日本助産学会誌
Online ISSN : 1882-4307
Print ISSN : 0917-6357
22 巻 , 2 号
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原著
  • 藏本 直子
    2008 年 22 巻 2 号 p. 124-135
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    目 的
     本研究の目的は,母親の出産に参加した際に子ども自身の中に芽生えた意識や感情の様相を明らかにし,子どもにとっての出産体験の持つ意味を探究することである。
    対象と方法
     助産院または自宅で第2子及び第3子を出産した経産婦とその子ども8組を対象に,分娩第1期から第4期までの母子相互作用について参加観察法によりデータを収集した。また,産褥早期に出産場面で観察したことを母に対して半構造化面接で確認した。得られた有意な場面から現象を解釈した後,カテゴリーの抽出を行った。そして,場面毎に類似性と相違性を比較しながら,現象のパターンを整理し,子どもの出産体験の意味を引き出した。
    結 果
     母親の出産に立ち会った子どもの体験は,1) さまざまな感情のゆらぎを引き起こす体験,2) 生・性への豊かな感性をはぐくむ体験,3) 出産への参加から思いやりを高める体験,4) 自我を脅かすストレスフルな体験,5) 親密な他者の存在を実感する体験,6) 母子の関係性をゆるがされる危機体験,7) 新たなきょうだい関係を構築する体験であった。カテゴリーは,子ども自身の内面に由来する「内なる自我を育てる体験」と他者との関係性の中で生じた「他者との関係性を確認する体験」の2つに大別された。
    結 論
     出産は子どもの好奇心を湧き立たせ,いのちへの興味やつながりを感じさせる体験であったが,子どものこころを脅かす危機的要素も孕んでいた。子どもがこの体験を乗り越え,価値のある成長体験とするためには,子どもを支える家族の役割や助産師の援助が重要である。
  • 村上 明美, 喜多 里己, 神谷 桂
    2008 年 22 巻 2 号 p. 136-145
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    目 的
     本研究は,産後1日目の母親に対して提供する癒しケアが,産後の疲労や母乳育児に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。
    対象と方法
     準実験的研究デザインで,産褥早期の母親の産後の疲労と母乳育児について癒しケアによる介入効果を検討した。
     対象は,正常な分娩経過をたどった産後1日目の母親153名であり,癒しケアを行う介入群80名と従来通りのケアを行うコントロール群73名に便宜的に割りつけた。
     産後の疲労は,疲労蓄積度自己診断チェックリストの得点,エジンバラ産後うつ病評価尺度の得点,自覚的睡眠時間を指標とし,母乳育児は,入院中の授乳回数,入院中の直接授乳困難の有無,退院時および産後1か月時の栄養法を指標とした。
    結 果
     実施した癒しケアは,産後の疲労に対する効果として母親の疲労蓄積度自己診断チェックリストの得点,およびEPDSの得点の上昇を抑える可能性が示唆された。また,母乳育児に対する効果として入院中に直接授乳が困難となる状況を生じにくくする可能性が示唆された。しかし,癒しケアの効果を検証するには不十分であった。
    結 論
     今回は,「産後1日目の母親に対して癒しケアを提供することが,産後の疲労を軽減し,母乳育児を促進する」という仮説の検証には至らなかった。
  • 菱沼 由梨
    2008 年 22 巻 2 号 p. 146-157
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    目 的
     分娩介助の指導を行う臨床の助産師(以下,指導者)が,学生に期待する学びを明らかにすることである。
    対象と方法
     対象は,分娩介助初期(1~3例目)の指導を行った指導者8名である。データ収集には,まず「振り返り」場面を直接観察し,その後数日以内に指導者へ半構造化面接を行った。得られたデータを逐語録に起こし,面接内容を主として質的記述的に分析を行った。面接内容をより深く理解するために,「振り返り」場面から得られたデータを補完的に用いた。
    結 果
     指導者が分娩介助初期の学生(=以下,学生)に期待する学びとして,【分娩介助例数に応じた成長】,【臨床家としての態度や感性の形成】,【臨床の場に即した現実的な学びのあり方】,【「振り返り」を生かした経験の積み重ね】,【助産師になることが最終目標】,という5つのカテゴリーを見出すことができた。これらの関係性を解釈・検討した結果,指導者が学生に期待する学びは以下のように構造化された。
     指導者は,学生が【臨床の場に即した現実的な学びのあり方】の実践を通して,【分娩介助例数に応じた成長】と【臨床家としての態度や感性の形成】を遂げていくことを期待していた。また指導者は,実習における学生の学びの基盤には,【「振り返り」を生かした経験の積み重ね】があること,さらに,分娩介助とその「振り返り」を繰り返すことで,学生の学びが【助産師になることが最終目標】へと方向づけられていくことを期待していた。
    結 論
     指導者は分娩介助初期の指導を行いながら,学生が分娩介助例数に応じて成長を遂げていくこと,臨床家としての態度や感性を形成させていくことを期待し,さらにこうした段階的な成長の過程が,臨床の場に即した現実的な学びの実践と,事例ごとの「振り返り」を繰り返していくことによって押し進められることを期待していた。さらに指導者は,指導者との「振り返り」を繰り返すことで,学生の学びが,助産師になるという最終目標へと方向づけられていくことを期待していた。
  • 片岡 弥恵子, 須藤 宏恵, 永森 久美子, 堀内 成子
    2008 年 22 巻 2 号 p. 158-169
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    目 的
     研究目的は,性の健康クラスに参加した母親のクラス前後の気持ちおよび行動について記述することで,クラスに参加した母親と子どもおよび家族にどのような変化があったかを明らかにすることである。
    対象と方法
     研究デザインは,質的記述的研究であった。クラスに参加予定の母親10名を対象に,クラス前と終了後の2回,半構成的インタビュー法によりデータを収集した。データからクラス前後の変化ととらえられた部分を抽出し,コード化しカテゴリーに分類した。
    結 果
     母親の語りは,性教育の第一歩,新しい家族を迎えること,家族で迎える出産に分類された。性教育の第一歩として,クラス前の母親は,子どもへの【性に関する正しい知識の伝授】を望んでいたが,性について【どこまで話したらよいかという悩み】を持ち,【子どもに理解しやすい方法の探求】を試みていた。クラス後には,【性について子どもに伝えていく自信】を高め,【子どもの理解への手ごたえ】を得ていた。同時に,自分自身の受けた性教育について振り返り【母親自身が受けた性教育への疑問】を感じていた。新しい家族を迎えることについては,クラス前【上の子どもへの対応の難しさ】を感じ【無理のない弟妹の受入れ】を望んでいた母親は,クラス後に【赤ちゃん返りを受止める】,【子どもの成長の実感】を得ていた。家族で迎える出産に関することでは,【家族で迎える出産への期待】から【子ども立会い出産の準備】がクラスを受ける動機になっており,クラス後は【家族で共有知識を持つ心強さ】を持ち,クラスは【今回の出産に向き合う】契機になっていた。
    結 論
     上の子どもや家族で迎える出産に向けての母親の気持ちは,クラスの前後で肯定的に変化していたことがわかった。これは,クラスの影響と推測することができる。対象者を増やし,家族への長期的な影響を踏まえてクラスの効果を明らかにすることが今後の課題である。
  • 下見 千恵, 田丸 政男, 竹中 和子, 田中 義人
    2008 年 22 巻 2 号 p. 170-179
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    目 的
     局所免疫である唾液中の分泌型IgA(sIgA)は,ストレスにより変動することが知られている。先行研究では運動負荷やメンタルストレスによりsIgAが変動することが報告されているが,妊産褥婦を対象としたデータは少ない。本研究では妊娠期から産褥期の母の唾液中sIgA濃度について,縦断的な基礎データを得て,帝王切開分娩と経腟分娩のストレス状態を比較することを目的とした。
    方 法
     健康な妊婦61名(予定帝王切開が決定しているのは19名,経腟分娩に至ったのは42名)を対象とし,sIgA濃度をenzyme immunoassay法で定量した。妊娠期,分娩直後,産褥期の3回唾液採取し,同時期にProfile of Moods States(POMS)を対象に記載してもらった。また,身体的因子として年齢,分娩既往,分娩所要時間,出血量や分娩週数等を調査した。
    結 果
     唾液中sIgA濃度は個人差が大きく,妊娠期分娩直後産褥期の各期の値はやや強い正の相関を認めた(P<.01)。 経腟分娩事例では妊娠期と分娩直後では変化がなく,産褥期において増加した(P<.01)。しかし, 帝王切開事例では分娩直後のsIgAは産褥期と妊娠期より有意に高かった(P<.0001)。 分娩既往や分娩所要時間,分娩時出血量,年齢,分娩週数等の身体的因子による唾液中sIgA濃度の差は,殆どなかった。 POMS得点は,妊娠期,分娩直後,産褥期で変化したが,唾液中sIgA濃度とは関連がなかった。
    結 論
     妊産褥婦の唾液sIgA濃度は,分娩様式によってその動態が異なることが明らかになった。分娩直後において,帝王切開分娩のほうが経腟分娩よりストレスが高いことが推測された。しかしながら,経腟分娩に比べると帝王切開分娩のsIgA濃度は著しく高かったことから,ストレスだけでなく麻酔などの他の変数が影響した可能性もある。妊産褥婦の時期には,そのストレス評価について特に分娩様式などの要因を考慮する必要がある。
  • 新川 治子, 島田 三恵子, 藤田 照美
    2008 年 22 巻 2 号 p. 180-188
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    目 的
     睡眠は正常な妊娠経過や胎児の発育にとって重要である。そのため,妊娠初期の妊婦に適切なセルフケアのための知識や助言を提供することが必要である。そこで,本研究は妊娠初期の睡眠や眠気のパターンを明らかにすることを目的とする。また,それらとストレスなどの要因との関係を明らかにすることを目的とする。
    方 法
     広島県内の2病院の産婦人科外来で妊婦健康診査を受けている妊婦46名から自記式質問紙を回収した。調査期間は2007年4月から2008年1月までである。質問紙は,ピッツバーグ睡眠調査票(PSQI),エップワース眠気尺度(ESS),睡眠日誌,及び知覚されたストレス尺度より構成した。
    結 果
     PSQI合計得点(PSQIG)は平均6.67(±3.20)であり,65.2%の妊婦がCut off値以上であった。PSQIGはストレスの高い妊婦で有意に高かった(r=0.38, n=46, p<0.01)。PSQIGと就床時刻の規則性には有意な正の相関があり(r=0.40, n=46, p<0.01),規則正しく就床している者ではPSQIG得点が低くなっていた。平均ESS得点は10.1(±4.3)で,50%の妊婦が11点以上であった。また,ESS得点は経産婦よりも初産婦で高かく(un-paired t (44)=2.52, p<0.05),子どもの人数が多いほど得点が低かった(r=0.32, n=46, p<0.05)。眠気時間や昼寝の長さは初経産別で差がなかった。仕事の有無により昼寝時間に差は見られたが(un-paired t (27)=2.27, p<0.05),眠気時間との間には差がなかった。
    結 論
     本研究により,妊娠初期には同世代の一般女性と比べて,睡眠の質が悪い人や日中に過度の眠気を感じている人が著しく多いことが明らかとなった。また,睡眠の質はストレスのコントロールや,規則正しい就床により高めることができることが示唆された。
  • 乾 つぶら, 島田 三恵子, 早瀬 麻子, 緒方 敏子, 時本 秋江, 保条 麻紀, 新川 治子
    2008 年 22 巻 2 号 p. 189-197
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    目 的
     妊娠末期から産後4ヶ月の母親の睡眠覚醒リズムの特徴と変化を明らかにする。
    対象と方法
     同意を得た妊娠末期の妊婦57名を対象とし,このうち追跡調査できた産後1ヶ月47名,産後4ヶ月34名に縦断調査を行った。睡眠表に一日の睡眠と覚醒を30分毎に連続1週間の記録を依頼し,郵送法で回収した。夜間・昼間・総睡眠時間,最長睡眠時間とその開始時刻及び終了時刻,昼睡眠・総睡眠回数,中途覚醒時間とその回数,及び睡眠覚醒のリズム周期を検討した。
    結 果
     総睡眠時間は妊娠末期7.79時間,産後1ヶ月6.73時間,産後4ヶ月6.91時間であり,夜睡眠時間は各々6.75時間,5.85時間,6.36時間であり,最長睡眠時間は6.39時間,3.46時間,4.13時間であり,いずれも時期による変動があった(p<0.001)。産後,これらの睡眠時間は妊娠末期よりも短縮した(p<0.01~0.001)。夜間の中途覚醒時間は妊娠末期0.42時間,産後1ヶ月1.70時間,産後4ヶ月1.14時間であり,中途覚醒回数は各々0.3回,1.7回,1.5回であり,いずれも時期による変動があった(p<0.001)。産後,中途覚醒は妊娠末期よりも増加した(p<0.001)。妊娠末期から産後4ヶ月は睡眠が分断されても,最長睡眠は0:22から6:50の時間帯にあり,睡眠覚醒のリズム周期は24.04~24.08時間であった。妊娠末期と産後4ヶ月では,最長睡眠時間とその入眠時刻との負の相関(p<0.001~0.05)がみられた。いずれの時期も入眠時刻と夜睡眠時間との負の相関があった(p<0.01~0.001)。
    結 論
     妊娠末期から産後4ヶ月にかけて,総睡眠時間,夜間睡眠時間,および最長睡眠時間が減少し,夜間の中途覚醒が増加しても,最長睡眠時間は夜間にあり,睡眠覚醒のリズム周期は約24時間であることが明らかになった。また,妊娠末期と産後4ヶ月では最長睡眠の入眠時刻が早いほど最長睡眠時間は長いことが明らかにされた。
  • 田所 由利子
    2008 年 22 巻 2 号 p. 198-207
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    目 的
     本研究の目的は産科診療所に勤務する助産師,看護師,准看護師が就業を継続できる要因を明らかにすることである。
    対象と方法
     郵送法による自己記入式質問紙を用いた横断的量的記述研究である。対象は分娩の取り扱いのある136の産科有床診療所に勤務する看護職1,632人である。就業継続意志と職務満足,職場の要因についてのデータを収集し就業継続意志との関連について検討した。
    結 果
     有効回答は122の診療所に勤務する看護職1,037人(有効回収率63.5%,助産師334人,看護師282人,准看護師421人)であった。就業継続意志のある者の割合は各職種とも80%以上と高率であった。職務満足度尺度の合計点数は各職種とも就業継続意志ありの者は就業継続意志なしの者と比べて合計点数が有意に高かった。各職種において,就業継続意志があることと「生活との両立」に満足していることとの有意な関連が認められ,そのオッズ比は2.2~2.7倍であった。助産師,准看護師においては医師と看護職の関係・専門職としての自律・看護管理の内容から構成されている「看護職の尊重」に満足していることと就業継続意志があることとの有意な関連が認められ,そのオッズ比は助産師4.5倍,准看護師3.8倍と,特に助産師において高値であった。看護職全体では他に「助産師が複数いる診療所」に勤務していること,「仕事の意義」に満足していることと就業継続意志があることとの有意な関連が認められた。
    結 論
     産科診療所に勤務する看護職の就業継続意志に関連する職場要因として,「生活との両立」が行え,「看護職が尊重」され,「仕事の意義」を感じられる職場,「助産師が複数いる」職場であること,助産師においては特に「看護職の尊重」が重要であることが示された。
  • 中田 かおり
    2008 年 22 巻 2 号 p. 208-221
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    目 的
     妊娠前から出産後2~3年の期間において,母乳育児継続を可能にする要因とアウトカムとしての母乳育児のセルフ・エフィカシーについて探索することを目的とした。
    対象と方法
     2~3歳の子どもがいる母親を対象に質問紙調査を行った。測定用具は,母乳育児継続に関する自作の質問紙,日本語版Breastfeeding Personal Efficacy Beliefs Inventoryおよび一般性セルフ・エフィカシー尺度である。質問紙は1103部郵送し,回収した424名のうち404名を分析対象とした。分析にはSPSS 15.0J for Windows版を用いた(p<.05)。
    結 果
     母乳育児期間は平均1年4か月(±10か月)で,最頻値1年,最大値4年3か月であった。母乳育児の継続には,出産直後と入院中のケアである次の6つとの関連が認められた。(1)母子同室を24時間までに行う(p=.000),(2)糖水・ミルクの補足をしない(p=.000),(3)母乳分泌を保証された経験がある(p=.000),(4)夜間授乳を出産当日に開始する(p=.002),(5)早期接触を20分以上行う(p=.006),(6)初回授乳を出産後30分までに行う(p=.009)。退院後の状況で関連していた要因は(1)母乳不足感がないこと(p=.000),(2)助産師の援助を受けたこと(p=.000)の2つであった。また,「母乳不足感に対する助産師の援助」,「母乳分泌を保証する母親への関わり」は母乳育児期間を有意に延長していた。母乳育児継続期間と母乳育児のセルフ・エフィカシーには正の相関があった(r=.392, p<.01)。母乳育児のセルフ・エフィカシーの影響要因として「成功体験」,「言語的説得」,「生理的・情動的状態」との関連が認められた。
    結 論
     出産直後と入院中のケアは,母乳育児期間を決定づける大きな要因であった。母乳不足感に対する助産師援助,母乳分泌の保証を与えるケアの重要性が示唆された。母乳育児継続期間と母乳育児のセルフ・エフィカシーには関連が認められた。
  • 盛山 幸子, 島田 三惠子
    2008 年 22 巻 2 号 p. 222-232
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    目 的
     妊娠先行結婚をした夫婦の特性を明らかにし,妊娠先行結婚と,妊娠期における母親の対児感情,母親役割獲得,及び夫婦関係との関連を明らかにする。
    対象と方法
     調査の同意を得られた妊娠末期の母親198名(有効回答率67.1%)とその夫173名(有効回答率58.6%)を対象とした。妊婦健診に来所した初産婦に調査票を配布し,留置法あるいは郵送法で回収した。調査項目は対象の属性及び背景等,対児感情,母親役割行動,夫婦関係である。
    結 果
     妊娠先行群の母親は41名(20.7%),そのうち25歳未満は21名であった。妊娠先行群の母親(p<0.001)とその夫(p<0.01)の年齢は結婚後妊娠群よりも若く,学歴は中学卒業・高校中退者が多かった(p<0.01)。妊娠先行群の母親の結婚の契機は7割が「妊娠したため」,5割が「もともと結婚予定だった」。妊娠先行群の母親の児への接近感情は28.3±8.1点で結婚後妊娠群との差は認められなかった。しかし,25歳未満の妊娠先行群では児への愛着的な感情は有意に低かった(p<0.05)。児への回避感情は妊娠先行群の方が低かった(p<0.05)。母親役割行動の合計得点は結婚後妊娠群との差はなかったが,「規則正しい生活」(p<0.05),「母親学級等への積極的な参加」(p<0.05)は妊娠先行群の方が少なかった。25歳未満の妊娠先行群の母親は「児のことを考えると嬉しい」気持ち(p<0.05)や「児に話しかける」(p<0.01)ことが少なかった。妊娠先行群の夫婦の愛情は結婚後妊娠群との差は認められなかった。しかし,25歳未満の妊娠先行群の母親の夫への愛情は52.7±12.0点で結婚後妊娠群の母親よりも低かった(p<0.05)。
    結 論
     妊娠先行群の母親の児への接近感情や母親役割行動は結婚後妊娠群との差がなかった。妊娠先行群の母親の児への回避感情は結婚後妊娠の母親よりも低かった。妊娠先行群の夫婦の愛情は結婚後妊娠群との差がなかった。しかし,25歳未満の妊娠先行群の母親は児への愛着的感情や夫への愛情が低かった。
  • シェリル 大久保, 山海 千保子, 柳沢 初美, 加納 尚美
    2008 年 22 巻 2 号 p. 233-248
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
     本研究は,弟妹の誕生に立ち会うことがその子どもにどういった影響を及ぼすかを明らかにしようと試みている。妻の出産に立ち会った場合,男性には概ね肯定的な影響が見られることは先行研究からわかっているが,出産立会いが子どもに及ぼす影響に関してはまだほとんど研究されていない。しかし,近年,家族全員が出産に立ち会うケースが増えていることを鑑みると,根拠のない奨励を避けるためにも,出産立会いが子どもに及ぼす影響を評価することが必要である。
     本研究では,言葉と比較してイメージのほうが,子どもにとってより自由に考えや思いを表現しやすいことから,描画を用いて出産立会いが子どもに及ぼす影響を評価した。描画は,2歳から12歳の子ども24人に,出産立会い前,立会い中,立会い後の3回,描いてもらった。回収した描画は,全体的な傾向,ケーススタディという2つの観点から分析した。
    I 全体的には,描画からトラウマあるいはショックの兆候は見られなかった。2ヶ月に渡る調査期間,子もどの描き方には,出産立会い前,中,後と回を追う毎に細部まで描くようになる,どの回も描き方がほぼ一定,回を追う毎に整然さを欠く,の3つのパターンあるいは傾向が見られた。24人中半数で,弟妹誕生後の描画に進歩が見られた。8人には,全期間を通して大きな変化は見られなかった。残り4人には,立会い後の描き方に,乱雑,後退などの変化が見られた。しかし,この4人も出産立会いからは肯定的な影響を受けていた。
    II ケーススタディでは,母親の難産に立ち会ったことで否定的な影響を受けた様子の男児が描いた描画を詳細に分析した。描画からは,男児が最初に感じた不安,驚き,恐れなどが次第に形を変え,新たに家族の一員に加わった赤ちゃんと共存する道あるいは術を探すことへと向かったことがわかる。
     本研究結果から,出産立会い自体より家族間のサポートのほうが,子どもに対する影響という点で大きな要因となっていることがわかった。加えて,特に幼い子どもや男児には,実際かなりの痛みに耐える母親を目の当たりにすることで,否定的な感情を持つ傾向があることもわかった。このことから,子どもが出産に立ち会う際には,前もって出産の実際について十分準備してやることが必要であり,出産にかかわる誰にとっても肯定的な経験になるよう計らうべきである。
資料
  • 灘 久代, 狩野 鈴子
    2008 年 22 巻 2 号 p. 249-259
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/05/20
    ジャーナル フリー
    目 的
     島根県における助産師教育の歴史を辿り,その変遷を明らかにしながら,産科医不在・不足問題の渦中にある助産師の取り組むべき課題を見出す。
    対象者と方法
     島根県の助産師教育に関係した機関や関係者に聞き取り調査を行うと共に,資料や文献から経時的にまとめた。
    結 果
     島根県の助産師教育は,明治24年「私立松江産婆養成所」として開校し,時代の流れのなかで何度も名称を変えながら昭和28年まで続いた。新制度により一時,中断したが,昭和57年,助産師らの要請を受け再び助産師教育が開始され,現在に至っているが,施設内外における助産師数の充足には至っていない。
    結 論
     時代が大きく様変わりする中で,お産・助産師教育,そして助産師のおかれている状況も変化する。今,産科医不足の中で,妊産婦が安心して子どもを産み育てられるために,また需要に応えるためにも助産師は,力量の形成と共に数の確保は必須であり,そのための職能団体・国の支援は重要である。
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