第30回日本外傷学会総会・学術集会が大友康裕会長のもと「外傷学30年 さらなる飛躍に向けて」をテーマに開催された.そのなかで,「東京オリンピック・パラリンピック特別企画」が,本学会と東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会,日本集団災害医学会のJoint Sessionとして開催された.基調講演として,帝京大学医学部救急医学 坂本哲也氏の司会で,東京オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会メディカルディレクターである早稲田大学の赤間高雄氏が「オリンピック・パラリンピックの医務体制」を講演し,これまでに開催されたオリンピックでの医療対応の紹介に引き続き,2020年東京オリンピック・パラリンピックの医務体制計画の概要について説明があった.緊急対応のためにCTやMRIを準備する一方,選手の要望に応じて,健診や視力検査・眼鏡の作成,ドーピング検査等多岐に及ぶ業務について言及され,非常に貴重な情報であった.
基調講演に続き,5人の演者から爆傷や銃創等の多数殺傷型テロ(以下,多数殺傷型テロ)についての講演があった.わが国においては,1974(昭和49)年8月30日に発生した三菱重工爆破事件以降,多数殺傷型テロの発生はなく,本テーマについては災害関連学会においても取り上げられることはまれである.東京オリンピック・パラリンピックを目前に控え,「現状では防ぎえた死が多数発生する」との強い危機感が会長の頭の中にあり,本セッションの企画となったのではないかと勘案する.
抄録全体を表示