日本外傷学会雑誌
Online ISSN : 2188-0190
Print ISSN : 1340-6264
ISSN-L : 1340-6264
36 巻, 1 号
選択された号の論文の5件中1~5を表示しています
症例報告
  • 宮崎 敬太, 村上 公子, 谷口 徹, 伴 理紗子, 南木 一樹, 松尾 智暁, 井上 洋平, 高野 啓佑, 川井 廉之, 福島 英賢
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 36 巻 1 号 p. 1-4
    発行日: 2022/01/20
    公開日: 2022/01/20
    [早期公開] 公開日: 2021/10/27
    ジャーナル フリー

     症例は83歳, 男性. 自宅で転倒し, 顔面痛を主訴に救急要請. 救急隊接触時には会話可能であったが, 車内収容後に意識障害とSpO2の低下を認め, 搬送となった. 搬入時, Glasgow Coma Scale ; E1V1M4であったため, 気管挿管のために喉頭展開を行うと, 咽頭後壁の膨隆が認められたが, 挿管は実施可能であった. 頚部CTでは咽頭後間隙血腫を認め, これによる上気道の閉塞から呼吸不全, 意識障害に至ったと考えられた. 第3病日に気管切開術を施行し, 保存的加療によって血腫は消退し, 第25病日に独歩退院となった. 咽頭後間隙血腫は軽微な受傷機転で生じるが, 本症例のように致死的な上気道閉塞を短時間で来しうる. 重症外傷と同様に確実な気道確保が救命に不可欠である.

  • 久宗 遼, 西山 和孝, 野首 元成, 坂口 昌幸, 酒井 龍一
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 36 巻 1 号 p. 5-10
    発行日: 2022/01/20
    公開日: 2022/01/20
    [早期公開] 公開日: 2021/11/05
    ジャーナル フリー

     症例は31歳男性. 自動車事故を起こし当院に救急搬送された. 来院時, 血圧 99/66 mmHg, 脈拍 94 回/分, FAST陽性であった. 造影CT検査でextravasationを伴う日本外傷学会肝損傷分類 III b型と診断し, transcatheter arterial embolization (TAE) を施行した. 観血的動脈圧測定を開始し, 第3病日の造影CT検査で新規に門脈血栓を認め, 第7病日からヘパリン投与を開始した. 第11病日より血小板数減少をきたしヘパリン起因性血小板減少症Heparin-induced thrombocytopenia (HIT) と判断した. ヘパリン投与を中止したが, HITの治療開始が遅れたため新規に静脈血栓を併発した. 近年重症外傷でHITを発症することが報告されており, 外傷例でもHITを疑う際は, 止血が得られていれば適切な代替抗凝固治療を早期に行う必要があると考えられた.

  • 渡邉 優, 松本 佑啓, 鈴木 貴明, 中尾 隼三, 柳澤 洋平, 丸島 愛樹, 井上 貴昭
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 36 巻 1 号 p. 11-15
    発行日: 2022/01/20
    公開日: 2022/01/20
    [早期公開] 公開日: 2021/11/15
    ジャーナル フリー

     外傷性椎骨動脈損傷 (vertebral artery injury : 以下VAI) は比較的稀な病態であるが, 鈍的頚椎損傷にしばしば合併しており, 脳梗塞を続発すると神経学的予後が不良となる. 特に血管閉塞の場合は脳梗塞の発生率と死亡率が高く, 抗血栓療法や血管内治療による塞栓術などの有効性が報告されているが, 統一した見解はない.

     我々は, 初診時のCTでDenver scale Grade IV の椎骨動脈損傷と診断し, 外科的治療後に広範な後方循環系の脳梗塞を発症し, 意識障害が後遺した症例を経験した. 自験例を通じて脳主幹動脈閉塞を伴う頚椎損傷の治療指針について検討を行った. 頚椎損傷を診断した場合, VAIを念頭に置いたCT angiographyなどの精査に加えて, 血管損傷に対する治療方法を検討することが重要である.

  • 岡田 一郎, 米山 久詞, 井上 和茂, 関 聡志, 菱川 剛, 塩島 裕樹, 神保 一平, 高田 浩明, 永澤 宏一, 笠原 大輔, 小原 ...
    原稿種別: 症例報告
    2021 年 36 巻 1 号 p. 16-21
    発行日: 2022/01/20
    公開日: 2022/01/20
    [早期公開] 公開日: 2021/12/16
    ジャーナル フリー

     症例は9歳女児. 交通事故で受傷し, 来院時ショックバイタル. 肝脾損傷からの腹腔内出血に対して血管内治療を施行. Trauma pan scanでは膵頭部損傷が疑われたが, 循環動態が改善しており, 腹腔留置カテーテルを用いた腹水ドレナージを行い, 保存的治療とした. 高アミラーゼ腹水のドレナージを第9病日まで継続. 第10病日の食事開始後に血清アミラーゼ値が上昇し, 第17病日のmagnetic resonance imagingで膵頭部周囲に嚢胞性液体貯留が出現したが, 腹部症状の悪化なく, 第24病日に自宅退院とした. 外来フォローアップし, 徐々に嚢胞は縮小. 第52病日に膵仮性嚢胞は自然消失した. 小児では主膵管損傷が疑われる膵頭部損傷に対して, 腹水ドレナージを用いた保存的治療が有用な可能性が示唆された.

  • 日村 帆志, 内田 健一郎, 川田 沙恵, 松尾 健志, 出口 亮, 宮下 昌大, 加賀 慎一郎, 野田 智宏, 西村 哲郎, 山本 啓雅, ...
    原稿種別: 症例報告
    2022 年 36 巻 1 号 p. 22-27
    発行日: 2022/01/20
    公開日: 2022/01/20
    [早期公開] 公開日: 2022/01/07
    ジャーナル フリー

     50歳の男性. バイク事故により受傷した. 初期輸液により循環は安定化したが, 腹部造影CT検査で脾臓内に造影剤漏出が確認されたため, 脾門部仮性動脈瘤と脾内多発出血に対し塞栓術を施行した. 貧血が進行したため, 翌日に脾内および脾門部の仮性動脈瘤に対し, ゼラチンスポンジとコイルを用いた塞栓術を行った. 広範囲に脾血流が遮断されたため, 第27病日のCT検査にて広範囲梗塞液状化 (giant liquefaction) を認めた. 感染や破裂に留意しつつ観察したところ, 液状化部は第66病日には縮小化し保存的に加療し得た. 脾臓のliquefactionは, 本来の脾臓を上回る大きさとなっても, 感染兆候や臓器圧迫症状を呈さなければ保存的に加療し得ることが示唆された.

feedback
Top