本研究は、バングラデシュ農付社会で暮らす子どもを対象に、彼らが成長と共にコミュニティーでの立場や関係、行動パターンを変化させていくプロセスを捉えることで、「子ども」という概念を日常実践のなかで問い直すことを目的とした。その際、当該社会の子ども観と子どもたち自らの生活実践がいかに呼応しているかに着目し、その領域を「子ども域」という新たな概念で捉えた。
当該社会には「子ども」をさす言葉が複数存在し、それらが年齢段階的に使われる。さらに、「子どもはブジナイ (分からない) から仕方ない」として、おとな社会の規範から猶予される。一方、子どもが日常生活を過ごす時間と空間に着目すると、彼らの行動には、おとなの認識と大きくずれることのない年齢段階的な変化が見られ、「ブジナイ」として放ったらかしにされる自由が、役割期待の増加と共に減少していくことが明らかとなった。
つまり「子ども域」は、「ブジナイ」として猶予される自由のなかで子どもたちが徐々に行動パターンを確立し、社会の規範を習得していくにつれて減少するものであり、それが「子ども期」の終焉を意味している。
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