日本外傷学会雑誌
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29 巻, 1 号
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症例報告
  • 皆川 幸洋, 吉田 宗平, 高橋 正統, 藤社 勉, 下沖 收, 兼子 由香, 阿部 正
    2015 年 29 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2015/01/20
    公開日: 2015/01/21
    ジャーナル フリー
     症例は9歳,男児.自転車運転中に転倒し,上腹部を強打し倒れているところを発見され前医を受診し,前医で腹部造影CT検査を施行しⅢb(日本外傷学会肝損傷分類)の診断であった.転院搬送中の救急車内で血圧60台まで低下,濃厚赤血球800ml輸血および昇圧剤を投与しながら当院救急センターに受傷から2時間32分後転院搬送となった.来院時血圧80/42mmHg,脈拍105/分,右季肋部に圧痛を認めfocused assessment with sonography for trauma(FAST)陽性であった.循環動態不安定なことから同日緊急手術(damage control surgery;DCS)を施行した.翌日持続性出血が遷延したためTAEを施行した.第6病日に閉腹し,第17病日に自宅退院となった.小児の自転車ハンドル外傷による上腹部痛では腹腔内臓器損傷を念頭に置いた迅速な判断と治療が必要である.
  • -脳室ドレナージの有用性に関する検討-
    塩見 直人, 越後 整, 岡田 美知子, 平泉 志保, 大槻 秀樹, 橋本 洋一, 岡 英輝, 日野 明彦, 高須 修, 坂本 照夫
    2015 年 29 巻 1 号 p. 8-12
    発行日: 2015/01/20
    公開日: 2015/01/21
    ジャーナル フリー
     脳室ドレナージだけでICPコントールが可能であった多発外傷2例を経験した.2例ともISSが36および45の多発外傷例であり,重症頭部外傷を伴っていた.2例ともICPセンサーを先に挿入し,ICPが高値になった時点で脳室ドレナージを挿入した.いずれもICPのコントロールは容易であり,合併症はみられなかった.脳室ドレナージは確実にICPを低下させる治療法であり,低侵襲かつ短時間で施行できるため,重症度の高い多発外傷例には利点が多い.脳室ドレナージは重症頭部外傷を伴った多発外傷において,積極的に検討すべき治療戦略の一つであると考えられる.
  • 萩原 周一, 村田 将人, 金子 稔, 青木 誠, 神戸 将彦, 大山 良雄, 田村 遵一, 大嶋 清宏
    2015 年 29 巻 1 号 p. 13-16
    発行日: 2015/01/20
    公開日: 2015/01/21
    ジャーナル フリー
     25歳,男性.既往歴に統合失調症.自傷目的に舌を鋏で切断し救急搬送された.来院時,舌尖部が切断され,残存した舌根部が沈下し,断端から拍動性出血があった.サテンスキー血管鉗子で舌断端を把持することにより止血でき,舌挙上も容易になった.断端形成術後に口蓋底浮腫が出現し,気道緊急に備え気管挿管した.第4病日抜管,第8病日に転院した.転院時,嚥下・咀嚼,会話可能だった.
     舌切断はまれなため処置に特化した器具はない.そのため救急外来に常備してある器具で対応する必要がある.サテンスキー血管鉗子は先端部分に弯曲があり口角からの挿入で容易に舌を把持できた.また,把持力も微調整が可能で組織を挫滅することなく止血でき有用だった.
その他
  • 小網 博之, 阪本 雄一郎, 朽方 規喜, Rattaplee Pak-art
    2015 年 29 巻 1 号 p. 17-21
    発行日: 2015/01/20
    公開日: 2015/01/21
    ジャーナル フリー
     今回われわれは,タイのChulalongkorn大学で開催されたhuman soft cadaversを用いた外傷ワークショップに参加したので報告する.Soft cadaversとは,御遺体に特殊な加工を加えることにより組織を限りなく生体に近い柔らかい状態に保つことができるようにしたものである.われわれが参加したのは,体幹部の主要な血管損傷を想定したものだった.タイ全国から外傷外科医や外科レジデントが参加し,アドバイザーとしてアメリカよりMattox教授も招かれていた.ワークショップは半日コースであり,前半は4つのレクチャーにMattox教授が追加コメントを行う形で行われた.レクチャーのあとは,実際に御遺体を用いて実習を行った.御遺体1体につきインストラクター1名と受講生が5,6名割り当てられ,生体と同じ感触で普段経験できない手技を習得できた.問題点としては,手技を行うには人数が多いことや費用などの問題はあるが,off-the-job trainingの有用な選択肢の一つと考えられた.
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