本研究は,日本の博物館が今後の社会で求められる使命を果たすのに必要なICTを新規導入したうえで,それらを利用した展示・教育活動を実現するためにはどのようなマネジメントが必要なのかという研究課題を持つ.これを明らかにするために,プロダクトイノベーションを生み出している博物館の特性や経営手法を実証することを研究目的とする.データは,2021年に日本全国の博物館2,048館に送付したアンケート結果のうち有効であった,433館を対象とする.分析は重回帰分析を行い,ロジスティック回帰分析と負の二項分布モデルを用いる.分析の結果,博物館における職員間の連携と他組織との連携が行われている博物館ほど,プロダクトイノベーションを多く生み出していることや,導入技術ごとに影響する博物館の経営手法が異なることを実証した.この結果は,博物館経営論に対する理論的貢献であるとともに,博物館に対する実務的貢献もある.
コンセプトテストの品質に関する既存文献は,「誰に見せるか?」と「何を見せるか?」に限定されてきた.「どう見せるか?」は仮想現実がもたらすリアリティが提案されているが,費用と期間の負担が大きい.本研究は,商品閲覧環境のリアリティに着目し,「コンセプトテストにおいて, ECサイトの画面デザインは,市場シェアの推定精度を向上させる」という仮説を策定した.ランダム化比較試験の結果,通常の画面デザインに比べて,ECサイトを模した画面デザインの方が市場シェアの推定精度が高まることを示した.その効果は,メーカーブランドECサイトよりも,第三者ECサイトの方が高くなった.さらに,コンセプトテストで購入意向を示した商品について,実際に購入する確率を問うと,通常よりもECサイトデザインの方が高い購入意向となることを確認した.ECを模したデザインはリアリティを感じさせ,現実の購入行動に即した回答になると推察できる.