日本外傷学会雑誌
Online ISSN : 2188-0190
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31 巻, 3 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
原著
  • 山田 哲久, 名取 良弘
    2017 年 31 巻 3 号 p. 381-386
    発行日: 2017/07/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー

     【背景】急性硬膜下血腫で保存的加療した症例のなかで亜急性期に血腫が増大する症例が存在する. 当院で経験した亜急性期に血腫が増大した急性硬膜下血腫症例の予測因子を検討したので報告する. 【方法】2003年〜2014年に当院脳神経外科で加療した急性硬膜下血腫で急性期に手術を行った症例および非積極的治療の症例を除外, 脳挫傷や急性硬膜外血腫を合併していない円蓋部急性硬膜下血腫261例を対象とした. 亜急性期に血腫が増大した症例と増大しなかった症例に分けて比較検討した. 【結果】亜急性期に血腫が増大した症例は43例, 血腫が増大しなかった症例は218例であった. 年齢, 糖尿病, Computed Tomographyでの血腫の厚さ・正中線の偏位が予測因子であった. 【結論】高齢者で血腫が厚いが亜急性期まで保存的加療可能であった症例が亜急性期に血種が増大すると考えられた.

症例報告
  • 庄古 知久, 寺本 直弥, 千田 篤, 漆畑 直
    2017 年 31 巻 3 号 p. 387-390
    発行日: 2017/07/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー

     16歳の男性がバイク走行中にマンホールの蓋で滑り転倒し投げ出され, 救急車で搬送された. 全身に打撲痕はなく, 骨折もなかった. 造影CT検査にて両側の腸骨筋腫脹と造影剤の血管外漏出を認めた. バイタルサインは安定しており, 保存療法を選択した. 3日目に左下腿部のしびれを訴えたが翌日には消失した. 事故の状況から, バイク転倒時に両股関節が急激に過伸展し腸骨筋に血腫を生じたと推測された. 外傷による腸骨筋を含む腸腰筋血腫は, ショック症状がなく, 大腿神経麻痺の進行がなければ, 保存的な治療を行うことが妥当である.

  • 奥田 和功, 岸 文久, 升井 淳, 田中 淳, 池側 恭洋, 岡田 昌浩, 中川 淳一郎, 日野 裕志, 中條 悟, 遠山 一成, 島津 ...
    2017 年 31 巻 3 号 p. 391-394
    発行日: 2017/07/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー

     症例は17歳男性. 自転車事故で頭部を受傷. 救急搬入時Glasgow Coma Scale (GCS) : E2V3M5で不穏あり, Computed Tomography (以下CTと略す) で両側前頭葉脳挫傷, 右急性硬膜下出血と診断した. 右穿頭血腫除去術後にintracranial pressure (以下ICPと略す) をモニターし, 低体温療法やバルビツレート療法を開始した. 第2病日にICPが30mmHgを上回り右脳室ドレナージで対処したが, 第4病日に再び上回りCTで正中変位のない脳腫脹が確認されたため, 両側減圧大開頭術を施行した. 術後は速やかに集中治療を終え, 徐々に意識回復した. 第44病日に頭蓋形成術を施行しリハビリ継続の後, 第215病日に自宅退院となり復学し得た. 集中治療中の頭蓋内圧亢進に両側減圧大開頭術が奏効し, 有効な手段であると考えられた.

  • 佐々木 淳, 土田 芳彦
    2017 年 31 巻 3 号 p. 395-399
    発行日: 2017/07/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー

     上肢切断では義肢の機能が不良なために可能な限り再接合術が選択される. 症例は40歳男性, ベルトコンベアに右前腕を巻き込まれ受傷した. 右前腕中央1/3の引き抜き切断であり, 正中・尺骨神経は肘関節レベルから10cm欠損していた. 伸筋・屈筋群の挫滅も強く, 前腕内側に大きな軟部組織欠損を認めた. 即日解剖学的骨接合術と血管吻合により患肢は再血行化された. 受傷後10日目に骨短縮を併用した神経再建, 腱再建, 遊離広背筋皮弁を計画した. しかしながら, 炎症と浮腫が著しいため骨短縮は施行できなかったため, 神経と腱の再建が不十分となり, 結果的にnon-functional limbとなった. 上肢は骨短縮が機能肢温存の鍵とされており, 骨短縮は初期治療の段階で施行する必要があると考える.

  • 佐藤 哲哉, 野村 亮介, 山内 聡, 久志本 成樹
    2017 年 31 巻 3 号 p. 400-404
    発行日: 2017/07/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー

     脾外傷に対する非手術療法の合併症である遅発性出血には脾仮性動脈瘤の重要性が指摘されているが, 小児例における治療的アプローチは明らかでない. 今回, 異なる臨床経過を呈した3小児例を経験したので報告する. 症例1 : 受傷時に仮性動脈瘤は認めず, 第2病日の遅発性出血時に診断し塞栓術を施行した. 症例2 : 受傷時に認めた仮性瘤が第3病日までに急速に増大し, 塞栓術を施行した. 症例3 : 第8病日に診断した仮性瘤の第13病日における消失を認めた. 小児脾損傷に対する非手術的治療における血管損傷の経時的評価は必須であり, 仮性瘤を疑う所見があれば, 成人と同様に積極的な選択的脾動脈塞栓術を考慮すべきであると考える.

  • 那須 亨, 上田 健太郎, 川副 友, 岩崎 安博, 川嶋 秀治, 置塩 裕子, 國立 晃成, 加藤 正哉
    2017 年 31 巻 3 号 p. 405-409
    発行日: 2017/07/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー

     比較的まれである小児の鈍的外傷性十二指腸穿孔を3例経験した. 症例1は10歳女児. シートベルト損傷により受傷した. 腹部造影CTで肝周囲に血腫を認めるもfree airはなく, 翌日のCTで後腹膜気腫を認めたため手術を施行した. 症例2は14歳男児. 空手試合中に回し蹴りにより受傷した. 造影CTで右腎周囲に血腫を認めるもfree airはなく, 翌日のCTで後腹膜気腫を認めたため手術を施行した. 症例3は14歳男児. 空手練習中に心窩部を打撲した. 翌日, 右側腹痛が増強したため救急搬送された. 単純CTでfree airを認めたため手術を施行した. 3例とも十二指腸憩室化手術は行わず, 経過良好で第19病日以内に退院した. 自験例を含む本邦11例の文献的考察を加えて報告する.

  • 中塚 昭男, 坂本 吉弘, 吉武 研三, 永吉 洋介, 井上 健
    2017 年 31 巻 3 号 p. 410-414
    発行日: 2017/07/20
    公開日: 2017/07/20
    ジャーナル フリー

     軽微な外傷後に, 仙骨骨折と仙骨嚢胞の破裂により髄液漏を生じ, 低髄液圧症状を呈したが, 保存的治療により軽快したまれな症例を経験した. 68歳の女性が, 自己転倒による臀部痛を主訴に徒歩受診した. 画像所見より, 仙骨脊柱管内に嚢胞があり, これに圧迫され菲薄化した仙骨に骨折を認め, 仙骨前面に嚢胞破裂による髄液漏を伴っていた. 頭部挙上により出現する頭痛, 嘔気, めまいがあり, 髄液漏による低髄液圧症状と診断した. 髄液漏は翌日には著明に増加していたが, 安静, 輸液等による保存的治療により頭痛は徐々に改善し, 受傷8日目には髄液漏はほぼ消失していた. その後, 離床を進めるも症状の再燃なく, 受傷21日目に軽快退院となった.

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