日本サルコペニア・フレイル学会誌
Online ISSN : 2759-8829
Print ISSN : 2433-1805
5 巻, 1 号
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特集1 骨粗鬆症とサルコペニア・フレイル,その異同
  • 飯高 世子
    原稿種別: 特集
    2021 年5 巻1 号 p. 6-10
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    オステオサルコペニアは,骨粗鬆症とサルコペニアの合併の状態とされているが,有病率を含め疾患の実態は何もわかっていない。筆者らは,大規模住民コホートROAD studyの第2回調査結果を用いて,オステオサルコペニアおよびフレイルの有病率を明らかにした。さらに4年間の追跡調査の結果を用いて,骨粗鬆症,サルコペニア,フレイルの発生率を明らかにし,3疾患それぞれの発生に対する相互関係を検討した。現在骨粗鬆症であることは,サルコペニアとフレイルの発生に対する危険因子であることが示唆された。骨粗鬆症の治療は,骨粗鬆症に対してのみならず,将来的なサルコペニアのリスクを減少させる,すなわち,オステオサルコペニアの発生を減少させる可能性がある。また,現在オステオサルコペニアである方は,サルコペニアのみ,骨粗鬆症のみの方よりもフレイルへと移行するリスクがきわめて高いことが明らかとなった。

  • 橋爪 洋, 吉村 典子, 岡 敬之, 山田 宏
    原稿種別: 特集
    2021 年5 巻1 号 p. 11-15
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    椎体骨折とサルコペニアの性別・年代別指標ならびに腰痛との関連を明らかにするため,和歌山県の地域住民785名(男性239名,女性546名)の横断的解析を行った。MRIにて第1胸椎〜第5腰椎の椎体骨折を半定量法により4段階評価,体組成を生体電気インピーダンス法にて測定し,Asian Working Groupfor Sarcopenia 2019の基準に従い,サルコペニアを診断した。腰痛の有無とoswestry disability index(ODI)も問診した。参加者全体の胸腰椎椎体骨折グレードの和の平均値は男性3.4,女性2.6,サルコペニア有病率は男性6.3%,女性5.3%であり,いずれの指標も加齢とともに増加していた。腰痛有病率は男性38.5%,女性38.5%,ODI%平均値は男性9.1,女性11.2であった。多変量解析の結果,腰痛と椎体骨折はサルコペニアの,サルコペニアと椎体骨折は腰痛特異的ADL障害の有意な関連因子であることが明らかとなった。

  • 綾部 誠也, 井上 里加子, 入江 康至
    原稿種別: 特集
    2021 年5 巻1 号 p. 16-21
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    サルコペニアと骨粗鬆症は,主として,高齢者で罹患率が増大する疾患である。ただし,いずれもその発症が若年期の骨格筋量や骨密度に関係している。本稿では,主に,日本人を対象としたこれまでの知見に基づいて,若年期のサルコペニアと骨粗鬆症について解説した。骨密度は,若年期に迎える最大骨量を高めることがその後の加齢に伴う骨量低下による骨粗鬆症のリスクの軽減に有効である。低筋量・低骨量に該当する女性が存在する。運動習慣は,少年期から青年期の運動習慣が最大骨量の確保に貢献し,青年期から壮年期の運動習慣が筋量と筋力の確保に貢献する。2020年に改定された食事摂取基準は,筋量の確保にも焦点が置かれている。若年女性における痩せ願望・低体重への対策が必要である。若年期の身体組成と高齢期のサルコペニアと骨粗鬆症の直接的な関係を示すエビデンスが期待される。

  • 藤原 佐枝子
    原稿種別: 特集
    2021 年5 巻1 号 p. 22-25
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    骨粗鬆症,サルコペニアは加齢によって増加し,有病率は骨粗鬆症で20~26%(女性),サルコペニアは7.5~8.2%で,約5%が骨粗鬆症とサルコペニアの両方をもっていた。骨・筋肉の発育成長は遺伝要因の関与が大きいが,その後の減少には,運動,栄養などの共通の生活習慣要因が影響する。運動,カルシウム,ビタミンDサプリメントの介入による効果は大きいものではないが,小児から高齢期を通して骨密度を増加・維持し骨折リスクを低減させる。サルコペニアに対する運動介入は,60歳以上の人において筋量,筋力の増強効果が認められている。必須アミノ酸の介入は筋量,筋力を改善する一定効果は報告されているが,タンパク質サプリメントの効果については一致していない。

  • 金 憲経, 大須賀 洋祐, 小島 成実, 笹井 浩行
    原稿種別: 特集
    2021 年5 巻1 号 p. 26-33
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    高齢者問題を取り上げるときに骨粗鬆症やサルコペニアはよく接する身近な言葉である。本来,骨粗鬆症とサルコペニアは異なる別次元の病状を捉える概念である。骨粗鬆症は,「低骨量と骨組織の微細構造の異常を特徴とし,骨の脆弱性が増大し,骨折の危険性が増大する疾患」と定義し,サルコペニアは本来筋量の減少問題から,現在は筋力低下または身体機能の衰えを伴う筋量減少と概念が変節している。

    骨粗鬆症の予防には,痩せや肥満を避ける適切な体重管理,タンパク質などの十分な栄養摂取,定期的な身体活動や運動実践,過度な喫煙や飲酒を避ける生活習慣が必要である。また,サルコペニアの予防には,定期的な運動や活発な身体活動,タンパク質やアミノ酸などの十分な栄養摂取が有効である。一見すると骨粗鬆症予防策とサルコペニア予防策は類似しているように見える。しかし,主評価項目は異なる。すなわち,骨粗鬆症予防策は骨密度増加や骨折予防に,サルコペニア予防策は筋量や筋肉,身体機能の改善に重点を置いている点が異同である。

特集2 COVID-19 とサルコペニア・フレイル:ウィズ・アフターコロナの時代を見据えて
  • 飯島 勝矢
    原稿種別: 特集
    2021 年5 巻1 号 p. 34-40
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行において,高齢者における重症化および死亡リスクの高さが注目され報道されてきた。しかし,忘れてはならないのが,高齢者への自粛生活長期化による生活不活発や,人との交流の断絶などを基盤とする健康二次被害,いわゆる「コロナフレイル」である。このコロナ問題は,流行前からもち合わせていた従来の地域課題や社会課題をみえる化したといっても過言ではない。コロナ問題から一年以上が経過した今,ウィズ・アフターコロナ社会を見据え,国民に改めて何を伝え,さらに地域社会での新たな集い方やつながり方にどう反映させるのか,ここが重要な鍵になるだろう。ワクチンや治療薬の確立と同時に,真の人間中心社会に向けて,「われわれの忘れてはならない原点」と「次世代の新しい地域コミュニティ像(新たなデジタル社会含む)」の両方を実現しながら,人と人との心を近付け,絆を感じ,豊かな社会に向けた新たな価値を創造していくことが求められる。

  • 藤原 佳典
    原稿種別: 特集
    2021 年5 巻1 号 p. 41-46
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    2020年3月以降,新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延により,地域活動の拠点である「通いの場」にも閉鎖や中断など大きな影響が出ている。

    最初の緊急事態宣言が発出後,ようやく1年が経過しようとしている現状では,地域高齢者において自粛生活が生活機能低下に及ぼす影響を調べた前向き研究はいまだ見当たらない。そこで,COVID-19蔓延以前の平常時下の先行研究をもとに,加齢に伴う生活機能の変化と社会参加活動に着目して,コロナ禍における「通いの場」をはじめとした社会参加と生活機能低下の関係について考察した。縦断研究をもとに高齢期の生活機能の加齢変化パターンを類型化した。前期高齢期にすでに,生活機能が低下しているもしくは,低下が加速している約1/4の高齢者は専門職の関与を考慮すべきであるが,残りの3/4の高齢者については,1年程度では自粛の影響はさほどみられないと考えられる。しかし,社会参加活動から完全に離脱することによる長期的な影響は危惧される。「通いの場」の再開に向けた,行政や専門職の関与が求められる。

  • 角田 徹
    原稿種別: 特集
    2021 年5 巻1 号 p. 47-54
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染者数,死者数は世界,日本ともに急増している。その特徴は,感染力はそれほど強くないこと,発症前が感染力のピーク,飛沫感染が主で三密にて感染が成立,約30%は無症状,発症後も約80%は軽症,高齢なほど重症化率は高いである。発症前に他者への感染力が最大となり,標準的な感染予防策が必須である。

    高齢者では,過度な自粛や外出抑制によるフレイルの進行や生活習慣病の悪化も多い。日常生活・社会活動を健全に営むため,マスク着用,三密状態の回避,確実で頻回の手洗い,換気・消毒などを行いつつ,不適切な個人的対応や行動にならないことが重要だ。具体的な取り組みとして,高齢者・家族へ正しい知識の啓発,工夫をしながら地域活動の再開,新たなコミュニケーションツールの導入,新たなサービス提供体制,画一的でないリスク別の感染予防がある。

    感染症対応に柔軟性と継続性をもった強靭な社会の構築と,ヘルスリテラシーを有する国民の増加を目指し,各学会と各医療関係団体の活動・協働はきわめて重要である。

  • 神﨑 恒一
    原稿種別: 特集
    2021 年5 巻1 号 p. 55-59
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    認知的フレイルとは,身体的フレイルと軽度の認知機能の低下(CDR0.5で認知症を除外)の合併状態とされている。このような操作的な概念が定義された背景には,認知的フレイルは要介護と認知症の発生リスクが単独の場合に比べて高いからである。フレイルは身体的側面,認知・精神的側面以外に社会的側面が大きく影響する。ところが新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の蔓延により社会交流が困難となり,この面から認知的フレイルを含めたフレイルな高齢者の発生頻度が上昇することは間違いない。感染予防のためには他者との接触に十分注意しながら,身体トレーニングと認知トレーニングを並行して訓練できるように工夫する必要がある。そのための案を私見ながら紹介する。

  • 荒井 秀典
    原稿種別: 特集
    2021 年5 巻1 号 p. 60-64
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的大流行に伴い,感染予防目的で他者との接触を制限する風潮が続いている。日本でも2020年4月,2021年1月と二度にわたって緊急事態宣言が発出され,外出を伴う活動の自粛が推奨された。特に感染症が重症化しやすい高齢者や内科的合併症をもつ人に関しては活動自粛による影響を受けている。このような活動自粛は,身体的な活動のみならず社会的な交流も激減させ,身体機能や認知機能の低下,栄養状態の悪化などを引き起こし,サルコペニアやフレイルの進行が危惧される。しかし,COVID-19が終息する傾向はいまだみえず,不活発な生活は,今後も長く続くことが予想される。そのような社会的情勢のなか,コロナ禍にあっても,感染予防と活動のバランスをとりながら高齢者の健康を維持することは,高齢者医療を実践するわれわれ医療者に課せられた課題である。

原著
  • 上泉 理, 高橋 友哉, 江端 純治, 荒谷 隆, 千葉 春子
    原稿種別: 原著
    2021 年5 巻1 号 p. 65-72
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    [目 的]

    末梢動脈疾患(以下PAD)におけるサルコペニアの合併率を調査し,サルコペニアへの影響因子を検討すること。

    [方 法]

    Fontaine分類Ⅱ度の男性PAD患者56名を対象とし,サルコペニア診療ガイドラインを参考に骨格筋量と握力が低下したものをサルコペニア(以下S群),それ以外のものを非サルコペニア(以下NS 群)とし,サルコペニアの合併率を調査した。また,対象をS群とNS群に分類し,患者属性,膝伸展筋力,片脚立位時間,歩行障害質問票を比較検討した。2群間で有意な傾向を認めた項目を独立変数とし,サルコペニアを従属変数とする二項ロジスティック回帰分析を行った。

    [結 果]

    サルコペニアはPAD全体の25.0%,高齢者の29.5%に認めた。2群間において年齢,BMI,膝伸展筋力,片脚立位時間,喫煙で有意な傾向を示し,BMIと喫煙が有意にかかわる変数として選択された。

    [結 論]

    PADは一般高齢者よりもサルコペニアが多く,BMIと喫煙がサルコペニアへの影響因子としての可能性が示唆された。

  • 佐藤 菜々, 牧迫 飛雄馬, 中井 雄貴, 富岡 一俊, 谷口 善昭, 和田 あゆみ, 木山 良二, 堤本 広大, 窪薗 琢郎, 竹中 俊宏 ...
    原稿種別: 原著
    2021 年5 巻1 号 p. 73-80
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    [目 的]

    地域在住高齢者における社会参加とサルコペニアとの関連を明らかにすることを目的とした。

    [方 法]

    地域コホート研究(垂水研究2018)に参加した65歳以上の地域在住高齢者859 名のうち,脳卒中等の既往歴のない751名を分析対象とした。Asian Working Group for Sarcopenia 2019に基づいてサルコペニアの有無,またJST版活動能力指標の社会参加に関する4項目より社会参加の状況を評価した。

    [結 果]

    サルコペニアを有する者では,社会参加得点が有意に低値であった(p<0.001)。従属変数をサルコペニアの有無,独立変数を社会参加得点としたロジスティック回帰分析の結果,社会参加とサルコペニアに有意な関連を認めた(オッズ比0.83,95%信頼区間0.71-0.97)(共変量:年齢,性別,教育歴,服薬数,転倒歴,運動習慣,うつ傾向,認知機能)。

    [結 論]

    地域在住高齢者の社会参加状況はサルコペニアと関連することが示唆された。

  • ―介入効果に関する検討―
    森 優太, 竹田 徳則, 渡邉 良太, 窪 優太
    原稿種別: 原著
    2021 年5 巻1 号 p. 81-88
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    [目 的]

    社会参加活動は健康と関連するが,地域在住フレイル高齢者(以下,フレイル高齢者)への介入効果は明らかでない。本研究の目的は,フレイル高齢者に社会参加活動を用いた介入がフレイルもしくは健康関連指標の改善に有効なのかをシステマティックレビューにて明らかにすることである。

    [方 法]

    医中誌WebとPubMedを用い,フレイル高齢者に社会参加活動の観点から介入を報告した研究を抽出した。

    [結 果]

    分析対象文献は5件であった。社会参加活動を用いた介入は,運動・栄養教育・心理社会的プログラムを兼ね備えたグループ活動,ボランティアの通話であった。これらによりフレイル高齢者のフレイルもしくは健康関連指標が改善した。

    [結 論]

    フレイル高齢者の改善にはグループ活動や通話などを通した人との交流が重要な可能性がある。今後は,これら以外の社会参加活動や運動を伴わない社会参加活動を用いた介入のエビデンス蓄積が求められる。

  • 鈴木 光司, 會田 隆志, 小柳 穏, 渡邉 大介, 樋口 雄一郎, 渡辺 雄紀, 関 晴朗
    原稿種別: 原著
    2021 年5 巻1 号 p. 89-95
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    [目 的]

    サルコペニアを併存したParkinson's Disease(以下,PD)患者の運動療法の効果を検討した。

    [方 法]

    当院に入院したPD患者を対象とし,Asian Working Group for Sarcopeniaの診断基準を用い,サルコペニアPD群と非サルコペニアPD群(以下,対照群)に分けた。各群で運動療法前後における歩行速度,歩幅,6Minute Walking Distance(以下6MD),Berg balance scale(以下,BBS)の経時的変化と改善者数を比較した。

    [結 果]

    対象者は37名(サルコペニアPD群9名,対照群28名)。運動療法前の群間比較はSkeletal muscle Mass Index以外の項目に有意差なし。運動療法前後の群内比較で対照群は歩幅以外の全項目に有意な改善を示し,サルコペニアPD群は歩行速度のみ有意な改善を示した(歩行速度:p<0.05, 歩幅:p=0.08, BBS:p=1.00, 6MD:p=0.31)。改善者数の群間比較でサルコペニアPD群のBBS改善者が有意に少なかった(サルコペニアPD群:3人,対照群:22人,p<0.05)。

    [結 論]

    PD患者において,サルコペニア併存により運動療法の効果に差が生じることを示唆した。

  • 谷口 善昭, 牧迫 飛雄馬, 富岡 一俊, 中井 雄貴, 佐藤 菜々, 和田 あゆみ, 木山 良二, 窪薗 琢郎, 竹中 俊宏, 大石 充
    原稿種別: 原著
    2021 年5 巻1 号 p. 96-103
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    [目 的]

    地域在住高齢女性における骨粗鬆症と身体・認知・社会的フレイルとの関係を明らかにする。

    [方 法]

    地域での健康チェックに参加した高齢女性265名を分析対象とした。骨粗鬆症の有無,身体・認知・社会的フレイルを評価し,身体・社会的フレイルに関しては,プレフレイルとフレイルを合わせてプレフレイル以上とした。骨粗鬆症を従属変数とし,身体的プレフレイル以上,認知的フレイル,社会的プレフレイル以上を独立変数としたロジスティック回帰分析を行い,さらに前期・後期高齢女性に分けてオッズ比を算出した。

    [結 果]

    年齢,内服数,教育歴,BMI,関節リウマチの有無,呼吸器疾患の有無で傾向スコアを算出し,傾向スコアで調整したロジスティック回帰分析の結果,後期高齢女性において骨粗鬆症と社会的プレフレイル以上が関連していた(オッズ比3.14,95% CI1.25-7.93,p=0.02)。

    [結 論]

    地域在住後期高齢女性において,社会的フレイルは骨粗鬆症のリスクを高める可能性がある。

  • 溝口 遼, 甲斐 駿介, 立石 正登, 井手 孝佳弘, 玉山 有希, 高砂 恵梨, 岡田 圭子, 水口 美咲, 福田 浩紀, 野中 勝也, ...
    原稿種別: 原著
    2021 年5 巻1 号 p. 104-112
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    [目 的]

    保険調剤薬局(健康サポート薬局)におけるフレイル対策の効果を検証する。

    [方 法]

    地域在住の65歳以上の高齢者を対象とし,6ヶ月後の効果を検討した。測定項目はフレイル分類,栄養状態,食品摂取多様性得点,服用薬剤,GSES得点である。

    [結 果]

    「フレイル状態」および「低栄養状態のおそれあり」の割合において,それぞれ減少傾向が認められた。さらに,食品摂取多様性得点およびGSES得点において有意な増加が認められた(それぞれp<0.05)。また,GSES得点と食品摂取多様性得点の増減は関連が認められた(p<0.05)。

    [結 論]

    食品摂取多様性得点とGSES得点の有意な増加、および栄養状態およびフレイル状態の改善傾向が認められ,重要なフレイル対策のひとつであるバランスの良い食事を摂取するという食行動の変容が窺えた。したがって本取り組みは,保険調剤薬局のフレイル対策として効果的な対策であることが示唆された。

  • -前後比較試験-
    中谷 美夏, 山口 潔, 浜田 将太, 三村 朋也, 秋好 沢諭, 谷 真理子, 片本 行信, 橋本 昌也, 秋下 雅弘
    原稿種別: 原著
    2021 年5 巻1 号 p. 113-121
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    [目 的]

    プラセンタエキスの筋力と歩行速度の低下を認める高齢者に対する有用性及び安全性を評価した。

    [方 法]

    筋力と歩行速度の低下を認める65歳以上の高齢者を対象とし,毎日プラセンタエキス3 gを含む試験食を12週間継続摂取させた。主要評価項目は通常歩行速度及び握力,副次評価項目は下腿周囲長,QOL,ホルモン値とした。

    [結 果]

    登録した27名のうち,摂取期間を完了した24名(男性10名,女性14名;平均85歳)を有用性評価の対象とした。通常歩行速度(中央値,以下同じ)は0.73 m/sから0.88 m/sに改善した(p<0.001)。握力は摂取前14.9 kg,摂取後15.3 kgと変化はなかった(p=0.539)。QOLに改善がみられたが,その他の副次評価項目や安全性に特記すべき所見はなかった。

    [結 論]

    プラセンタエキスの経口摂取が筋力と歩行速度の低下を認める高齢者の通常歩行速度を改善する可能性が示された。今後,プラセボ対照比較試験により検証する必要がある。

  • ~1年間の非ランダム化比較試験~
    森 優太, 竹田 徳則
    原稿種別: 原著
    2021 年5 巻1 号 p. 122-130
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    [目 的]

    通いの場への理学療法士の関与有無による参加者の身体的プレフレイルから健常への移行率と健康関連指標の変化を明らかにする。

    [方 法]

    対象は通いの場12箇所へ参加する地域在住高齢者182名のうち,日本版Cardiovascular Health Study基準を用いた身体的プレフレイル該当者で,理学療法士の関与群34名と非関与群29名の2群とした。関与群には1回/月・90分・12ヶ月間の期間,集団体操や健康講話などとホームプログラムとチェックカレンダーを配布して健康行動を促した.効果判定は身体的プレフレイルから健常への移行率と身体的・精神的・社会的側面の健康関連指標の変化とした。

    [結 果]

    1年後の身体的プレフレイルから健常への移行率は,関与群で48.3%,非関与群が34.5%であった。また,関与群では老研式活動能力指標の手段的自立(p=0.033),30-seconds chair-stand test(p=0.036),5 m快適歩行速度(p=0.032),5 m最速歩行速度(p=0.045)で有意な改善を認めた。

    [結 論]

    通いの場への理学療法士による月1回の集団体操や健康講話を用いた支援によって,身体的プレフレイルからの改善の可能性が示唆された。

  • 西村 朋浩, 萩尾 敦史, 浜口 佳奈子, 栗原 俊之, 家光 素行, 真田 樹義
    原稿種別: 原著
    2021 年5 巻1 号 p. 131-137
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    [目 的]

    ロコモティブシンドローム(LS)を有する高齢女性に対する歩行介入が,身体機能および生活活動に及ぼす影響について検討することとした。

    [方 法]

    地域在住高齢女性46名を対象とし,ロコモ度テストで健常群とLS群に分類した。10週間の歩行介入が筋量,筋力,歩行速度,2ステップテストへ与える影響および介入前後の身体活動量の変化を検討した。身体活動量は,歩行活動および生活活動に分類し,1.6~2.9 METsを低強度身体活動量,3 METs以上を中高強度身体活動量とした。

    [結 果]

    両群ともに2ステップテストのみ有意な改善を認めた。LS群でのみ中高強度歩行活動の変化量と低強度生活活動の変化量の間で有意な負の相関関係を認めた。

    [結 論]

    高齢女性における中高強度歩行活動の増加は,LSの有無に関わらず2ステップテストの改善に有効である。また,LS群においては代償的に低強度生活活動の減少を招くことが明らかとなった。

  • 鈴木 光司, 會田 隆志, 小柳 穏, 関 晴朗
    原稿種別: 原著
    2021 年5 巻1 号 p. 138-145
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    [目 的]

    Parkinson’ s Disease(以下,PD)患者において,骨格筋の量的・質的変化が運動療法効果に及ぼす影響を検討した。

    [方 法]

    当院に入院したPD患者のみを対象に,Asian Working Group for Sarcopeniaの診断基準と身体機能低下の有無により,運動機能低下群と骨格筋量減少群,対照群の3群に分けた。測定項目は歩行速度,歩幅,Berg balance scale(以下,BBS),6 Minute Walking Distance(以下,6MD)とし,運動療法後の改善度を比較した。

    [結 果]

    対象者は39名であった(運動機能低下群14名,骨格筋量減少群12名,対照群13名)。運動療法前の群間比較では,BBS以外の測定項目で,運動機能低下群が対照群より有意に低く,運動療法後の改善度比較では,歩幅,BBSでそれぞれ,運動機能低下群が対照群,骨格筋量減少群より有意な改善がみられた(歩幅:運動機能低下群>対照群,p=0.036,BBS:運動機能低下群>骨格筋量減少群,p=0.005)。

    [結 論]

    PD患者において,骨格筋の量や質の変化によって運動療法効果に差が生じることを示唆した。

  • 西口 雅彦
    原稿種別: 原著
    2021 年5 巻1 号 p. 146-153
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    [目 的]

    骨粗鬆症(OP)は加齢と共に骨の脆弱性に加えてフレイルも合併する。OP薬物治療のみではOPの効果不良例を経験し,その中核はフレイルと考え,人参養栄湯(NYT)の有効性を非ランダム化比較試験で検討した。

    [方 法]

    フレイル・プレフレイル合併OP患者40例を対象に,NYT服薬を希望した26例,服薬を拒否した14例の2群間で,下肢の運動・バランス機能の指標であるzaRitzスコア(総合得点,パワー,スピード,バランス),腰椎・股全体の骨密度の投与前及び6ヶ月後の変化量を比較した。

    [結 果]

    zaRitzスコアの総合得点(NYT群:4.1±9.9点; 非投与群:-3.8±9.8点,p=0.02),バランス(NYT群:7.6±16.4点,非投与群:-5.4±18.5点,p=0.03)はNYT群で有意に改善した。腰椎骨密度はNYT群で有意に改善(NYT群:0.014±0.027 g/cm2;非投与群:-0.005±0.032 g/cm2,p=0.04),股全体は改善傾向を示した(NYT群:0.008±0.023 g/cm2;非投与群:-0.008±0.034 g/cm2,p=0.08)。

    [結 論]

    フレイル合併OPにおいて,NYTは下肢の運動・バランス機能,骨密度の改善をもたらす可能性が示唆された。

  • 鎌田 智英実, 奥村 亮太, 三木 章江, 藤原 真治, 吉村 幸雄
    原稿種別: 原著
    2021 年5 巻1 号 p. 154-162
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    [目 的]

    地域在住高齢女性におけるフレイルと栄養素・食品群別摂取量および買い物状況との関連を明らかにする。

    [方 法]

    地域在住の65 歳以上の女性75名を対象に,身体状況と生活・買い物の状況および栄養摂取状況を調査し,フレイルの進行度との関連を検討した。

    [結 果]

    ロバスト群からフレイル群にかけて,亜鉛,ビタミンD,ビオチン,豆類,卵類の摂取量が有意に低い傾向がみられた(p<0.05)。たんぱく質は,ロバスト群のみ食事摂取基準における目標量以上の摂取量であった。買い物回数が中央値以下の群は,エネルギーとたんぱく質の摂取量が有意に少なく(p<0.05),ビタミンDおよびたんぱく質の摂取量に影響する魚介類の摂取量が少ない傾向がみられた。

    [結 論]

    フレイル群は,ビタミンDやたんぱく質等の栄養素摂取量が少なく,その一因として買い物回数が少ないことによる栄養素・食品群の摂取状況が影響する可能性が示唆された。

短報
症例報告
  • ~ケースレポート~
    白川 桂, 四釜 淳子, 平林 伸治
    原稿種別: 症例報告
    2021 年5 巻1 号 p. 166-172
    発行日: 2021/06/30
    公開日: 2025/08/20
    ジャーナル フリー

    [はじめに]

    サルコペニアの摂食嚥下障害(sarcopenic dysphagia以下:SDと略す)が疑われた症例に対し,介入後の長期経過およびp hase angleの経過を報告する。

    [症例紹介・経過]

    症例は70歳代の男性。誤嚥性肺炎で入院したが,低血糖が続いたため精査した結果,汎下垂体機能低下症と診断された。入院時の所見は,握力:15.3 kg,SMI:5.16 kg/m2,FILS:レベル3,嚥下障害の原因疾患なし,phase angle:2.9°であった。

    [結 果]

    SDの診断フローチャートでpossible sarcopenic dysphagiaに該当した。入院中は運動と栄養(32.4kcal/理想体重)を併用し,退院後は訪問リハビリテーションへ移行した。退院時にはFILS:レベル7(食形態:ミキサー食),Phase angle:3.4°となり,退院後9ヶ月時点では FILS:レベル7(食形態:全粥軟菜食)Phase angle:4.4°となった。またphase angleは骨格,筋量,水分量,体脂肪量の増減により値が変動した。

    [結 論]

    SD患者に運動と栄養を併用することにより退院後も長期的に機能改善した。また,phase angleは体組成変化を捉える上で有用であると考える。

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