日本助産学会誌
Online ISSN : 1882-4307
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最新号
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巻頭言
総説
  • 鈴木 由美子, 大久保 功子
    2018 年 32 巻 1 号 p. 3-14
    発行日: 2018/06/29
    公開日: 2018/06/29
    [早期公開] 公開日: 2018/04/10
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究は,出産の振り返りに関する国内外の文献を検討することによって,研究の動向を明らかにし,国内における実践と研究への示唆を得ることを目的とした。

    方 法

    文献の検索は,出産体験,出産,産後,想起,振り返り,バースレビュー,Childbirth,After birth,Postnatal,Postpartum,Debriefing,Midwife-led counselingをキーワードとし,医学中央雑誌Web版,CINAHL,PubMed,を用いて行った。検索の範囲は,1980年から2016年6月までとした。対象文献は,産後の女性に対する出産の振り返りについて論じられている原著論文とし,結果はGarrardのマトリックス方式を用いてまとめた。

    結 果

    18件の文献が抽出された。出産の振り返りに関する研究の動向は国内と国外で異なっていた。国内では出産の振り返りを実施した結果を記述した質的研究を経て,その効果を検証した仮説検証型研究が行われていた。一方,国外では出産の振り返りを実施した結果について記述した質的研究と,介入の効果を検証した仮説検証型研究が行われていたが,出産の振り返りという実践の根拠が明確にされていないことが問題になると,緊急事態ストレスデブリーフィングを理論的根拠とした介入研究が中心となっていった。ところが,産後に限らずルーチンで行われる一度限りの振り返りは精神的健康を害する可能性があることがコクランレビューによって示されると,介入を受けた女性の経験を明らかにするための質的研究や実践の実態調査に対する関心が高まっていった。これにより,すべての女性を対象に介入することは適切ではないこと,介入時期は女性の状況に応じて検討する必要があることなどが明らかにされ,これまでの実践は女性のニーズを反映したものではなかった可能性が示された。それ以降,こうした研究結果を受け継ぎ女性のニーズに即した実践の開発に向けた仮説検証型の研究が行われていた。

    結 論

    国内の実践においては,ルーチンで行われる出産の振り返りを見直していく必要がある。また,女性が必要としている実践を提供していくためには,まず出産の振り返りに関する女性のニーズならびに現行の実践の実態調査が必要である。

  • 田中 利枝, 岡 美雪, 北園 真希, 丸山 菜穂子, 堀内 成子
    2018 年 32 巻 1 号 p. 15-26
    発行日: 2018/06/29
    公開日: 2018/06/29
    [早期公開] 公開日: 2018/05/18
    ジャーナル フリー

    目 的

    産科看護者に向けた,早産児の母親の産褥早期の母乳分泌を促す教育プログラムを開発する端緒として,母親の母乳分泌を促すための搾乳ケアについて探索する。

    対象と方法

    PubMed,CINAHL Plus with Full Text,医学中央雑誌Web, Ver.5を用い文献検索を行った。さらにCochrane Libraryに掲載されている搾乳に関するレビューに用いられている文献を追加した。その中からタイトル,抄録,本文を参考に,早産児の母親の母乳分泌量をアウトカムとする文献を抽出し,Cochrane Handbook,RoBANS,GRADE Handbookを用い,文献の質の評価を行った。また,研究目的,方法,結果について整理し,母親の母乳分泌を促すための搾乳ケアを抽出した。

    結 果

    35文献が抽出され,介入研究24件,観察研究11件であった。無作為化,隠蔽化,盲検化に関する記述が不十分で,サンプルサイズが検討されていないなど,ランダム化比較試験の質は低く,交絡変数の検討が不十分なために非ランダム化比較試験の質も低かったが,観察研究から実践に活用可能と考えられるエビデンスが得られた。早産児を出産した母親の母乳分泌を促すための搾乳ケアでは,分娩後,可能な限り1時間以内に搾乳を開始すること,1日7回以上の搾乳回数,1日100分以上の搾乳時間を確保すること,手搾乳と電動搾乳の両方について十分な説明を行い,乳汁生成II期に入るまで電動搾乳に1日6回以上の手搾乳を追加すること,カンガルーケアを実施することが有用だとわかった。

    結 論

    今後は,産科看護者による早産児を出産した母親への搾乳ケアに関する実態把握を行い,母親の母乳分泌を促すための搾乳ケアが実践できるような教育プログラムを開発していく。

原著
  • 葛西 圭子, 山城 五月, 田村 千亜希, 北目 利子, 渡邊 香, 竹原 健二
    2018 年 32 巻 1 号 p. 27-36
    発行日: 2018/06/29
    公開日: 2018/06/29
    [早期公開] 公開日: 2018/05/18
    ジャーナル フリー

    目 的

    新生児訪問を実施している助産師が産後1か月以内の母親のメンタルヘルス状況についてどのような観点に着目してアセスメントを行っているかを明らかにする。

    対象と方法

    新生児訪問を行っている13名の助産師を対象に訪問指導時における初産の母親を中心としたメンタルヘルス状況について,半構成的面接によってデータを得て,質的記述的分析を行った。

    結 果

    助産師がとらえた「母親のメンタルヘルス及び育児状況の良い状態ではない人」について以下のカテゴリーの観点が抽出された。【母親の状況】では,<つらさの表出><こだわりと自責傾向>,<乱れた生活行動><不適切なコーピング行動><産後思わしくない身体回復><違和感のある住環境><母親に影響する経済状況>の7つに,【児と育児状況】については,<対応しづらい児><育児への戸惑い><母乳への不安>の3つに,【子育てに影響する母親の体験】では,<育児体験のなさ><子育てに影響する成育歴><子育てに影響するキャリア><精神的既往><出産時のつらい体験><大切な人の死>の6つに,【母親への支援】では,<パートナー,血縁からの不適切な支援><医療者からの不適切な支援><孤独と不適切な関係性><不安から多くの質問><円滑にできない情報の発信と収集>の5つのサブカテゴリ―に分類された。

    結 論

    助産師は産後1か月以内の初産婦のメンタルヘルス状況について,母児の状況と生活環境などを合わせて推論し,母親の体験や支援,対人関係のありようが母親のメンタルヘルス状況に影響を与えているととらえていた。産後1か月以内の初産婦個々に合わせた支援を行う重要性が確認された。助産師には生活環境と母児の状況を合わせてアセスメントを行い,妊娠中から産後にかけて地域の様々な社会的資源の活用,連携による支援を行っていくことが期待される。

資料
  • 髙松 恵美, 小黒 道子
    2018 年 32 巻 1 号 p. 37-48
    発行日: 2018/06/29
    公開日: 2018/06/29
    [早期公開] 公開日: 2018/05/23
    ジャーナル フリー

    目 的

    日本の難民支援機関に難民女性からの相談が増えていることを踏まえ,2013年に試験的に実施された日本在住の難民女性に対するリプロダクティブヘルス向上を目指すプログラムを改訂し,その評価を行う。

    対象と方法

    研究デザインは,前後比較介入研究である。日本に住む15~49歳の難民女性を対象に,月経・妊娠,避妊法,性感染症,陰部の清潔に関する内容を含むプログラムを実施した。自記式質問紙を用い,プログラム前後で知識,認識,自己効力感,自尊感情について,またプログラム実施後にはプログラムの内容や実施設定について尋ね,プログラムの評価を行った。

    結 果

    研究対象者は17名,うち分析対象者は31~48歳の7名,全員東南アジア出身であった。知識はプログラム参加前後で合計平均点が8.43点から13.00点に有意に上昇し(p=0.001),項目別正答率は【排卵日の特定】(p=0.031),【緊急避妊法の効果】(p=0.031),【膣内洗浄の是非】(p=0.016)で有意に上昇した。認識では【コンドームを使うつもりがある】(p=0.038),【コンドームを正しく使うことができる】(p=0.041)で有意差が認められた。自己効力感はプログラム参加前後で有意差が認められず,自尊感情は有意に高くなっていた(p=0.004)。プロセス評価では,実施回数や参加人数については約半数が〔少ない〕と回答していた。興味深かった内容については,コンドームワークや病気の知識に関する回答が多く,ワーク(基礎体温,サイクルビーズ,コンドームの3種類)は過半数が〔よかった〕と回答していた。

    結 論

    難民女性のリプロダクティブヘルスに関する知識,認識が向上し自尊感情が高まったが,自己効力感は長期的に変化するものであるため変化しなかった。参加者に合わせた回数の設定,プログラム実施の数ヵ月後に長期的な評価をすることが今後の課題である。

  • 中田 かおり, 片岡 弥恵子
    2018 年 32 巻 1 号 p. 49-59
    発行日: 2018/06/29
    公開日: 2018/06/29
    [早期公開] 公開日: 2018/05/18
    ジャーナル フリー

    目 的

    本研究の目的は,出産後に仕事へ復帰した女性が,働きながら母乳育児を継続した体験を記述することである。

    対象と方法

    都市部にある助産院2か所に研究協力を依頼した。出産後に母乳育児を行い,復帰前に母乳育児継続を希望し仕事または学業に復帰した女性10名を対象とし,フォーカス・グループ・インタビューによりデータを収集した。内容分析の方法を参考に質的記述的に分析した。

    結 果

    研究参加者の年代は20歳代から40歳代で,出産後に仕事に復帰した人は8名,学業に復帰した人が2名であった。復帰時期は出産後2か月から10か月であった。復帰前の授乳方法は,母乳栄養が9名,混合栄養が1名であり,復帰後は母乳栄養が4名,混合栄養が6名であった。

    データから200のコードが抽出され,61のサブカテゴリ,17のカテゴリが抽出された。出産後,仕事へ復帰した女性が働きながら母乳育児を継続した体験として,【母親として選択した復帰後の母乳育児継続】,【復帰後の母乳育児を見越しての準備や調整】,【母乳育児継続のサポーターの存在】,【生活の一部として続ける母乳育児】,【折り合いをつけていく様々な障壁】,【母乳育児に対する価値観とスタンス】,【子どものうれしさが自分にとってのうれしさになる】という7つのコアカテゴリが抽出された。

    結 論

    女性は仕事や学業へ復帰するにあたり,母親としてできることとして母乳育児を継続することを選択し,様々な体験をしながら母乳育児を継続していた。助産師は,出産後に復帰する女性がこのような体験をしていることを理解して支援していく必要があることが示唆された。

  • 園田 希, 小川 真世, 田所 由利子, 髙畑 香織, 周尾 卓也, 堀内 成子
    2018 年 32 巻 1 号 p. 60-72
    発行日: 2018/06/29
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル フリー

    目 的

    唾液中オキシトシンおよび唾液中コルチゾールを「Mama's Touchプログラム」の評価指標とすることの実行可能性を検討することである。

    方 法

    妊娠38週台と妊娠39週台の計2回,プログラムに参加する介入群とプログラムに参加しない対照群の2群比較を実施した。プログラムは,対象者が乳児とその母親の関わりを観察し,抱っこやあやすなど実際に乳児と関わる60分間のプログラムである。両群とも,研究開始前(Pre),研究開始後30分(Post 30),研究開始後60分(Post 60)の3時点で唾液を採取した。唾液採取・オキシトシン濃度の解析およびコルチゾール濃度の解析・乳児とのふれ合いについて分析した。

    結 果

    妊娠38週台は介入群7名,対照群6名が研究に参加したが,妊娠39週台では介入群5名,対照群5名となった。オキシトシン濃度は,妊娠38週台,妊娠39週台ともにばらつきが大きいという結果であった。コルチゾール濃度は,妊娠38週台,妊娠39週台ともに両群ともPre- Post 30- Post 60と低下した。なかでも,妊娠39週台の介入群ではPre- Post 30で有意に低下していた(p=.044)。69検体(唾液量0.5mLから6.0mL)のうち,オキシトシン濃度は45検体(65.2%)で,コルチゾール濃度は全ての検体でduplicate assayにて解析できた。プログラムを実施した介入群では,乳児の発達や反応は個別性がありふれ合いの体験の内容に多様性があった。

    結 語

    唾液中オキシトシンおよび唾液中コルチゾールを「Mama's Touchプログラム」の評価指標とすることは,唾液採取法,生理学的解析,乳児とのふれ合いという点で実行可能性が確認された。今後は,対象数の拡大,無作為割り付け,乳児の月齢やふれ合いの内容の統一,母親からの教示を規定するという工夫,唾液採取量の増加などオキシトシン濃度解析可能検体数の増加に向けた改善が課題である。

  • 飯田 真理子, 片岡 弥恵子, 江藤 宏美, 田所 由利子, 増澤 祐子, 八重 ゆかり, 浅井 宏美, 櫻井 綾香, 堀内 成子
    2018 年 32 巻 1 号 p. 73-80
    発行日: 2018/06/29
    公開日: 2018/06/29
    ジャーナル フリー

    周産期を通して安全で快適なケアを提供するには助産実践指針が必要である。日本助産学会は健康なローリスクの女性と新生児へのケア指針を示した「エビデンスに基づく助産ガイドライン―妊娠期・分娩期2016」を刊行した。この2016年版は2012年版に新たに妊娠期の臨床上の疑問(Clinical Question,以下CQ)を13項目加え,既にある分娩期のCQ30項目には最新のエビデンスを加えた。

    このガイドラインでは助産実践を行う上で日常助産師が遭遇しやすい臨床上の疑問に答え,ケアの指針を示している。推奨は最新のエビデンスに基づいているため,ここに示している内容は現時点での“最良の実践”と考える。本ガイドラインに期待する役割は次の3つである:1)助産師がエビデンスに基づいたケアを実践し,女性の意思決定を支援するための指針としての役割,2)助産師を養成する教育機関において,日進月歩で進化していく研究を探索する意味を学び,知識やケアの質が改善している事実を学ぶ道具としての役割,3)研究が不足し充分なエビデンスが得られていない課題を認識し,研究活動を鼓舞していく役割。そして本稿においてガイドラインの英訳を紹介する目的は次の通りである:1)日本の助産師が編纂したガイドラインを世界に紹介・発信すること,2)日本の研究者が英語で本ガイドラインを引用する際の共通認識として用いること。

    2016年版では,合計43項目のCQに対して推奨を示しているが,次の6つに関しては産科領域で広く用いられているものの,医行為に関わるため推奨ではなく「エビデンスと解説」にとどめている:CQ1分娩誘発,CQ2卵膜剥離,CQ7硬膜外麻酔,CQ21会陰切開,CQ26会陰縫合,CQ28予防的子宮収縮薬投与。2012年版から推奨が改訂されたCQは次の通りである:CQ3乳房・乳頭刺激の分娩誘発効果,CQ9指圧,鍼療法の産痛緩和効果,CQ14指圧,鍼療法の陣痛促進効果。

    なお,本論文の一部は「エビデンスに基づく助産ガイドライン―妊娠期・分娩期2016」からの抜粋であり,推奨の部分は翻訳である。

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