本稿の目的は,会社αの研究所で27年間にわたって開発され,製品化に至った製品Xの開発プロセスの中で生成された実践知の生成・変容・継承過程を,製品系譜学を用いた調査により明らかにすることである.そのため,調査方法として,実務者が研究者となり,自身の実務現場を調査する,創発的ビジネスフィールドリサーチを採用した.また実践共同体とバウンダリー・オブジェクトの概念を用いて分析を行った.その結果,企業研究所の組織実践における実践知の生成・変容・継承過程を明らかにし,社内に継承された実践知と,実践に埋もれ形式知化できるがされてこなかった実践知との質的な違いを見出した.
電子部品の売り手においては,利益最大化を目標とした価格設定業務へシミュレーション導入の実現が期待されている.本論文では,個別製品の販売データから得られる価格–累積販売量分布を生成するメカニズムと整合性の期待できるモデルを提案する.本モデルは,その価格–累積販売量分布が,高粗利率では対数正規分布を生成し,粗利率が低下するにつれてベキ分布に当てはまりの良い分布が生成され,さらにそのベキ分布のベキ指数の絶対値が,新製品のリリース時点の粗利率が小さいほど増大することを示唆している.特定の個別製品のスタート価格や原価を想定しシミュレーションを実行することにより,本モデルは価格-累積販売量分布だけでなく平均価格や分布と粗利率の関係性の将来的な推移も与えてくれる.そのため,新製品設計業務や価格設定業務へのシミュレーション活用を実現するために,本モデルによるアプローチは有効なものと考える.
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