本稿では,ビジネスモデル創出のためのプロセス(吉田,2021)において,複数のビジネスモデルパターンを適用する場合に行わなければならないことを,上記プロセスに新たに導入するタスクや規約として提案する.具体的には,概念設計プロセスでは,ビジネスモデルキャンバスの各ブロックの状態を因果関係で結んだ図と,パターン間の相互作用を識別するための図を作成するタスクを提案する.検証プロセスでは,システムダイナミクスモデルの定式化において,一つの要素に対して因果関係や相互作用による効果が与えられる場合に,主効果と促進/抑制効果の区別や,効果の統合についての規約を提案する.さらに,因果関係や相互作用に不確実性を取り込み,シミュレーションを実行するタスクを提案する.そして,複数のビジネスモデルパターンを適用する状況で,検証が適切に行えることを確認した.
世界中で女性の労働参入が進んでいる.日本でも女性活躍は進んでいるが,女性管理的職業従事者割合は世界と比して極めて低い.この課題の要因としてワーク・ライフ・バランス(WLB)問題がある.企業はWLB支援施策を採用,もしくは採用を検討しているが,施策が階級別女性比率に与える影響や施策間の影響関係が不明瞭であり,検討困難な現状がある.本研究はWLB施策の組合せ効果や施策間関係が女性活躍に与える影響に注目し,日本企業604社のWLB支援施策情報にベイジアンネットワーク分析を行った.結果として,従業員女性比率には残業時間の削減策,管理職女性比率には在宅勤務,部長以上職女性比率には在宅勤務と保育設備・手当の採用が有効であるとともに,これらの施策の採用に影響を与える基礎的な施策(例えば,有給休暇取得の奨励策など)から順を追って採用し,労働環境を整えることが施策の有効化につながるという示唆をえた.
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