近年の教育改革による授業時数の削減と教育内容の厳選は,実践的・体験的学習を特徴とする家庭科の学習活動と育成する能力に大きな影響を及ぼしつつある。限られた時数の中で学習効果を挙げるために,家庭科の教科内容構成を見直すことも必要であり,その一視点としてトピック学習に焦点を当て,その特徴を明らかにした。英国の家庭科におけるトピック学習について説いたHome Economics Investigationsを手がかりに,トピック学習の実際を理解するとともに,トピックの内容と我が国の高等学校家庭科教科書の記述内容との比較を試み,我が国教科書の特徴を確認した。また,具体的なトピックに関して教職課程を履修する大学3年生の認知のプロセスと対象を把握するためスパイダー・ダイヤグラムを作成し,それを北陸地区のカリキュラム案に当てはめ,学生の認知枠組みの傾向を明らかにした。さらに,分析資料のサブ・トピック全20例の学習内容と学習活動を分析し,それをカリキュラム案の内容領域と照合し,対応関係を検討した。その結果,次の諸点をトピック学習の特徴として確認することができた。(1)トピックは学習者の日常生活に密着しており,主体的で柔軟な学習活動の組み立てを可能にする。(2)学習活動は,教室から地域へ,社会的な関心へと対象を拡大し,学習者の認識の高次化・相対化が図られる。学習の順次性を遮断するような制限は見当たらない。(3)一方で,そうしたトピック学習の醍醐味が短所にもなる。つまり,学習者の事実認識や問題意識など切り口の偏りから認識対象の範囲とレベルに差が生じる。それを最小限に抑え,一定レベル以上の目標への到達を保障していくことが必要とされる。トピック学習の長所と短所は表裏一体をなしており,トピックの開発は学問的水準を保持し,体系的な認識を保障する教科の構造化と一体化して進められることが望ましい。
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