日本家庭科教育学会誌
Online ISSN : 2424-1938
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46 巻, 2 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 田中 陽子
    原稿種別: 本文
    2003 年 46 巻 2 号 p. 103-113
    発行日: 2003/07/01
    公開日: 2017/11/22
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    The aim of this paper is to consider how Taisho Free Education had an influence on the dressmaking teaching methods in elementary schools. The results were as follows. 1. Under the influence of Free Education in the Taisho Era, teachers were conscious of their role as a director for learners, and were aware of spontaneous study. 2. Education placing importance on a definition of personality was reflected and was considered as a issue relating to teaching methods. In the couese of teaching, personality was considered as an individual difference ; therefore, it was necessary for teachers to deal with individual differences cauesed by ability and attitude. 3. Creative and spontaneous learning, which were adapted in free production was not transferred to obtain practical skills and the reason why teaching methods in free production was an issue was that there was no established teaching method for self-directed learning. 4. Skillful needlework was considred important to build character and was recognized as self-directed learning.
  • 野田 知子, 大竹 美登利
    原稿種別: 本文
    2003 年 46 巻 2 号 p. 114-125
    発行日: 2003/07/01
    公開日: 2017/11/22
    ジャーナル オープンアクセス
    中学生を対象に,「食べ物に感謝し,食べ物を大切にする」食意識・食行動と生産体験の有無とのかかわりを知るために,アンケート調査をおこなった。調査は,漁業地域・農業地域・都市農業体験あり・都市農業体験なしの4グループを設定して行い,分析した結果,次のことがわかった。1)居住地域は生産体験の有無に影響を及ぼし,栽培体験が農業地域で,釣り体験が漁業地域で,飼育体験が農業地域で多くなっていたが,居住地域によって食行動や食意識の違いは少なかった。2)食べ物を大切にする意識や行動には,穀物や野菜などの作物を育む栽培体験が影響を及ぼしていた。3)「食べ物のいのちに対する認識」は,魚をおろす体験や動物の飼育・解体体験によって育成される可能性があることが示唆された。4)「食べ物のいのちに対する認識」をもつ生徒の方が,食べ物を捨てたりせずに大切にする行動をする生徒が多かった。5)栽培・動物の解体などの生産体験は,意図的な学びと結びつくことによって,食べ物のいのちに対する認識を促す傾向があった。6)加工度の低い食べ物にいのちを感じており,また穀物や野菜の栽培、肉の調理、魚をおろすなどの体験をとおして,いのちをより強く感じる傾向があった。以上から,食べ物に感謝し大切にする意識を育むためには、栽培,飼育,解体,加工度が低く原材料に近い食品の加工や調理などの生産体験をとおして,「食べ物はいのちである」という認識を形成することが大切であると考える。したがって,こうした学びを家庭科の授業に取り入れることが必要であると考える。
  • 長沢 由喜子
    原稿種別: 本文
    2003 年 46 巻 2 号 p. 126-135
    発行日: 2003/07/01
    公開日: 2017/11/22
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    本報告は,家庭科の学習意欲喚起の過程において媒介となって学習意欲の拡大とかかわる「役立ち感」に着目し,役立ち感をより詳細にとらえ,役立ち感と楽しさとの関係を明らかにすることを目的とし,高等学校の調理実習をとおして生徒の意識分析を試みたものである。分析結果は以下に要約される。1.調理実習前は生徒の90%以上が調理実習の役立ち感を肯定的にとらえており,調理実習後は80%以上の生徒に役立ち感に関する意識変容がみられた。意識変容は「応用・実践意欲」および「知識・作り方」に関連する項目群を軸として意識が具体化する形で認められた。2.実習後の役立ち感は体験的成長あるいは知的成長の自己認識としての役立ち感と将来への役立ち期待としての条件的役立ち感に分類された。3.体験的成長の自己認識としての役立ち感である「自分自身の可能性の拡大の実感」は,他の役立ち感とは異なる楽しさ感をもたらしていた。このプロセスを役立ち感の質が楽しさの量を規制する「役立ち感と楽しさの相乗効果」としてとらえることができた。また,調理実習では快さの体験としての「おいしさ」が前提にあり,体験的な学びとしての役立ち感の質が「おいしさ」と同列の楽しさとは異なる楽しさを相乗的に増大させていく過程をとらえることができたと考える。しかしながら,本調査の対象校は進学校であることから,調理実習を1時間の枠の中で実施しており,グループ作業による「協力できた喜び」をとらえることはできなかった。すなわち,協力できた喜びを獲得するためには,ある程度の時間を確保する必要があり,その意味では調理実習の役立ち感を全てとらえたとは言い難い。その点は今後の課題として残されている。また,本報告では学習意欲の喚起は取り上げないが,体験的成長の自己認識としての役立ち感がもたらす楽しさは,「もっと〜を学びたい」とする学習意欲喚起のレベルに少なからずかかわっていると推測される。家庭科学習全般を通して,「役立ち感と楽しさの相乗効果」を巧みに組み込むことが,生活主体者としての自立認知につながる役立ち感を培う上で効果的であると考える。今後さらに,経験的成長の自己認識を促すと同時に,より質の高い楽しさをもたらす家庭科授業のあり方を課題とし,授業研究を重ねたいと考える。
  • 石井 克枝, 武田 紀久子, 小西 史子, 河村 美穂, 武藤 八恵子, 川嶋 かほる
    原稿種別: 本文
    2003 年 46 巻 2 号 p. 136-145
    発行日: 2003/07/01
    公開日: 2017/11/22
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    中学校・高校の調理実習における発話記録とビデオ観察により。,生徒の参加行動状況,疑問の解決のし方,題材別の調理知識・技能技術の習得状況の実態,教師のかかわり方を考察し,共同的な学びの視点から教師の指導の方向性を検討した。1.調理実習への参加は実際に調理をおこなう行動と観察・相談する行動とその他があり,その割合はリーダー格の存在によって影響を受けていた。グループ内のリーダーの存在は実習行動に偏りが生じていた。また一方で,生徒の調理上の疑問を解決することに役立っていた。この2面性の機能を教師はふまえてグループを構成することが必要となる。すなわち共同的な学びを進めるためには強いリーダー的役割を設定しない方がよい。2.生徒間の相談によって調理の知識・技能技術の習得がおこなわれていた。生徒が調理実習で疑問をもつことや,技能技術の要点が話し合われるための教師の働きかけが必要となる。疑問が全くでないような綿密な教師による説明,示範,役割分担はグループ員の共同性を低くする要因になることが示唆される。3.でき上がりの状況がわかりにくい調理操作に関しては,作業の混乱を起こさないための指導が必要である。指導には発達段階や生活経験や操作状況によって,生徒自身で解決させるものと教師による示範が必要なものとが存在し,それを分別する判断が教師に求められる。また,中学生や高校生にとってプリントによるだけの伝達には限界がある。4.生徒同士の相談だけでは習得させたい重要なことがらが脱落することがある。普遍化する力をつけるためには調理科学を取り入れた指導と疑問をもつような働きかけが必要である,その指導のし方が検討課題となる。5.共同性を高めるためにはひとりでおこなわれやすい調理操作に関してはあらかじめ共同共有させる指導が必要である。6.実習中の教師の机間指導にはタイミングと支持のし方が重要であり,タイミングについてはどこで生徒がつまずくか見通すことが必要となり,支持のし方として思考を促す言葉かけや評価が必要とされる。本研究の結果から,調理実習における知識・技能技術の習得について,生徒の共同的な学びをつくるには教師の意図的な手立てが必要であり,共同性を高めるために教師の指導のあり方が重要であることが明らかとなった。そして,生徒の共同的な学びを通して調理知識・技能技術の習得を高めるには,共同性と指導の方法との関係性を明確に把握しなければならないと考える。
  • 武藤 八恵子, 武田 紀久子, 河村 美穂, 川嶋 かほる, 小西 史子, 石井 克枝
    原稿種別: 本文
    2003 年 46 巻 2 号 p. 146-155
    発行日: 2003/07/01
    公開日: 2017/11/22
    ジャーナル オープンアクセス
    調理実習における学習目標の実態調査によると,多くの教師が目標として「協力して仕事をすすめる大切さを知る」をあげている。この協力を作り出す社会的な人間関係であるコミュニケーションの状況をとらえ,そのかわりがどのように作り出されて,共同的な学びがおこなわれるかを追求することを目的とした。2人の教師による4事例の実習中の会話を採録し,プロトコル分析によって考察した。1.調理実習中の生徒の発話カテゴリーは,以下に分類された。ア)指示 イ)質問 ウ)確認の質問 エ)要請を含めた質問 オ)応答 カ)広がり キ)評価・反省 ク)つぶやき・ためらい ケ)切り出し コ)その他 2.本事例の生徒同士のコミュニケーションには以下の要件がかかわっていた。(1)発話(語数)の多さ(2)要請や励ましの発話数の多さ(3)質問や要請に応える返答率の多さ(4)評価の共有行動(5)グループ員の対話の偏りや孤立のないこと3.これらの要件が成立するためには次のような指導が考えられる。a)リーダーの指示が応答を少なくする傾向がみられることから,リーダー役割はコミュニケーションを育てるという点では問題があるということを認識して指導を行う。b)質問,特に確認や要請の発話をきっかけとして,対話がつくられるので,綿密な役割分担や細部にわたる説明は生徒同士の会話が起こりにくくなることを認識して指導をおこなう。c)つぶやき,質問,要請,確認の発話へのすみやかな応答,励まし・いたわりには共感が基盤となっていることから,グループ員の共同体としても意識の形成を図る指導をおこなう。d)評価の共有行動がコミュニケーションを高めるだけでなく,自己肯定関係性にも有効であることから,評価の共有の場を設定する。
  • 小高 さほみ
    原稿種別: 本文
    2003 年 46 巻 2 号 p. 156-162
    発行日: 2003/07/01
    公開日: 2017/11/22
    ジャーナル オープンアクセス
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