日本助産学会誌
Online ISSN : 1882-4307
Print ISSN : 0917-6357
26 巻 , 1 号
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原著
  • 小黒 道子
    原稿種別: 原著
    2012 年 26 巻 1 号 p. 4-15
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/31
    ジャーナル フリー
    目 的
     ミャンマー農村部において,参加型アプローチで育成された,地域母子保健向上を目指す女性保健ボランティアグループ(Women's Health Voluntary Group=WVG)メンバーに生じた変化を明らかにする。
    対象と方法
     WVGが育成されたミャンマーの2つの農村において,WVG21名,関係者8名,WVGの家族20名,村民25名の計74名に半構成的面接を行った。得られたデータを日本語に翻訳し,質的帰納的に分析した。
    結 果
     WVGの変化を分析した結果,10のカテゴリと28のサブカテゴリが抽出された。WVGの変化は,【日常に活用可能な知識の獲得による行動の変化】を核とする,【知識の獲得から派生した意識の広がり】へと発展していた。変化の過程においては,【村落社会の機能活用】により変化をより合理的に推し進めていた。この変化の過程に直接影響を与えたのは,【家族の支援】と【カネの運用】,そして【モノの存在】であった。これら3点が変化の核となる“行動の変化”の脇を固めることで,はじめてその後の“意識の広がり”へと変化が発展していた。変化自体を支える基盤は,WVGの【参加への動機付け】と【宗教と文化に基づく思想】であった。変化の副次的効果として,【地域が醸し出す感謝の念】という地域の変化と【基礎保健職員との連携】という保健専門職の変化が現れていた。
    結 論
     ミャンマー農村部において女性が保健ボランティアとなり体験した変化は,何もわからない状態から健康に関する日常に活用可能な知識を経て,その伝達者としての役割を果たすことから生じる,行動の変化と意識の広がりであった。
  • 渋谷 えみ
    原稿種別: 原著
    2012 年 26 巻 1 号 p. 16-27
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/31
    ジャーナル フリー
    目 的
     出生前診断で胎児異常の診断を受けた母親に関わった助産師の体験から,倫理的ジレンマの構造を明らかにする。
    対象と方法
     倫理的配慮を行った上で,上記の体験を有する助産師8名に非構造化面接を行い「思い・感じ方・考え・考え方」の感情部分を抽出し,質的帰納的に分析した。
    結 果
     23の概念,6つのカテゴリーが抽出された。助産師は母親との関わりの中で,医療者間の板ばさみや,介入が困難な生殖医療を実感し【組織における助産師の立場を再確認】していた。さらに,経験の浅い助産師にとっては援助に自信が持てない上に自らの価値観,倫理観と対峙することになり【プライマリとして関わることの辛さ・困難さ】から,時には看護の限界も感じていた。しかし,人材不足や体制の問題による負担を抱えながらも【母親と親密に関わることのやりがい・充実感】が支えとなり,妊娠期からの関わりに意味を見出していた。また,家族のような視点から共感することもあり,感情レベルで子供の生命力に期待を寄せていた。妊娠期からの時間の共有は【潜在的価値観から障害児と対峙することの困難さ】として自らの価値観と向き合う機会となり,助産師に改めて【出生前診断の意味を考える機会】を与えていた。ジレンマを感じながらも母親との時間の共有は助産師としてのあり方を模索する機会となり【子供の死を共有しながら続く関係】の中で助産師としての自分自身を成長させる機会ともなっていた。
    結 論
     助産師は母親との関係を深める中で,出生前診断や障害児に対する自己の価値観と対峙する困難さ,そして女性として同性であるがゆえのジェンダー役割期待に関連したジレンマを体験していた。頼られる存在として得られる満足感から多忙業務を招き,ジレンマやバーンアウトに陥りやすい環境を自ら作り上げていた。また,生と死が隣接した生殖医療の職場環境では,感情規制を働かせ,倫理的感受性の閾値を自ら下げることが自己防衛の手段となっていた。しかし,これらの助産師が体験しているジレンマは組織の中では一個人の問題として対処されており,臨床でしか経験できない倫理課題については検討する場もなく悪循環を引き起こしていた。
  • 濱田 真由美
    原稿種別: 原著
    2012 年 26 巻 1 号 p. 28-39
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/31
    ジャーナル フリー
    目 的
     本研究は,妊娠後期の初妊婦に焦点を当て,授乳への意思に影響する社会規範を明らかにすることを目的とした。
    対象と方法
     初妊婦の授乳への意思に影響する社会規範のバリエーションを明らかにするために質的記述的研究デザインを用いて,東京都内の1総合周産期母子医療センターに通院する妊娠経過が正常な妊娠後期の初妊婦17名に対して1人につき1回の半構造化面接を行い,データを得て質的に分析した。
    結 果
     研究参加者は,全員が母乳で育てる意思を示し,「絶対母乳で育てたい」,「『絶対母乳で育てたい』と『できれば母乳で育てたい』の中間」,「できれば母乳で育てたい」という授乳への意思の違いを示した。そして初妊婦の授乳への意思に影響する社会規範は【「自然」志向】,【望ましい「母親」】,【責任ある「母親」】,【自己防衛する賢い「母親」】,【ミルクと「母親」に関する正当性の主張】,【「母親」がもつべき環境や情報の望ましさ】の6つのテーマから構成されていた。
    結 論
     本研究で示された初妊婦の授乳への意思に影響する社会規範は,母性イデオロギーや子どもの「健康」を守る責任ある望ましい「母親」を規定する社会規範と,それとは反対に母乳育児の失敗や育児ストレスへの危機感に対処したり,「母親」として逸脱していると見なされない為に正当化を行うことに価値をおく社会規範が示された。
  • 岩尾 侑充子, 斎藤 ひさ子
    原稿種別: 原著
    2012 年 26 巻 1 号 p. 40-48
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/31
    ジャーナル フリー
    目 的
     本研究の目的は,妊娠期の夫婦関係を明らかにし,夫婦関係に関連する要因を検討することである。
    方 法
     産婦人科外来で妊婦健診を受ける妊婦206組の夫婦の夫婦を対象とし,無記名自記式質問調査,妊娠期の夫婦関係は夫婦間調整テストを用い,身体的側面,心理的側面,社会的側面,経済的側面より夫婦関係に関連する要因を検証した。
    結 果
     妊娠期の夫婦関係は,夫婦間調整テストの結果から,73.3%の夫婦が良好な関係であると認識していた。この夫婦関係に関連する要因は,妊娠期の夫婦関係意識尺度について検討した結果, 「パートナーの受容」,「経済・生活の充実」,「夫の支援・信頼」,「良好な人間関係」,「出産・育児への期待」の5因子が関連していた。
    結 論
     妊娠期の良好な夫婦関係が育児期へ継続するために,夫婦間の信頼関係や充実した経済的側面が重要であることが示唆された。
  • 今村 美代子
    原稿種別: 原著
    2012 年 26 巻 1 号 p. 49-60
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/31
    ジャーナル フリー
    目 的
     死産または新生児死亡により子どもを亡くした父親が,妻の妊娠中から現在までにどのような体験をしてきたのかという語りを記述し,それを通して父親をより深く理解し,求められるケアの示唆を得ることである。
    対象と方法
     死産または新生児死亡で子どもを亡くした6名の父親を対象に半構成的面接を行い,現象学的研究方法を参考に質的記述的に分析した。
    結 果
     父親の体験は,以下の7つに分類された。1. 予期せぬ死に衝撃を受ける:子どもを突然に失ったという,驚きや混乱からもたらされた精神的衝撃,そして,その後に引き続く無力感,空虚感であった。2. 自分の悲しみをこらえ妻の心身を案じる:自分の悲しみよりも先に,心も身体も傷つけられたであろう妻の立場を気遣っていた。3. 辛さを隠し父親·夫としての役割を果たす:自分の辛さを押し隠し,子どもを送り出す為の諸々の手続きを引き受け,父親と夫の両方の役割を果たしていた。4. 社会に傷つけられながら生活を続ける:男性の備え持つ特性により,悲しみは内に抱え込まれたまま表出されず,更に子どもの死を嘆き悲しむことを認めない社会に傷つけられていた。5. 子どもの死因を知りたいと望む:子どもの死に対して何らかの意味付けを行い,死を受容してゆくきっかけとしていた。6. 父親として在り続ける:子どもが誕生する以前からその存在を愛しみ,子どもを亡くした後も父親として在ることに変わりなかった。7. 人間的な成長を遂げる:父親達は悲しみを抱えながらも「自分自身の力で乗り越えた」,死生観が変容した,人生観が変容した,自分の体験を他者に生かして「共有」したいと願った。
    結 論
     死産·新生児死亡によって子どもを亡くした父親は,予期せぬ我が子の死に大きな衝撃を受け,悲しみを押し隠しながらも父親と夫の役割を果たしていた。表面化されない悲しみは社会からも見過ごされ,時に父親自身も気付き得ないほどであったが,亡き子どもの存在を忘れることはなく,父親として在り続けることで人間的な成長を遂げていた。
  • 長田 知恵子, 堀内 成子
    原稿種別: 原著
    2012 年 26 巻 1 号 p. 61-71
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/31
    ジャーナル フリー
    目 的
     本研究の目的は,授乳期の母親を対象とする乳房の状態や乳汁の分泌状態を観るアセスメントツールを開発するにあたり,より臨床での有用性を高めるため,作成したツールの項目を精選することである。
    方 法
     既存研究(長田,2007)ならびに文献検討に基づき,本研究のアセスメントツールの原案を作成した。さらに母性・助産学領域の研究者および臨床で母乳育児支援に携わっている助産師らが内容妥当性および表面妥当性の検討を行い,追加修正した。母乳育児支援の経験年数が異なる助産師5名と乳房疾患の既往がない授乳期の母子45組,計90乳房を対象として調査した。
    結 果
     妥当性の検討として,構成概念妥当性は,主因子法・プロマックス回転による探索的因子分析を行い,3因子16項目が抽出された。第1因子からそれぞれ【乳汁の産生を観察する視点】【乳汁のうっ滞を観察する視点】【子どもの母乳の飲み方を観察する視点】と命名した。このうち,第2因子は,既存のアセスメントツールとの相関において,より強い相関が得られた。また,超音波検査法を用いた診断でも同様の結果が得られたことから,基準関連妥当性の確認ができた。
     信頼性の検討は,Cronbach's α係数0.844(下位概念:0.872,0.786,0.852)であることから同質性の高さを確認した。同等性は,級内相関とκ係数から検討したところ,母乳育児支援歴6年以下の助産師とでは一部の項目で0.4を下回るものの,母乳育児支援歴8年以上の助産師間では“ほぼ一致”していた。
    結 論
     本研究のアセスメントツールは,授乳期の乳房状態を観察するツールとして,3因子16項目から構成される。本研究において,信頼性や妥当性の確認および項目間の偏りや使用者への負担が少ない項目を見極めたことにより,臨床での有用性が期待できると考える。
資料
  • 園田 希, 堀内 成子
    原稿種別: 資料
    2012 年 26 巻 1 号 p. 72-82
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/31
    ジャーナル フリー
     本研究は,正常分娩において人工破膜が実施された状況を振り返ることで,正常分娩における人工破膜の実態を明らかにすること,そして人工破膜と分娩経過,児の娩出方法,児に与える影響を明らかにすることを目的とした。なかでも,児の娩出方法に関しては検証されておらず,明らかになっていない。そのため,これらを明らかにすることは,長年伝統的に行われていた人工破膜を,根拠に基づき実施するための一助となると考える。
     調査対象は,助産所,病院で正常妊娠経過を辿った初産婦326名,経産婦435名の計761名とした。過去の診療録や助産録などより情報を収集し,自然破水群,人工破水群に分類した。分娩経過として,分娩第 I 期,第II期,分娩所要時間,促進剤の使用の有無,を比較した。分娩第 I 期,第II期,分娩所要時間,については,Mann-Whitney U検定を,促進剤の使用の有無に関しては,χ2検定を実施した。また,児の娩出方法として,医療介入の有無,新生児の予後について比較した。医療介入の有無,新生児の予後についてはχ2検定を,度数が5以下の場合は,フィッシャーの直接確率検定を採用した。
     その結果,破水から児娩出までの所要時間に関して,初産婦においてのみ,自然破水群は中央値74分,人工破膜群では中央値58分で人工破膜群が有意に短かった(p=.029)。
     分娩第II期の所要時間は,経産婦でのみ,自然破水群は中央値18分,人工破膜群では中央値16分で,人工破膜群が有意に短かった(p=.002)。
     児の娩出方法は,自然破水群の初産婦と比較すると,人工破膜群の初産婦で【圧出分娩】【圧出分娩および器械分娩の併用】が有意に高率であった(χ2=5.420, p=.020, χ2=7.071, p=.001)。
     初産婦において,破水から児娩出までの所要時間の平均は,人工破膜群が有意に短かったが,初産婦の人工破膜群において【促進剤の使用】が有意に高率であったこと,促進剤の使用時期は人工破膜後からが最も多かったことが,破水から児娩出までの所要時間の平均が有意に短いという結果をもたらしたと考えられる。
     そのため,人工破膜による分娩促進の効果は,初産婦・経産婦とも必ずしも効果があるとは言い難く,分娩促進目的での人工破膜の実施は,頸管開大度から判断するだけでなく,産婦の身体的,精神的状態,産婦の希望を考慮し,慎重に判断していく必要がある。
     なかでも,初産婦では,人工破膜後に圧出分娩や促進剤の使用などの医療介入を必要とする可能性が示唆された。そのため,初産婦に対して人工破膜を実施する際には,人工破膜後に生じる可能性のある弊害を考慮し,その必要性を慎重に判断していく必要がある。
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