日本外傷学会雑誌
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31 巻 , 4 号
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原著
  • 佐藤 啓太, 早川 桂, 五木田 昌士, 勅使河原 勝伸, 田口 茂正, 清田 和也
    2017 年 31 巻 4 号 p. 415-419
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2017/10/20
    ジャーナル フリー

     【目的】鈍的脾損傷後の仮性動脈瘤(Splenic pseudoaneurysm:以下,SPA)の発生や自然経過には一定の見解はない.当院の脾損傷症例から,SPAの形成と自然経過に関して検討した.【方法】鈍的脾損傷患者62例のうち,Non-operative management(NOM)症例を対象に,SPA形成群(SPA+群)と未形成群(SPA−群)にわけて発生に関わる因子を検討した.また,瘤が自然消失した群(消失群)と治療介入した群(塞栓群)とにわけ,消失に関わる因子を検討した.【結果】SPA+群ではSPA−群に比べてInjury Severity Score(ISS)が有意に低値であり(17.18±2.39 vs 25.17±2.9;p=0.047),外傷部位も有意に少なかった(0.72±0.19 vs 1.9±0.3;p=0.007).消失群と塞栓群での差は認めなかった.【結論】SPAは,低エネルギーでの受傷機転で,ISSが低値な症例で形成される傾向がみられた.

  • 寺田 貴史, 溝端 康光, 日村 帆志, 武貞 博治, 森岡 貴勢, 羽川 直宏, 山本 朋納, 内田 健一郎, 加賀 慎一郎, 晋山 直樹 ...
    2017 年 31 巻 4 号 p. 420-427
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2017/10/20
    ジャーナル フリー

     目的 : 当科では, 体幹部刺創に対して一定の指針に則り診療を行ってきており, 今回その妥当性につき検証した. 方法 : 2010年4月から2014年12月に搬送された50例を対象とし, 後方視的に検討した. 結果 : 男性が36例, 平均年齢は53.1歳であった. 14例が来院時ショック状態であり, 循環不安定な9例は直ちに手術を施行した. 安定を得た41例のうち, 成傷器残存などの8例はCT検査を実施せずに手術を行った. 33例でCT検査を実施し, 18例は体腔への非到達を確認したため創閉鎖とした. 体腔に達していた15例に対し, 指針に則り方針を決定した. 3例で胸腔に到達しており, 全例で胸腔ドレーンを留置し創閉鎖した. 13例で腹腔に到達しており, 10例に開腹術を行った. 全例生存退院し, 創が体腔に達していたが創閉鎖した5例は遅延手術を要さなかった. 結論 : 治療成績は良好で, 初期評価で非手術とした全例で遅延手術を要さず, 指針の妥当性が示された.

  • 岩瀬 史明, 井上 潤一, 小林 辰輔, 宮崎 善史, 松本 学, 河野 陽介, 池田 督司, 木下 大輔, 岩瀬 弘明
    2017 年 31 巻 4 号 p. 428-434
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2017/10/20
    ジャーナル フリー

     【目的】ドクターカー・ヘリにより医師が病院前から診療を開始することが, 重症外傷に対する根本的治療までの時間を短縮し, 傷病者の予後を改善するか検討を行った. 【対象と方法】2008年1月から2014年12月までに当センターに搬入された外傷症例のうち, 初療室において体幹部緊急手術を施行した症例を, 救急車単独搬送 (救急車群) とドクターカー・ヘリ出動 (Rapid response car/Doctor helicopter, 以下RRC/DH群) で比較検討を行った. 【結果】対象は61例で, RRC/DH群では遠方地域からの搬送が多く, 覚知から医師による診療開始までの時間に差はなかったが病院到着までの時間は長かった. 来院から手術開始までは, 救急車群62.7分に対してRRC /DH群は32.5分と短縮し, red blood cell (RBC) 輸血開始までは, 救急車群50.6分に対してRRC/DH群は29.6分と短縮, fresh frozen plasma (FFP) 輸血開始までも救急車群104.8分に対して, RRC/DH群52.1分と短縮していた. 24時間生存率, 生存退院率はRRC/DH群で高い傾向はあったが有意差はなかった. 【結語】ドクターカー・ヘリにより輸血, 手術開始は早くなり予後を改善する可能性があった.

臨床検討
  • 坂平 英樹, 宮本 勝文, 大石 達郎, 高橋 応典, 宮永 洋人, 上村 亮介, 金本 義明, 吉岡 佑太, 小山 隆司
    2017 年 31 巻 4 号 p. 435-441
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2017/10/20
    ジャーナル フリー

      [目的] 重症腹部実質臓器損傷の開腹適応について検討する. [方法] 2011年から2015年の当院における III 型肝損傷・脾損傷・膵損傷 (来院時心肺停止を除く) の19症例を, 開腹と非開腹の2群に分け比較検討を行った. [結果] 肝損傷 III a 2例・ III b 6例, 脾損傷 III a 3例・ III b 6例, 膵損傷 III a 2例・ III b 2例を調査, 10例で開腹手術を要した. そのうち5例は継続するショックで, 3例は腹腔内汚染疑いで, 1例は穿通性損傷のため開腹した. 残りの1例は循環動態の安定した肝損傷 III bと膵損傷 III aの合併損傷であった. 開腹群において, 来院時ショック症例の割合とISS (Injury Severity Score) は高い傾向にあったが, 有意差は示されなかった. [結語] 開腹となった症例は, ほとんどが継続するショックや腹腔内汚染の合併によるものであったが, 循環動態の安定した症例でも, 胆汁漏や膵液瘻合併の可能性のあるものは開腹適応となり得るかもしれない.

  • 高橋 学, 後藤 文, 松本 尚也, 菅 重典, 秋丸 理世, 増田 卓之, 石部 頼子, 山田 裕彦, 細谷 優子, 櫻庭 実
    2017 年 31 巻 4 号 p. 442-447
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2017/10/20
    ジャーナル フリー

     岩手県高度救命救急センターに搬送されたクマ外傷50症例について後方視的に検討した. 平均年齢は69±5歳で男性に多く, 時期としては5月, 時間帯としてはam8 : 00〜11 : 59に, 山菜取りの際中に被害に遭う例が目立っていた. 90%の症例が顔面に被害を受け, 明らかな左右差は認めず, 68%の症例で全身麻酔による緊急手術が必要であった. 全例に予防的抗菌薬が投与され, 創部感染発生率は20%であった. 検出された菌は通性嫌気性菌が7菌種, 嫌気性菌が4菌種の計11菌種で, βラクタマーゼ阻害薬はその内9菌種に感受性を認めていた. 抗菌薬別の創部感染発生率は非βラクタマーゼ阻害薬投与例が28.5%, βラクタマーゼ阻害薬投与例が9.1%でありβラクタマーゼ阻害薬投与例で低い傾向にあった.

症例報告
  • 金子 唯, 入江 弘基, 辛島 龍一, 岩下 晋輔, 笠岡 俊志
    2017 年 31 巻 4 号 p. 448-452
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2017/10/20
    ジャーナル フリー

     57歳男性. 魚処理工場で屠殺銃が暴発し受傷. ドクターヘリが要請され, 気管挿管・右胸腔ドレーンを挿入されて当院搬送. II a型両側肺損傷 (びまん性肺挫傷) ・ II a型胸郭損傷 (胸骨骨折) ・気道出血を認め, 人工呼吸管理を開始した. 前胸部・両前腕の多発挫創は縫合閉鎖を行った. また第6病日に右鼓膜穿孔の所見を認めた. 肺挫傷は徐々に軽快し, 第8病日に人工呼吸離脱, 第22病日にリハビリ目的で独歩にて転院となった. 本邦において爆発損傷の経験は少なく, 今回小規模な爆発であったが, 爆風による鼓膜損傷および肺挫傷へ影響があった可能性が考えられ, 爆発外傷の診療において示唆的な症例と考えられたため報告する.

  • 家城 洋平, 木下 順弘, 石田 健一郎, 曽我部 拓, 中倉 晴香, 高端 恭輔, 下野 圭一郎, 島原 由美子, 岩佐 信孝, 上尾 光 ...
    2017 年 31 巻 4 号 p. 453-456
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2017/10/20
    ジャーナル フリー

     症例は71歳男性. 乗用車を運転中に受傷し腹腔内出血による出血性ショックの状態で来院し, 初療室にて開腹手術を開始した. 同時に大動脈遮断バルーンカテーテル (intra-aortic balloon occlusion : 以下IABO) を鼠径部から挿入し, 開腹術と同じ腹腔内の術野からその位置確認とバルーンの調整を行った. 大量の血液により腹腔内の術野の確保に難渋したがIABO補助により出血をコントロールでき, 良好な術野が得られたため, 小腸間膜損傷, S状結腸損傷に対する手術を早期に終了できた. 開腹術にIABOを併用すると, 術前や術中のバイタルサインを安定化できるのみならず, 術中の出血を制御してより良好な術野を容易に確保することができ, その結果として止血術をすみやかに完遂することができる.

  • 中山 文彦, 市川 頼子, 阪本 太吾, 岡田 一宏, 瀬尾 卓生, 服部 陽, 安松 比呂志, 本村 友一, 飯田 浩章, 益子 一樹, ...
    2017 年 31 巻 4 号 p. 457-460
    発行日: 2017/10/20
    公開日: 2017/10/20
    ジャーナル フリー

     44歳男性. 出血性ショックを伴う左横隔膜損傷・不安定型骨盤骨折・右大腿骨骨折に対し, 動脈塞栓術と創外固定術, 左横隔膜修復術を施行した. CTで胸部大動脈の弓部と峡部に II bと III aの損傷を確認したが, 造影剤の活動性漏出像はなく, 待機的治療を選択した. 第16病日にステントグラフト内挿術を峡部損傷に対し施行, 第23病日に弓部損傷の拡大が判明し弓部置換術を行った. 本症例は多発外傷例において2ヵ所の大動脈損傷の治療をどう行うかが課題であった. 受傷後2週間以上のdelayed repairも可能であること, ステントグラフトだけでは治療が必ずしも完結しないことを経験した.

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