日本外傷学会雑誌
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28 巻 , 4 号
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原著
  • 大森 貴夫, 喜多村 泰輔, 田中 公章, 斎坂 雄一, 石原 潤子, 野島 剛, 小松原 将, 松本 俊之
    2014 年 28 巻 4 号 p. 299-304
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
     【はじめに】高齢者外傷は出血部位の診断の遅れから死亡する例もある.この研究では高齢者重症外傷における出血部位を若年・青壮年者と比較し検討した.【対象と方法】重症外傷により大量出血を認めた76例を対象とした.大量出血症例は濃厚赤血球を24時間以内に10単位以上投与した症例,または大量出血により早期に死亡した症例とした.【結果】若年・青壮年者は35例,高齢者は41例だった.大量出血の原因とされている三大内出血や,活動性外出血以外の部位からの出血症例(骨折・打撲などによる多部位損傷や後腹膜血腫などのprimary surveyでは診断が困難な症例)は若年・青壮年者では5例(14%),高齢者は16例(39%)で統計学的に有意差(P<0.05)を認めた.【考察】高齢者外傷はprimary surveyで異常を認めなくても大量出血となる症例も多く,そのことを念頭におき初療にあたるべきである.
臨床検討
  • 鵜養 拓, 内山 善康, 小林 由香, 守田 誠司, 猪口 貞樹, 持田 讓治
    2014 年 28 巻 4 号 p. 305-310
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
     骨盤骨折患者80例中,経動脈的塞栓術(TAE)治療を行った52例を対象としTAEにおける殿筋壊死と皮膚潰瘍発生の危険因子について検討した.受傷時平均年齢は51.8歳(13〜88歳)であった.TAEは片側内腸骨動脈7例,両側内腸骨動脈45例に施行し,骨折型は安定型19例,部分不安定型22例,完全不安定型11例であった.合併症は5例にみられ,殿筋壊死2例,殿部・陰部潰瘍3例であった.TAE施行例全体の合併症発生率5/52例(9.6%),片側内腸骨動脈塞栓例0/7例(0%),両側内腸骨動脈塞栓例5/45例(11.1%)であり,片側塞栓例では合併症発生はみられなかった.合併症発生例において造影CTを用いた軟部組織評価を行ったところ4/5例(80%)に,壊死例では2/2例(100%)に殿部の皮下組織への血腫がみられた.皮下組織への血腫がみられる症例において両側内腸骨動脈を塞栓する場合は合併症発生に関して留意する必要があると考えられた.
  • 水嶋 知也, 箕輪 良行, 有馬 孝博, 池田 勝紀, 角地 祐幸, 境田 康二
    2014 年 28 巻 4 号 p. 311-317
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
     千葉県東葛飾南部地域(市川市,浦安市,鎌ケ谷市,習志野市,船橋市,八千代市)メディカルコントロール協議会では,外傷救急事案における病院前活動の質の向上を目的に外傷救急事案事後検証システムを導入し2011年度より運用を開始した.重症外傷事案を担当した救急隊が外傷事案事後検証票を作成し,各市消防内の担当者と地域における救急基幹病院の担当医師が検証する.
     外傷救急事後検証システムで得られた情報の集積と分析により,2011年度のA市消防救急隊の現場活動時間が他市消防の活動に比べ明確に長いことが判明した.その原因を究明し問題点の改善を指導したところ,2012年度の現場滞在時間が有意に短縮された.
     外傷救急事案事後検証システムは当該地域人口170万人圏における重症外傷事案の統計資料となり得るが,存分に活用するためには迅速かつ均一な検証,現場への還元手法,地域内外の医療機関との連携をさらに検討のうえ推進していく必要がある.
症例報告
  • 金子 唯, 山下 進, 藤田 基, 金田 浩太郎, 河村 宜克, 小田 泰崇, 鶴田 良介
    2014 年 28 巻 4 号 p. 318-322
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
     25歳,男性.自動二輪運転中に乗用車と接触し受傷した.Ib型肝損傷,Ia型肺挫傷の診断で当院に紹介となった.腹部血管造影で肝動脈門脈シャント(以下APシャント)の合併を認めた.3回にわたる腹部血管造影でAPシャントを認める肝動脈枝にゼラチンスポンジ片で動脈塞栓(以下TAE)を施行したが,一部のAPシャント残存のまま第21病日に退院,外来経過観察となった.退院後,腹部造影CTでフォローアップを行い,受傷後約1年2ヵ月でAPシャントの完全閉鎖を認めた.
     鈍的肝損傷に合併するAPシャント症例に対して,一時塞栓物質によるTAEでシャント血流を減少させ,外来経過観察中に完全閉鎖が得られた.同病態の治療に際して,示唆的な経過と考えられたため報告する.
  • 木下 順弘, 蒲原 英伸, 藏元 一崇, 池田 公英, 入江 弘基, 笠岡 俊志, 浅井 篤
    2014 年 28 巻 4 号 p. 323-326
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
     【症例】30代女性,妊娠25週.軽乗用車の後部座席に乗車中,他車と衝突し受傷した.来院時意識清明であった.多発外傷の治療中,原因のはっきりしないびまん性脳腫脹をきたした.神経学的所見,平坦脳波より脳死状態と診断した.家族は母体の延命を希望せず,挙児の希望があり,脳死後4日目に帝王切開術にて718gで出生し,まもなく母体は心停止した.世界的にも脳死母からの出生は極めてまれであり,本例の方針決定の経過を報告する.
  • 蕪木 友則, 須崎 紳一郎, 勝見 敦, 原田 尚重, 原 俊輔
    2014 年 28 巻 4 号 p. 327-331
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
     45歳女性,自転車のサドルで腹部を打撲し当院受診.来院時,意識清明,呼吸循環は安定していた.腹部に軽度自発痛,圧痛を認めるのみであった.CT検査で,膵頭部にⅢ型膵損傷,腹腔内出血を認めた.主膵管損傷が疑われたが,CTでの確定診断は困難であった.腹部所見は軽度で呼吸循環は安定していたため,主膵管損傷の有無について追加検査を施行せず,厳重経過観察とした.その後も呼吸循環は安定しており,腹部所見の増悪はなかった.受傷2週間後のCTで膵頭部の嚢胞と胆管拡張所見を認め,経皮的膵嚢胞ドレナージを施行し軽快した.膵頭部主膵管損傷が疑われる症例で,厳重経過観察による保存的加療にて軽快した1例を経験した.
  • 大島 康史, 飯塚 亮二, 市川 哲也, 岡田 遥平, 小田 和正, 榊原 謙, 石井 亘, 檜垣 聡, 日下部 虎夫
    2014 年 28 巻 4 号 p. 332-335
    発行日: 2014/10/20
    公開日: 2014/10/20
    ジャーナル フリー
     症例は69歳,女性,自宅で転倒し,外傷性くも膜下出血,左鎖骨骨折,左外傷性血気胸,左第2〜10肋骨骨折を伴ったフレイルチェストを受傷した.左第3肋骨の遊離骨片が不安定で胸腔内に突出し,肺損傷の合併の可能性が高いため,外科的治療を施行した.術翌日に人工呼吸器から離脱し,治療期間中に肺炎の発症も認めなかった.
     フレイルチェストに対する肋骨固定用プレートを用いた治療は開胸を必要とせず,手術器械による肺損傷の心配もないため,安全で簡便であった.また胸郭変形の改善,人工呼吸器の早期離脱と肺炎予防の利点があり,有用であった.
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