTに対して肯定的な評価を行っていることが分かった。今後より効果的な取り組みに発展させるために、指導内容の改定だけでなく、受刑者の出所後の継続的支援を充実化させていく必要があり、刑務所と地域の各関係機関との連携がますます必要になっている。

事例報告
  • ―クライアントによる評価インタビューとフォーカシング指向カウンセリングの視点からの事例研究―
    岡田 敦史
    原稿種別: 事例報告
    2019 年 12 巻 2 号 p. 27-34
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究では、重度下肢障害の子どもを持つ母親と3回のカウンセリングセッションの経過及び、終了後4週間後に実施したクライアントの評価インタビューを検討した。3回で、母親の主訴(1.激しい兄弟喧嘩への強い不安感、2.具体的対処法について)は解消した。そして、子ども達への新たな想いをクライアント自身が実感することができた。本事例のカウンセリングの経過について、Gendlinの「体験過程の推進」から考察した。カウンセリングは、第1回は、現在の直面する心配から心理的距離をとることができた(Gendlinの言う「クリアリング・ア・スペース」)。第2回はクライアント自身のフェルトセンスの形成とそれに触れることであった。第3回では、長男の気持ちを察してやることに気づき、重度障害を持っている次男の「予想外のたくましさ」を発見することができた。カウンセリング終了後に行った「クライアントによる評価インタビュー」からは、カウンセラーの体験的傾聴が効果的であったことが語られた。カウンセリング事例とクライアントの評価インタビューを検討することで、「体験過程の推進」を確認する事ができた。本事例では、フォーカシング指向カウンセリングは母親カウンセリングの方法として有効であることが示された。

     加えて、児童発達支援センターにおける保護者支援では、専門職相互の連携(「信頼関係の引き継ぎ」と「安心できる時間と空間の設定」)が重要であった。

資料
  • ―教育課程別の特徴―
    藤田 あけみ, 橋本 美亜, 多喜代 健吾, 北宮 千秋, 三國 裕子, 西沢 義子, 川添 郁夫, 三上 みどり, 市川 美子
    原稿種別: 資料
    2019 年 12 巻 2 号 p. 35-44
    発行日: 2019年
    公開日: 2021/11/30
    ジャーナル フリー

     本研究の目的は、教育課程別看護学生の臨地実習における家族の学びの特徴を明らかにし、家族看護における教授方法について検討することである。対象者は、A県内の7校の看護師養成校の学生274人であった。方法は、臨地実習終了後に、家族の学びで印象に残っていることについて無記名自記式質問紙調査を行った。学びの自由記述の分析は、3年課程、2年課程の2群についてテキストマイニングで分析した。結果、3年課程の学びは「家族」と「患者」を中心に、その周辺に「支え」や「看護」「つながる」「受け持つ」の単語が位置付けられ、2年課程の学びは「家族」の周辺には「支え」や「看護」「疾患」「入院」が位置付けられ、「患者」の周辺には、「支える」「闘病」「余儀ない」という単語が位置付けられていた。特徴的な単語として、3年課程は「一人」「頼れる」「心強い」などがあげられ、2年課程は「自分自身」「余儀ない」「協力」が挙げられた。家族看護の教授法への提案として、これまでの教育に加え、3年課程では家族のセルフケア力を最大限に引き出せるような看護介入に関する教育、2年課程では家族と患者をシステムとしてとらえられるような教育が必要と考える。さらに臨地実習を通して、患者の家族の看護を考えることが患者の看護につながることを経験できるよう教育する必要があると考える。

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