経営情報学会誌
Online ISSN : 2435-2209
Print ISSN : 0918-7324
31 巻, 4 号
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論文
  • 下田 卓治
    2023 年 31 巻 4 号 p. 151-167
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,企業の気候変動への取り組みが企業価値に与える影響を検証することである.分析の結果,企業と市場には情報の非対称性が存在することから,環境活動を行っているだけでは企業価値は向上しないことが示唆された.しかし,情報公開を提言するTCFD賛同表明の有無に関する代理変数を経由することで,環境活動とTCFD賛同表明,TCFD賛同表明と企業価値の関係が共に有意で正の関係になることが確認された.本研究により,関係性を示すことが困難であった環境活動と企業価値に関する理論的経路を間接的に示すことができた.また,傾向スコアマッチングによる分析を通じて,TCFD賛同表明が企業にとって市場から評価される活動であることを示すことができた.

  • 菊地 剛正, 高橋 大志
    2023 年 31 巻 4 号 p. 169-188
    発行日: 2023/03/15
    公開日: 2023/03/30
    ジャーナル フリー

    顧客中心のサービスの設計のため,マーケティング分野では,ペルソナ手法が広く用いられている.しかし,資産形成やライフプランニング領域など,顧客の便益の享受が遠い将来になりうる特性を持つサービスや施策に関するペルソナ作成・評価においては,以下のような課題が存在する:a)過去または現在の顧客属性に基づく分析が多く,必ずしも適切な顧客分類がなされないこと,b)提供するサービス・施策が各ペルソナにもたらす影響が自明ではなく,訴求すべきターゲット層の同定が困難であること.そこで本稿では,資産形成領域を対象とし,上記特性を勘案したペルソナ作成・評価の枠組みを提案し,フィジビリティの確認を行う.本手法は,実データに基づく社会シミュレーションにより顧客の将来属性を生成し,仮想空間上のシナリオ分析を通じて施策効果を把握するものであり,定量的ペルソナ作成手法の改善提案としての側面も有する.主な結果は以下の通り:1)顧客の将来における属性の変化を定量的・客観的に予測・把握し,複数の施策を考慮した上で,クラスタリングによるペルソナ作成が可能であること,2)複数のペルソナ間の評価・優先順位付けを行い,サービス・施策の提供者毎にターゲットとして有効なペルソナを特定可能であること.本手法により,金融分野を応用領域とし,ペルソナを用いたマーケティングの有用性向上の可能性が示された.

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