症例は83歳, 男性. 自宅で転倒し, 顔面痛を主訴に救急要請. 救急隊接触時には会話可能であったが, 車内収容後に意識障害とSpO2の低下を認め, 搬送となった. 搬入時, Glasgow Coma Scale ; E1V1M4であったため, 気管挿管のために喉頭展開を行うと, 咽頭後壁の膨隆が認められたが, 挿管は実施可能であった. 頚部CTでは咽頭後間隙血腫を認め, これによる上気道の閉塞から呼吸不全, 意識障害に至ったと考えられた. 第3病日に気管切開術を施行し, 保存的加療によって血腫は消退し, 第25病日に独歩退院となった. 咽頭後間隙血腫は軽微な受傷機転で生じるが, 本症例のように致死的な上気道閉塞を短時間で来しうる. 重症外傷と同様に確実な気道確保が救命に不可欠である.
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